ゼロコロナ終了で暗雲漂う日中関係。国益を顧みない岸田首相の愚策

ゼロコロナ政策を転換した中国での感染爆発を受け、岸田首相は水際対策の強化を表明。対して中国大使館は日本人へのビザ発給を停止する報復的な措置を発表し、年明け早々から日中関係に暗雲が漂っています。ゼロコロナが日本を守ってもいると主張しこの事態を予見していたのは、メルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』著者で、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さん。ネット世論やアメリカに動かされるように対策を決めた岸田政権に嘆息。国内の感染状況やアメリカでの新たな変異は棚に上げ、国益を顧みていない状況は安倍政権以下と呆れています。

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早速暗雲漂う日本と中国の関係から、岸田政権は何を得ようとしているのか

中国のゼロコロナ政策は単に中国の国内だけではなく、日本にとっても防波堤だ。このメルマガでは何度もそう書いてきた。そして不人気のゼロコロナ政策は、西側メディアが国内の不満を訴える抗議者の声を後押ししたことも手伝い、厳しい封鎖措置の緩和へと大きく舵を切ったのである。

するとたちまち感染爆発が起き、あとは「弱毒化を信じる」という一種の「神頼み」のような状態に陥った。感染爆発がおきることは、本稿で何度も「こうなるからゼロコロナ一択なんだよ」と説明してきた。感染拡大の初期にこれを放置していたら次々に変異した株が続々と日本に渡ってきたことだろう。それが日本にとっても防波堤と言った理由だ。

さて、この事態に日本の岸田政権は早速「中国からの渡航者にコロナ検査を義務付ける」と水際対策の強化を発表した。

思えば3年前、当時の安倍政権は中国に対して厳しい姿勢を打ち出しながらも、自国経済にとってインバウンドと中国人観光客がどれほど大切かを自覚していた。だからこそネットを中心に「中国人を入れるな」、「中国への忖度か」と批判されても、安易な人気取りに走ることはなく国益に忠実だった。

それを考えると現政権は底が一つ抜けてしまったようだ。そもそもウィズコロナで勝ち誇ったようにゼロコロナ批判をしていたのはどの国だったのか。しかも、日本では12月27日、1日当たりの死者が初めて400人を超え、大晦日の31日には、新規感染者が全国で10万6412人だった。とても褒められた状況ではないのだ。

明らかに人気取り──といってもネット世論に対するものだが──とアメリカへの忖度が目的なのだろう。真っ先に中国人への対策を強化したのはアメリカであり、台湾も続いた。要するに嫌がらせだが、それを主導するアメリカの感染状況も決して楽観が許されるほど良くはない。

中国の感染拡大はオミクロン株の「BA・5」が主流だが、アメリカでは、すでにワクチンの効果が未知数だとして恐れられる「XBB・1・5」が広がり、40%が置き換わったという報道──NBCがCDCの情報として伝えた──もある。「XBB・1・5」は昨年11月ごろから広がり始め、警戒されてきた。つまり侵入を防ぐというのならば、よほど「XBB・1・5」に注目すべきではないかと思うのだが……。

一方の中国は、もう腹をくくったということなのか、観光を解禁する方向をはっきりと打ち出した。中国国家移民管理局は1月8日から移民管理政策措置を最適化するとウェブサイトを通じて発表(昨年12月27日)している。これに敏感に反応したのは、観光地として世界で高い名声を獲得している国々だ。

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会社から現場までの「移動時間」は労働になる?賃金が発生する条件とは

会社から現場への移動時間は労働に該当するのでしょうか? そんな問いに応えるのは無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者である社会保険労務士の飯田弘和さん。 飯田さんはわかりやすく事例を紹介し、労働時間と賃金の支払いについて解説しています。

会社から現場までの「移動時間」は労働時間に該当するのか?

ある事業主様から受けたご相談です。こちらの会社は、建設現場から出る産業廃棄物を自社のトラックに積み込み、廃棄場まで運んで廃棄するといった業務を行っています。労働者は、朝、会社から自社トラックを運転して現場に向かい、そこで産廃を積み込みます。ご相談とは、会社から現場までの移動時間が労働時間に該当するかというもの(出勤時間と考えることは可能かというご質問)。

結論を先に申し上げると、今回のケースの場合、会社から現場までの移動時間は労働時間に当たります。会社から現場までのトラックの移動は、“産業廃棄物のトラックへの積み込み、および廃棄場までの運搬・廃棄”というメイン業務のために必要な準備行為であると考えられます。そして、メイン業務に必要な準備にかかった時間は労働時間と考えられます。この“会社から現場へのトラックの移動”は、業務上、絶対に必要な行為であり、そうであれば労働時間として、この移動時間について賃金の支払い義務が生じます。

また、少し別の観点からも、この移動時間が労働時間に当たるという事が言えます。こちらの会社では、朝、会社に来ることが義務付けられているので、会社に来た時点で、“出社”であり、その時から事業主の指揮命令下に入ったと考えられます。すなわち、業務が開始されたと考えられます。そうすると、会社から現場までの移動時間は、“業務中の事業所間の移動”と考えられるため、その移動時間は労働時間という事になります。

なぜ、このステーキ店に来る客は肉よりも「ご飯」を褒めるのか?

