金の価格と、採掘可能埋蔵量
金は、1トンが現在の価格では約55億円、100トンで5,500億円、1,000トンで5.5兆円です(1グラム=5,500円とする)。
年間の金の新規の生産(鉱山の生産)は約3,500トンであり、金鉱山の枯渇のため、容易には増えない。地下4,000~5,000メートル掘っても、今後、採掘が可能な金の世界の総量は5万トンとされています。
最大に見ても8万トンはないでしょう。年間の採掘量を3,500トン以上に増やすには、設備投資が必要であり、すぐには増えません。
通貨、国債、株式は、紙の契約書であり、必要ならいくらでも増発できますが、金の生産には物理的な限界があります。
地上の金(宝飾品、ゴールドバー、電子部品)は、18万トンとされ、時価では1,000兆円くらいでしかない。価格が5倍に上がると、5,000兆円です。「金」は不動産と同じような意味で、価格が上がることにより増やすことができます。
米国の株価は、バブルか?
これから2年先の金の価格を見通すには、時価総額3,000兆円の米国株がバブルで崩落するのか。バブルであっても、大きくは下がらす、±15%(ダウでは3,800ドル)くらいの幅で波動しながら高い水準を続けるのか、にかかっています。
米国の株価崩壊は金融危機になります。米国の金融危機はドル危機でもあり、その時は、米ドルの反通貨(代替資産)として買われる金価格は高騰します(この上昇は、100%の確率です)。
(注)ただし金融危機の発現直後は、金価格は下がることが多い。決済資金に困窮した金融機関、ヘッジファンドが、手持ちの金を売って現金に換えるからです。金は債券より、はるかに換金しやすいからです。下落した数か月後から、金融危機(ドル危機)を原因にした金価格上昇が始まります。
08年のリーマン危機には金の換金売りが急増し、1オンス(31.1g)970ドルから750ドルまで23%下げています。2か月後には上がり始めて、3年後の2011年7月には、1,750ドルへと2.3倍に上がったのです。原因は「金融危機=ドル危機」です。
※参考:金価格推移‐三菱マテリアル株式会社
高い株価に依存している、米国の金融
米国の株価崩落が金融危機になる理由は、米国の平均的な金融機関の自己資本(総資産の約5%しかない)の中身の多くが、持ち株の含み利益だからです。
銀行の資本は、
(1)基本項目(Tier1)=発行株式+優先株+利益の内部留保
(2)補完項目(Tier2)=保有株や債券の評価益の45%+土地等の評価益の45%+貸倒引当金+劣後債のローンなどです。
「Tier1+Tier2」が自己資本とされます。それを「貸借対照表の資産、つまり、貸付金等のリスク債権+株等のリスク債券」で割ったものが銀行の自己資本比率です。
米国の大手銀行の自己資本比率は9%水準ですが、その自己資本の過半が「持ち株の含み利益」である点が株価が下がったときの問題になります。
(注)邦銀の三菱UFJの自己資本費比率は、米国より高い12.2%です(2018年)。ユーロも平均では13%と高い(2016年)。