中国外交と日本外交を比べると見えてくる我が国の“ノービジョン”

中国の傍若無人な行動は日本人から見ると嫌われる原因にもなりえますが、そんな中国が平和の使者となった例があります。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、中国を理解するために感情ではなく損得であえて考えた結果を語っています。

「中国の外交」と「日本の外交」を比較する

こんにちは。

中国が平和の使者となり、ロシア・ウクライナ戦争を仲介する、という構想は潰えたようですが、サウジとイランの平和の使者の役割は果たしたようです。米国離れの中東諸国にとって、今や、中国の評価は鰻登りです。

一帯一路では、散々悪い噂ばかりを聞いていましたが、やることはやっていたんですね。

西側のメディア情報ばかり見ていると、こちらの意識も自然とバイヤスが掛かってしまいます。

一帯一路をあくどい企みと見るのではなく、素直に評価することも大切だと思います。

そうなってくると、日本の外交はどうなんだ、という話になりますね。

日中の外交について考えてみたいと思います。

1.暴れん坊と平和の使者

中国は、近隣国に圧力をかけ、隙があれば、自国の領土を拡大しようとします。自分の都合だけを優先して、他国との約束を守りません。

多分、中国は日本が嫌いというわけではありません。嫌いだから攻めているのではなく、領土を拡大したいから侵犯しているだけです。

日本が好きとか嫌いとかではなく、自国の利益になるなら、日本と付き合う。自国の利益になるなら、日本を恫喝するのです。

現在、中国政府は日本企業の投資を歓迎しています。中国経済の活性化のために日本の力を活用したいのです。

日本人は、まず相手の気持ちを考えるので、相手が嫌がることをしません。特に、頼みごとをする場合、嫌がらせはしないでしょう。それが日本人の常識です。

しかし、中国人の常識ではありません。彼らの常識は、人間も国家も、自分の利益のために行動するということです。文句があるなら、相手に言えばいい。文句を言わないということは、文句がないということです。

サウジアラビアとイランは、中国の仲介により、外交関係が正常化しました。なぜ、中国は仲介したのでしょうか。

米国は、イランに対して、厳しい経済制裁を課しています。しかし、中国はイランと友好関係を深めています。

中国は、サウジともビジネスがしたいと考えていました。しかし、サウジは米国と同盟関係でした。米国とイラン、サウジとイランは対立していました。

ところが、最近になって、サウジと米国の関係が冷え込んできました。

その機を逃さず、中国はサウジに対して、イランに投資しないかと持ちかけました。政治や宗教問題は棚上げにして、経済を切り口に関係修復をしよう、という提案です。もちろん、中国は事前にイランの意志も確認していました。

日本人にとっては、暴れん坊の中国が、中東に平和をもたらしたことは驚きでした。しかし、考えてみれば、不思議なことではありません。自国にとっても、相手国にとっても利益があるなら、それを進めるだけです。また、国際的に大国の存在感を示すこともできます。

好き嫌いの感情ではなく、損得の勘定で考えれば、中国を理解することができます。

この記事の著者・坂口昌章さんのメルマガ

精神科医が思わず苦言。誹謗中傷を禁止する前に日本がすべきこと

テレビで連日報道される有名人の自殺ニュース。実はこういった報道は海外ではやってはいけないことになっていると語るのは精神科医の和田秀樹さん。今回のメルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』では、 誹謗中傷を禁止する前に日本がやるべきことについて語っています。

自殺を誘発するマスメディア

またまた、テレビがものすごい勢いで自殺報道をしている。

有名人の死を大々的に取り上げるのも、亡くなった方を美化するのも、WHOや国連の自殺報道のガイドラインではやってはいけないことになっている。何かにつけて国際標準とかいう割には、こういうことだけは外国を見習わないのが日本のテレビマスコミだ。

言い訳がましく、命の電話の番号などを伝えてお茶をにごしているが、基本的にはこういう報道が明らかに自殺を増やすのに、それをやめようとしない。

人がその後何人死んでも視聴率が稼げればいいのだろうが、その癖して、正義の味方面をして、誹謗中傷メールをやり玉に挙げる。

もちろん誹謗中傷メールは本来は許されないことだが、以前のメルマガにも書いたが、m3などという医者向けのサイトでは、誹謗中傷が野放し状態だ。

もちろん、私もその被害者なのだが、日本の医者の思考回路もよくわかるし、私の医療に関する考え方に賛成の人が3%くらいしかいないことも勉強になった。

残念ながら、ネット社会なのだから、誹謗中傷はなくすことは難しいだろう。

だからこそ、メンタルヘルスを充実させるべきなのだが、厚生労働省は全国82の大学医学部で、精神科の主任教授にカウンセリングが専門の医者が一人もいない状態を放置している。

誹謗中傷で悩む患者さんが、カウンセリング(認知行動療法ももちろん含む)もしないで薬で治るとでも思っているのだろうか?

