赤字の会社が節税しても意味はない?その答えは「ここ」にある!

赤字の会社の場合、節税しても意味はないのでしょうか?今回の無料メルマガ『税金を払う人・もらう人』で、著者の現役税理士・今村仁さんが赤字の会社に向けた税金のお話、そしてその節税方法についても紹介しています。

赤字でも節税~固定資産税(償却資産税)

■赤字の会社で節税は無意味?

従業員の給料を上げると「賃上げ減税」が受けられますよ?

保険を使った節税策ご存知ですか?

全額経費になりますよ?

などと節税ネタが氾濫していることがありますが、これらは基本的に法人税の話です。

つまり、会社の利益に対して発生する法人税を減らすことが出来ますよ、という話だということです。

何を申し上げたいのかというと、では赤字の会社であればそもそも法人税が発生しないだから、節税をしても無意味ではないかということです。

これに対する一般的な回答しては、「イエス」です。

■赤字でも発生する固定資産税(償却資産税)

では、赤字の会社で「節税する必要はないのか?」というと、これに対しては「ノー」です。

なぜなら、赤字で法人税は発生しなくとも、例えば、所有資産に対してかかる「固定資産税(償却資産税)」は発生するからです。

不動産に対してかかるのを一般的に「固定資産税」といい、機械装置などにかかるのを「償却資産税」といいますが、どちらも所有資産に対して約1.4%かかり内容は同じです。

では、その固定資産税(償却資産税)の節税策は無いのでしょうか?

■答えは、「あります!」

資本金1億円以下の中小事業者等が、令和7年(2025年)3月31日までに、市区町村から認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づいて、160万円以上の機械装置等一定の設備を新規取得した場合に、新規取得設備に係る固定資産税(償却資産税)の課税標準が3年間、1/2に軽減されます。

また、従業員に対する賃上げ方針の表明を計画内に記載した場合は、令和6年3月末までに取得した場合は5年間、令和7年3月末までに取得した場合は4年間にわたって1/3に軽減されます。

「先端設備等導入計画」の詳細はこちらとなります。

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増え続ける共働きパパママ。彼らへマーケティング調査したら見えてきたモノ

共働きで子育てをする家庭は一昔前に比べて増え、それにともなって家族のニーズも変化してきています。そんなイマドキの家族へのマーケティングのヒントをデータに基づいて紹介する一冊を、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者である土井英司さんが今回ご紹介しています。

【豊富なデータで知る「共働き家族」の実態】⇒『共働き・共育て家族マーケティング』

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共働き・共育て家族マーケティング

ジェイアール東日本企画イマドキファミリー研究所・著 宣伝会議

こんにちは、土井英司です。

本日の一冊は、さまざまなデータから今どきの「共働き・共育て」家族の実態を明らかにしようとした、マーケティング書。

著者は、広告会社である株式会社ジェイアール東日本企画のプランニングチームです。

メンバーが全員フルタイムで働く共働きの子育て経験者で、豊富なデータで共働き家族の消費実態を明らかにしています。

メディア接触、食事、買い物、お出かけ、子育て、お金…。

「食」に関するデータが多い印象ですが、データをパラパラ眺めているだけでも、商品開発・マーケティングのヒントが浮かんできます。

これからの時代、夫婦共働きはスタンダードになるので、本書で示された消費実態は、基本として押さえておきたい。

本書でも、<最新の調査では共働き世帯の数は専業主婦世帯の約2・8倍>と紹介しています。

共働き家族が何で悩んでいるのか、どんな商品・サービスがあれば助かるのか、はっきり見えてくるのが特長です。

専業主婦と比較したデータを見ると、明らかな行動・意識の違いがあるのが面白かったです。

なかでも、「考えなくて済む」が忙しい共働き家族への訴求ポイントになるという話は勉強になりました。

商品開発・マーケティングに関わる人は、本書で示されたいくつかのキーワードをもとに企画すれば、成功確率が上がると思います。

出版にも役立つ話がいくつかあり、出版業界人にもおすすめの内容です。

東日本大震災から13年経っても…自治体職員の鮮烈な記憶に「新たな衝撃」

東日本大震災が発生した3月11日の前後には、多くのメディアが決まってあの日を振り返る特集を組みます。今年は、元日に能登半島地震が発生したこともあり、その数も多く内容も濃かったのではないでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、震災5日後には故郷である被災地に入り、捜索や救助活動を手伝った著者の引地達也さんが、「新しい衝撃」を受けたというNHKスペシャル「語れなかったあの日 自治体職員たちの3.11」を紹介。職員たちが自らの体験を語る際の「間」に、番組が伝えようとした教訓だけでないメッセージを読み取っています。

エスノグラフィーが紡ぎだす「間のある」人と東日本大震災

正直なところ、2011年3月11日以来、私の「世界が変わった」衝撃も13年も経てば時間の圧力に風化が進むだろうとの思いがあった。しかし、13年に際してテレビメディアを通じて新しい衝撃が加わった。

それはNHKスペシャルで語られた自治体職員の振り絞るような言葉である。「エスノグラフィー」の手法を引用し、発災直後の自分を語る職員たちの悲痛な表情。13年の歳月をかけても消えない鮮烈な場面は、消え失せることはないようだ。

命を大切にしようという、誰もが優先するべき当たり前を、救助や埋葬で何らかの「命の順番」を付けなければいけない残酷さに向き合いながら職務を遂行した彼・彼女ら。個人情報保護の側面からも住民と直接やり取りをする自治体職員の苦悩を伴う動きは、公に出されることが少なかった。

メディアでは良悪の基準で図られがちであるが、職員らの現実的な対応は困難な状況下では常に正を求められるからつらいのだろう。答えは1つではなかったはず、と今だから言える言葉を噛みしめながら、当時の苦悩を目の当たりにしている。

3月10日のNHKスペシャル「語れなかったあの日 自治体職員たちの3.11」は、宮城県や気仙沼市などの自治体職員の1000人以上の聞き取り調査をもとに、数人の職員が発災直後の自分の行動、そして周囲で起こったことの語りを中心に構成されている。

