「正社員には推薦しない」でうつ病になった契約社員が会社を訴えた結果

会社の人事評価に振り回されるビジネスパーソンは多いと思います。「もし悪かったら…」なんて考えると不安になるものですよね。実は、この人事評価で裁判に発展したケースがあると今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』の著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが紹介しています。評価面談の際の上司の“伝え方”が争点になったようです。

「上司の不適切な面談」で労災は認められるのか

例えば、ある試験に落ちたとします。みなさんだったらどう感じるでしょうか?

もちろんショックを受けたり落ち込んだりはするかも知れませんが特に重要視していない試験だったり受かるつもりもなかった試験であれば、それほどショックは無いかも知れません。

逆に「受かると思っていた試験」に落ちたらかなりのショックなのではないでしょうか。

同様に「映画を観たら面白くなかった」「面白そうと思って観た映画が面白くなかった」場合や「食べてみたら美味しくなかった」「美味しそうと思って食べてみたら美味しくなかった」場合なども、前者より後者のほうが精神的なダメージは大きいでしょう。

これは人事評価についても同じことが言えます。

それについて裁判があります。

ある会社で、業務が原因でうつ病になったとして労災を申請した契約社員が、労基署が労災と認めなかったため裁判をおこしました。

そこで問題になったのが上司や社長との面談でした。

その契約社員は正社員になるために必死に勉強して資格を取得し、日頃は上司から良い評価をもらっていたにも関わらず、いざ面談で「正社員には推薦しない」と言われたというのです。その精神的なショックでうつ病を発症したと訴えました。

ではこの裁判はどうなったか。

「浪費癖」と「借金」にまみれた野口英世が、それでも周りから感謝されたワケ

千円札の顔となっている野口英世。彼が成し遂げた偉業は有名ですが、どのような人生を送ったのかについてはあまり知られていないかもしれません。メルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ』では、時代小説の名手として知られる作家の早見さんが福島にある野口英世記念館に赴いた際の体験を語っています。

野口英世と篤志家

先日、福島県猪苗代にある野口英世記念館を見学しました。親切な読者さんの紹介で館長にご案内頂き、野口博士の偉業に接することができました。記念館は今も大勢の来館者があり、筆者が訪れた時も修学旅行の生徒さんで一杯でした。

貧しい農家に産まれ、左手に大火傷のハンデイキャップを抱えながら、類まれなる努力と行動力で世界的な細菌学者となった野口英世博士の生涯は広く知られています。小学生の頃に読む偉人伝には不可欠、偉人伝以外でも渡辺淳一作、『遠き落日』を読んだ方も多いと思います。

館長は野口博士の小学校時代の学友であった八子弥寿平氏の御令孫でいらっしゃいます。八子家に伝わる野口博士の興味深いエピソードをお聞かせくださり、博士が帰国した際に遺された書も拝見することができました。

野口博士の負の部分、浪費癖と借金について様々な書籍で記されていますが、貸した人たちは返ってこなくても恨んでいなかったそうです。むしろ、みな、誇らしかったとか。

たとえば、映画『遠き落日』で猪苗代に帰郷した野口英世がお世話になった八子家を訪れ、土産の金時計を渡しますが、弥寿平氏の母親からこんなもの、と放り投げられるシーンがあります。

映画では莫大な金を借りておいてこんな物でごまかすのか、という怒りの描写でしたが、館長によると、これはフィクションだそうです。事実は金時計を貰い、八子家は感激したとか。その上、立派な書まで書いてもらい、感謝しかなかったのでした。

八子家の他、猪苗代の人々は、博士を郷土の誇りだと大歓迎したのです。

館内には有名な手紙、母親シカさんから博士に会いたい、帰って来ておくれと書き送った手紙、が展示されています。誤字混じりのたどたどしい文章ですが、それだけに息子への深い愛情が感じられ、目頭が熱くならない人はいないでしょう。

 

北朝鮮が虎視眈々と狙う、韓国にある「第二のクリミア半島」とは?