父親から受け継いだ米屋を守り切ることができなかった息子が、ある日突然開店させた「とあるお店」が大人気となっています。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、「ごはんの付け合せ」としてステーキを添えたメニューだけで戦う飲食店を分析しています。

米屋がご飯屋で復活!メインは「ご飯」、つけ合わせは「1ポンドステーキ」

厳しい社会情勢の中、あるお米屋さんが閉店しました。

父親から受け継いだお店でしたが、守り切ることができませんでした。

そんな時、悩んでいた店主に、知人からのアドバイスが……。

美味しいご飯を食べさせ、お米の魅力を伝えるお店を開店することになりました。

東京都江戸川区。「コメトステーキ」。

住宅街にあって、黄色いテントシートが少し目立っているものの、名前も書かれておらず、何のお店かもわかりません。

入口近くに黒板が立っており、店名とメニューが書かれているだけです。

この地味とも言えるお店が、連日大盛況となっているのです。

メニューは、「米とステーキ」「米とステーキ(よく焼き)」のみ。

つまり、1種類だけの専門店。

しかし、ステーキ屋さんではなく、ご飯屋さんなのです。あくまで、メインディッシュは「ご飯」なのです。

ご飯を美味しく食べてもらうためのつけ合わせが、「1ポンドステーキ」です。約450グラムの牛肉です。

元お米屋さんなので、米に対するこだわりが強く、どうすればご飯が美味しく炊けるか、どうすれば美味しく食べられるかを考え抜いた結果、ステーキと一緒に食べてもらうことにしました。

お米は時季によって産地・銘柄を代え、研ぐのではなく、優しく洗い、浸す水の量も独自に研究。

一晩冷蔵庫で寝かせた後、お客さまの入り具合を見ながら、一升ずつ炊いています。

ステーキに使う牛肉は、アンガスビーフの肩ロースを約450グラム。

フライパンで焼いて、ニンニクの入った醤油ベースのタレをかけて仕上げます。

肉を取り出したところにもやしを入れ、火が通ったら、それをステーキの上にトッピング。ステーキの横に刻みニンニクを添えて、完成です。

「つけ合わせのお肉でございます」と言われ、まずステーキが出てきます。

その大きさに唖然としていると、「メインディッシュのご飯でございます」
という声とともに、お皿に盛られたツヤツヤのご飯が登場します。

かなりボリュームのあるセットですが、ステーキの濃いめの味つけが白いご飯に合い、誰もがガツガツ食べてしまいます。

もはや異次元の無能。岸田首相が「少子化うんぬん」を語る前にすべきこと

年頭記者会見の席上、2023年に挑戦する大きな課題の1つとして「異次元の少子化対策」を上げた岸田首相。しかしながらその具体的な内容は何一つ決まっておらず、多くの国民から疑問の声が上がっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「まずは子どもたちを救うのが先」として、あまりにも多くの子供が食事すら満足に取れないという我が国の惨状を訴えるとともに、まったく手を打たぬ岸田政権を批判。さらに欧州各国で合計特殊出生率を回復させた「最大の少子化対策」を紹介しています。

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異次元の無能首相にきっこからの提案

「アベノミクスの失敗」を隠すために、日銀の黒田東彦総裁が当初の「2年間」という公約を完全に無視して強行し続けて来た「異次元の金融緩和」がようやく終わると思ったのも束の間、今度は岸田文雄首相が4日の記者会見で「異次元の少子化対策」などと言い始めました。それも「異次元の少子化対策を行ないます」と断言したのならともかく、なんと「異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代から『ようやく政府が本気になった』と思って頂ける構造を実現すべく、大胆に検討を進めてもらいます」って、またまた「検討」&「丸投げ」です。

さすがにコレにはネット上でもお茶を噴き出す人が続出し、「異次元の少子化対策って、もしかして二次元の彼女まで『子ども』として数えるのか?」だの「異次元の少子化対策って、成人年齢を60歳に引き上げて、59歳までの国民を全員『子ども』と見なすのか?」だのと、まるで大喜利状態になってしまいました。さらには、8日放送のTBS『サンデー・ジャポン』に出演したモデルでタレントの藤田ニコルさんも「この言葉を聞いた時に『えっ?』ってなっちゃって。今まで本気じゃなかったんだって、絶望しちゃったというか‥‥」と呆れていました。