番組の中で、その聞き取り手法はエスノグラフィーと紹介されたが、ヒューマンライブラリーに近い「語り」に重きが置かれたような印象がある。当時の記憶を語り、それを記録するプロセスにおいて、質問者とのやりとりはなく、1つのテーマに対し、自らが言葉を紡ぎ語っていくという方法である。

少なくともカメラの前ではそう言えたが、自分の語りで話は展開するから、当時の記憶を呼び起こしながら、それを再度考え、自分の内面にあった思いを外に表出することになる。その言葉と表情がシンクロして、人が真剣に思い、考える様が心を打つ。

その語りは、番組の紹介では「被災者の極限的な心情に向き合いながら奮闘した自治体職員たちが語る生々しい言葉には、大規模災害が相次ぐこの国の未来に伝えるべき教訓が詰まっている」と説明し、未来への教訓と位置付けた。しかし、それだけではない力強いメッセージも伴っている点がこのインタビューの真骨頂だろう。それは、人が生きる、ことへの根源的な問いかけだ。

ふるさと納税に「Amazon参入」の衝撃。日本の仲介サイトは壊滅か?巨大IT打倒のヒントは怪メッセージ「お届け予定でした」にあり

23年には1兆円を超えたとされる「ふるさと納税」の寄付総額。そんなふるさと納税の仲介事業に、Amazonが25年3月にも参入予定であることが報じられ大きな話題となっている。

【関連】アマゾン、ふるさと納税に来春にも参入へ 仲介競争さらなる過熱か

楽天ふるさと納税」や「さとふる」といった仲介サイトは、寄付の受付や返礼品発送の支援と引き換えに、自治体から寄付総額の約10%程度の手数料を受け取っている。つまりは1千億円前後の巨大市場というわけだが、そこにAmazonが目をつけたのだ。

返礼品だけでなく独自特典やポイントも利用を後押し

2008年にスタートしたふるさと納税制度だが、なぜここまでの規模にまで成長したのか。

「ふるさと納税は言ってみれば“住民税の前払い”で、税金の一部を本来の納税地ではなく好きな自治体に“寄付”名目で前払いすることで、その分あとから支払う税が安くなるというものです。正確には寄付した金額から2,000円を除く全額が控除されます」

と話してくれたのは50代のテレビ情報番組関係者だ。

「つまり納税者は2,000円の負担増となるのですが、そのかわりに寄付した自治体からさまざまな返礼品がもらえます。つまり“返礼品の価値-2,000円”をまるまる得することになるというのが基本です。返礼品のほとんどがその基準を満たしていますから利用者が増えるのも当然ですよね」(同前)

さらに、ふるさと納税仲介サイト各社が用意した独自特典や、寄付をクレジットカードなどで決済した際に付与されるポイントも、納税者にとっては大きなメリットになるという。

すでに「ふるさと納税業界」で大きな存在感を示すAmazon

実はAmazonは、今回の発表以前から「ふるさと納税業界」では大きな存在感を示していた。かつては何の縁もゆかりもない「Amazonギフト券」を返礼品としていた自治体も多数あったのだ。例えば大阪府泉佐野市は2018年にAmazonギフト券を贈るキャンペーンを仕掛け、多額の寄付金を得ていたと報じられている。

【関連】ふるさと納税497億円 泉佐野市、アマゾンギフト券影響か

しかしこの事態をふるさと納税の趣旨にそぐわないとした国が、「金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)」の送付を禁じたため、“返礼品”としてのAmazonギフト券は消滅している。たが“抜け道”はあるという。

「ふるさと納税仲介サイトの独自特典として、Amazonギフト券は今も大人気です」

というのは40代の男性ネットメディア編集者。自身もふるさと納税を利用しているという。

「まずポイントサイト経由でふるさと納税仲介サイトに新規ユーザー登録をして、仲介サイトから自治体に寄付をすることで、Amazonギフト券の“多重取り”ができるケースもあるんです」

ポイ活とは無縁の生活を送る筆者には皆目理解できないこの仕組みを、男性ネットメディア編集者が解説してくれた。

曰く、例えば還元率が5%に設定されたポイントサイト上に掲載されている、寄付額の10%分のAmazonギフト券の還元を謳う納税仲介サイトの広告をクリックして1万円の寄付をすれば、ポイントサイトからはAmazonギフト券に交換可能な500ポイント、仲介サイトからは1,000円分のAmazonギフト券と、合計1,500円分が得られるとのこと。つまり実質8,500円で1万円分の寄付ができるという計算だ。しかもこれは“裏ワザ”ではなく、ふるさと納税仲介サイト各社が“高還元率”を謳い積極的に宣伝していると男性ネットメディア編集者は言う。

自治体から送られてくる返礼品以上に、ほぼ現金として利用できるAmazonギフト券は納税者にとって魅力的であることは間違いない。

Amazonはふるさと納税に革命を起こすのか

Amazonはネット通販や動画配信のサブスクのほか、クラウドサーバーの分野もAmazon Web Services(AWS)で牛耳るITの巨人。Amazonギフト券をばらまくふるさと納税仲介サイトの多くが、そのAWSに依存し運営されているのが現状だ。

「このまま仲介サイトがAmazonギフト券を納税者特典で贈り続けることは、Amazonという敵に塩を送るようなことになりかねないか、という声もあります」(同前)

たしかに言いえて妙だ。さらに、本家Amazonが自社のギフトを他の仲介サイトよりも好条件で還元する“Amazonギフト券ばらまき祭り”すら予想されると同氏は話す。

これは納税者にとって大きなメリットではあるが、既存の国内仲介サイトは大打撃どころかとどめを刺される可能性すら浮上してくる。日本勢は“黒船”Amazonに屈するしかないのだろうか。

そんなAmazonに“反撃”の狼煙を上げたつもりなのだろうか、斎藤経産相は12日の会見で、フランスで導入済みの書籍の無料配送を禁じる「反アマゾン法」等を「研究する価値がある」とした。

【関連】本無料配送禁止の反アマゾン法、経産相「研究価値ある」 書店振興で

同記事によると、リアル書店の存在を危うくしているAmazonの送料無料化や過剰なポイント付与を問題視しているという。Amazonが書店を駆逐したのは事実ではあるが、今さら送料無料を禁止したとしても、それは紙の書籍が売れなくなるだけ。斎藤氏は「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」の幹事長を務めているというが、自分で自分にとどめを刺すだけではないだろうか。

「8:00 〜 12:00 にお届け予定でした」Amazonが意味不明のメッセージを連発中。商品はいつ届くのか?