ロシアが強制併合したクリミア半島。実は、別の国でも“第二のクリミア半島”になるかもしれないエリアが存在するそうです。今、「韓国が北朝鮮から狙われている場所がある」と今回の無料メルマガ『キムチパワー』で、韓国在住歴30年を超える日本人著者が語っています。

北、戦術核の脅威

ロシアが昨年ウクライナを侵略するまで、長い間力を入れてきたことがある。ウクライナ内の親ロ勢力の拡大、内部葛藤助長などだ。侵攻8年前の2014年2月がピークだった。ロシアはウクライナが欧州連合(EU)と自由貿易協定(FTA)を結ぼうとすると、親ロ勢力をけしかけて大規模な反対デモを行った。国が親露・親西方派に分かれ、FTA締結はサイン直前に中断された。国はめちゃくちゃになった。ヤヌコーヴィチ大統領は、あっけなく同月22日にロシアに政治的亡命をした。軍隊も何も国家が本来の機能を果たせなかった。

ロシアはチャンスを逃さなかった。ヤヌコーヴィチ亡命から5日後の27日、プーチン大統領は待っていたかのように軍隊を動かした。ロシアの戦車が轟音を立てて国境を越えた。ウクライナ軍はお手上げだった。親露勢力は両腕を広げてロシア軍を歓迎した。

ロシアはこのように国境地帯の戦略的要衝地であるクリミア半島を「強制併合」した。米国やEUなど国際社会の多くは糾弾声明を出し、経済制裁を加えた。しかし、「外交パンチ」ではクリミアを取り戻すことはできなかった。米国の立場では、他国の小さな土地のためにロシアと武力衝突を起こすのは負担だった。ただでさえ国力消耗論難でアフガニスタン・イラクなど中東から足を引いていたところだった。

このようにして8年が経ち、ロシアは米国が中国と争う国際情勢の隙を狙ってウクライナ本土を襲った。米国は現在、ウクライナを支援しているが、「パンダ(中国)」と「ヒグマ(ロシア)」という巨大な2頭の熊を同時に相手にするのに苦労している。

なぜ、私達は人生に終わりがあると知りながら無駄な時間を過ごすのか

もしも一年後、自分がこの世にいないとしたらあなたは今、何をしますか? 今回の無料メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』で本のソムリエさんが紹介するのは、 がん患者の心のケアをする専門医が書いた一冊。生きている今の時間をどう過ごすかを改めて考えさせられる本です。

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もしも一年後、この世にいないとしたら。

清水研 著/文響社

著者はがん患者の心の病気の専門医(精神腫瘍医)です。そのような職種のお医者さんがいるとは知りませんでした。

著者は仕事としてがんによって自分の死に直面した患者さんが、「残りの時間をどう生きたらよいのか」と悩み苦しむ姿と毎日向き合っています。

著者が仕事を始めて気付いたのは、実は自分自身が今の時間をどう生きたら幸せなのかわかっていなかったということです。

「このままでよいのだろうか?」と漠然とした疑問を感じながらも、自分自身が充実感のない日々を過ごしていたのです。

人は死の直前になって、心のままに生きていないことに気づく(p93)

人が自分の死と直面したときに、強いストレスを受けるのは当然のことでしょう。あると思っていた10年後の自分が存在しないかもしれないわけです。がん告知後1年以内の自殺率は、一般人の24倍だという。

ただ時間とともに、心の動揺は避けられない運命を受け入れる気持ちに変わってきます。例えば、未来のために努力してきた人にとって、未来がなくなった今をどう生きるのかということを考えはじめるのです。

死を意識してはじめて、当たり前だと思っていたことに感謝の気持ちが出てくるという。

今日一日があることに感謝する。家族と一緒の時間を大切にする。自分のやりたいことに時間を使う。普通の日々の連続が幸せであったことに気づくというのです。

人生で大切なことは何か考えると、行動が変わります(p66)

確かに「人は必ず死ぬ」とはいえ、人生100年時代といわれる現代社会では自分の死というものを意識する時間が少ないように感じます。

時間がたくさんあるがゆえにその時間を無駄にしてしまう可能性が高くなっているのが、現代社会なのでしょう。

タイトルのように「もしも一年後、この世にいないとしたら」と考えてみると、何かが変わっていくのかもしれません。

清水さん、良い本をありがとうございました。

【私の評価】★★★★☆(82点)

<私の評価:人生変える度>
★★★★★(ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(素晴らしい本です)
★★★☆☆(読むべき一冊です)
★★☆☆☆(余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては)
☆☆☆☆☆(こういう本は掲載しません)