岸田首相は、この「異次元の少子化対策」の基本方針として、「児童手当など経済的支援の強化」「子育てサービスの強化」「働き方改革の推進」の3本柱を挙げましたが、これらは今までさんざんやって来たことで、何ひとつ目新しいものはありません。さらには、具体策もゼロで財源にも言及せず、ただ単に「異次元の少子化対策」というインパクトのある看板を掲げただけなのです。その証拠に、この「異次元の少子化対策」の具体的な内容については、子ども家庭庁に指示して「これから決める」と言うのです。

思い起こせば一昨年10月の就任会見でも、岸田首相は「新しい資本主義」という看板を掲げましたが、あの時も具体的な内容はいっさい口にせず、「成長と分配の好循環」という抽象的なお題目を壊れたボイスレコーダーのように繰り返すだけでした。そして、それでも一部の記者が「具体的な内容は?」としつこく食い下がると、こともあろうに岸田首相は「具体的な内容は『新しい資本主義実現会議』を発足してこれから決めて行きます」と抜かしたのです。そして、1年以上が過ぎた今も、国民の誰ひとりとして「新しい資本主義」が一体何なのか、まったく分からないままなのです。

「新しい資本主義」しかり「異次元の少子化対策」しかり、具体的な内容など何ひとつ決まっていないのに、取りあえずインパクトのある看板だけ掲げて「やる気感」や「やってる感」をアピールし、内容は後から考えるって、国民をバカにするにもホドがあります。さらに言えば、この「新しい資本主義」は安倍晋三元首相の「新しい判断」の二番煎じ、「異次元の少子化対策」は日銀の黒田総裁の「異次元の金融緩和」の二番煎じで、ネーミングにすらオリジナリティーのカケラもありません。

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北方領土問題も解決か。ウクライナへの「武器援助」で達成される日本の悲願

欧米歴訪出発前の1月6日、ゼレンスキー大統領と電話会談を行った岸田首相。昨年は防弾チョッキやヘルメットといった防衛装備品をウクライナに提供した日本政府ですが、仮に武器供与を求められた場合、我が国はどう対応すべきなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ戦争の最新の戦況を詳しく紹介。さらにウクライナへの武器援助によって日本が得られるメリットを解説しています。

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ウクライナ軍への「武器援助」で日本側にメリットはあるか?

2月24日のロシアのウクライナ侵攻で戦争が始まり、10ケ月が経ち、ロ軍装備・弾薬が枯渇してきたようだ。そして、ウ軍支援は、日本にとって直接的なメリットが存在する。それを検討しよう。

ロ軍の兵器や弾薬が底を突いてきたようである。戦車が前線に出てこなくなり、準備砲撃の支援もなく、ロ軍は人海作戦の突撃が中心であり、ウ軍の餌食にされている。

弾薬枯渇が見えるのは、2022年6月にはロ軍は1日6万発の砲撃が、2022年12月には、1日2万発の砲撃と大きく減っているからである。

ベラルーシ軍が持つ砲弾もすべてロ軍に送ったともいう。

ロシアの砲弾工場の生産は、1年30万発であるが、その砲弾を5ケ月で使い切るので、砲弾の備蓄を使うことになり、2013年時点では260万トンの貯蔵があったが、それも使い切り、それより古い40年前の砲弾備蓄も尽きてきて、北朝鮮やイランから砲弾を買い集めたが、それもなくなったようだ。今はロシア製武器を使う主にアフリカ諸国から集めているようだ。

その結果、1日の使用数を削減する必要があり、攻撃箇所を絞ることになったり、突撃攻撃の支援をしなくなった。

それと、戦車が不足してきて、T-54/55やT-62、1958年に登場し、1970年代後半まで生産された50年以上前の戦車を引っ張り出してきた。

このように、ロ軍は行き詰まって戦術・戦略に大きな変化がでてきた。分隊レベルの単純な突撃を繰り返していたが、兵員を集め、砲撃も集中してきた。

もう1つ、ロ正規軍とワグナー軍やカディロフ軍が補給を巡り摩擦を起こしている。このため、各軍の間の連携はないようである。バラバラな行動になっている。

バフムト・ドネツク方面

ロ軍は、バフムトに戦力の大半を集中させているが、バフムトからソルダーやバクムツクに攻撃重心を移しているようである。

これは、バフムトを占領するには、ロ軍はソルダーを占領し、バフムトとソルダーの間の高地制圧を目指しているからである。このため、ロ軍はソルダーを包囲しようと懸命になっている。