いじめにせよ、ハラスメントにせよ、もちろんなくなるに越したことはないのだが、残念ながらゼロには絶対にできないし、どんなに減らしても今の1割がいいところだろう。

ならば、そういうものを受けた人がメンタルケアを受けることが大切なのに、それができる人を増やすことにまったく日本の政府も役所も熱心でない。もちろん、医学部教授の間でもカウンセリングのできる人間を精神科の教授にしようという機運はまったくあがらない。

この記事の著者・和田秀樹さんのメルマガ

海外パビリオン申請ゼロ「大阪万博」に開催危機。会場建設工事を妨げている2つの要因

開催まで2年を切った大阪万博。しかしその目玉である海外パビリオンの建設申請が未だゼロという異常事態に見舞われています。何がこのような状況を招いてしまったのでしょうか。今回、政治学者で立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さんは、その原因として「アベノミクスの失敗」を指摘。さらに大阪万博を巡る問題が浮き彫りにした「日本の現実」を記すとともに、この国が今後地道に取り組むべき課題を提示しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

なぜ大阪万博2025の会場建設は遅々として進まないのか? 問われる大阪維新の資質

2025年大阪・関西万国博覧会(以下、大阪万博)に参加する国や地域が独自に建てるパビリオン建設で問題が生じている。万博の中心となるのは、中国、ドイツ、オランダなど約50の国・地域が、自ら費用を負担して建設する施設だ。しかし、その建設に必要な申請が大阪市に1件も提出されていないことが判明したのだ。

以前から、万博の会場整備に関する建築工事の入札で、不落・不調が続いていることが懸念されていた。例えば、政府が出展する「日本館」の建設工事の入札が不成立となって、随意契約に切り替わった。また、日本国際博覧会協会(万博協会)が担う八つのテーマ館の一部で建設業者が未定のままである。

2025年4月の万博の開幕まで2年を切っている。複雑な構造の施設も多く、開幕までに工事が完了しないのではないかと、懸念が広がっている。

この問題の背景には、物価高による資材価格の高騰、少子高齢化による深刻な人手不足がある。例えば、会場建設費が、当初想定の1.5倍の1,850億円に膨らんでいる。複雑な構造のパビリオンでは、費用が想定を超えてしまったケースも出ている。予定価格引き上げや簡素なデザインへの変更で入札のやり直しが続出している。そのため、建設会社から、万博の建設工事が敬遠されている可能性もあるという。

物価高の背景には、ウクライナ戦争に端を発した石油・ガスなど資源や穀物の供給不足による世界的なインフレがある。だが、より本質的には歴代政権の「無策」が問題だ。

「無策」の典型は「アベノミクス」である。中途半端に斜陽産業を延命させる異次元のバラマキを行う一方で、新しい産業を育てる成長戦略が欠けていた。その結果、現在、世界各国の中央銀行がインフレ対策として、次々と利上げに踏み切る中、日本銀行は金融緩和を継続して景気を下支えし続けるしかなかった。アベノミクスの延命策が、産業から利上げに耐えられる体力を失ってしまったからだ。

要するに、政府の長年の政策の失敗で、日本の産業は脆弱化してしまったため、円安、物価高の進行に有効な策を打てないでいる。それが、資材の高騰により建設会社が工事を請けることができず、万博の建設工事が進まないことの、本質的な理由なのである。

【関連】名前も悪い「アベノミクス」最大の問題は、“批判を許さぬ空気”の醸成だ

イージス・アショアの二の舞いか。敵基地攻撃ミサイル論の無理筋

2024年度からの開始が困難となった防衛増税。岸田政権は23年度から5年間の防衛費総額を43.5兆円にするとしていますが、極めて厳しい状況になりつつあります。この事態を受け「岸田大軍拡の見直し」を提言するのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんは自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、見直すべき理由として軍拡路線の目玉である「スタンドオフ・ミサイル」論のあまりのいい加減さを上げるとともに、そこに透けて見える隠された狙いを白日の下に晒しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年7月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

