生産年齢人口の減少と、都市力および地価
人口が減少するとき、ライリーの法則で示す都市力はどうなるか。減少率の2乗より、もっと大きく低下するでしょう。
既存の住宅が余って売り超になる環境では、住宅価格は大きく下がるからです。人口増で、建築供給力も増加して価格粘着性があると同時に、需要増以下に価格上昇は抑えられます。
生産年齢人口増のときは増加率の2乗に比例し、住宅以外の店舗も増え、オフィスも増えて、金沢のように不動産が上がります(ライリーの法則)。
生産年齢人口減のときは人口の減少率以上に、既存住宅の売り物件が増えて店舗、オフィス、公共投資も減って行き、既存住宅の価格下落は激しくなります。
数式で言えば、「(生産年齢人口の減少率の3倍)」くらいでしょうか。
日本全体の生産年齢人口は、2020年で7,341万人です。2060年は4,418万人です。国内消費は、生産年齢人口の総所得から、強制的に引かれる税と社会保険料(国民負担率42.8%:2019年)を引いた可処分所得から、お金を貯める貯蓄を引いたものに、移民とインバウンドの消費を加えたものです。消費税も当然、租税負担にはいります。
※参考:国民負担率(対国民所得比)の推移
つまり国内消費の未来は、移民またはインバウンド消費の急増がない限り、確定しています。消費税の増税の負の効果は、所得に対しては大きい。2014年に3%、2019年に2%上がりましたが、これで、実質所得は5%もマイナスしたのです(政府は、これを軽いものとして伝えています)。80%の世帯(4,000万世帯)の所得が減るなかで、5%のマイナスです。
ただし大きく言えば、生産年齢人口が4,418万に減った社会でも、広大な国カナダの生産年齢人口のまだ2倍です。日本が潰れると、案じる必要はない。人々の住宅が広くなります。レジャーを含み、生活は豊かになるでしょう。
もともと狭い国土の日本の人口は多すぎたので、狭い住居、狭い道路、混雑で、商店数と小さなオフィスも多く、「アジア的」でした。これが、シンガポール的ではなく、西欧的(特に、島国の英国的)になると考えておいて間違いはない。日本の40年後は、英国風でしょう。
人が減ると、人権への配慮が高まります。社会の集合的意識の変化が起こるからです。子供の虐待への激しい社会的憎悪、ブラック企業への非難は、子供が減ったことが根にあるものです。
1クラスに55人もいた時代は、いじめや教師の暴力があっても、本人の心理的な落ち込みは、今ほど深刻ではなかった。日本はお互いが1人1人を大切にする社会に向かっています。
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