それでは、Amazonに弱点はないのだろうか。

「Amazon打倒のヒントは、『お届け予定でした』という怪メッセージにあります。最近のAmazonは、その原点であるネット通販に大きな弱みを抱えているんです」

こんな指摘をするのは、マスコミ関係者の40代男性デスクだ。「●日●時にお届け予定」となっていた商品が指定日時を超えても一向に届かず、配送状況画面が「お届け予定でした」と謎の過去形になる現象が多発しているというのだ。SNS上にはこの怪メッセージに関する書き込みが溢れている。

《お届け予定でしたってなんだよ日時指定した意味ないじゃねーか》

《お届け予定でしたって開き直りやがったよアマゾン》

《お届け予定でしたじゃないよ、届けるのか届けないのかはっきりしてくれ》

《お届け予定でした?でしたってどういうこと?こっちは待ってたんだけど》

《お届け予定でしたにはどう返すべき?残念です!とか?》

ただ「待て」ということなのか、それともこちらから連絡しなければならないのか、商品がいつ届くのかまったく分からず、ユーザーは虚を突かれるばかりだ。

「配送会社に状況を確認しようにもなぜかリンクもなく追跡番号は手入力ですし、Amazonへの問い合わせ先もどこにあるのか分かりにくいことこの上ありません。ようやく発見しても、世耕弘成のトーク術を学習したとしか思えないチャットボットに行く手を阻まれ、カスタマーサポートと話すことすらままならないという謎仕様ですから…」(同前)

ようやく繋がっても、戻ってくるのは「商品が届くまでお待ちください」というテンプレ回答で、担当者によっては「配送会社にお問い合わせください」と指示してくる場合もあるといい、混乱に拍車をかけているのが現状と前出の男性マスコミ関係者は言う。

「最近はずっとこんな具合です。それでもAmazonサイドに改める気配はまったく見られません。こんな“アメリカ流”がAmazon最大の弱点ではないでしょうか(同前)

政府としても、書籍の無料配送を問題視するよりも、カスタマーをないがしろにするかようなAmazonの姿勢を論点にする方が“反撃”としてよほど効果的ではないだろうか。「楽天ふるさと納税」が大ダメージを被りかねない三木谷浩史社長が立ち上がることにも期待したいものである。

子どもの“不自然死”には「性別と近隣の貧困要素が影響する」という研究結果

子ども時代の自殺や他殺、事故死などの不自然死に関して、性別や近隣の影響が大きい可能性があるそうです。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』で、都市部に居住する子どもを対象にした研究結果を紹介しています。

不自然死に関連する子ども時代の要素

◎要約:『都市部に居住する子どもの、長期的不自然死に関連する要素として男性であること、近隣の貧困状態があげられるかもしれない』

自殺や他殺、事故死等の不自然死に関して、死亡当時の様々な精神疾患や行動に関する特徴等が背景として考えられます。

今回は、中年期までの不自然死に関連する子ども時代の要素を調べた研究をご紹介します。

Childhood Factors Associated With Unnatural Death Through Midadulthood

中年期までの不自然死に関連する子ども時代の要素

都市部に居住する2,180人の子ども(平均6.3歳、女性50.0%)が対象となり、その後のデータが分析されました。

結果として、以下の内容が示されました。

・41歳までに、111人(10.2%)の男性と29人(2.7%)の女性が亡くなりました。

・上記のうち96人(全死亡の86.5%)の男性と14人(全死亡の48.3%)の女性が不自然死でした。

・女性であることは不自然死のリスクを低下させ、居住地域の近隣が福祉援助世帯であることがリスクを上昇させていました。

個人的あるいは、家族に固有の要素よりは、近隣地域の環境的要素の影響が大きい点が興味深い内容でした。

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Webコンテンツも「紙の本」で残すべき。「ほぼ日」編集者・奥野武範さんが単行本『バンド論』を作ったワケ

紙の本、つまり書籍の「衰退」が叫ばれて久しい昨今ですが、もともと紙の本の編集者だった私は、出版社や編集者の苦悩はとてもよくわかります。それでも、Webで読むべき記事と、紙の本で繰り返し読むべき文章というものがあるはずで、それぞれ両立・共存すべきだと私は思います。そんななか、「ほぼ日手帳」でおなじみ糸井重里さんの老舗Webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で編集者として活躍する奥野武範さんが、『バンド論』や『常設展へ行こう!』など、とても興味深い本をいくつも編集されています。しかも、本の元ネタはどれも「ほぼ日」のネットコンテンツなのです。そんな奥野さんに、Webで連載していた記事を今あえて「紙の本」にした理由、そしてWebコンテンツを紙にすることの意味などについていろいろお話を伺いました。(まぐまぐニュース!編集部 gyouza)

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構成・文 奥野武範『バンド論』(青幻舎刊)

単行本『バンド論』(青幻舎)を作った『ほぼ日刊イトイ新聞』編集者・奥野武範さんインタビュー

──本日はお忙しいなかお時間をいただきありがとうございます。知り合いの方から「バンド論についてバンドマンにインタビューした面白い本があるんだよ」と紹介されて、奥野さんが構成・文を担当された『バンド論』(青幻舎)を読ませていただきましたが、とても面白い本でした。有名な5つのバンドのフロントマンにそれぞれ「バンドとは何か?」ということについてインタビューした、というシンプルな構成ですが、それにしても豪華な方々にお話を聞いていますね。サカナクションの山口一郎さん、bonbosの蔡忠浩さん、くるりの岸田繁さん、サニーデイ・サービスの曽我部恵一さん、ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんの5人という。

もともとは、Webサイト「ほぼ日」で組まれた特集というか、プロジェクトだったんですよね?

