「理想の銘柄」を探すポイント
それでは、どのような銘柄が持ち続けるべき「理想の銘柄」と呼べるのでしょうか。私は以下のような点を重視して企業を見るようにしています。
- 他社に真似されない「経済の堀」
- これから伸びる市場で事業を行っている
- 追加投資が少なく拡大できるビジネスモデル
これを忠実に体現したのが、バフェットが保有するコカ・コーラだったわけです。
素晴らしいアイデアで急成長も、扱いが難しい「織田信長」
抽象的に考えてもなかなかイメージが湧きません。そこで、「理想の銘柄」を、企業のステージ別に戦国大名に例えてみました。
まだ成長段階前半の企業なら、探すべきは「織田信長」のような銘柄です。
信長が最初に名を挙げたのは、2万人の今川軍を5,000人で破った「桶狭間の戦い」です。ここでは、奇襲を仕掛けることで自分より大きな敵を倒しました。また、「長篠の戦い」では、国内の合戦で初めて鉄砲を導入し、武田軍を破りました。
政治面では、「楽市楽座」を開催して、商売を盛んにすることで税収を増やし、戦力増強につなげました。
このように、若い企業で大切なのは「アイデア」です。これまでになかった商品を投入することで、大手の間隙を縫って勝機を掴みます。この段階では経営者の考え方やアイデアそのものの優劣が鍵を握ります。
例えば、医療関係者向けポータルサイトを運営するエムスリー<2413>は、医師と製薬会社のMRを結ぶインターネットサービス「MR君」というニッチ市場を開拓し、やがてポータルサイト「m3.com」を軸に人材紹介などサービスを拡大させて来ました。
インターネット黎明期に、医療という今後も伸び続ける分野にいち早く参入することで圧倒的な「経済の堀」を築いたのです。一度開発したら、追加投資もほとんど必要のないビジネスです。まさに「理想の銘柄」に近いと言えます。

エムスリー<2413> 月足(SBI証券提供)
このような銘柄を初期段階で見つけるのが理想的ですが、そう簡単ではありません。なぜなら、若い企業は注目度が低く、十分な情報もないからです。
伸びてきた段階で気づいたとしても、多くの場合株価が割高になっています。エムスリーのPERも30倍を下回ることはほとんどなく、今現在でも65倍と非常に高い水準です。慎重な投資家としては、なかなか手を出せない水準です。
また、信長が「うつけ(馬鹿者)」と呼ばれていたように、若い成長企業の経営者はかなりの癖があるものです。今で例えるならZOZO<3092>の前澤社長でしょう。このような銘柄を「飼い慣らす」のは困難を極めます。