河野太郎氏を再び防衛大臣に。「スタンドオフ・ミサイル」不要論

自民党の税制調査会が7月13日の幹部会合で、岸田政権が取り組む大軍拡のための増税を24年度から始めることは「もはや無理だということを確認した」。同会の宮沢洋一会長がそのように明言した。ということは、23年度から5年間の防衛費総額を43.5兆円、それ以前の5年間に比べ1.6倍にまで増やすという“意欲的”な閣議決定は、事実上、25年度からの3年間で無理やり達成するか、期間を繰り延べるかしなければならなくなることがほぼ確定した。そもそも財源について何の当てもないままこんな無謀な計画に踏み出してしまったことの矛盾が、早くも露呈した訳である。

23年度の防衛予算は6兆6,000億円(米軍再編関係費などを除く当初予算)で、これを27年度までの5年間合計43.5兆円にするには、24年度から毎年1兆円ずつ上乗せして27年度には11兆円超にまで持っていくスピードを確保しなければならない。それすら無茶な話であるというのに、1年遅らせて、24年度は23年度と同程度、25年度に1兆円上乗せだったと仮定すると、26年度に2兆円、27年度に4兆円をそれぞれ上乗せするという急カーブを描かないと到底間に合わないので、これはもう無理というものだろう。

無理なら期間を繰り延べればいいのだが、この1年間の遅れの政治的な意味合いは微妙で、仮に23年秋以降の解散・総選挙で自民党が敗北して岸田文雄首相が辞任するか、そうでないとしても24年秋の自民党総裁選で岸田が再選されなかった場合、25年度予算を編成するのは誰か別の人で、その人は岸田大軍拡を踏襲せず大幅に見直すか撤回するかもしれない。防衛費増が1年遅れて、発注も開発も量産・配備もまだ本格的に軌道に乗っていない状態なら、余計に見直し易いことになる。

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日本は大差で最下位。なぜ日本人は世界一「人助け」が下手なのか?

2020年にとある機関が世界で実施した人助けに関する調査で、ダントツの最下位を記録した日本。このような社会となってしまった要因は、一体どこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、日本人を「人助け下手」している原因を2つ上げ、各々についての考察を展開。その上で、解決法を社会全体で考える必要性を訴えています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年7月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

「人助け」が下手な日本人

チャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」は2009年から「この1ヶ月の間に、見知らぬ人を助けたか」、「この1ヶ月の間に寄付をしたか」、「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という3つの項目について、世界の国々で行われたインタビューをベースに国の寛容度を採点しているそうです。

その報告書では、2020年、アメリカの市場調査のプロ集団であるギャラップ社が、114カ国にわたる12万人以上を対象に電話インタビューを行って調査したデータをベースにして分析が行われているとされています。

報道によれば、このCAFのレポートでは、日本は大差で最下位だそうです。まず、総合順位で最下位であるだけでなく、僅差ではなく、大差で最下位なのだそうです。更に言えば、2018年度に行われた調査のスコアから大きくポイントを落としているというデータも指摘されています。

これでは、まるで日本がダメな国ということになります。一部には、日本人は顔見知りには親切だが、見知らぬ人には冷たいというカルチャーがあるとか、福祉は国の仕事であって日本人はカネを出さないとかいう「解説」があります。この点については、私は違うと思います。

では、日本のカルチャーだから仕方ない、これでいいということかというと、それも違うと思います。事態は明らかに悪いのであって、何とかしないといけません。そのためには、原因の核にあるものを確認することが大切です。

原因は2つあります。

1つは、現在の日本社会では「初対面の人同士がスムーズに意思疎通するための日本語」が壊れてしまっているという問題があります。そこには日本語の特質が絡んでいます。

日本語は、関係性の言語であり、ロジックや情報を伝える機能に比べて関係性を確認する機能が大量に盛り込まれています。例えば、道を歩いていて、重い荷物を抱えて困っている人がいたとします。初対面だが、困っているので助けてあげようと考えたとして、一体その人にまず「どんな声掛けをするか」という問題があります。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

プーチン退陣を画策か?プリコジンを許す独裁者の側近に“不穏な動き”