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骨抜きにしたのは安倍政権。権力の犬・山中委員長の「暴走」で揺らぐ原子力規制委の信頼

福島第一原発事故の反省から、高い独立性を付与され発足した原子力規制委員会。しかし今、その存在意義が大きく揺らいでいます。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、岸田政権の企てに加担するが如き山中委員長の暴走ぶりを詳しく紹介。さらに日本における「原発回帰の動き」がますます強まっていくと思われる理由を解説しています。

岸田の企てに加担。山中委員長の暴走で激しく揺らぐ原子力規制委員会の信頼

3月2日発行の当メルマガで、原発の運転期間を60年以上に延長するための法改正について、原子力規制委員会が「意見を述べる事柄ではない」として容認したことと、その考え方を委員会の総意のごとくでっちあげた張本人は山中伸介委員長なのだという筆者の見方を書いた。

【関連】「政府の犬」丸出し状態。知らん顔を決め込む原子力規制委員会の屁っ放り腰

委員会の議事録をたどっていけばわかることで、れいわ新選組の山本太郎議員も同じ見方をしたのだろう。3月16日の参議院東日本大震災復興特別委員会で、次のように山中委員長本人にただした。

「そもそも山中委員長がよく引用している『運転期間の定めは利用政策判断であり規制委員会が意見を述べる事柄ではない』という文言、もともとは誰が発言したものなんですか」

山中委員長の答えはこうだ。「令和2年の7月22日に規制委員会が開かれ、その時に私が、運転期間は原子力利用の政策側が判断すべき事柄であって原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではないという意見を申し上げました」

はっきりと自らの発言がもとになっていることを認めたのである。2020年7月22日開催の規制委員会で、委員の一人だった山中氏の発言した内容が、メンバー間で議論を深めることもなく、1週間後の同年7月29日に事務局(原子力規制庁)から提出された文書に盛り込まれたというわけだ。

昨年夏、岸田首相が運転期間の見直しを宣言して以降、「令和2年7月29日の見解」として山中委員長自身が記者会見などでたびたび引用。60年超運転への同意を求められた今年2月13日の原子力規制委員会でも、この「見解」を根拠に、一人の委員の反対を振り切って、多数決で法改正容認の結論を出した。

そのおかげで、岸田政権は原発を60年をこえて運転できるようにするための原子炉規制法、電気事業法改正案などを閣議決定することができたのである。

こうした経緯から、原子力規制委員会が政治から独立して原子力の安全規制を担えるのかという疑念があらためて浮上している。民主党政権末期の2012年9月に経産省から切り離され環境省の外局として設立されたものの、同年12月に第二次安倍政権が誕生すると、経産省の影響力がジワジワと浸透していった。

原発再稼働をめざす安倍政権が明確に原子力規制委員会の骨抜きにかかったのは2014年9月、島崎邦彦氏(地震学)と大島賢三氏(元外交官)が任期満了で退任し、その後任として田中知氏(原子力工学)と石渡明氏(地質学)を選任した時だ。委員の人選にあたっての欠格要件などを定めたガイドラインを安倍政権が無視したのである。

ガイドラインでは、直近3年間に原子力事業者から報酬を受領していたら委員になる資格はなく、原子力事業者から研究室に寄付があったり学生を就職させた場合は情報公開を求めることになっているが、原子力事業者との関係が深いと見られた田中知氏にそれが適用されず、野党から反対の声が続出した。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

WBC優勝でも競技存続の危機か。激減する日本小中学生の野球人口

数々のスターを生み、まさに日本中が熱狂したワールド・ベースボール・クラシック。しかしながら我が国の野球界は今、瀕死の状態にあると言っても過言ではないようです。そんな「惨状」を取り上げているのは、政治学者でスポーツ界にも造詣が深い立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さん。上久保さんは今回、日本の野球人口の減少が深刻なレベルにあるという事実を紹介するとともに、日本野球を存続の危機から救う方策を考察しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

WBC優勝で「野球人気」復活の兆しもお先真っ暗。日本のスポーツ界全体が抱える大問題

米国マイアミで開催された、野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝戦で、日本が前回優勝のアメリカを3-2で下し、14年ぶり3度目の優勝を果たした。日本戦4試合の地上波放送の平均世帯視聴率は連日40%を超えた。WBCへの注目度は、「社会現象」といっても過言ではない。