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ほぼ日刊イトイ新聞 特集 バンド論。

奥野武範(以下、奥野):はい、2021年の初頭に連載していた特集で、多くの人に読んでいただきました。お話を聞いた方々は、必ずしも「バンドとはこうである」という「定義」や「結論」を明確に持っていたわけじゃないと思うんです。でも、インタビューの場で、あらためて「バンドって何だろう」と立ち止まって考えたり、それを表現する言葉を探ったりしてくださった。その思考のプロセスを垣間見れたのが、おもしろかったです。ぼくにとってのヒーローばかりなので、緊張しましたけど(笑)。

──また、本の造りが良いですよね。ブックデザインを手がけた祖父江慎さんのこだわりが随所に出ています。本の中に入っている写真は、まるで本物のポラロイド写真が挟まっているように見えますね。

奥野:本の上か下かどちらかに合わせて写真を入れるのであれば、製本の機械でできたらしいんです。でも、祖父江さんが指定してきたのが、この絶妙な位置だったので、すべて職人さんの手作業で貼り込んでいただきました(笑)。

──ええっ、そんなに手間がかかっている本なんですね。装丁も中身も、こだわりのある本だということは、それだけでも伝わりました。

奥野:この本は明確に出版時期を決めてつくりはじめたわけじゃなかったので、祖父江さんの手が空いたときにデザインしていただいたんです。それで完成まで1年10カ月くらいかかってしまったんですが、それだけ時間も手間もかけてつくったこともあって、なんか、とてもいい本になったと思います。本屋で見かけると輝いてます。自分の本なので、当たり前なんですが(笑)。

──この本のデザインは、どんなコンセプトだったんですか?

奥野:最初の打ち合わせで、祖父江さんが「みすず書房の本みたいな感じ?」みたいなことをおっしゃっていたんですね。あ、いいなあと思いました。その1年10ヶ月後、こうして、どこか学術的な匂いを感じる本ができました。デザインの芯のようなものが、最初の時点で確立していたんでしょうね。祖父江さんのすごさを、あらためて感じました。

──バンドの本とは思えないほどカッチリしているけれど、螺鈿のような箔押しや曲線のイラストなども入っていて、固いような固くないような、とても絶妙で素敵なデザインですね。同じ記事でも、ネットで見るのと紙に印刷されるのとでは、まったく違う印象だと思いました。

奥野:やっぱり、紙に定着させるということがあるから見えてくるものがありますね。ネットにはネットの良さがあるけれど、本という形にしてよかったと思います。

──ネットでこの連載記事を読んだことのある方は、本になったものを見て、また特別な印象を持たれたでしょうね。

奥野:「ほぼ日」の連載を読んでいて、この本を手にとってくれた方もたくさんいらっしゃいます。「ネットは半永久的に残る」ってよく言われますけど、ぼくは本の方が「残る」と思うんです。実際、何百年も前の「新古今和歌集」とかが博物館に残ってますし。ネットの海は広大すぎるから、残ってはいても「海の底」じゃないですか。その存在を知らなければ、たどり着くのも難しい。その点、本というかたちになっていれば、誰かが見つけて読んでくれることもあるだろうし、「この本いいよ。読んでみて」なんて誰かに手渡すこともできるので。

──そうですね、ネットにはない伝え方ができるという意味で、本の存在意義はあると私も思います。

奥野:この本で言うと、みなさんの「バンド論」って、これからも変わっていくと思うんです。というか、プロのバンドマンであれば「バンドとは何か」って、一生をかけて問い続けていくような大きな質問だと思うんですね。画家の方にとっての「絵画とは何か?」みたいに。その意味では「途中経過」なのかもしれない。でも、そのぶん「バンドって何ですか?」という問いに、そのときの気持ちで答えてくださったような気がします。

「答えがない」のがいい

──そのとき時点での彼らの「バンド論」を切り取って読むことができる、という意味では貴重な記録ですよね。これを本に残すことには意味があると思います。

奥野:僕の仕事の9割は誰かにインタビューすることなんですが、そのときにその人が考えていたことをそのまま残す、自分はそういうことがしたかったんだなと最近気づきました。だから、揺るぎない「解答」ではないこともあるんですが、「考え中の答え」には、そこにしかないおもしろさがあるなあと思います。もしかしたら「バンドとはこうである!」と一言で結論付けられるよりも、読み手が考えを広げられる「余白」とか「ヒント」がある気もしますし。

──そうですね、読み手が勝手にヒントを見つけてくれるという(笑)。

奥野:SNSの反応を見ていると、ビジネスマンの方がこの本を「組織を作るときの参考になった」「リーダーシップ論として読んだ」みたいなことを投稿していたんです。必ずしもバンドをやっている人だけに刺さる本ではないんだな、と。もちろん、ご本人たちにはそんな意図はなく、ただただ「大好きなバンドというもの」について話しているだけなんだと思うんですが。

──そういう意味では『バンド論』というタイトルは言い得て妙といいますか、読んだ人たちが後から解釈するという意味にもとらえられますよね。バンドやってる人も、やっていない人も、みんなそれぞれが思う「バンド論って何?」という。その答えは書いていないけど、みんなが考えるきっかけになる本ですよね。

奥野:そうですね、自分なりの答えを見つけてもらえるような、読み手に遊んでもらえる本なのかなと思います。

奥野さん、なぜ「ほぼ日」に?

──話は変わりますけど、奥野さんはどういった経緯で「ほぼ日」に入られたんですか?

