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いざ日経平均4万円へ!安倍辞任は株高の始まり、世界の終わりは宴の後で=矢口新

2回の消費増税を「功績」と呼ぶ安倍政権

アベノミクス下の景気回復期間は71カ月と、戦後最長とされた「いざなみ景気(2002年2月〜2008年2月)」の73カ月にあと2か月に迫る長さだった。もっとも、どちらも景気が落ち込んだところからゆっくりと回復しただけで、殊更に長さを強調する意味を見出せない。そこで、労働市場や経済規模の数値を見てみる。

異次元緩和直前の2013年3月に4.1%だった失業率は直近今年の6月に2.8%に低下した。0.86倍だった有効求人倍率は1.11倍と、大きく改善した。その一方で、今年5月の従業員1人当たり平均の現金給与総額は26万9,341円と、2013年5月の26万7,567円と、ほぼ横ばいだった。ちなみにボーナスを含む6月では今年が44万3,875円と、2013年の43万3,568円から1万円ほど増えた。このように所得はその前の10数年間同様一向に増えず、労働生産性も低いままなのだが、それを差し引いても労働市場は改善したと言っていいだろう。

また、経済の規模を測る名目GDPは、2012年度が494.4兆円だった。これがこの4−6月期には年率で506.6兆円となった。もっとも、これはコロナ禍で縮小した後の数値だ。実質GDPでは3四半期連続のマイナスで、2019年10−12月期に9.7兆円減、2020年1−3月期に3.2兆円減、4−6月期が41.1兆円減で、485.1兆円となった。

ここで注目すべきなのは、2019年10−12月期に9.7兆円減と、コロナがなくても経済が縮小していたことだ。悪化要因は消費増税だ。

消費税と経済成長 出典:財務省

消費税と経済成長 出典:財務省

安倍政権の功績としては、消費増税を2度実現できたことだとされている。もっとも1度目は民主党野田政権中に決定していたのだが、在任中に2度も消費税率を引き上げたのは安倍首相が初で、財務省幹部は「首相の最大のレガシー(政治的遺産)は2度の消費増税だと思う」と指摘しているという。

しかし、どうしてこれが功績と見なされるのだろうか?日本経済を再生するはずのアベノミクスをほぼ台無しにしてしまったのが消費増税だからだ。

安倍首相が全身全霊を傾けてきたのが景気回復ならば、在任中に2度も消費税率を引き上げたのは何故だろう。増税は景気の過熱やインフレを抑える手段なので、首相の狙いが景気回復なのか、デフレ進行なのかの真意が読めないのだ。

消費増税は少子高齢化社会の社会保障費の財源という神話については後述する。

上記の図の青い棒グラフは名目GDPの絶対値の推移で、挿入の赤い棒グラフはその前年比での推移だ。

青い棒グラフで見ると、3%の消費税率導入後も経済は拡大しているが、赤い棒グラフの前年比で見ると、翌年度から拡大ペースが減速しているのが見て取れる。そして、5%に引き上げ後は青い棒グラフで見ても、赤い棒グラフで見ても分かるようにマイナス成長となる。いざなみ景気はそうした落ち込んだところからのゆっくりとした回復だ。

とはいえ、戦後最長の景気拡大をもってしても、5%の消費税率を導入した1997年度の経済規模を回復したわけではない。1997年度の名目GDPは533.4兆円だった。そして、それがその後19年間の最大規模だったのだ。

2016年度に計算方法の改定で30兆円上乗せし、536.9兆円とようやく過去最大の経済規模に成長できた。計算方法の改定は現状の経済の実情に合わせたものだとされたが、公文書の改ざんや黒塗りが当たり前の政府となっているので、本音は分からない。

ちなみに直近2019年度の既報値は552.6兆円で、30兆円を引くと522.6兆円と、戦後最長と2番目に長い景気拡大を合わせても、未だに1997年度の経済規模を更新できていない。

名目GDPの事実上のピークは1997年度 出典:財務省

名目GDPの事実上のピークは1997年度 出典:財務省

上記の図で見ると、消費増税の時期と、景気減速や景気後退入りの時期とがピタリと重なるのだが、それでもアジア通貨危機やリーマン・ショックなど、海外要因のせいだとする人々がいる。

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