大規模な内戦こそ避けられたものの、一時は「反乱部隊」を率いてモスクワまで200kmの地点にまで迫った民間軍事会社ワグナー代表のプリゴジン氏。しかしプーチン大統領の彼らに対する「甘い」処分が一部露軍内の反発を買っているようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、一進一退の攻防が続くウクライナ戦争の戦況を各方面ごとに詳しく解説。さらにプーチン氏が国内外で四面楚歌的な状況に追い込まれつつある現実を紹介しています。

ロシア軍が、ウ軍の手薄なクレミンナ方面で「カウンター反転攻勢」に出た

ウ軍は、本格的な攻勢のフェーズであるが、バフムト、ザポリージャ州、ヘルソン州で前進しているが、その速度が遅い。それとウ軍の情報統制が厳しいので、情報が入ってこないようだ。マリャル国防次官は「戦時情報体制への移行」というが、ウ軍提供の情報がなくなっている。

ロ軍には、ロミルブロガーがいるので、多くの情報があるが、こちらは真偽が不明である。そして、ロ軍の配置は、クレミンナ方面に、7万人から9万人のロ軍兵がいる。リシチャンスク方面は、1~2万人のロ軍兵、クピャンスクとスバトバ方面には2~3万人のロ軍兵で、10万~15万人が配置されている。

バフムト方面は5万人のロ軍がいる。そして、クピャンスクからクレミンナ一帯のロ軍がカウンター反転攻勢に出てきた。

ロ軍はドネツク・ザポリージャ方面には、15~20万人である。ヘルソン州にもロ軍は戻り始めていて、3万人の状態まで戻した。ロ軍の全体規模は、30万~35万と見込まれている。

クピャンスク方面

ロ軍はリマンペルシーからシンキフカ方向に攻撃を開始している。しかし、攻撃は続かなかった。

スバトバ方面

ノボセリフカに攻撃して、ロミルブロガーによると、ノボセリフカをロ軍が占領したというが、ウ軍参謀本部は撃退したと発表している。

また、ステルマヒフカにもロ軍の大規模部隊が攻撃をしたが、ウ軍は撃退した。

クレミンナ方面

ロ軍は、クレミンナ一帯で攻勢に出ている。特にクレミンナの西側で、大規模な攻撃を行い、ウ軍陣地を突破して、要衝リマンに近いトルスケの街まで大きく前進したが、このトルスケでウ軍部隊に、前進を止められた。

このため、ウ軍はトルスケの隣のザリチネに予備兵力を送り込ん、トルスケの防衛を強化した。クレミンナ方面が、一番ロ軍メイン部隊がいるので、危ないし、リマンを取られると、交通の要所であり、以後の戦局に影響するので、増強したようである。

ディブロバにも攻撃したが、ウ軍に撃退されている。

この方面に、ウ軍当局は、ロ軍空挺部隊、歩兵部隊、ロ軍予備役部隊、領土防衛部隊、退役軍人民間軍事会社、ストームZ突撃部隊を集中させているという。

このように、クピャンスクからクレミンナ方面一帯で、ロ軍はカウンター反転攻勢に出たが、ウ軍に止められた。攻勢は数日しか続けることができなかった。

リシチャンスク方面

ロ軍はスピルネを攻撃して、南側で前進している。そしてビロホリフカへの攻撃は、撃退された。

ウ軍は、ソルダールの北で南進を進めており、かなり食い込んできいる。ヤコブリフカにいるロ軍は、このウ軍を押し返そうとしている。ロ軍がソルダーを取られると、バフムト北側のロ軍は包囲されるからである。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

無自覚な“先生君主”たち。江差高等看護学院パワハラ事件報道に思う

質の高い番組の制作・放送を促し、放送技術の質的向上と放送活動の発展のために、民放各社が放送した番組を部門・種目別に表彰する「日本民間放送連盟賞」。北海道・東北地区のラジオ報道部門の審査員を評論家の佐高信さんが務めたそうです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、まず出品作に原発関連の番組がなかったことを疑問視。その後、候補となった3番組を紹介し、特にSTVラジオが報じた北海道立江差高等看護学院のあまりに酷いパワハラ事件について、教師の無自覚を指摘。この学校だけにとどまらない問題と危惧しています。

天災と人災

7日は民間放送連盟賞の北海道・東北地区の審査だった。ラジオの報道部門である。大分前からやっているが、今年は6本の作品を聞き、3本に絞った上での審査となった。

2011年の3・11を中心とした防災番組が多い。しかし残念だったのは原発問題を追った作品が1つもなかったことである。天災と人災はからみ合っていると思うが、人災の最たるものである原発にどの局も焦点をあてなかったのには何か圧力が働いているのかと考えざるをえない。福島の民放局が作品を出さなかったのも1つの原因かもしれない。