奥野:僕は「VOW」シリーズが大好きで宝島社に入社したんですが、配属は『Smart』というファッション雑誌の編集部でした。ファッション企画の他には書評欄を担当していたんですが、あるとき当時「ほぼ日」が出していた『オトナ語の謎。』という本を取り上げたんです。めちゃくちゃおもしろくて。それから「ほぼ日」を意識するようになったんですが、あるとき、たまたま「企画コンテンツをつくる人募集」って出ていたんです。あ、おもしろそうだなと思って応募したら入らせてもらって。それがもう18年くらい前の話です。

──けっこう「ほぼ日」歴が長いんですね(笑)。

奥野:正直、こんなに長くいることになるとは思いませんでした。居心地が良かったんだと思います(笑)。

──でもすごいですよね、ネットだけでなく本も手がけられているという。

奥野:逆に言うと、僕は何かの専門家ではないんです。強いて言えば「インタビュアー」なのかもしれませんが、それだって「ただの容れ物」ですよね。具体的な中身は、インタビュー相手によるので。当然、音楽についても、好きなだけの「ド素人」です。だから『バンド論』についても、音楽に詳しい人にとっては物足りないかもしれないけど、普通の人が普通に抱くような質問をしているというところが、わりとおもしろがられたのかなとは思いますね。

──専門的な話をされても、知らない人にとっては何を話しているのかよくわからないですもんね。

奥野:今回はバンドというテーマでしたが、「ほぼ日」では、そのときどきで興味のあるテーマで特集をつくっています。最近ラジオに出演したときに「バンドについて語ってください」と言われたんですが、『バンド論』の話はできるけど、「バンドの話」は全然できない(笑)。専門的な話は無理なんですが、それでもよければと言ってお受けしているんです。

──普通の人が聞きたいことが載っているという意味で、この本はこれでよかったんでしょうね。

実は、まだある「紙の本」になった特集

奥野:そのあとに「色物さん。」という特集をやりました。寄席に出ている「落語家と講談師以外の芸人さんたち」だけに出ていただいたもの。漫才コンビや紙切り、太神楽やマジックなどをやるみなさんは、寄席では「色物さん」と呼ばれているんです。

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ほぼ日刊イトイ新聞 特集 色物さん。

──これまた、いい感じの特集ですね。

奥野:これこそ僕は演芸の専門家でも何でもなくて、ただ寄席が好きで、たまに行くだけなんです。でも、通ううちに、落語家の師匠や講談師の先生の本ってたくさんあるけど、色物さんに特化した特集って、そんなにないんじゃないかなと思って。色物のみなさんって「寄席では、トリを務める落語家の師匠や講談師の先生を引き立てる役です」とおっしゃるんです。その潔さが、カッコいいなあと思っていたので、特集をやろうと。きっと、色物さんならではの職業哲学やプライドのような気持ちもあるだろう、それを感じに行きたいと思って企画しました。これも本になったらいいなと思っています。

──私も寄席が好きなので、本になるのが楽しみです。奥野さんは、単行本にもなった「編集とは何か。」も手がけてらっしゃいますよね。

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ほぼ日刊イトイ新聞 特集 編集とは何か。

奥野:自分は雑誌の編集者からはじまって、もう20年以上編集者をやっていますが、いまだに「編集者に憧れている」ようなところがあるんです。すごい本や特集をつくる編集者が、世界でいちばんカッコいいと思っている。そこで、尊敬する17人の編集者に「編集とは何でしょう、教えてください」といってインタビューしてまわりました。このときも「編集とは何か。」に対する「唯一絶対の答え」はなくて、「それぞれの編集者の、そのときの考えの集成」となりました。700ページ以上あるんですが(笑)。

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構成・文 奥野武範『編集とは何か。』(星海社新書)

──いま、奥野さんが新たに注目しているものは何ですか?

奥野:これも最近本になったんですが、多くの美術館には「常設展」ってあるじゃないですか。その美術館の所蔵作品を展示しているやつです。企画展にはたくさんの人が並ぶけど、常設展って意外とガラガラだったりするんですよね。でも、行けば「ピカソ」とか「マティス」とか「ウォーホル」とかを見ることができる。世界に7枚あるゴッホの《ひまわり》のうちの1枚も、新宿のSOMPO美術館に常設されている。つまり、行けばいつでも見れるんです。自分自身、そういうことを知らなかったんですが、あるときに「常設展って、宝の山じゃないか!」と思い知り、日本の12の美術館に「あなたの館のコレクションを『自慢』してください!」といってはじめた特集を、左右社さんが本にしてくれたんです。

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ほぼ日刊イトイ新聞 常設展へ行こう!

──これは面白いですね。私も上野の国立西洋美術館の常設展が子どものころから大好きだったので、この良さはとてもよくわかります。

奥野:取材をはじめたのがコロナのときなんですが、海外に行けなくなってしまったという残念感のなか、飛行機に乗らなくても電車で「世界的名画」を見に行けるんだよなあと思ったこともあります。最初は国立東京博物館、東京都現代美術館からはじめて、倉敷の大原美術館や富山、青森など日本各地で取材しました。

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構成・文 奥野武範『常設展へ行こう!』(左右社)

──奥野さんは、「ほぼ日」さんのコンテンツを本にしたものをいくつも手がけていらっしゃいますけど、「ほぼ日」さん的にはオッケーなのですか?