日本代表「侍ジャパン」の栗山英樹監督は、「野球界の未来のために。次世代の発展のためにやっていきたい」「野球の生まれたこの地で大リーガーが集まるアメリカを倒して世界一になる。立ち向かう姿を見た子どもたちが『日本代表いいな。選ばれたら絶対にそこでプレーしたい』という空気を作りたい」と述べた。

また、大会の最優秀選手(MVP)に選ばれた大谷翔平選手が「日本の子どもたちがかっこいいと思って、野球をやりたいと思ってくれるはず。それがうれしい」と話し、大会最多の13打点を挙げ「オールWBCチーム(ベストナイン)」の一人に選ばれた吉田正尚選手も、多くの子どもたちに好影響を与えられたことを喜び「そういう子どもたちが増えて、こういう舞台に立ってもらえたらうれしい」と発言した。

「侍ジャパン」の監督・選手が、口々に「子どもたちのため」と発言する背景には、深刻な「野球人口の減少」という問題がある。WBC優勝をきっかけに、子どもたちに野球にもっと興味を持ってもらいたいという切なる願いがあるのだ。

小中学生の野球人口は、2007年に66万4,415人だったのが、2020年には40万9,888人まで急減した。その深刻さは、様々な地域で目に見える形で明らかになっている。

例えば、私の故郷である愛媛県は、松山商業、今治西、西条、宇和島東、済美など甲子園の強豪が群雄割拠し、景浦将、千葉茂、西本聖などプロ野球の名選手を数多く輩出し「野球王国」として知られた。その愛媛県の野球どころの1つ、今治市で衝撃的な事態が起きている。

それは昨秋、今治東、今治南、今治北高大三島分校、今治明徳の市内の4校が、野球部員の不足により、連合チームを組む事態となったことだ。この4校のうち、今治南は甲子園出場経験があり、かつてはプロ野球で活躍する選手もいた古豪だ。

この4校は、1~2年前には20名程度の部員がいたのが急減して単独で試合ができなくなったのだという。その他の高校も、一部の強豪校を除けば、部員10名台が多く、近い将来連合チームを組まなければならなくなる懸念がある状況だ。

つまり、ここ1~2年で「野球人口減少」は、さらに深刻なステージに突入しているといえるのではないだろうか。

残業100h超のブラック居酒屋がホワイト転換のために採った「残業削減策」

売上も利益も好調で給料もそれほど悪くなくても、残業が多すぎては従業員の定着は望めません。残業が月100時間を超えていて離職者が多く、採用難となった和食居酒屋が取り組んだ残業時間55時間圧縮の道のりを教えてくれるのは、メルマガ『飲食・デリバリー企業向け/業績アップメルマガ』著者で、外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一さんです。今回ここでは、営業時間の見直し方から締め作業の短縮策まで、1日1.5時間、月39時間削減した方法を抜き出して紹介します。

繁盛店ながら残業時間100時間超で離職多数・採用難だった企業が45時間以内までに圧縮する為にやった事

平成時代の超繁盛和食・居酒屋業態。これは中々にハードな環境も多いですよね。

  • 職人の属人性が多いので業務分担できない
  • アイテム数が多く仕込みが多い
  • ランチもディナーもやるので休めない
  • 中堅企業になる事で間接業務も多数
  • お得に売ることを最優先にしてきた

などなど。

今回テーマのご支援先も、

  • 1店舗辺り坪50万円以上
  • 中心店舗は月1,000万円/店

収益性の観点では非常に効率的でした。

しかし…。月4日休に残業時間100時間超。

  • 大量にやめていく中堅社員
  • 新入社員は入ってもすぐに辞める
  • 残るのは年齢も重ねたベテラン社員だけ

これで本当に事業を継続できるのか。この壁に直面しました。

もちろん、継続できる訳がありません。そのため、社内ホワイト化計画を実施。今は36協定のギリギリ範囲内なので完璧!とは言えませんが大きく前進。人の定着率もやっと上がりました。この辺りの取り組みを見ていこうと思います。

Step0)前提条件

36協定で45時間以上の労働が許されるのは年間で6回までになります。そのため、通常期でまずは45時間以内。ここが最低限クリアすべき目標でした。

26日出勤で残業100時間overという事は、1日4時間ずつ残業しているという事。

出勤:09:30
昼 :11:00-15:00
休憩:15:00-17:00
夜 :17:00-23:30

 

