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米国株にピークの兆し。著名投資家とファンドが逃げ出し、大衆がトレードを始めた=江守哲

ポールソン氏はギブアップ

米著名投資家ジョン・ポールソン氏は、外部顧客から預かった資金の運用を停止し、ヘッジファンド会社のポールソン&カンパニーを私的な事業形態であるファミリーオフィスに転換すると発表した。

ポールソン氏は世界金融危機の前、過熱した住宅市場への逆張りで巨万の富を稼ぎ、一躍業界のスターとなった。まさにリーマン・ショックのときに一世を風靡した人物である。

しかし、最近では運用資産が縮小し、著名な従業員が退社するなど、業績も一本調子ではなかったようである。そのため、ファミリーオフィスへの転換は以前から予想されていた。

ポールソン氏は書簡で、外部投資家の資金は全額返金するとしたが、金額は明らかにしていない。また、市場での活動は続けるとしている。今年初めの時点で、ポールソン&カンパニーの運用資産は107億ドル。規制当局への届け出書類によると、ファンドの多くはポールソン氏自身が100%保有しており、すでに外部顧客の多くが離れていたことがうかがえる。

これまでにもカール・アイカーン氏、ジョージ・ソロス氏、スタンリー・ドラッケンミラー氏など、著名投資家の多くが外部投資家の資金を返還し、顧客に対する業績報告の重圧から逃れている。

ポールソン氏については、サブプライムローンの破綻に賭ける戦略で莫大な収益を上げたか、それまでは鳴かず飛ばずのヘッジファンドマネージャーだった。しかし、CDSの購入に賭け、それを数年間買い続けて耐えた。その結果、サブプライムローンが破綻し、なんとか収益を上げたのだが、それが想定以上の利益になったことで一躍有名になったのである。

いわゆる「一発屋」である。しかし、その収益の額が莫大だったため、その後のさえない成績でもまったく問題なくやっていけたわけである。

リーマン・ショック後は金に投資するファンドや、ファンドの通貨をドル建てではなく「金建て」で設定するなど、ユニークなファンドを立てていた。

また、その際にはUBSの著名金アナリストのジョン・リード氏をロンドンからスカウトするなど、相当力を入れていた。ちなみに、リード氏とは彼が移籍する前に彼のロンドンのオフィスで一度ミーティングを持ったことがある。190センチもある大柄な人物だった。いまどうしているのだろうか。

いずれにしても、著名なヘッジファンドマネージャーたちは、面倒な顧客との関係や運用方針の開示、また金融当局への報告など、煩わしい手続きから逃れたいと考え始めている。

高齢化すれば、さらにファミリーオフィスに転換しようするヘッジファンドは増えるだろう。こうなると、本物のヘッジファンドはどんどんいなくなっていくだろう。

もっとも、彼らのようなダイナミックなポジションを取るマネージャーも徐々に少なくなっている。また、投資家のニーズも変わってきている。時代の変化なのだろう。

ヘッジファンドは苦境

ヘッジファンド・リサーチ(HFR)が6月30日に発表したところによると、20年1〜3月期の世界のヘッジファンド清算件数が304件と、15年10-12月期の305件以来の高水準となった。19年10-12月期の198件からは50%の急増である。

新型コロナウイルスの影響で大きな損失が生じ、投資家が歴代4位となる計330億ドルもの資金を引き揚げたことが背景にある。

ファンドマネジャーは2月下旬から3月にかけての市場の変動に直面した。当時の投資家は、新型コロナの死者数や経済活動の停止、失業率の上昇を懸念し、一気に資金を引き揚げたようである。

一方、20年1-3月期のヘッジファンド新設件数は84件にとどまり、金融危機の08年10-12月期の56件以来の低水準だった。19年10-12月期は89件だった。

市場環境が良くないときにはどうしても新設件数は少なくなる。この数値は遅行指標であり、あくまで参考程度にしておきたいが、市場環境は良くないことは確認できるだろう。

Next: 米国株は引き続き堅調である。第2四半期は素晴らしい上昇となった。多く――

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