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米国は30%の株価の下落、日本は長期国債価格24%で金融危機に陥る…その背景とは?=吉田繁治

見方の問題

1990年からの資産バブルの崩壊に、その後のGDPゼロ成長(30年!)の原因を集約してしまったのです。冷戦の終結から始まるものではなく、終わるものを見ていたことになります。

われわれは、時代変化によって始まるものに焦点を当てねばならない。次回のドル危機のあと、2~3か月目から上がる金価格についても、同じことがいえます。本稿ではそのメカニズムを述べますが、米国では「株価下落→ドル危機→金融危機→金価格上昇」になります。

関税が上がると、グローバル・サプライチェーンが分断されます。中国からは、工場の国際移動になるでしょう。オバマと違いトランプは、1990年以降の歴史の展開を「米国第一」と言いながら後退させています。

中国輸入に関税を課しても米国に生産は増えず、例えば鉄鋼業(USスチール)の業績は低下しています。米国製造業全体の先行きを示す景況感指数は、50を下回り、「不況感」が強くなっています(18年8月:3年ぶりの50割れ)。日本の上場企業全体の利益は、-15%でした(19年3-6期)。3年ぶりの減益です。とくに、かつては世界一だった電気機器の利益は-74%と壊滅的です。

中国関税と米中、英国関税とEU、そして日本の経済成長

関税は、世界のGDPの成長を下げる要素になります。IMFは1%程度の下落しか見ていませんが、複雑系の多数の経路をとった波及から実際には大きくなるでしょう。

事実、製造と金融で中国と関係が深く。輸出が多いドイツのGDPは、19年の4-6期にはマイナスです(-0.1%)。2.2%くらいは成長していましたから、マイナス幅は2.3ポイントと大きい。
(注)ドイツのベリンガーメーカーが設計した、プロ用のオーディオ機器(チャンネルデバイダー)を買うと、当然のように中国製でした。

トランプ関税と英国のEU離脱は、今のまま進むと、グローバル化してしまった世界経済のゆりもどしの転換点になるでしょう。始まったばかりなので、産業のあらゆる経路に及ぶ複雑系の影響は、IMFと世界のエコノミストには、まだ見えていない。

データは過去のものです。集計は、3か月から6か月遅れます。人間にデータの意味が分かるのは、いろんなデータが出揃うのは、1年から1.5年後でしょう。

金融は、実体経済の先行する

ところが金融(マネーの流れ:ファイナンス)は、マクロ経済の事実データに6か月くらい先行します。

企業は、将来のGDP(=自社売上)を想定して、資金調達して設備・機械・雇用への投資をするからです。資金調達には、金融がかかわります。金融・経済について書くことが多いのは、このためです。

「長期金利(お金のコスト)が下がる」のは、資金需要の停滞を示します。実は、中央銀行は「資金の需給で決まる市場の長期金利」を70%くらいは追認し、その近い将来の傾向を30%くらい変える能力しかもっていないでしょう。

Next: 長期国債の利回りは、どのように決まるのか?

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