奥野:はい、あの、まず印税はすべて会社に入れていただいているので、ぼく個人に「もうけ」はないです(笑)。リソースっていうんですか、会社のお金を使って、会社の仲間の助けでつくっているので当然ですし、そこは正直どうでもいいんですが、じゃあなぜ、こういうことをやっているのかというと、「ほぼ日」のコンテンツをウェブ以外の場所に「残したい」なと思っているんです。冒頭で話も出ましたが、本にした場合には物体として残るし、「ほぼ日」を知らない、まったく新しい読者へ届く可能性もある。その場合、自分たちで本にするより、書籍づくりのプロである出版社の編集者にお願いしたほうが、よりよいものができるだろう。そう思って、やっています。

──なるほど。コンテンツをアーカイブとして残したい、それって重要ですよね。ネットは消えるのも一瞬ですが、本は形に残りますもんね。

奥野:さらに、基本がインタビュー集なので、出ていただいた方々で印税をわけて、残りを「ほぼ日」でいただくかたちなので、まあ‥‥会社からしてみれば、それほど「もうかる仕事」ではない。僕個人の「支出エネルギー」と「金銭的収入」として考えれば、完全に「趣味」です。後者がゼロなので。でも、仕事と同じくらい、ある場合には仕事以上に「真剣に取り組んでいる趣味」です。あらゆる趣味ってそういうものかも知れませんが。

──もうけよりも、コンテンツを「紙の本」として形に残すことが重要だ、ということですよね。本日は貴重なお話をありがとうございました。


【取材を終えて】

「ネットのコンテンツをアーカイブとして残したい」との思いから、紙の本という形にこだわって編集を続けている「ほぼ日」の奥野さん。そろそろ、わがMAG2 NEWSも「紙の本」を出す時期に来ているかもしれないな、なんて思いました。大好評の『バンド論』は、Web、書店でお買い求めいただけます。ぜひ、お手にとって「バンドとは何か?」という永遠のテーマにご自身の手で触れて見てください。(MAG2 NEWS編集部gyouza) 

協力:濱田髙志

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構成・文 奥野武範『バンド論』(青幻舎刊)

バンドって、ふしぎだ。

ふだんは会ったりしないのに、もっと言えば、それほど仲が良さそうでもないのに、彼らが音を出し合えば、心がふるえて止まらなかったりする。

昨日ギターを買ったばかりの中学生が、「バンドを組んだ」というだけで、どこか、なぜだか、誇らしげな顔をする。

絶頂なのに、何かの理由であっさり解散して伝説になったりする。

ある瞬間にはダイヤモンドより硬く結合する反面、床に落とした消しゴムほどの衝撃で分解してしまいそうな脆さを孕んだ、人間の集合体。

「バンド」のその魅力、そのふしぎさとはいったい何なのか、という問いの答えを知るために、5つのバンドのフロントマンに尋ねたインタビューが1 冊の本になりました。

書籍版の特別コンテンツとして、本書のために「バンド」をテーマに書き下ろされた、燃え殻さんによるエッセイと今日マチ子さんによる短編マンガを巻頭と巻末に収録しました。

「バンド」経験のあるなしにかかわらず、少し体が熱くなるような、ピュアでストレートな音楽賛歌です。

出版社 ‏ : ‎ 青幻舎
発売日 ‏ : ‎ 2023/3/3
単行本 ‏ : ‎ 256ページ
定価:2,200円(税込)

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自民党の茂木幹事長が「公費でドスケベパーティー」を叱責できぬワケ。裏金・会食・接待文化、パリピ自民の本性あらわ

自民党和歌山青年局の“過激パーティー”が大炎上中。自民党本部は、下着のような際どい衣装を身につけた女性ダンサーを懇親会に呼ぶにあたり、公費は使われなかったと説明していますが、これまたどうやら大ウソのようです。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんは、「税金のかからない政治資金=公費でダンサーたちを呼び、享楽にふけった」と分析。懇親会を企画した県議の離党という「トカゲのしっぽ切り」で幕引きを図る自民党全体の自浄能力のなさと、裏金・会食・接待に溺れる悪しき文化を厳しく批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:自民党を蝕む裏金作りと会食・接待文化

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自民党青年局の破廉恥パーティーは「誰のために」企画されたのか

自民党和歌山県連の青年局長だった45歳の県議、川畑哲哉氏は党青年局近畿ブロック会議を昨年11月18日、和歌山市内のホテルで開くにあたり、会議と懇親会の企画を担当した。

近畿2府4県の府県連が持ち回りで毎年開催するこの会議には党青年局所属の国会議員や近畿の若手地方議員ら約50人が参加するとあって、川畑氏はみんなに喜んでもらえる内容にしたいと意気込んだに違いない。

川畑氏は充実した懇親会だったと確信したのだろう。懇親会翌日、「X」に以下のような投稿をしている。

(前半省略)夜遅くまで語り合った同志の皆様、各地各所で大切な役割を担って下さった青年部・青年局及びご関係の皆様、本当にありがとうございました。

それから何ごともなく112日が経過した3月8日、川畑氏に驚天動地の事態が襲いかかる。

産経新聞(電子版)に、懇親会風景の写真とともに青年局近畿ブロック会議に関するスクープ記事が掲載されたのだ。

下着と見まがうような露出の多い衣装をまとった複数の女性ダンサーを会場に招いていたことが8日、関係者への取材で分かった。産経新聞が入手した動画には、ダンサーに口移しでチップを渡す参加者の姿も。

少なくとも5人が音楽に合わせてステージや宴席のテーブル周辺で踊り、参加者にボディータッチなどをしていた。紙幣のようなものを口にくわえ、ダンサーに口移しで渡す参加者や、ダンサーの衣装に紙を挟み込んで尻を触る参加者の姿もあった。

夜遅くまで同志で語り合ったというのは、こういうことだったのか。つめかけた記者たちに、川畑県議は次のように釈明した。

多様性という会議のテーマの表現として出演を依頼した」「海外でもダンスをされていると聞いている」。

「多様性」と、セクシーなパフォーマンス、参加者のハレンチ行為が、どのように関係するのかはさっぱりわからない。いかにも苦しい言い訳に聞こえた。

川畑県議一人だけの責任であるはずがない

もちろん、彼だけのせいではあるまい。会場は大いに盛り上がったようだ。彼だけが突飛な企画者だったとも思えない。会議の幹事役のお鉢が回ってきたら、過去の懇親会を参考にするだろう。

川畑氏は安倍派の裏金問題の鍵を握る政治家の一人、世耕弘成前参院幹事長の元秘書である。産経新聞への動画流出に、二階俊博県連会長(自民党元幹事長)と世耕氏との政治的対立を関連づけようとする向きもあるが、たいして根拠はなさそうだ。