拘束:14時間
休憩:2時間
労働:12時間(残業4時間)

日々このような状況でした。

ここからの削減としては、

月間削減時間:55時間=100時間-45時間
日別削減時間:2.2時間=55時間÷26日営業

ここを考えていく事になりました。

Step1)夜の退勤毎日1時間の改善

退勤時間23時半→22時半

 

月別削減時間:26時間=1時間×26日
日別削減時間:1h

<従来>
LO :22時(ドリンク)
閉店:22時半
退勤:23時半

<改善>
LO :21時半(ドリンク)
閉店:22時
退勤:22時半

シンプルにラストオーダーを早めました。生活様式の変化から遅がけの売上は少なく、時間帯別収益を考えると微妙という判断に。また、閉店後も無駄な締め作業が多かったので徹底的に削減しました。

この記事の著者・堀部太一さんのメルマガ

アメリカが招いた混乱を収拾へ。世界各地の戦争「停戦」に動き始めた中露

3月20日、モスクワを電撃訪問した習近平国家主席。多くのマスコミはその真意を掴みかねているようですが、視点を変えると立ち上がって見えてくるものもあるようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、習主席の訪露に先立って発表された「12項目の姿勢表明書」に注目。その内容と昨今の習近平政権の動きなどから中露会談の意味を考察するとともに、対米追従を続ける日本が国家として沈没する理由を解説しています。

中露モスクワ会談の意味

中国の習近平主席のロシア訪問が終わった(3月20-22日)。マスコミは中露敵視・中露結束軽視の歪曲報道ばかりだ。対照的にオルトメディアは、この訪露による中露の結束強化が、中国とロシア、それから非米側諸国にとって重要であると指摘している。ウクライナ戦争だけでなく、米覇権の崩壊と多極化という大きな流れの全体にとって大事な転換点になりそうだ。しかし、何がどう重要なのだろうか。オルトメディアを読んでも、今のところまだ明確な分析に出会っていない。自分で考えてみる。

China Gives US Advice On Ukraine After Xi, Putin Pledge To Shape New World Order
Joint Russo-Chinese Statement: US Biowarfare Activities, AUKUS Submarines & Prospects of Nuclear War

私が最も注目したのは、習近平が訪露に際して発表した12項目の姿勢表明書(ポジションペーパー)だ。これは、ウクライナ戦争と今後の世界がどうあるべきかについての中国の考え方を書いた条文だ。そしてその1番は、全ての国家の主権や領土を尊重すべきで、国連憲章など国際法も遵守されるべき。2番は、(NATOに代表される)冷戦思考を捨てよ。自国の安全を守るために他国を犠牲にしたり、軍事ブロックを作るな。(露敵視のNATOに替わる)バランスのとれた欧州の安保組織の構築を支援する。(NATOと中露が対立するのでなく欧州と中露が)協力してユーラシアの平和と安定を維持すべき…、となっている。

China’s Position on the Political Settlement of the Ukraine Crisis
Full text: China’s position on settling the Ukraine Crisis

3番から12番はウクライナ戦争の和平策についてだが、他の国際紛争の解決にも使える内容が多い。中でも10番は(米国側による対露制裁など米国が発する)国連安保理の決議に基づかない経済制裁をやめるべきだ、と言っている。これらの内容から感じ取れるのは、中国がこれから米覇権に代わる多極型世界の主導役になっても、中国自身が昔から言っていた「国連が目指してきた国家主権重視・協調重視・覇権の機関化」を推進する姿勢を変えないだろうということだ。中国は「中露が米国に取って代わるだけの覇権交代」をやろうとしていない。そうではなくて中国は、ロックフェラーなど米資本家らが2度の大戦で大英帝国から覇権を移譲されて作った国連中心の世界体制を70年ぶりに蘇生しようとしている。

