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いざ日経平均4万円へ!安倍辞任は株高の始まり、世界の終わりは宴の後で=矢口新

もう日本の税収は増えない

では、日本の財政はどうしてこうも悪化したのだろうか?

前頁のワニの図でも分かるが、1990年度時点の財政赤字はさほど大きくなく、国債発行も6.3兆円と、今年の7%で済んでいた。実はこの年までは税収が順調に伸びていたのだ。

1990年度の税収は60.1兆円とその後20数年間のピークとなった。次に60兆円を超えたのは2018年度で、60.4兆円と、0.3兆円だけ過去最大を更新した。2019年度は下図では60.2兆円とされているが、58.4兆円に下方修正された。今年度2021年3月期は図では63.5兆円となっているが、もはや夢物語だと言ってよく相当落ち込む見通しだ。もしかすると、日本の総税収が60兆円を超えたのは、1990年度と2018年度の2回だけの、今後永遠のダブルトップになるかもしれない。かもしれないどころか、今の税制のままだと、その可能性が非常に高いのだ。

総税収と主な内訳 出典:財務省

総税収と主な内訳 出典:財務省

上の図の棒グラフは総税収。赤の折れ線グラフは所得税収。黒の点線の折れ線グラフは法人税収、黒の実線の折れ線グラフは消費税収だ。なるほど、消費税は安定財源で、税率を上げる度に税収は増えている。しかし、前述のように景気は悪化し、所得税収も法人税収も減っている。そして今では、消費税が最も大きな財源となっているのだ。

これで見ると、消費税と、成長率、所得税、法人税は、あちらを立てればこちらが立たずのトレードオフの関係にあることが分かる。このことは、逆に消費税率を引き下げれば、他の3つが上振れすることを示唆している。

1989年の消費税の導入は、実は法人税率の引き下げとセットになっていた。私はなぜ法人税率を引き下げたのかが分からない。なぜなら、法人税率を下げても景気は良くならず、財政は悪化し、ご存知のように日本企業の競争力も下げ続けたからだ。

法人税率の推移と経済成長 出典:財務省

法人税率の推移と経済成長 出典:財務省

法人税率の引き下げで確実に起きたことは、法人税収の減少だ。下の図の棒グラフを見ても分かるが、1990年3月期に19.0兆円あった法人税収は、売上高純利益共に過去最高を更新した2018年3月期には12.3兆円と、35%も減っていた。

この棒グラフと、税引前当期純利益を表した黄色の折れ線グラフを合わせて見ると、利益が減った時に税収が減るのは当然だが、利益が急増しても税収の伸びは鈍く、逆に税収が減ることもあることが分かる。

このことは今後景気が回復しても、企業利益が増えても、法人税収は伸びないことを強く示唆している。あえて強調するならば、日本政府は企業からの税収に期待することを止め、個人の消費税だけに期待することにしたのだ。

企業優遇、個人冷遇の安倍政権。税制が日本を破壊した

それで景気が悪くなり、総税収も減り、おまけに企業の競争力さえ低下したのだから、1989年の税制改革は、日本を弱めるためのものだったことになる。

企業利益と法人税率、法人税収の推移 出典:財務省

企業利益と法人税率、法人税収の推移 出典:財務省

消費税が社会保障費の財源となるというのは限りなく神話に近い。過去20年ほどの財政赤字幅は概ね30〜40兆円で推移してきた。2020年度は100兆円を超えてくる見通しだ。消費税率10%での税収は多くても20数兆円止まりだ。しかし、その20兆円を得たために、成長率、所得税収、法人税収を犠牲にし、かえって総税収が減るリスクを冒してきた。

この税制のままでは、日本は破滅する。

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