もう1つ、ワグナー以外の傭兵部隊もいて、南アのエグゼクティブアウトカムズの傭兵やアフリカ各地の傭兵部隊というか、アフリカ諸国の正規軍がいるようだ。アフリカ諸国の財政事情から、自国軍を派遣して、収入としているようである。

プリゴジンのロシアの囚人兵だけでは手が足りないので、アフリカからも傭兵というか正規軍人を入れている。戦争慣れしているので、アフリカ系傭兵は手ごわいとウ軍狙撃兵は言う。

そして、ワグナー軍がバフムトに固執するのは、プリゴジンが、塩と石膏の鉱山を得たいためと、ホワイトハウス高官は言うが、そのアフリカ系正規軍を駆使して、ワグナー軍は1月6日に、ソルダー近郊の岩塩鉱に到達し、現在、ソルダーの街の約半分を支配したようだ。ソルダーとバクムツクのウ軍は退却した。それにしても、プーチンの停戦命令をワグナー軍前線部隊は無視のようである。

ロ軍は、ベレストーブとヤコブリフカも占領し、続いて、ロゾドリフカとソルダーに進軍して、ロゾドリフカの攻撃はウ軍により撃退されているが、ソルダーは攻撃が成功したようである。

ソルダーにロ正規軍が出て来たという事は、バフムトを取る為ではなく、リシチャンスクを守るのが目的とも考えられる。

このほかの地域も攻撃をしてくるし、防御するが、前線に変化なしですね。陣地戦は動かない。マリンカも市街地はウ軍が押さえている。オプトネは両軍の攻防が激しい。

クデュミフカとオザニアニフカの閘門をめぐる戦いは続き、今のところは、ウ軍が維持している。しかし、この方面全体では攻撃する箇所が減っている。バフムト周辺とアンディーウカ周辺、マリンカなど数か所に攻撃を絞っている。

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【高城剛の未来予測2023】五輪汚職事件の捜査のメスは電通どまり。東京地検も壊せぬゼネコンの堅い壁

メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者で、世界を股にかけ様々なメディアで活躍しているクリエーターの高城剛さん。コロナ禍前には恒例となっていた年一回のロングインタビューが、このたび約4年ぶりに復活しました。2022年の大ニュースを振り返りつつ、2023年以降に日本は、世界はどうなるのか。高城さんが私見たっぷりに語ってくれました。インタビューの全文(約1万8000字)は、1月中に高城剛さんの有料メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』にご登録されれば読むことができます。

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東京五輪招致賄賂問題の元凶はゼネコンにある

高城「今回の東京オリンピック・パラリンピック2020(以下、東京五輪2020)問題も、現段階で電通にまでメスが入りました。でも、根っこはゼネコンだと思います。とにかく、穴を掘って穴を埋めるというのが一番儲かるから、それを繰り返してきたわけです。新国立競技場建設も、(莫大な予算を必要とする)ザハ案で進められました。その後、ゼネコンが儲からないと分かり、A案とB案で再度建築案が見直されましたが、実は出来レース。ザハの案のために買ってしまった資材をもとに一回組み上げて、外装を変えた案にはじめから決まってたんです。

東京五輪2020後も、開催自治体である東京都は、競技場周辺や湾岸地域をはじめとする一等地を、大手デベロッパーに安く払い下げて、商業施設を造る計画を進めています。神宮外苑のイチョウ並木が伐採されると、話題になりましたから、ご存知の方もいるでしょう。そうしたディベロッパーに、東京都から役人が大量に天下っていくという構図が繰り返されているのです」

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──なぜ東京五輪2020の内情に詳しいのですか?

高城「皆さん、お忘れかもしれませんが、東京五輪2020の前、2016年も東京はオリンピック招致をしていて、僕自身がプレゼンテーション映像の総合ディレクターを務めていたからです。残念ながら、その時はブラジル・リオデジャネイロに負けましたが。2016年ではコンパクトオリンピックを謳い、東京湾のエリアで予算3000億くらいに留めてスマートにやるというアイデアでした。今でいう、とてもサステナブルなオリンピックだったのです。東京五輪2020は結局3兆円以上かかったと言われていますから、結果的にゼネコンピックになりました。