防災では岩手放送の「わすれない3・11」がユニークだった。「防災文化を未来へ─僧侶たちの12年」というタイトルが示すように坊さんにピントを合わせたのである。

被災地では3・11当時、1日に10件も葬式をしなければならなかった。そうした体験を経て、13回忌の2023年。ある僧侶が「生きましょう。それが一番の供養です」と涙ながらに語る。また、「神も仏もあるものか」と思わず弱音を吐いた僧侶が娘にたしなめられる場面もある。

津波の高さと同じ場所まで駆け上がるイダ天競争をやっているところもある。あの教訓を忘れないためである。

秋田放送の「日本海中部地震から40年」という番組では「オレだけ助かった」とつぶやく人の声が耳に残る。「助かった者」にも傷は残るのである。この番組では紙芝居が効果的に使われている。「まさか」という坂はないと言われるが、やはり、ないとは言えないと言わなければならないだろう。

審査員の3人が一致して中央審査に送ったのは、札幌テレビ放送(STV)ラジオの「先生たちが敵だった─夢を奪われた看護学生たち」だった。

私自身も教師をやったことがあるからわかるのだが、学校は極めて閉ざされた社会であり、それを教師たちが自覚していない。「専制君主」ならぬ「先生君主」がそろっているのである。

江差高等看護学院で悲劇は起こった。副学院長を中心として教師が「デブ」「死ね」などと暴言を繰り返す一方で指導を拒否し、生徒たちは追いつめられていく。2019年には男子学生が自殺した。信じ難い事実が取材によって明らかとなり、第三者委員会が設置されて、何件かがパワハラと認定された。

しかし、それでも、当の副学院長はパワハラを受けた生徒に謝ろうとはせず、指導が強すぎただけといった言葉を繰り返す。世の中を知らない教師たちと、踏み込んで問題を対処しようとしない北海道という役所。いまどき、こんなことがあるのかと思わせる実態が暴かれていくが、しかし、統一教会の実態が隠されたままだったことを考えれば、江差高等学院だけにとどまらないのだろう。

この記事の著者・佐高信さんのメルマガ

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“完璧な夫”の定年後がコワい。「劣等感」に悩む妻に効く3つの対策

定年後に何もしない夫と24時間一緒にいるようになって、夫婦関係が崩れるというのはよく聞く話ですが、世の中には真逆のことで悩む人もいるようです。夫が完璧で何でもできて、自分は人間力も家事力も低くて呆れられることを心配する妻の相談に答えるのは、メルマガ『公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ―』著者で公認心理師の永藤さん。完璧な人と比べて「劣等感」を感じるのは、自分を苦しめるだけだとして、心の持ちようを変える3つの方法を具体的にアドバイスしています。

ちょっと御相談がありまして:定年後の夫と私

皆様からお寄せいただいたご相談や質問にお答えしたり、一緒に考えたりしていきます。

Question

shitumon

50代女性。あと数年で定年退職になる8歳年上の夫のことで悩んでいます。夫は悪い人ではありません。むしろ面倒見もいい方だし、人に好かれる人だし、あの年齢にしては育児や家事も協力してくれたと思います。

性格も穏やかで、大声で怒鳴られたり手を上げられたりしたことは一度もありません。私のまわりの人たちも、「いい旦那さんよね」と声をそろえて言ってくれます。

でも、定年後、24時間一緒にいるかと思うと、頭を抱えてしまうのです。私は圧倒的に夫よりも人間力が低いし、家事能力なども低いです。ときどき、夫が私の代わりに料理をすると、後片付けまで完璧にしてくれます。キッチンもシンクもピカピカで、排水溝まできっちり掃除をしてくれます。水滴一つ残しません。

掃除も夫が本格的にするとなると、細かいところまで綿棒や爪楊枝を使って汚れを取り除きます。私は四角いところを丸く掃く人間です。夫の完璧な家事を見ると、苦しくなるのです。私の家事能力が低いことを夫に責められたことはありません。でもきっと、心の底では「使えないやつ」と思われていると思います。

今は毎日仕事に行ってくれているからいいのですが、ニコニコして、完璧に家事をこなす夫が四六時中そばにいるかと思うと息苦しくなってしまうのです。どうすればいいのでしょうか?

