投資家の「妄想と期待」はすべて消失した
先日の、28兆円の経済対策に関する報道を受けての円相場の動きでもわかるように、直後は円安に反応しましたが、1日もしないうちに報道前の水準まで上昇してしまいました。
それは、7月参院選で与党が圧勝してからの円安を支えてきた妄想や期待が一つ一つ剥がれてきたからです。
本日の会合で追加緩和を決めた理由がBrexit(英国のEU離脱)に伴う国際情勢の不透明さであることでも判るように、今の国際金融情勢は決してリスクオンではありません。資本市場が不透明になったり混乱する際は安全資産需要が高まるので、今のような地合は円やスイスフラン、ゴールドが買われやすいのです。
にも関わらず、この3週間ほど円相場は円安に振れているのは、様々な期待や妄想で「円を買うのが怖い」と思わせてきたためです。参院選後に安倍首相が大型経済対策を指示した以降、ヘリマネや50年債を発行して日銀が引き受けるなど円売り材料となる報道が相次ぎました。
これらのうちの多くはあまりに非現実的なので、期待というより妄想に近い話だったのですが、究極の通貨安政策といっても良い中央銀行による国債引き受け説が市場に流れ続けていたので、この3週間、経済対策期待もあり円相場は円安気味に推移していました。
しかし、ヘリマネも広義のヘリマネも50年債も永久国債も否定され、通貨安に繋がる経済対策のための赤字国債発行も行わないと言明され、挙句の果てに経済対策は28兆円という「盛りに盛った数字」が出てしまったことで、立て続けに出てきた円売り材料も出尽くし感が漂ってきたのです。
先日概略のみが先行的に発表された経済対策は、ヘッドラインは28兆円と威勢が良かったので円は急落しました。しかし、財政措置は13兆円と従来の10兆円よりは多いものの、多くは複数年度に亘る事業で、GDPに寄与する真水部分は5兆円程度になりそうだと直ぐにばれてしまいました。真水5兆円だったら、今年4月の熊本地震直後に災害対策で大型補正を行うと政府が言ったときの対策と事業規模は変わりません。
大型経済対策による財政悪化で円売りになるというシナリオも消えたので、円を買いたい投資家にとって最後のリスクが本日の日銀によるアクションでした。
コンセンサスはETF買い入れだが、もしかしたらヘリマネ級の新手の円売り政策を出してこないか?国債買い入れを大幅に増額しないか?という不安があったので、円買いに歯止めが掛かっていたのです。
しかし、日銀のアクションが想定通りだったため、安心して円が買われたのです。
つまり、本日の日銀政策決定会合で、参院選以降売り材料になっていた金融政策や財政政策の妄想や期待は全て消失したのです。姿が見えないから怖いのであって、姿が見えてしまい、それが円相場に何の関係がないETF買いでしたら円を買うにあたっての政策リスクは無いに等しいのです。
これが、本日の日銀政策決定会合で追加緩和が発表された直後から円が急伸した理由です。
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