ガートマン氏は弱気
デニス・ガートマン氏の別のコメントを見てみよう。ガートマン氏は、米国株市場の変調を指摘し、インフレとコモディティについてコメントしている。
「約3週間前にピークを打ったダウ平均を見ても、約3週間前にピークを打ったS&P500を見ても、約2週間前にピークを打ったナスダック指数を見ても、約3週間前にピークを打ったラッセル2000を見ても、DAX、日経平均でも同じだ。世界中の株式市場で何かが起こっている」としている。
ガートマン氏は株式市場の変調の要因として、FRBのバランスシート、新型コロナの状況、個人投資家の動向、大統領選挙の動向を挙げている。
そのうえで、「おそらく、FRBのバランスシートが過去2週間で縮小した事実なのだろう」としている。
FRBのバランスシートは、株価上昇へのモメンタムを与える要因の1つだったが、それがなくなった。事実、FRBのバランスシートはピークからやや調整している。そのため、ガートマン氏は「これは少し問題で、株価は下がると思う」としているのである。ガートマン氏は、米国株式市場を下落方向と予想しているようである。
また、インフレへの懸念を示唆している。世界中のほとんどの中央銀行がかつてない水準で拡張的な政策を採っていることが理由とみている。ガートマン氏は「現在、ポピュリストが台頭し、反グローバル化政策が採られている。今後数年のうちにインフレが上がり始める」と警戒しているのである。
イノベーションとグローバル化が進んだ1990年代以降、世界的にインフレは沈静化したが、それぞれの国が保護主義的な政策を採れば、イノベーションにもグローバル化にも妨げになりかねないといえる。その結果、インフレを抑止していたタガが外れる可能性がある。そうなれば、インフレは不可避になる。
ガートマン氏のように、1970年代を知っている世代からすれば、インフレを良いものだとは到底思えない。
1980年のインフレ暴発と金相場の急騰は、当時の市場を知らなくても、チャートを見れば何が起きたかは容易に理解できる。当時は銀相場が吹き上がっていた。
金と穀物に注目?
ガートマン氏は、現在の市場で金と穀物に注目すべきとしている。さすが「コモディティ王」である。金はすでに上昇し、穀物は豊作にもかかわらず底を打ちつつある。これがインフレの足音なかもしれない。
ガートマン氏は、金は1,800ドルが視野に入っており、さらに上がるかもしれないと予想している。ガートマン氏は、以前は弱くなりそうな通貨建ての金を推奨していた。例えば、ユーロ建てや円建てでの金投資を奨めていた。しかし、いまやドル建ての金投資を奨めている。
ガートマン氏は、「2年半ほどユーロ建てや円建てでの金投資にきわめて強気で、すばらしいトレード結果を出した。しかし、今はFRBの拡張的政策、大統領・上院が民主党に変わりそうなことを恐れている。そうなればドルに悪影響が及ぶだろう」としている。
一方、銀については、金と銀の比価を見ると、いまは金がきわめて高く、銀がきわめて安いと指摘する。
しかし、銀はあまりにボラティリティが高すぎるため、年齢が高くなった自身では取引するのは厳しいとしている。しかし、これは裏を返せば、トレードチャンスがあると判断していることを意味する。念頭に入れておきたいところである。