Xi-Putin Meeting Marks Tectonic Geopolitical Shift Which West Not Ready for

国連中心の世界体制は、英国が軍産複合体を作って起こした冷戦によって分裂させられて機能不全になった。国連を作った米上層部の勢力は「軍産のふりをした隠れ多極主義者」となって米中枢に存在し続け、ベトナムやイラクやウクライナの戦争をわざと過激化して大失敗させて米覇権を浪費し、代わりに中露が台頭してBRICSや上海機構など多極型の覇権構造を作って米覇権の自滅後に代替する流れを誘導した。そして今、米欧が金融崩壊してドルの基軸性が失われていきそうな中で、実際に中露主導の非米的・多極型の世界が立ち上がってきている。今回の習近平の訪露は、その立ち上がりを象徴する出来事だ。中露の政府は最近、多極化とか多極型世界といった言葉を頻繁に使うようになっている。習近平の訪露の主眼は、中露結束による世界多極化推進・多極型世界の構築の加速であろう。

Russia-China ties have no limitations – Putin
Xi Jinping sees `irreversible’ shift to multipolar world

「福島沖に怪魚」という悪質さ。北朝鮮が韓国内スパイに福島風評デマを流布させた理由

韓国で逮捕された北朝鮮のスパイと見られる組織の幹部への取り調べで、北朝鮮が彼らに対して、福島第一原発の処理水を巡る悪質なデマを拡散するよう指示していたことが明らかになりました。この事件を取り上げているのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で今回、北朝鮮サイドの動機を詳しく解説するとともに、我が国でも各国の工作員が暗躍していることは明白であるとした上で、日本人に対して「スパイ防止法の制定を真剣に考えるべき」と訴えています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年3月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【韓国】福島への「風評被害デマ」は北朝鮮の工作活動であることが判明

北朝鮮「福島沖に怪魚出現、奇形児出生デマを流せ」…韓国内のスパイ組織に反日感情刺激を指示

昨年に尹錫悦政権が発足してから、韓国では北朝鮮のスパイ団摘発が大々的に行われるようになっています。「従北政権」であった文在寅政権下で、韓国には数多くの北朝鮮スパイ組織が結成され、世論工作などが展開されてきたといわれています。

今年の2月には、防衛産業都市である昌原で、北朝鮮のスパイと見られる組織の幹部4人が国家保安法違反で逮捕されました。この組織は2016年に結成された左派団体「自主統一民衆前衛」で、北朝鮮工作員と接触し、さまざまな指令を受けていたことが明らかになっています。

「北朝鮮の指令を受けて韓半島旗を振った」…韓国の反国家団体関係者4人拘束

ソウル中央地検は3月15日、これら4人が北朝鮮工作員の指令に従い、在韓米軍の撤退を主張する反米集会や尹錫悦政権の退陣を求めるデモなどを行ったとして起訴しました。

朝日新聞は、検察関係者らの証言として、同団体は2021年ごろから北朝鮮工作員から電子メールで指示書を受信、日本の福島第一原発の処理水について、「東海(日本海)が汚染される」「魚を妊婦が食べれば胎児に影響を与える」などというデマをSNSを通じて拡散させるよう指示されていたことを報じています。

北朝鮮工作機関、韓国世論の扇動指示か 処理水の放出に「怪物出現」

冒頭の朝鮮日報の記事は、こうした北朝鮮からの指示を独自の調査によってさらに詳しく報じたものです。

北朝鮮側は「自主統一民衆前衛」に対し、「日本当局が福島原子力発電所の汚染水を放流すると決定したことと関連し、(中略)放射能汚染水放流問題を掲げて地域社会の反日民心をあおり立て、日本のやつらを極度に刺激する一方、あいまいに遊び続けている文在寅一党を圧迫して、当局のやつらと日本の間の対立・葛藤を取り返しのつかないところまで追い込むことに重心を置いてさまざまな反日闘争を組織・展開していかねばならない」と伝えたそうです。

そのために、「福島沖で怪魚出現、奇形児出生」といったデマをインターネットで大量にばらまいて社会的反感と不安感を増幅させるよう指示。韓国の市民・大衆運動団体が韓国政府に対して東京オリンピック参加拒否、日本の水産物全面輸入禁止、日本商品不買運動といった対日強硬姿勢を要求するよう仕向けたことが明らかになっています。

そういえば、2021年に行われた東京オリンピックでは、韓国のオリンピック委員会が選手村の食事で使われる福島県産などの食材を食べないように指導、選手村近くのホテルで韓国選手団用の弁当を用意する給食センターを設置し、日本人の反感を買ったこともありました。

韓国選手団が福島食材懸念 弁当支給、知事が批判

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