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キャッシュレス化を推進する日本政府の黒い思惑。仮想通貨リブラと銀行の全面戦争が始まる=高島康司

「リブラ」の出現

長くなったが、これが現在の状況だ。キャッシュレス化へと向かう各国の国内状況も、新しい決済通貨を望む国際的な状況も、安定した決済手段になり得るデジタル通貨の可能性を志向している。

そこにおもむろに登場したのが、フェイスブックが計画している仮想通貨「リブラ(Libra)」なのである。

発行予定の時期は2020年だ。フェイスブックはこれを発行するために子会社「キャリブラ(Calibra)」を立ち上げた。すでにキャリブラには「マスターカード」「ペイパル」「スポッティファイ」などのIT大手がすでにパートナーとなり、「リブラ」の発行を準備している。

「リブラ」は送金・支払い手段として機能することを目標にしている。ビットコインなどの既存の仮想通貨は価値の変動が激しいので、投機の対象になったとしても安定した送金・支払い手段として機能することは困難であった。これが既存の仮想通貨の問題である。

「リブラ」はこうした相場の大きな変動を防ぐため、価値を実物資産にリンクしている。それは、ドルや円、そして人民元やユーロなどの代表的な通貨とともに、金などの希少金属である。これはIMFが政府に与え、実質的に政府間のやり取りでは通貨として機能する「SDR(特別引き出し権)」に似たコンセプトである。「SDR」の価値は、ドル、人民元、ユーロ、円など、主要通貨を集めた通貨バスケットの加重平均で決定される。「リブラ」はさらにこれに金を加えたバスケットを作り、その平均価値とリンクするものと思われる。この方式だと、「リブラ」の価値は相当に安定する

「リブラ」はフェイスブックの子会社「キャリブラ(Calibra)」が提供する専用のウォレットとアプリを通して使われる。これはフェイスブックのメッセンジャーのような手軽さで使えるアプリで、メッセンジャーで個人間のメッセージの送受信を行うように、「リブラ」の送金と受け取りが可能になる。フェイスブックのメッセンジャーはすでに広く使われていることから、「リブラ」も問題なく受け入れられる可能性が高い。

25億のアカウント

そして、「リブラ」を他の仮想通貨から際立たせているのは、フェイスブックのアカウントの多さである。現在で25億アカウントだ。

この状況で使い勝手のよい「リブラ」が本格的に導入されると、他の仮想通貨の送金手段や、送金サービスが駆逐される可能性が高い。仮想通貨による送金・支払い手段としては、「リブラ」がシェアを独占することは間違いない。

そのような圧倒的なシェア率を持つ「リブラ」であれば、個人のみならず企業間の決済方法としても使用できる可能性がある。つまり「リブラ」は、国際貿易の決済手段として使えるということだ。

本格的に導入されると、ドルベースの「SWIFT」にとって代わるシステムにもなる潜在力がある。これは、「リブラ」が基軸通貨のひとつとなることを実質的に意味する。

もちろんそうなるには、国際金融や国際貿易に伴う多くのハードルがあるだろうが、そうした潜在的可能性が25億アカウントを持つ「フェイスブック」の「リブラ」にあることだけは間違いない。

Next: リブラは世界を変えるか?これから銀行・中央銀行との戦いが待っている…

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