ちなみに、オリンピック招致に至るまでにも、かなり紆余曲折がありました。まず、1995年に元タレント議員の青島幸雄さんが都知事になり、翌96年に開催が決まっていた臨海副都心地区での世界都市博覧会が白紙になりました。もともとゼネコンは湾岸地域を開発して副都心にするという目論見でしたから、当てが外れたわけです。それで、「青島さんに都政を任せられない」と、石原慎太郎さんを都知事に担ぎ出しました。それで、博覧会中止で空いた土地に、カジノを誘致しようという話になりましたが、これはパチンコ業界からの反発にあい断念。このアイデアは、そのままシンガポールのマリナベイに流れます。その次に考えたのが、オリンピック招致という流れです」

──東京湾岸地域の開発が、五輪招致の発端だったのですね。

「2016年招致は、正攻法でプレゼンテーションをしたから敗れたとも言えますね。その後、招致レース経験者として、結果的に東京五輪2020にも関わることになりました。

ただ、2016年の経験から、目に見えるプレゼンテーションは誰がやったところで評価の対象にはならないとわかりました。いくら良いものを創って必死に頑張ったところで、無駄なんですよ。開催地決定の朝には、すでにどこが勝つか決まっているのですから。ご存知、裏金の力です。IOCへの忖度…ありていに言えば、IOCの委員に裏金をどれくらい蒔くかで決まると言っても過言ではありません。

東京五輪2020招致では、IOC委員の贈り物として発覚しやすい現金以外に高価な腕時計などが使われました。現金よりも渡すときにスマートですからね。そうした影で動く人たちによって、五輪招致は決まっていくのです。」

──東京五輪2020招致にも関わっておられたとは驚きです。

高城 「決選投票の日、ブエノスアイレスにいました。ただ、石原都知事が辞めてしまわれ、その後を猪瀬直樹さんが引き継ぎました。しかし、ゼネコンおよび都連を中心とした利権団体と対立して退陣させられてしまいました。それで、言うことを聞く舛添要一さんが都知事になり、最終的に小池都政での開催になりました。その間、どんどん予算だけが膨らんでいきましたよね。ゼネコンとしては、コンパクトになんてやってほしくないわけですから、思う壺です。意に沿わない知事は、マスコミと一体になってスキャンダルで潰せばいいだけです。」

──―結局また、ゼネコンの話題に戻ってきましたね。

高城「これこそが、最初に話をした日本の旧態依然としたレジームです。コロナ禍で飲食店を助けるために時短や休業補償の給付金を支給しましたが、あれは飲食店を助けるためではありません。大家さん、つまり不動産関連やゼネコン、地権者を守るための資金なのです。本当に飲食店を救うためなら、他国同様、一時的に家賃をタダにする措置を取ればいい。でも、それでは自民党の支持者である地方の地主やゼネコンが困るから、飲食店を隠れ蓑にしてお金をばらまいたという話です。」

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ウクライナ紛争は半永久的に続く

──―ロシアとウクライナの今後についてのご考察をお願いします。

高城「半永久的に、終わりが見えないなと感じています。まずは、個人的な見解から述べますが、かつて僕自身がイビサ島で毎週DJをやっていたとき、ウクライナ出身のダンサーと親しくなりました。彼女たちはとても重宝がられていました。見た目がよく、酒が強いからです。ダンサーはパーティーのプロモーションをするため、町中のバーを回ってショットを1杯ずつ飲むという儀式があり、その後に朝まで踊ります。だから、酒が強くなければ務まらないのです。

その時、彼女たちからいろんな話を聞くようになり、ウクライナは西側と東側で全然違うということを教えてもらいました。東西ともに基本的なメンタリティはロシア人ですが、西側はヨーロッパ系、東側はスラブ系と民族が違っており、東側の人は特にそれが強いというのを理解しました。

週末になるとDJはヨーロッパ各地のフェスに派遣され、僕はトップDJではないので、辺境の地に行かねばならないことも多かった。そのなかにウクライナの黒海で開催されるフェスもあり、オデッサという街のイビザというクラブでも、何度もプレイしました。そこでも、オーガナイザーやダンサーたちからウクライナで経済的に強いのは東側で、西側は小麦などを作る農業従事者が多いとか、東西の分断について随分聞きましたね。基本的には別の国なんです。」

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──ニュースで、ウクライナは世界屈指の穀倉地帯だと報じていました。

高城 「それはウクライナの西側で、多くは農民です。経済圏は東側にあり、かつてのソ連軍事基地も多い。東側では、たくさん稼いで納めた税金が西側に持っていかれると感じている人が多かったですね。さらに、ロシア正教だったところにウクライナ正教会という新興宗教みたいのが突然でき、余計に話がこじれてしまった。金も宗教も搾られるなんて我慢できない、だったら独立しようというときに、もともと統治していたロシアが後ろ盾になったわけです。すでにクリミアなんかは独立していますよね。それと同じような道を辿ろうとしていたときでしたから、ダンサーたちはロシアとウクライナと2国のパスポートを持っていましたね。つまり、多くのウクライナ人にとって、心の母国と実際の母国は違い、場面で都合よく使い分けているのです。二枚舌と言われるゼレンスキーの背景です。」