女性に触ったかどうかは「言えない」藤原崇衆議院議員

懇親会に参加した自民党本部の藤原崇青年局長と、中曽根康隆局長代理は早々に役職を辞任した。「本来止めるなどの対応を行うべきだった」というような理由だ。藤原氏は党政治刷新本部のメンバーでもある。女性ダンサーに触っていたら議員を辞職するかと記者に問われて、こう答えた。

「それについては私の口からは今の時点では言えない。いまの認識では触っていないという認識です。議員辞職は非常に重い話であり、記憶違いが万が一あった時にはすべてを無にするので、そこまでは言えません」

動画の存在が怖いのだろうが、触っていないことに確信が持てないというのは、よほど酩酊していたか、興奮していたのだろう。

「公費(=国民の血税)で女遊び」は自民党の伝統文化

さて、肝心な問題はここからだ。開催費は参加者から徴収したほか和歌山県連が一部を負担したと川畑氏は説明しているという。参加者は国会議員や地方議員たちであり、会費は政治活動費として出しているはずである。そして、県連の財政は自民党本部からの支部交付金で成り立っている。

要するに、参加者たちは税金のかからない政治資金でダンサーたちを呼び、享楽にふけったということになる。

自民党本部は「公費は出ていない」と強弁するが、自民党の収入は、国民の税負担で賄われる政党交付金が70%近くを占め、あとは企業・団体献金の受け皿である国民政治協会や所属議員からの寄附などによるものだ。

お金に色はついておらず、そこから支出されるのはすべて政治を目的とする公費といっていい。私的なお楽しみに使えるおカネは1銭たりともないはずだ。

始まる前に崩壊中?習近平肝入りの「理想未来都市」スマートシティで閑古鳥が鳴いている

日本よりもはるかに貧富の差が激しい中国。鄧小平時代の「先富論」から「共同富裕」への政策転換は絵に描いた餅にすぎず、都市部と地方の所得格差は広がるばかりです。折しも習近平は北京近郊に、巨額予算を注ぎ込んだ「理想都市」を開発中ですが、最新技術を駆使したスマートシティという触れ込みとは裏腹に早くもゴーストタウン化の兆しが。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』は、この“閑古鳥状態”の大きな原因として、「貧困層のほうが多いという自国の現実がまったく見えていない」点を指摘しています。

中国が威信を賭けて開発「理想都市」の危うい実態

3月5日に開幕した全国人民代表大会で、李強首相が政府活動報告で触れた「雄安新区」についてのプロジェクト。これは何かというと、「有明海に匹敵する広大な田園地帯を、ハイテクを駆使した『理想都市』に変貌させる計画」のこと。

中国、13兆円投資の「理想都市」閑散 習氏主導も企業や大学の移転進まず

習近平も何度も現地視察に訪れたという、政府の肝入りの国家プロジェクトです。もう少しこの計画についての説明を、以下、報道を引用してご紹介しましょう。

『北京から車で高速道路を2時間ほど走ると、農地の中に突然、高層ビル群が現れた。雄安新区は北京の南西約120キロにある河北省3県にまたがり、総面積約1700万平方メートルに及ぶ。』
『昨年末時点で主要事業に6570億元(約13兆4500億円)の予算が投じられたという。」
「地元メディアによると、2023年時点で雄安新区には86の企業などが新規進出しているが、国内の大手IT企業や先端産業、研究機関が中心。進出企業を限定している点が改革・開放路線の下、起業家や海外からの投資を引きつけて発展した深センと大きく異なる。地価高騰を防ぐため、不動産取引にも制限がある』

莫大な国家予算をつぎ込んで始まった国家プロジェクトは2020年に始まり、2035年に完成予定となっています。未来都市としての理念は、「創進智能(イノベーション&インテリジェントシティ)」、「緑色生態(グリーンエコ)」、「幸福宜居(幸福で住みやすい街)」の3つ。医療、教育、介護など、社会機能の全てを包括し、それらの全てを最新技術で連携させたスマートシティを創り上げるという、壮大な構想です。

その舞台として選ばれたのは河北省の雄安新区でした。なぜここなのかというと、北京から120キロほどと近く、北京の人口密集を緩和させる狙いもあり、この場所が選ばれました。

そして、未来都市は着々と建設され続け、コロナ禍でさえも可能な限り工事を続け、4年ほどで田園地帯に新たな街が出現しました。

“閑古鳥”が鳴く未来都市の行く末は…

しかし、今、報道されているのは、その未来都市の行く末を心配するものばかりです。例えば、以下、報道を引用します。

習氏の理想都市は空っぽ、権力の限界露呈-北京に近い「雄安新区」

中国の改革・開放政策を主導したトウ小平氏が1979年、中国南部の地図上に円を描き資本主義を実験する経済特区を広東省深センに設けると決めたという逸話がある。それから40年近くたち、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は時代を象徴する都市建設の野心を、首都北京に近い「雄安新区」で体現すると発表。北京の人口密集を解消するハイテク都市になるという雄安は、「人類発展の歴史におけるモデル都市」とうたわれた。
以来、共産党は世界最大の水力発電所である三峡ダムの倍以上となる約6100億元(約12兆3000億円)を雄安に費やしてきた。かつてトウモロコシ畑だった場所には現在、鉄道駅やオフィスビル、集合住宅、5つ星ホテル、学校、病院が立ち並んでいる。
唯一足りないのは住民だ。ブルームバーグの記者が今月の平日に訪れた際、雄安に向かう高速道路にはほとんど車が走っていなかった。雄安中心部の通りで開いている店やレストランもほとんどない。
首都からの移転を迫られている研究所の職員は、子どもたちの教育の質が心配だと打ち明けた。2022年に移転計画を発表した北京を拠点とする大学4校は今、代わりに第二キャンパスの設置を目指している

