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神社本庁「コロナ禍の初詣」強行のウラ、金と権力の罰当たりな事実=原彰宏

百合ケ丘職員宿舎売却における「土地転がし」問題

<随意契約、三為契約の謎>

神社本庁は組織です。組織である以上、ものごとを決める機関があります。全国の神職などから選出される「評議員会」です。そこで総長や役員人事も含め、重要案件を決定します。

2015年10月、神奈川県川崎市にある職員用宿舎「百合ケ丘職舎」が売却されることが決まりました。当時の総長は今の総長である田中恆清京都府神社庁長・石清水八幡宮宮司です。彼は日本会議副会長でもあることは紹介のとおりです。売却先は、新宿区にある不動産「ディンプル・インターナショナル」で、売却額は1億8,400万円だったそうです。

ここから話がややこしくなっていきます。

売買日は2015年11月27日、神社本庁からディンプル・インターナショナルに百合ケ丘職舎が売却されたと同時に、地方銀行の別室で、東村山市の「クリエイト西武」に登記移転されていました。その書類には、しっかりと田中総長の印が押されています。一連の流れを当然田中総長は知っているはずでしょうが、百合ケ丘職舎売却を決めた神社本庁評議委員会は、このことは知らされていませんでした。

この事実を知ったのは翌年2016年5月の役員会で東京大神宮宮司松山理事が、財産処分に不審を抱いて指摘して初めて、評議員会メンバー全員が知ることになりました。

ディンプル・インターナショナルがクリエイト西武に売却した金額は2億円超だとのことです。

きれいな「土地転がし」ですね。「三為(さんため)契約:「第三者のための契約」の略称」と言う、禁じられた中間省略登記に変わる新しい手法と言われています。違法ではないが、地方銀行も関わる問題取引とされています。

この「違法ではない」という神社本庁の態度が、その後の不信に繋がります。

ここまでなら、神社本庁側が騙されたとの見方も取れますが、2016年5月に、「三為契約」で神社本庁の百合ケ丘職舎を手にしたクリエイト西武が、大手ハウスメーカーに3億円超で転売したのです。

神社本庁・・・川崎市の百合ケ丘職舎を売る
ディンプル・インターナショナル・・・神社本庁から職舎を買う(1億8,400万円)
クリエイト西武・・・ディンプル・インターナショナルから職舎を買う(2億円超)
大手ハウスメーカー・・・クリエイト西武から職舎を買う(3億円超)

ここまでが一連の不動産売買における事実確認です。

<百合ケ丘職舎は基本財産>

百合ケ丘職舎は神社本庁の「基本財産」です。基本財産とは「本庁永続の機関となる財産」と規定されています。その財産の売却には、それ相応の理由が必要で、やむを得ず手放さなければならない事情を明確にすべきです。

少なくても、手続きとしては随意契約(一社との交渉)ではなく「競争入札」です。少しでも高く財産を売るというのが役割のはずで、それが資産を守るということのはずです。ましてや不可解な取引があってはなりません。

神社本庁の土地は、全国各地の神社からの“上納金”が購入原資です。神社本庁の財産は、全国神社の財産とも言えます。この百合ケ丘職舎の売却は「随意契約」となっています。

そして、神社本庁は1億8,000万円で売却しましたが、転々としたこの土地は、最終的には3億円超で売られています。仲介手数料や利益を乗せるとは言え、1億2,000万円という評価の違いは何なのでしょう。基本財産目録に記載されている百合ケ丘職舎が、簿価ベースで土地建物合わせて7億5,616万円となっていたそうです。

同じようなことが、国を舞台にありましたよね。

「上納金」を「税金」に置き換えて見てみれば、国民の財産を近畿財務局が8億円も値引きして随意契約で売却した問題がありましたね。

百合ケ丘職舎売却の話が出た当初、随意契約に反対した人がいました。競争入札を主張した当時の神社本庁の財務部長は、大手信託銀行と話を勧めて「評価額3億円前後」と妥当売買額まで引き出していました。