──宗教や民族問題が絡むとなると、やっかいですね。

高城 「だから終わりが見えない。そうそう、ウクライナのフェスを仕切っていたのもロシアンマフィアでした。実は今回の戦線で、ウクライナ兵に対してロシア正規軍と一緒に闘っているのはロシアンマフィアです。税金もそうですが、やっぱりウクライナ正教会は問題です。ウクライナ正教会というのは、日本で言えば統一教会みたいなもの。アメリカの軍部、CIAと繋がっていて、この人たちが当地を荒らしているんです。」

──22年末に、バイデン大統領はウクライナへのさらなる支援を表明しました。

高城「サウジアラビアに次いで、ウクライナに十分に兵器を売ったわけですよね。軍産複合体にとっては相当いいお客様です。ウクライナはそろそろ枯れてきたので、次は東アジアですね。この3地域の緊張で、米国の兵器産業は食べています」

次の火種は東アジア。日本もすでに巻き込まれている

高城「この話はずっと言っていますが、東欧、中東、東アジアで戦火もしくは緊張が順番に回るんです。ウクライナが鎮火したら、次は東アジアになるでしょう。だから、この年末に武器商人がいっぱい東京にも来ていました。少し前まで、ポーランドあたりをベースに東欧に行っていた人たちが、今は日本をベースに台湾とか韓国辺りと折衝しています。」

──日本もすでに巻き込まれているんですね。

高城「日本はこれから巨額予算が付くから、美味しいですよね。しかも旧式の武器を。

僕はコロナ初期のロックダウン時期、20203月ごろから半年ほど沖縄に滞在していました。ほとんどのホテルは閉まっているなか、本島中部・北谷のヒルトンリゾートは営業していました。あのヒルトンは米軍基地から近く、米軍関係の偉い人たちがよく利用するため閉められなかったのです。

客の中には、パッと見てすぐに軍人と分かる人たちと、一見何しているか分からない人がいましたね。後者はいわば、スパイです。次第に顔見知りも増え、米軍のパーソナルトレーナーと称する人と仲良くなりました。彼のおかげで、普段は入れないような基地内もいろいろ見せてもらいました。基地内では、コーラは買えても、Tシャツは買えないという不思議なルールがありまして、関税の関係でしょうね。

そのパーソナルトレーナーは、ちょくちょく東京とソウルに行っていました。基地の中をあれだけいろいろ見せてくれても、なぜソウルに行くのかは、ついに教えてもらえませんでした(笑)」

【関連】【高城剛の未来予測2023】北朝鮮のミサイルも台湾有事もすべては“演出”。日本は武器商人の草刈り場になる

※インタビューの全文(約1万8000字)は、1月中に高城剛さんの有料メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』にご登録されれば読むことができます。

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お客の6割は外国人。海外からの観光客が「行くことに憧れる」日本の焼鳥居酒屋くふ楽は何が凄いのか?

コロナ禍前の水準には及ばないものの、徐々に戻りつつあるインバウンド客。そんな中にあって、海外の観光客から「来店することが憧れ」と言われるほどの人気を誇る飲食店をご存知でしょうか。そんな居酒屋を紹介しているのは、フードサービスジャーナリストの千葉哲幸さん。千葉さんは今回、焼鳥「くふ楽」代表の福原裕一さんへのインタビューを通じて、同社が国内外で大人気を誇る理由を探っています。

プロフィール千葉哲幸ちばてつゆき
フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

焼鳥「くふ楽」代表・福原裕一さんに聞く、日本発の焼鳥居酒屋が国内外で大人気となった理由

最近、東京・銀座、新宿、渋谷を散策しているとインバウンドが増えてきていることを実感する。コロナ禍が落ち着いてきて“通常”になりつつあることを感じる。インバウンドはこれからもっとにぎわっていくことが予想される。そこで飲食店はインバウンド対策にどのように取り組んでいるかということで、このトレンドを享受できるか否かということが分かれるのではないか。

そんな中でKUURAKU GROUP(本社/千葉県船橋市、代表/福原裕一)という居酒屋企業の銀座、新宿、渋谷の店がとても好調だという話を聞いた。これらの店は2022年10月に入って開店して以来の過去最高売上を達成しているという。