追い詰められた統一教会。有田芳生氏と紀藤弁護士へ仕掛けたスラップ訴訟に「連敗」、日本に求められる「セクト規制法」制定

22年、テレビ番組での発言で名誉を毀損されたとして、ジャーナリストの有田芳生氏と紀藤正樹弁護士を相次いで訴えた旧統一教会。東京地裁は先日、この2つの訴えを棄却する判決を言い渡しました。今年1月、弊サイトに掲載した記事で教団側の「敗訴ラッシュ」を予想していたのは、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さん。多田さんはメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で今回、これらの判決が意味することを解説するとともに、今後の旧統一教会の動きを見据えた議論の必要性を訴えています。

【関連】統一教会の「敗訴ラッシュ」が続くのか?元信者が読む“逆ギレ裁判”の行方

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:3月12日、13日とも旧統一教会の訴えは却下 教団の関連団体が行う能登半島ボランティア活動についての弁護士の見解

今年に入って、統一教会側の敗訴「3連打」が意味すること

今月に入っても、推薦状に盛山正仁文科大臣がサインをした写真が出されるなど旧統一教会の問題は盛んに報じられています。しかも、これは教団の関連団体の信者側からのリークで、教団側が旧統一教会の問題の火を消すまいと必死になっている姿にさえみえてきます。

さらに、3月12日、13日に東京地裁で、旧統一教会がジャーナリストや弁護士を訴えた裁判の判決もありました。連日、訴えは却下となり、教団側は自分に降りかかった火を消そうとして、その火がより燃え広がっている結果となったように感じています。

1.「日本テレビと有田芳生氏」を訴えた教団側の訴えは棄却

2022年8月19日のテレビ番組「スッキリ」で有田芳生さんが発言した「やはりもう、霊感商法をやってきた反社会的集団ってのは、警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係を持たないと、そういうことをスッキリ言わなければだめだと思うんですけどね」について、旧統一教会は名誉棄損されたとして日本テレビと有田芳生氏さんを2,200万円の損賠賠償請求と謝罪広告で訴えました。その判決が3月12日にありました。

原告の請求は棄却です。

判決後に行われた司法記者クラブの会見で澤藤大河弁護士は「全面的な棄却判決となり、名誉毀損ではないという判断が明快に示された」と話します。

光前幸一弁護団長も「裁判所がこの判断を下すということは、有田さんの発言には真実性があることを踏まえた上で、統一教会の主張に対しては門前払いの判決になっている」としています。

有田さんは勝訴判決を受けて「そもそも名誉毀損に当たらないという門前払いだということに大きな意味があると思っております。これからひるむことなく、統一教会の反社会性について発言をしていきたい」と力強く話します。

2.文科省による統一教会への解散命令請求の前哨戦になるとの見解

有田芳生さんの弁護団は「この訴訟は単なる名誉棄損事件ではなく、被告側の有田さんから原告の統一教会の反社会性の立証を積み上げてきたものである」として文科省による統一教会への解散命令請求の前哨戦になるとしています。

阿部克臣弁護士は「2022年の10月27日の提訴時の会見で、これは確実に勝てる訴訟だ、かなり絞り込んでいるんだと自信を見せていたんですね。ところが、今日の判決では、そもそも名誉毀損に当たらないということになりました」と話します。また

「もう一つ補足しておくと、現在の東京地裁で別の裁判官が審理している解散命令請求事件と今日の判決が関わってきます。

解散に値する教団かどうかの要件として、組織性、悪質性、継続性というのが言われています。

まさにこういうスラップ訴訟(不都合な言論を封じることを目的にした訴訟)をどんどん起こしてくるということ自体が、悪質性を裏付けるものになるわけです。統一教会のこういう反社会的な属性を示しています。まさにそこを裏付けたという意味で、解散命令請求にも影響を与える判決だと思います」

とも述べます。

この記事の著者・多田文明さんのメルマガ

大谷翔平が「WBCの試合前に残した言葉」には“多くの思い”が詰まっていた

日本を代表する小説家・五木寛之氏が数々の名言を紹介する連載がスタートした月刊誌『致知』。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、その一部として紹介された大谷翔平選手の名言を紹介しています。

大谷翔平選手の名言の背景にあるもの

本年1月に行われた弊社主催の新春特別講演会に登壇され、素晴らしいご講演をいただいた作家の五木寛之氏。

五木氏による新連載「千年の名言──今を生きる言葉」が最新号の『致知』4月号よりスタートいたしました。

その一部をご紹介いたします。

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「千年の名言」という言葉に、人はどのようなイメージを思い浮かべるのだろうか。

一般には、はるか過去の古典のなかで語られた言葉が、現代まで生き残って、私たちの胸に強く響くことを指すと考えるのが普通だろう。

しかし、偏屈者の私は千年の昔から人口に膾炙して、今なお輝きを失わない古典の言葉だけを〈名言〉とは考えない。

いま、私たちの日常生活のなかで、日々、泡のように生まれ、消費され、消え去る言葉のなかにも、明日の千年を生きる名言があるのではないかと思うのだ。

古式床しき過去の名言も貴重であり、同時に未来千年の明日に生き残る名言も大事だろう。

いま、まさに時の人である大谷翔平選手がWBCでの試合前に残した言葉なども、その一つではあるまいか。

「きょう一日は、彼ら(アメリカの名選手たち)を憧れるのはやめよう」

と、大谷翔平選手は言った。

その言葉の背景には、東北で異国の野球に魅入られた少年たちの過去の憧憬と、思いが深く影をおとしている。

その決断があったからこそ、決勝戦でアメリカ・チームに勝つことができたのだ。

たぶん、彼のその日の言葉は、千年のちまで名言として語りつがれるのではあるまいか。

「千年の名言」とは、古いから名言なのではない。名言だからこそ生き続けたのだ。

私たちの周囲には、日常の会話や、メディアをとおして、そのような言葉が無数にあふれている。その中から時代の変化に耐えて、後世に語りつがれる名言が誕生する。

この欄では、過去と現在とを問わず、時空を超えて今後も生き続けるような言葉、今を生きる名言をピックアップしていくつもりだ。

(『致知出版社の人間力メルマガ』2024年3月13日号より)

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