実際に、「三為契約」において大手ハウスメーカーには、3億円超で売っていますね。ところが、実際の随意契約による神社本庁の売買額は1億8,000万円です。

これが承認された評議員会には、随意契約に反対した財務部長は、その場にはいませんでした。新しい財務部長が座っていました。随意契約を反対した財務部長は、更迭されたのです。後任の財務部長が「入札に至るまでの時間的制約により、随意契約的な内容で契約を取り交わした」と説明する「議事録」が残っているそうです。また「不動産鑑定評価書に示す価格(中略)など総合的に検討した結果、提示価格は適正の範囲内であると判断した」とも書いてあるそうです。

財務部長が変われば、トントンと話が進みました。時間的制約の根拠は、「時間経過とともに不動産価格は下がる」という理由だそうです。「ディンプル・インターナショナルに早く売らなければ損をしますよ」…随意契約で売買を急ぐ理由は、結局は結果ありきのこじつけの理由に聞こえます。

これもどこかで見聞きしたような…。森友学園問題は2016年、迫田近畿財務局局長時に契約が成立し、佐川財務局長が引き継いで実行、この間公文書は改ざんされ、正義感の強い一人の官僚が命を落としました。森友学園では、土地に瓦礫などのゴミが多くあって、その処理に8億1900万円かかるという算定がなされ、それが、8億円もの値引きの根拠となりました。

百合ケ丘職舎の不動産鑑定評価書は、購入者のディンプル・インターナショナル側が持ち込んだそうです。鑑定時同行者社員名記載で評価額1億7,500万円と書かれていたそうです。それが同日に2億円超で売られ、半年後には3億円超で売られているのです。「急がないと…」の説明がすでに崩れています。

上納金と税金。人間界と神道界で、ほぼ同時に同じようなことが起こっていたのですね。

<渋谷区代々木の高級マンション購入>

さて、ここで疑問が生じます。こんなことをして神社本庁側には何の得があるのでしょう? その答えが、「渋谷区代々木の中古高級マンション購入」……何じゃそりゃです。

神社本庁が危機管理用に購入した新たな職舎だそうですが、入居予定者には「ディンプル・インターナショナルに早く売らないと損をするよ」と主張して話を勧めていた神社本庁幹部2名、当時の総務部長と当時の秘書部長の名前がありました。この取引の後に、総務部長は宇佐神宮宮司に栄転、秘書部長は総務部長の後釜についています。

森友学園問題に関わった近畿財務局の局長たちも、みんな栄転していましたね…。

宇佐神宮と言えば、全国八幡神社の頂点です。総務部長が宮司になった後、宇佐神宮では人事をめぐる裁判沙汰が起こることになります。「宇佐神宮の伝統を守る会」から退任を求める署名を突きつけられることになりますが、その話は後述します。神社本庁離脱神社続出の火種のもう1つ、「人事介入」問題ですね。

批判があったのか、渋谷マンションは、秘書部長の1戸だけが購入されました。その価格は7,620万円、高級物件です。

<異議を唱えた人は処分されている>

百合ケ丘職社売買決済がなされた2015年の翌年の役員会や評議員会で、「安く売り過ぎているのではないか」という質問が出るようになりました。

それを問題視した当時の総合研究部長の稲貴夫氏が独自調査をして、その結果を踏まえて、2016年12月、「檄」と題する文書にまとめて懇意の2人の役員に渡したところ、犯人探しが行われ、「情報を漏えいし、疑惑を外部に広めた」として、解雇されました。随意契約を批判した財務部長は、平職員に降格されました。

稲貴夫氏は、百合ケ丘職舎不正取引を訴えたことで懲戒処分を受けたことを不服として神社本庁を訴えています。和解協議は不成立となり、来年3月に判決が言い渡されることになっています。

また、この不正土地取引をめぐり、日吉神社(愛知県清須市)の三輪隆裕宮司は、神職や一般人34人と神社1法人それぞれが、神社本庁の田中恆清総長を本庁の資産に瑕疵を生じさせたとして背任罪で東京地方検察庁に刑事告発しました。ただ告発は受理されたものの、その後不起訴処分になっています。このうち三輪宮司は、捜査が不十分として東京検察審査会に不服を申し立てています。

