米大統領選の勝者は、今回も「中国」になりそうです。トランプ政権での4年間を振り返れば、前回も中国が勝者だったと言えるでしょう。バイデン次期大統領は、中国の覇権を阻止できるのかを問われる4年間となりそうです。そして問題は、日本がさらに存在感を失い、世界の中で埋没していくことです。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年11月9日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
「今回も」米大統領選挙の真の勝者は中国
「今回も」と書きましたが、この4年間を振り返れば、前回の大統領選挙「トランプ氏 vs ヒラリー氏」での勝者は、トランプ大統領ではなく、中国だったのではないでしょうか。
前回の大統領選挙の勝者が中国だとすると、今回の選挙の勝者再び中国となるのかどうかが問われるような気がします。
民主主義 vs 一党独裁の社会主義
資本主義 vs 中国統制経済
トランプ大統領が登場したことで、民主主義や資本主義が抱えている問題点を、中国との対立構造によって表面化したのではないでしょうか
トランプ大統領は、「アメリカ・ファースト」を掲げて、世界秩序よりも自国中心主義を貫きました。
世界のトップリーダーであることをやめ、アメリカが儲かることを、外交も何もかもビジネスディールとして長期視点よりも目先の利益優先で判断してきました。世界観の欠如から、事あるごとに、世界のリーダーであることの資質が問われました。
その間隙を縫って、中国が世界のトップの座を伺うような行動に出てきたのです。トランプ大統領の登場が、中国台頭を許したとも言えます。
次世代通信インフラ競争では、圧倒的に中国がその通信網拡充により有利となり、AI技術、ロボット技術の進歩は、中国がかなり先行しています。
中国の長期計画による富国政策として、以下があります。
・「千人化計画」による全世界の頭脳を呼び戻す
・国内の圧倒的なデータ量によりAIを教育する
・積極的なロボット技術の実装実験
これに加えて、
・東南アジアへの借金外交
・アフリカ進出
・欧州諸国に中国マネーを輸出
などにより、着々と、圧倒的資金力で世界を制圧していきました。
いつもなら米国がこの中国の動きを牽制するとことを、自国優先のトランプ大統領登場により、中国が台頭できる「隙(すき)」がたくさん生まれたのです。
「トランプ大統領が世界の秩序を変えた」と言われますが、それは、米国が世界を引っ張るという意味での秩序ではなく、それまで発展途上国と自称していた中国が、世界のリーダとなるための力を蓄えるきっかけを与えたという意味での「秩序を変えた」です。
欧州の「米国離れ」加速。日本は埋没していく
中国だけでなく、欧州が米国離れをおこしました。
イラク戦争では米国に追随していた英国がEUを離脱します。その英国も、米国とは距離をおきながら、まだ迷いはあるものの、EUから独立する背景には中国と手を結ぶことで生き残りをかけているようにも思えます。
そして欧州が、米国や日本と距離をおくことで、中国という大市場と手を組むことを模索し始めているようにも思えます。
トランプ大統領は独自路線と言いたいのでしょうが、世界的に見ては孤立していき、米国に唯一ついていく日本という構図になっていて、欧州などは、日本の安倍首相にトランプ大統領の首に鈴をつけてもらう、いやむしろ安倍首相は率先してその役を引き受けたような気もしますね。
この間、日本は長期ビジョンを持たず、ただただ米国に抱きつく外交に徹し、中国の発展を横目で見るだけでした。
そのトランプ大統領が4年で大統領の座を降りることになり、果たして日本は米国と中国の間で、どうやって生きていこうとするのでしょうか。
「埋没する日本」このフレーズが、どうしても頭から離れないでいるのですがね。