信用通貨となったドルの価値は10年で急落した
ベトナム戦争による戦費が原因で、1971年に金・ドル交換が停止され、信用通貨になったドルに対しては、1973年、1979年と2度の石油危機(原油価格はドルで20倍)が起こります。1980年には、金価格は1オンス850ドルに上がっています。1971年の1オンス35ドルからすれば、850ドルは24倍です。
●金の価値が10年で24倍に上がったのではない。金は5,000年前から同じ金属です。
金が上がったのではなく、増刷を続けた信用通貨の米ドルが1970年代の10年で、1/24に価値を下げたのです。金は、3年で数倍、5年で10倍、10年で20倍というような価格の上げ方をしてきたのです。
増発されたドルの価値が、10年で1/24に下落していたということでしょう。ドル価値の大きな下落は、他の通貨も一緒に動変動相場では見えないのです。
現代の通貨の増発
現代の世界は、通貨では戦争のあとではない。元FRB議長のグリーンスパンが、1929年から33年の大恐慌を想起して、70年に一度と言った金融危機のあとです。
08年9月に発現した金融危機(リーマン危機という)の後、米国、欧州、日本、中国の中央銀行が合計で20兆ドル(2,100兆円)の通貨を増刷し、それが、「ゼロ金利のさらさら流れる過剰流動性」になったあとの世界です。
2年という波及期間
米国住宅価格の下落は、2006年からでした。リーマン危機まで、2年の波及期間があったことになります。債券の下落が、玉突きの球のように波及していく期間です。金融機関の自己資本という損失を吸収するバッファー(緩衝)があるので、債券の下落の波及にはタイムラグが生じます。
今後も、株価・債券の下落のはじまりから金融危機へは、2年の期間があると見ていいでしょう。2年の最中は、「これは小さな崩壊だ」という論が主流になります。リーマン危機の前も、「不動産ローン担保証券(MBS、ABS)の下落では、金融危機には至らない」されていたのです。大恐慌が始まった、1929年の株価暴落のときも、実体経済の恐慌までは、2年の期間がありました。
●マイナス~ゼロ金利のマネーは、集計すると世界で18兆ドル(1,890兆円:円は400兆円)にのぼります。マイナス~ゼロ金利の国債、超低金利の債券、下落リスクが高まった株の売買マネーとして運用されています。
このうち、わずか1%(19兆円)が「金の買い越し」に向かうだけでも、金価格は3倍には高騰するでしょう。
金のは鉱山とリサイクルで4,500トン/年、時価では22.5兆円くらいしか生産されません。このうち2,500トンくらいは固定的な需要なので、金地金では2,000トンくらいしか、新たに買えるものはないからです。(注)短期証券である先物は、現物とは別枠の買いです。