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キャッシュレス化を推進する日本政府の黒い思惑。仮想通貨リブラと銀行の全面戦争が始まる=高島康司

なぜ日本をはじめ各国政府はキャッシュレス化を推進するのか?

日本でもそうだが、いま中国を始め各国ではキャッシュレス化の動きが加速している。日本でもスマホ決済によるキャッシュレス化を政府が促進している。

しかしながら、なぜキャッシュレス化を政府が推進しているのか、その理由がきちんと説明されたことはあまりない。もちろんそこにはさまざまな理由があるが、先進国で多い理由のひとつは、既存の銀行を守るためである。

それは、スウェーデン、フィンランド、スイス、デンマークなどキャッシュレス化がもっとも進んだヨーロッパ諸国の状況を見るとよく分かる。

どの先進国もそうだが、資本主義は成長の限界にきている。そのため各国の中央銀行は、成長を維持する必要から金利をとことん下げ、市場に資金を供給している。そして多くの国では、マイナス金利も当たり前の状況になってしまった。

理論上これは、借りた額よりも返済額が小さくなるということだ。もちろん、金利が利益の源泉である銀行としてはたまったものではない。マイナス金利下では、銀行経営は成り立たなくなってしまう

すべては銀行を救うため

そこでスイスやデンマークなどのヨーロッパ諸国の銀行は、預金口座に金利を付けるのではなく、逆に「口座管理費」として預金者から手数料を徴収するようになった。そうしないと、マイナス金利下では銀行経営は難しい。

一方、預金者としてはこれはたまったものではない。口座を開設すると、手数料を支払わなければならないのだ。

その結果、口座を閉鎖して現金を引き出し、自宅で保管する預金者が増えた。もちろん自宅で保管するのであれば、膨大な量になる少額紙幣ではなく、保管の手間がかからない高額紙幣にする必要がある。そのため、デンマークやスイスのような国では、高額紙幣と金庫に対する需要が大変に高まった。口座閉鎖のラッシュと現金自宅保管の流れである。

銀行にとってこれは危機的な事態である。マイナス金利と口座閉鎖で破綻する銀行も出てきてもおかしくない。

そうした銀行の救済策として政府が打ち出したのが、キャッシュレス化の方向性であった。

まず、高額紙幣の流通を禁止する。そして、モノやサービスを買うと、銀行口座の預金から自動的に引き落とされるキャッシュレスな支払い手段を強力に推進し、現金の流通を不要化する。

すると、国民は引き落としの必要性から現金を銀行口座に保管しなければならないので、口座の解約はできなくなる。これで銀行は破綻の危機から救われる

このような状況がキャッシュレス化の背景にあるとすれば、日本のキャッシュレス化の動きも、銀行を救うために預金者から口座管理手数料を徴収する準備だと見ることもできる。注意しなければならない。

銀行がビットコインを飲み込む日

こうした状況で、ビットコインのような仮想通貨の相場が安定し、支払い手段として使用できるようになればどうなるだろうか?

独自のウォレットで管理され、銀行の口座を一切介さない分散型の仮想通貨は銀行にとれは脅威となる。

しかし、キャッシュレス化が一般化した状況なら、政府が主導して銀行口座とウォレットを強制的に合体させ、銀行が管理するウォレットを通して仮想通貨を使うシステムも検討されるようになるはずだ。

仮想通貨が投機の対象にしか過ぎなかったときにはこのようなことは考えられなかったが、仮想通貨の支払い手段としての可能性が高まると、銀行による仮想通貨吸収という方向も考えられるだろう。

Next: ドル覇権はもう終わった?国際決済手段としての仮想通貨

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