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米国は30%の株価の下落、日本は長期国債価格24%で金融危機に陥る…その背景とは?=吉田繁治

2018年の夏から、トランプ関税第一弾

この長期金利の低下の3か月前、2018年の7月は米中両方のGDPを低下させるトランプ関税の追加第一弾でした(現在は第四弾)。

米国の貸付の長期金利(長期債の金利+α=企業の設備投資のときの金利)は、2018年10月から下がっています。中国への関税発動による米国のGDPの低下を予想した、投資資金の需要減退が起こったのです。

GDPの減速予想→長期国債の買い→長期金利低下

資金需要が減ったので、金融機関(当座預金)がもつじゃぶじゃぶのマネーは、金利のつく長期国債の買いに向かった。この買いのため長期国債は、価格が15%上がっています(=長期金利は3.15%→1.5%に下げています。既発国債の価格が上がることが金利が下がることです)。

米国では、
・市場での資金の供給と需要が決める長期金利(資金需要が増えると長期金利は上がり、減ると下がる)と、
・FRBが2019年7月末に、狼狽して0.25%下げた短期の政策金利(2.00%~2.25%の誘導目標)が逆転するという、異常な現象が起こっています(2019年8月~)。

長期の貸し出しはリスクがあるので、回収リスク(貸し倒れ引当金)を見る金利は、高くなければならない。それが短期金利より低いということは、企業の資金需要がGDPの減速を予想して減退していることを示します。対中関税で、企業は「景気の低下を想定」しているのです。

英国ポンドでも、ドルと同じ時期にEU離脱問題から景況感が低下し、長期金利が米国と同じように下がって、長短金利の逆転が起こっています。英国ポンドは、FRBの傘の下と見ていいものであり、ドルと同じ動きをする通貨です。英国でも、EU離脱後のGDPの低下を企業は想定してるのです。

株の売り→米国長期国債の買い+金の買い

投資家の運用マネーの行き先(残高3兆ドル:315兆円)であるヘッジファンド(投資信託)からは、
・低いとはいえ金利がつく米国長期債が買われて、価格は上がり、利回りは下がって、
・GDPの減速予想から下落リスクが高くなった株が売られて下がる中で、金が買われたのです(ヘッジファンドは先物の売買が多い)。

以上が、1年前の2018年8月から、金価格が上昇にはいった理由です(18年7月末1198ドル→19年9月8日1506ドル:26%上昇)。「ヘッジファンドが、株を売って金を買った」ことが、金価格を先導しました。
※参考:金-価格-チャート.do‐BullionVault

まとめれば、以下の波及の経路でしょう。株価、金価格、外為等の複雑系では、マネーの経路の判断が重要です。
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(1)トランプ関税第一弾(18年8月)+英国のEU離脱の国会の迷走
(2)関税からのGDPの低下予想→企業の長期資金需要の減退
(3)長期資金が滞留した金融機関のマネーでの長期国債買い→長期金利の低下(長期債価格は上昇)
(4)株価リスクの高まりの中でのヘッジファンドの金先物と金ETFの買い増し→金価格上昇
(5)新興国の中央銀行の、金と金ETF買い増しの継続→金価格上昇
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Next: 金は長期で買われている、その理由とは?

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