【永藤より愛をこめて】

うーん、お気持ちお察しします。完璧な人と一緒にいると、自分がしんそこダメ人間のような気持ちになってしまう、みたいな。「THE 劣等感」とか、「THE 自己嫌悪」みたいなものが、ガッと鎌首をもたげるというか。「苦しくなる」けれど、けっして相手はあなたを苦しめようとしているわけではないんですよね。となると、自分で自分を責めて、苦しめているわけです。

だとしたら、自分が自分を責めないように、苦しめないようにする対策が必要です。有効な対策は3つあるかな、と思います。ひとつめは、自分のことは完全に脇に置いといて、パートナーさんのことを「めちゃめちゃ家事スキルが高いYouTuberか何かのように捉える」、ということ。

断捨離のやましたひでこさんとか、ときめくお片付けのこんまりさんとか、お掃除王子とか洗濯王子とか、いろいろいらっしゃるじゃないですか。ああいう人たちを見て、「ああ、あの人と比べて私ってダメだわ」ってあんまり思わないですよね。

「うわ~!すごーい!」
「こんな技があるんだー!」
と感心するばかり。あと、あの人たちが一般の人たちを「使えないやつ」とはきっと思っていないです。なまじ関係性が近いから、家族だから、なんだかイライラしちゃうけど、あなたのパートナーさんはそれくらいすごい人なのです。

この記事の著者・永藤かおるさんのメルマガ

隙あらば沖縄を奪いにくる中国。プーチンと酷似の“狂った”領土観

長引くウクライナ戦争に関する報道を目にすると、ついつい当事者の問題ばかりを見てしまうものですが、「日本にとってはどうか?」という見方の重要性を語るのは、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんです。北野さんは、戦争の勝敗がもたらす日本への影響と、ロシアが勝利した場合に注意したい、独裁者・プーチンと同じ“領土観”を持つ中国の危険性について解説しています。

中国が【全沖縄】を狙っている証拠

私たちは今、「ウクライナ問題」ばかり見てしまいがちです。リアルな戦争が続いているので、仕方ないでしょう。

何事も「日本にとっては」という視点をもつことが必要です。ウクライナ戦争でロシアが勝てばどうなるでしょうか?習近平は、「ウクライナを侵略したプーチンは勝った。俺が台湾侵攻を決断しても、勝つことができるだろう」となり、台湾有事の可能性が大いに高まります。そうなると日本も、アメリカと共に台湾防衛のために戦うことになる。大変です。

逆にウクライナ戦争でロシアが負け、プーチンが失脚したらどうなるでしょうか?習近平は、「ウクライナに侵攻したプーチンは負けた。俺が台湾侵攻を決断すれば、同じように負けて、失脚する可能性が高い」となり、台湾有事の可能性が減るでしょう。

結局、日本と欧米がウクライナを支援するのは、「台湾有事」「日中戦争」「米中戦争」を「起こさないため」なのです。だから、日本は、ウクライナを助けることで、「日本自身を助けている」ことになります。

「ウクライナ支援は、台湾有事を起こさないため」

この視点が絶対的に大事です。

そして、中国の動きにも、引き続き注意が必要ですね。最近、沖縄がらみで動きがあります。7月3日から7日、沖縄の玉城デニー知事が訪中しました。この訪問について、TBS NEWS DIG 7月7日を見てみましょう。

今回の玉城知事の中国訪問を前に注目されたのが、習近平国家主席のこの発言。

習近平国家主席(人民日報より)

「私は福州で勤務した時、福州に琉球館・琉球人の墓があり、琉球と深い付き合いがあることを知った」

中国共産党の機関紙「人民日報」によると、習主席は先月、資料館を視察。沖縄県の尖閣諸島は「中国に属する」との文書の説明を受けた際、かつての「琉球」との交流の歴史に言及したのです。

習近平が沖縄について、「私は福州で勤務した時、福州に琉球館・琉球人の墓があり、琉球と深い付き合いがあることを知った」と発言したそうです。これは、どういう意図があるのでしょうか?

