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トランプ大統領に翻弄される日本市場、15年で一番の夏枯れ相場はどう動くのか?=山崎和邦

FRBの利下げと歴代FRB議長の評価

7月末のFRBのFOMCは政策金利を10年半ぶりに0.25%引き下げた。そして来年は据え置かれる、というのはFOMCの見通しの多数意見であった。

トランプはアメリカ大統領としては異例中の異例で、FRBに金融緩和を露骨に迫るという政治介入を繰り返してきた。また、トランプの信任を得てFRB議長に就任したパウエル議長はあたかもトランプの意向を忖度するかのように年末の発言を年初で180度転換した。これは「柔軟な政策対応」か、または「トランプの政治介入への忖度」か、見方の別れるところであるが、後者ならば時間を経るにしたがってFRBの信任は薄まって行く。目先は利上げを喜んだ市場も中長期的にはFRBの信任を弱めていく。果然、利下げ発表後、NY株は大幅に下がった。材料出尽くし感と、利下げ期待の短期相場の賞味期限切れだろう。

レーガン大統領時代に決然としてレーガンに対決したFRB議長はポール・ヴォルカー(以下、ボルカーという)だったが、ボルカー退任後30数年を経ても未だに「ボルカー・ルール」と言われるものは証券市場に根付いているし、退任から約30年後に出た彼の伝記は「伝説のFRB議長、ポール・ボルカー」というタイトルの本であった。あのレーガンにさえ盾突いて強烈な信念でインフレを収めた身長2mの大男であり、歴代のFRB議長の中で「名指揮者」「神の手」と一時は市場からはやされたグリーンスパンと対峙して、退任後30数年後も「伝説のFRB議長」となったのはレーガンの言うことを聞かなかったポール・ボルカーFRB議長だった。

かくてレーガンさえも思う通りにならないFRB議長に対する市場の信任と尊敬は熱いものとなり、彼の生んだ「ボルカー・ルール」という金融市場の規制は重んじられてきた。この、ある意味で伝説のボルカーとそれと対峙するグリーンスパンは実務家出身者として名を馳せ、その後任のバーナンキとその後任のイエレン女史は学者としてきめ細かく市場との対話を重視し、中立の立場でFRBの本来の二大使命(通貨価値の安定と雇用の拡大)のために市場との対話を重んじながら手を打ってきた。それに対してパウエル現議長に対する評価は未だ定まっていない

仮にFRBが利下げを実施した後に米国経済が活況を呈した場合でも、それは「予防的利下げの政策判断ミス」ではなくて、「米国経済の悪化を避けられて安定を維持できたのだ」と自画自賛の説明をすることができる。

米国経済の安定を維持している中での利下げについては、拙速な措置だとして一部に批判も多い。筆者もそう思う。そういうことをした後はロクなことはないということは本稿でも既述した。1980年代後半の日本と1990年代のアメリカである。前者は、平成バブルでその崩壊は株価を5分の1にまでして20年デフレをつくった。後者は、アメリカを中心にITバブルの崩壊を生んだ。

迫られる日銀の試練──苦境に立つ黒田総裁

FRBが31日に10年半ぶりの利下げを発表した。これはリーマンショック以来10年半ぶりの利下げへの転換である。ECBも遠からず利下げに踏み切る。一方日銀の緩和余地はほとんどノリシロがない。この状態での米欧の緩和は日銀に試練を課す結果となる。

黒田総裁が現状政策を維持する一方、追加緩和について踏み込んだ発言をした背景には米欧中央銀行の緩和競争に遅れていると見られたくないという思惑がある。と言っても、既にマイナス金利になっている日銀の緩和余地は非常に乏しい。

一昨年12月に筆者と国際ジャーナリストの嶌信彦氏らとまぐまぐ主催のパネルディスカッションを行ったが、その席で基調講演を引き受けたのが筆者だった。その基調講演で筆者は「英雄の末路憐れむべし」として昨年までは英雄視されていた日銀総裁が将来は大きな試練を強いられ、その先は国財扱いされる恐れがある。英雄は常に悲劇で終わるものだと述べたことがあった。今、その時期に差し掛かりつつある。円高圧力を強く警戒し、と言って利下げの余地は乏しい、これが日銀の現状である。

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