顕著な例は「福みみ銀座店」、25坪55席の規模にあって昨年11月に1,300万円を超えた。坪月商50万円を優に超えている。「福みみ新宿三丁目店」は35坪68席で1,475万円となった。これらの店ではインバウンドが6割を超えている。平日満席の同店にふらりと尋ねると、外国人の従業員から「予約していますか?」と尋ねられる。このような繁盛ぶりの背景にはどのようなことがあるのか、同社代表の福原氏(57)に取材をして考えてみた。

インバウンドがプラスの情報を発進

福原氏は日本マクドナルドの創業者である藤田田氏の著作に感銘を受け、日本マクドナルドに入社。その後、飲食業で起業しようと焼鳥店で経験を積み、1993年4月千葉・市川に「炭焼BARくふ楽 本八幡店」をオープン。以来飲食店を展開するようになった。業態は主に焼鳥居酒屋で現在国内では東京を中心に15店舗を展開している(ほかに教育事業を4施設)。

同社の特徴は、創業間もない2004年に海外、カナダに出店したことだ。以来アウトバウンドを推進している。現在海外はカナダ8店、インド7店、スリランカ、インドネシア、アメリカ各1店と18店。国内よりも海外の店舗が多くなっている。

「創業間もない段階で海外に出店することに不安はなかったか」と福原氏に尋ねたところ、こう答えてくれた。

「それはまったくなかった。日本のマーケットを見たときに外食産業は縮小することが想定されていたし、飲食ビルに象徴されるように競争が激しいのは日本の外食産業の特徴。そういう意味では、海外の方がある程度戦いやすいと考えていた。カナダに初めて視察に行ったときに『勝てる』という自信があった」

同社では、コロナ前にインバウンド対策を2015年から行っていたとのこと。当時はトリップアドバイザー対策として従業員が食事をしているインバウンドのお客に「トリップアドバイザーにフィードバックをお願いします」と直接お願いしていた。このような会話を闊達にするために、社内で「おもてなし英会話」を開講するようになって現在も継続している。

また、海外のお客には接客で時間が取られることから「オーダーシート」をつくって注文してもらうようにした。インバウンド本位の接客とインバウンドからのプラスの情報発信に努めた。

中国軍兵士1万人戦死も。米シンクタンクがシミュレートした「台湾侵攻」

習近平国家出席が虎視眈々と狙っているとされる台湾の併合。バイデン大統領は有事の際の米軍介入を明言していますが、中国の台湾侵攻はどのような事態を引き起こすことになるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、米国のシンクタンクが公表した台湾有事のシュミレーション結果と、世界的戦略家として知られるエドワード・ルトワック氏が予測する米中衝突の結末を紹介。さらに習近平国家出席に台湾侵攻を思い止まらせる方法を記しています。

台湾侵攻、勝つのはどっち?(米シンクタンクCSIS)

アメリカは今年、三つの戦いをしています。一つは、「プーチンに戦術核を使わせない戦い」です。二つ目は、「習近平に台湾侵攻をさせない戦い」です。三つ目は、「金正恩を暴走させない戦い」です。

世の中には、「アメリカが台湾侵攻を煽っている。軍産複合体の利益のために戦争を望んでいる」と主張する人たちもいます。もちろんそうではありません。

もしアメリカが、台湾侵攻を望むなら、簡単な方法があります。蔡英文さんに独立宣言をさせ、アメリカが台湾を国家承認すればいい。これをやれば、習近平は、勝ち負けはともかく、威信をかけて台湾侵攻を開始するでしょう。

ところがバイデンは、台湾に独立を促しません。彼がやっていることは二つです。一つは、「台湾に侵攻したら、中国は勝てない」と習近平に思わせること。たとえば、台湾にどんどん武器を売る。クアッド、AUKUS、IPEF、民主主義サミットなどで、中国包囲網を築く。さらに、バイデンは「中国が台湾に侵攻すれば、アメリカが台湾を守る」と3回いった。これで習近平は、「台湾に侵攻したら、米軍と戦うことになる」と考え、侵攻のハードルが高くなりました。

もう一つは、習近平を追い込まないことです。既述のように、蔡英文さんが独立宣言すれば、習近平は「侵攻せざるを得ない状況」になるでしょう。だから、バイデン政権は、反中包囲網を築く一方で、「一つの中国を支持する方針に変化はない」というのです。これは、何でしょうか?