この発言について専門家は。

林泉忠琉球大学元准教授

「玉城知事の訪中を強く意識したのではないか。沖縄を取り込むというか良い関係をつくっておいて、ある意味では日本を牽制する思惑があるのでは」

そして、日本が台湾問題に深く関わった場合には「沖縄の領有権を認めない」と主張する可能性もあると指摘しました。

林泉忠琉球大学元准教授は、

<日本が台湾問題に深くかかわった場合には、「沖縄の領有権を認めない」と主張する可能性がある>

とおっしゃっています。

 

 

魅力度ランキングで知事が“キレた”群馬県の「魅力」を高める方法

2022年に発表された「都道府県の魅力度ランキング」で44位になった群馬県。これに、同県の山本一太知事が「信頼性に欠ける」などと激怒したことで記憶に残っている人も多いと思います。実は、群馬県は過去5.6年のランキングでも40位が最高と低迷しています。しかし、本当に魅力が低いのでしょうか? 今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者、佐藤きよあきさんは「ランキングが不思議なくらい」としたうえで、群馬県の魅力度を高めるためにすべきことを語っています。

群馬県の「魅力度ランキング」をアップする方法

群馬県と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。

下仁田ねぎ、こんにゃく、中山秀征、井森美幸。

それ以外のものが頭に浮かぶ人は、少ないのではないでしょうか。

失礼ながら、全国の人の群馬県に対する認識は、その程度なのです。

なぜ、それほど知られていないのでしょうか。

魅力がないので、興味を持ったことがないのでしょうか。

そうではありません。

実は、多くの人が群馬県のことをよく知っているのです。

訪れたことのある人も多く、観光地としても有名なのです。

ところが、「群馬県と言えば」と問われると出てこない。

これは、有名な観光地と群馬県が結びついていないからなのです。

「草津温泉」「伊香保温泉」「四万温泉」などの名湯。

「道の駅・川場田園プラザ」「道の駅・ららん藤岡」など、テーマパーク級に大人気の観光施設もあります。

これらの名前を聞くと、誰もが知っているのではないでしょうか。

しかし、「都道府県魅力度ランキング」では、低迷しているのです。

2022年が第44位。それ以前の5、6年も第40位が最高。

どうして、ここまで魅力がないと思われているのでしょうか。

その答えが、観光地と群馬県が結びついていないことにあります。

つまり、群馬県を知らないのです。

実際に訪問したことがあっても、そこが群馬県だと認識していないということです。

テレビやネットで情報を見ていても、群馬県だと思っていないのです。

「魅力度ランキング」は、住みたいか、観光に行きたいか、お土産を買いたいか、などのイメージを数値化しているので、

“群馬県”を知らなければ、答えようがないのです。

有名な観光地をしっかり紹介した上でアンケートを取れば、もっと上位になるのかもしれません。

しかし、これはアンケートの取り方が悪いのではなく、群馬県そのものをPRしていない行政の責任です。

群馬県には、こんなに素晴らしい場所があるのです、ということをもっともっとアピールすべきです。

群馬県のサイトなどを見ていると、地域や施設を羅列しているだけです。

しかも、まったくの情報不足。魅力が全然伝わってきません。

私の知る群馬県は、もっと楽しい場所であり、魅力もいっぱい。

「ランキング」が不思議なぐらいです。

群馬県には、有名でなくても、面白く楽しい場所がたくさんあります。

無料でこんにゃく料理バイキングが食べられる「こんにゃくパーク」。ここは、連日大行列です。

懐かしレトロな「るなぱあく遊園」「スカイランドパーク遊園地」「オートミライ華蔵寺遊園地」。「群馬サファリパーク」「桐生が岡動物園」。

全国では次々に消えているような施設が、まだまだ残っているのです。

また、ハンバーガー、そば、うどん、ラーメンなどのレトロ自販機が数多く並ぶ、「ドライブイン七輿(ななこし)」には、全国からマニアが訪れています。

ご当地グルメとしては、「もつ煮込み」「水沢うどん 」「ひもかわうどん」「高崎パスタ」「ソースカツ丼」「焼きまんじゅう」「炭酸まんじゅう」「おっきりこみ」「すいとん」などがあります。

群馬県は、こうした“観光資源”を眠らせているのです。知ってもらう努力をすべきです。

たくさんの観光資源を出しながら、それが群馬県であることを強くアピールする必要があります。

たとえば、キャッチフレーズとしては、「あなたが知っている、その観光地。実は群馬県です」。

これがキャンペーンのテーマともなります。

とにかく、有名観光地と群馬県を結びつけること。

それが、「魅力度ランキング」をアップさせるために、もっとも大切なことではないでしょうか。

 

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