そこで消費増税となった
政府は消費税の特徴として以下の3つを挙げている。
1)負担を分かち合う
2)税収が安定的
3)経済活動に中立的
この3つを検証する。
1)負担を分かち合うのだが、低所得者への配慮から、軽減税率を導入する。標準税率は10%に引き上げられるが、(酒、外食を除く)飲食料品と、(定期購読契約され週2回以上発行の)新聞は、軽減税率として8%のままに据え置かれる。飲食料品の細かな線引きは、前述の参照ページ「社会保障制度とその財源について」をご覧いただきたい。
2)所得税は所得に、法人所得税は企業の利益に課す税金なので、税収が経済動向に左右されることは避けられない。一方、消費税は売上に課す税金なので、所得が増えようが減ろうが、また、企業利益が黒字であろうが、赤字であろうが、「安定して」国庫を潤すことになる。
これは企業側から見れば、実質的な売上が、消費税率分だけ減ることを意味する。つまり、10月以降は売上から、消費税10%、売上原価、販売費・一般管理費、営業外収益・費用、特別損益を差し引いた後に、法人所得税を支払うことになる。そして残ったのが当期純利益で、配当などの原資となる。
これで、本当に「3)経済活動に中立的」なのだろうか?
1989年度の消費税導入以降、日本経済は経済規模(名目GDP)で前年比マイナス成長だった年が7回ある。一方、消費税収はこの期間も確かに安定している。しかし、景気減退期にでも一律で国庫に一定額を納めることが、経済活動に中立的だろうか?
名目GDPの成長率を見ると、1990年度をピークに日本経済は急速に減速し始め、5%に引き上げた翌年の1998年度にはマイナス成長に陥る。以降2012年度までの15年間は基本的に低迷する。
実際、名目GDPのピークは1997年度で、統計方法の見直しで30兆円上乗せした2016年度まで更新できていなかった。
消費増税でむしろ税収が減る
また、政府の総税収のピークも1990年度だ。税収増を狙って消費税を導入したはずなのに、所得税や法人税などの他の税収が大きく落ち込んだために、むしろ総税収が減ったのだ。
1990年度の税収が60.1兆円、その後7年間は50兆円台を維持するが、1998年度から2013年度までで50兆円を超えたのは、2000年度の50.7兆円と、2007年度の51.0兆円の2回だけだ。2009年度などは38.7兆円しかない。
これで分かるのは、消費税と、所得税、法人税とはトレードオフの関係にあり、あちらを立てれば、こちらが立たないのだ。