百合丘職舎売却は、法人の財産を保護、管理すべき総長の役に就く田中総長が特定の不動産業者の利益のため、本庁に損害を与えた背任の容疑だと訴えています。

体制を批判すると任命されない・排除されるというのは、これもどこかで見た風景ですね。

<キーワード「お友達」>

一連の「三為契約」を考えると、神社本庁が土地を売る相手はディプル・インターナショナルでないとダメなことがわかります。絶対に「随意契約」でディンプル・インターナショナルに売却しないと、成り立ちませんからね。

ここで、再度、登場人物をおさらいしてみましょう。

神社本庁・・・問題となっている川崎市の百合ケ丘職舎を売る
ディンプル・インターナショナル・・・神社本庁から職舎を買う(1億8,400万円)
クリエイト西武・・・ディンプル・インターナショナルから職舎を買う(2億円超)
大手ハウスメーカー・・・クリエイト西武から職舎を買う(3億円超)

でも、登場人物はこれだけではありません。百合ケ丘職舎を売る判断をした評議員会の決議を了承し、かつ、売買契約に「はんこ」を押した神社本庁側の人物がいます。神社本庁総長の田中恆清氏で、京都府神社庁長の石清水八幡宮宮司でもある人物です。

ディプル・インターナショナルからクリエイト西部に登記移転する書類には、
権利者・丙  株式会社クリエイト西武
義務者・甲  神社本庁 代表役員 田中恆清
義務者・乙  株式会社ディンプル・インターナショナル(当該物件の売買契約の買主)
となっていて、神社本庁の公印が押されています。

一連の取引の流れを、田中総長が知らないということはないでしょう。むしろ指示をした方ではないでしょうか。

さて、この一連の不動産取引に関するキャストはどのように選ばれたのでしょう。当然、深い関係でないとできない芸当です。

森友・加計学園問題でも「お友達」というのがキーワードとして出てきていました。神道の世界でも、人間界と同じような構図が見られるようです。

<土地転がしで利益を得る「お友達」たち>

ディンプル・インターナショナルの会社所在地には、もう1つの会社があります。「日本メディア・ミックス」という季刊誌「皇族」の委託販売をしている会社で、この一連の問題が起こったときの社長は、ディンプル・インターナショナル高橋恒雄氏が就任していました。

現在は、「ベストオンアース」と社名を変え、新宿のディンプル・インターナショナル事務所から出て千葉県船橋市に移転しています。社長も変わっているようで、「神社に特化した総合広告代理店」として営業しているようです。

そこまで神社界に食い込めたのは、なぜでしょう。

「日本メディア・ミックス」の創業者は日本レスリング協会会長の福田富昭氏で、そのあとに高橋恒雄ディンプル・インターナショナル社長が、日本メディア・ミックスの社長になっています。高橋氏は、福田氏のレスリングの後輩です。福田氏は一時、日本文化興隆財団の理事をしていました、日本文化興隆財団は、神社本庁の外郭団体で、ホームページには「神社界と総代会との連携の中から生まれた財団」と紹介されています。現在「皇室」という雑誌は、日本文化興隆財団が取り扱っていますが、そこの理事に神社本庁の田中総長や、神道政治連盟の打田会長の名前があります。

ここで登場するのが、「神道政治連盟」です。新しい名前が出てきましたね。「政治」と名前にあるのでどうも日本会議と同じような匂いがしてきますね。

神道政治連盟(神政連)会長は打田文博氏(静岡県小国神社宮司)で、神社本庁の渉外部長を務めていて、神社本庁田中総長とは盟友です。先程の「日本メディア・ミックス」の創業者は日本レスリング協会会長の福田富昭氏と打田文博氏は昵懇の仲です。

福田富昭氏は、レスリング世界選手権優勝者という経歴があり、神社界でビジネスを行うための人脈づくりで「神社界の裏のドン」と呼ばれる打田文博神道政治連盟会長に接触、打田会長が宮司を務める小國神社行事に、吉田沙保里選手や伊調馨選手などの有名レスリング選手を派遣するほどの関係になっていました。

ここで、神社本庁とディンプル・インターナショナルが繋がりました。

2000年からディンプル・インターナショナルは日本文化興隆財団を通じて神社本庁との取引が行われ、今回の、契約同日売却ということも、宇佐神宮に栄転した当時の小野財務部長とは経験済みだったのです。

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