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円大暴落を招く日銀債務超過の危機目前。「円安地獄」で沈む日本から脱するためのポートフォリオ=吉田繁治

円安で、円の給料、年金、預金の価値が低下

円安は、世帯がもつ円預金の価値が下がっていくことです。

130円台の円安で、22年秋は一層物価が上がるのが日本でしょう。

所得と金融政策が打てない政治の物価対策では、消費税5%の暫定的減税しかない。日本はインフレ貧困に向かっています。

1990年以降の30年間の物価上昇は、1989年に3%、1997年に2%、2014年に8%、2019年に10%に上げてきた消費税です。消費税は、商品価格であり物価の構成要素です。消費税がけなければ1990年から2020年の30年間の物価上昇率は、0.4%付近でした。

1990年の物価指数は87、2020年が100、30年で物価は14%上昇しています。このうち、消費税が10%部分を占めています。このなかで世帯の平均所得は、減り続けたのです。
(物価指数:1970~2022)。

※参考:日本の消費者物価指数の推移-世界経済のネタ帳

米国・欧州と日本の賃金の上昇率の差

米国では、現場労働の不足からコロナ後の時間賃金が5%、欧州では4%上がっています。米国で8%、欧州で7%物価が上がっても、世帯の実質負担は3%増加です(実質賃金はマイナス3%)。

コロナ後の賃金が上がらない日本では、3%の物価上昇が世帯の増加負担3%になります。実質賃金は、米欧のマイナス3%と同じです。
 ↓
世帯所得から見れば、米国物価の+8%、欧州物価の+7%が、日本の消費者物価3%上昇と、見合っています。

日本の2%~3%という物価上昇は、上がらない所得との負担感では、岸田首相が言うようには「低くない」。

人間は、自分の所得を基準にして商品価格を判断するからです。10%所得が上がれば、5%の物価上昇の平気です。

1973年の第一次石油危機のときは、日本人の賃金は30%上がったので、狂乱物価もトイレットペーパー騒動にしかならかったくらい、平気なものでした。

価格が上がった食品が買えないという世帯は、なかった。
ところが2022年には、非正規雇用で2人の所得が300万円以下の、1/3くらいの世帯(単独を含む1500万世帯)で、「上がった食品が買えない」という事態が秋から起こるでしょう。

経済的な、日本脱出の奨め

本稿は「経済的な日本脱出の奨め」です。賃金は上がらす、賃金の預金の円も、日銀が金利を上げるか、米国に景気減速が起こって、FRBが利上げを停止しないかぎり、下がります。
日銀は、国債の金利を0.3ポイント上げる利上げすらできない。

原因は、1,200兆円の、ゼロ金利の国債残です。借換債を含むと、毎年200兆円から250兆円国債を、新規に長短平均金利0%で発行し続けなければならない(日銀と政府財政を、同時に破産させないためのゼロ金利です)。

ゼロ%から0.3%が上限の超低金利は、政府財政が破産するときまで続きます。

円安から1年100兆円の物資の輸入物価が上がります(22年4月は+44.6%)。一方で日本の収入になる輸出物価の上昇率は低い(同年同月:+17.3%)。

日本はこのため、構造的な貿易赤字国(10兆円~15兆円)になってしまいました。

貿易赤字の分、

・円売りは10兆円から15兆円が超過します
・日米の金利差(スプレッドは現在3%)

に加えて、円安の要素になるのです。

ドル国債には現在でも3%の金利がつきます。円国債では、10年債以下はマイナス金利で、10年債の上限も0.25%しかない。銀行預金の金利は0%です。

日本の輸入はエネルギー、資源(肥料も含む)、食糧、機械・電子部品であり、産業と生活の必需な基礎物資です。経済に必需な物資は、価格がいくら上がっても、輸入量の削減ができない。

車や衣料のような商品なら、価格が上がれば需要を減らすことで対応ができますが、エネルギー、資源、食糧、電子部品は価格が上がっても減らせない。生産量が減るからです。

輸入物価を上げる円安は、明治以来の、近代化成長の国家戦略だった加工貿易のアキレス腱です。

通説とは逆ですが、円レートの事実を見れば日本は1ドル=360円(1970年)から79円と、4.5倍の円高(1995年)になっていくなかで、企業が米欧に勝つ高品質・高機能の商品を作って、コストダウンし、日本経済を成長させてきたのです。

ところが、2013年以降は、500兆円の異次元緩和を原因にして、120円台の円安になったあとは、海外から見れば下がった旅行費(旅費、宿泊費、商品)を売るインバウンド観光の呼び込み(5兆円:GDPの1%)しかなくなってしまいました。

物価が安い日本観光は、世界の1番人気になったという。

安売りされる日本の商品と文化にとって、不名誉な1位です。

アメリカではビッグマックが669円、中国では442円、日本では390円です。ビッグマック氏指数は、購買力平価で使われます。1ドル=135×390÷669=79円が均衡点です。79円のレートは1995円と、アベノミクスの前の2010年代でした。

1ドル=135円と円安の日本は、先進20か国で、もっとも物価が安い国になっています。ゼロ金利+量的緩和での円安が、行き過ぎていること、10年間のアベノミクス(円を500兆円増刷)で、円の価値がもっとも下がったことを示します。円安がいいと、誰が言ったのでしょう。

※参考:世界のビッグマック価格ランキング-世界経済のネタ帳面

逆に、物価が世界1高くても(日本の約2倍)、観光人気が高いのがスイスです(ビッグマックは、日本の2.3倍)。

スイスの、オーディオの名器とされるFMアコースティックのアンプの価格は500万円から2500万円です。これが現代の世界水準、比較すればフェラーリも安い。

ソニーが、100万円や200万円で、同等品を作るべき商品でしょう。旧式の、FMプリアンプのコピー機を、3台使っています。不安でしたが、鮮烈、みずみずしい山間の清流のような音は、群を抜いています。電子部品が厳選されているという。世界水準の経済は、円だけを増刷した、30年の円安の日本とは異次元になっています。日本の生産技術が世界1というのは、玉手箱のような昔話でしょう。
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17470721

日本も、物価が高くても観光人気が高い国でなれければならない。(注)30年前の1990年までは、日本の物価は米国の約2倍でした。

Next: 日本に住みながら「円安」地獄を脱出する方法

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