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米国は30%の株価の下落、日本は長期国債価格24%で金融危機に陥る…その背景とは?=吉田繁治

【2019年は、ヘッジファンドと個人の売り、自社株の買い】

ヘッジファンドは、2019年も日本株を1兆3,788億円売り越しています(19年1月~8月)。このため、1か月平均で1兆円と大きくなった自社株買いで、株価を買い支えて上げるという算段です。下のデータの事業法人の買い越しに、自社株買いが含まれています。売り越す会社も多いので、事業法人全体の買い越しでは1兆円/月より低い。
※参考:投資家主体別売買動向表‐安藤証券

【長期では…】

政府系金融による株の買いが減って(または終わり)株が下がったときは、「自社株買いの社債による負債が増えたが、一時は上がっていた株主資産は消える。B/Sの総資産・負債に対する自己資本比率は下がる」という結果になります。社債は、期限日には全額を一括償還しなければならない負債です。

2013年以降、「市場経済の自然ではない、株買いの連続」が日本株を上げて支えています。

【個人と、生保・信託銀行の機関投資家】

市場の投資家だった個人と機関投資家は、政府発の上げ相場だった2013年から一貫して、売り越しています。700万人の個人投資家の合計では、「ヘッジファンドの売りを主因にして、下がったあとの逆張りの買い」しかしていません。

以上の事情の展開と理由は、証券会社が進んでは言いたくないことです。様々な材料を都合よく解釈し、上がるとしなければ、株の売買は増えないからです。

ただし、以上は「日経平均」についてです。企業利益の増加期待から上がる個別株はそれぞれが別の動きです。しかし、オーバーオールな日経平均(225社の単純平均)やTOPIX(一部上場の約2,000社強の加重平均)の平均株価に連動する部分は60%はあるでしょう。

日経平均が下がる中で、個別株が上がる、上がる中で、個別株が下がることは少ない。マクロ経済の予想で売買される指数の売買が増えているからでもあります。日銀が買っている株ETFも、日経平均のようにグループ化した株価指数です。

まとめれば、安倍政権の2013年以降の日本株は、個人、機関投資家、銀行が売り越すなかで、
・2013年はヘッジファンドの買いで、
・2014年からは、過去は市場外だった政府系金融機関からの買いで上がってきました。
(日経平均8800円(12年11月)→現在は2,200円付近)

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(1)2013年はヘッジファドによる日本株の買い越し(15兆円)

(2)ヘッジファンドの買い越しが一巡した2014年からは、政府系金融機関(郵貯+かんぽ生命)の買いと、年金基金のGPIFの買い。

(3)2014年から日銀の株ETFの買い増しが3兆円/年、政府系金融の買いが一巡しはじめた2016年には3.3兆円に増枠、2016年7月から1年6兆円に増枠して現在に至る。

(4)企業の自社株買い。[2013年2.7兆円→14年4兆円→15年6.5兆円→16年4.2兆円→17年4.2兆円→18年6.5兆円→19年は13兆円のペース(上半期)](アイエヌ情報センター)

2019年の、もっとも大きな買い越しは、日銀の、6兆円の2倍以上の、事業法人の「自社株買い(2019年上半期は昨年の2倍)」になっています。2019年3月までの日本株は、「19年下半期の自社株買い」が、前年比でどの程度増えるかに、かかっているでしょう。

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以上の買いの要因は、いずれも市場経済の不自然さであり、「いずれ、終わる」ものです。政府系金融が企業の株を買うことは、「企業へのマネーの供給」と同じ意味をもちます。株も広義の流動性マネーだからです。

人民銀行を先頭にした大手政府系銀行が、国有企業にマネーを提供している「中国の共産主義金融」に近い。ソ連の共産主義金融では、「国有企業に貸しつけるが、利払いはなく返済もない融資」が多かったのです(ルーブル発行量の増加の継続になって最後は1,000倍のルーブルインフレ:1999年)。個人、機関投資家、銀行が、下がる中で買い増しを続けることは(1か月はあっても)想定できない。そのとき、日本株は下げます。

米中貿易戦争、英国のEU離脱の影響で、わが国の企業利益が縮小する中(9月は-15%:上場企業)、「2019年下半期から2020年の自社株買い」がどの程度増えるか、2020年3月まで今年の2倍のペースで増えたあと、どの程度減るのかということに日本株の2020年はかかっているでしょう。
(注)日本株の下げ幅は、米国より小さいでしょう。

なお日本株の下落で、金が上がることはありません。日本人の金買いは、少ないからです。しかし日本株は、米国株と同時に下落します。米国株の下落のときは、「リスク資産に売り→安全資産(国債と金)買い」にマネー流れ、金価格は上がります。

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image by: Marijus Auruskevicius / Shutterstock.com

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ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』(2019年9月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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