要するに、アメリカは、「台湾は中国の一部であり、独立国家と認める予定はない」と。中国を封じ込めつつ、一つの中国を支持する。この一見矛盾した行動が意味するところは、「アメリカは、現状維持を望んでいる」「アメリカは、中国との戦争を望んでいない」ということです。

バイデン政権は、伝統的な「バランス・オブ・パワー戦略」をしている。しかし、「バランス・オブ・パワー」は、「くずされること」があります。

ナポレオン、ヒトラー、プーチンのように、自信過剰の独裁者は「力でねじ伏せることができる」と勘違いし、バランス・オブ・パワーを壊しに動く。それで結局敗北することになるのですが、負けるまでにものすごい数の犠牲者を出す。

習近平も、欧米を侮ったり、自信過剰になったり、あるいは追い込まれたりして、台湾侵攻に走る可能性があります。その結果は?

「沖縄返還密約」暴いた元記者が憤慨。岸田首相の致命的な欠陥とは?

防衛費増の財源に増税を持ち出した岸田首相。自ら選んだ閣僚が次々と辞任する事態も影響して支持率は低迷を続けています。そんな岸田首相に「典型的な世襲のボンボンで自分がない」と厳しい言葉を浴びせるのは辛口評論家として知られる佐高信さん。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、大平正芳元首相と親しく、「沖縄返還密約」を暴いた元毎日新聞記者の西山太吉氏の岸田評を紹介。現在岸田派と呼ばれている「宏池会」本来の重要な精神やバランス能力が欠如していると嘆いています。

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「沖縄返還密約」を暴いた元毎日新聞記者の西山太吉、90歳の怒り

「沖縄返還密約」を暴いた元『毎日新聞』記者の西山太吉と対談して『西山太吉 最後の告白』(集英社新書)を出した。

西山は田中角栄と共に日中国交回復を成し遂げた大平正芳に食い込み、ほぼ一心同体だったが、大平は池田勇人がつくった自民党の政策集団「宏池会」を前尾繁三郎と共に具体化した政治家だった。言うまでもなく、現首相の岸田文雄も宏池会を名乗っているが、骨のない軟体動物だ。

前掲書で西山は「自らの思想、信条をきちんと持ちながらも、物事を多元的、相対的に考え、全体のバランスを取り、落としどころを調整するのが宏池会の精神だ」と語っている。

そして、「この宏池会精神は、それこそ今の日本に最も重要な政治手法だと私は思うが、岸田にはこれが致命的に欠落している」と断定する。防衛費拡大でも安倍晋三の言うがままだと憤慨し、こう続けている。

「私の知っている宏池会とは似て非なるものですよ。宏池会は絶対追随しません。だから、岸信介政権の新安保条約(安保改定)に対し、距離を置いて冷静に見ていた。積極的には賛成しなかった」と指摘する。

岸の弟の佐藤栄作が沖縄返還を急いで自分の手柄としたが、佐藤に反対した大平は西山に「米国側の希望は(基地の)自由使用だからなあ」と嘆いたという。いわば国益を無視して返還を実現させた佐藤がノーベル平和賞をもらってしまったのだから唖然とするしかない。「悪貨は良貨を駆逐する」なのか。

「沖縄返還では情報を流すというやり口だった。すなわち国民には虚無の情報を流すというやり口だった。ところが森友(事件)では、公文書の改ざんだ」と怒る西山に私が「財務省の改ざん事件なんかを見ると、自分のあの事件の延長だなという感じがしますか」と尋ねると、西山は「全くその通りだよね、体質は変わっていない」と答えた。

早稲田大学法学部出身の『朝日新聞』記者が岸田と会って、自己紹介がわりに、早大法学部の後輩だと挨拶したら、岸田は「私は開成高校なので」と返したという。岸田のアタマは高校で止まっているのだろう。

『ZAITEN』2023年1月号の「佐高信の賛否両論」に登場してもらったラサール石井にその話をしたら、彼は「イヤミな人だなあ」と笑い、こう続けた。

「嘘でも『後輩かあ、嬉しいね』と言えばいいのに。ただ、あの岸田さんの顔にちょっと騙されそうになりますよね。真面目で仕事のできる経理課長みたいな感じ。ちょっとはマシかなって思うんだけど、実は全然そうじゃない。むしろ能力が低いかもしれない。それが怖いですね」

やはり、典型的な世襲のボンボンなのである。サラリーマン的な八方美人で、自分というものがない。中曾根康弘に対抗して護憲を貫き通した宮沢喜一を尊敬すると言うが、宮沢の護憲論をまともに読んだとは思えない。

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image by: 首相官邸

アパレル業界が縮図。日本をダメにした「グローバル化」と復権のカギは?

ロシアによる戦争に端を発した物価高、長引くコロナの影響を更に不安にさせる中国での感染爆発と、新年を迎えても先が見えない状況が続いています。衰退が指摘される日本の現状を変えることはできるのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、長くアパレル業界と関わってきた立場からグローバル化の推進が日本の衰退を招いたと指摘。日本のように何でも作ってきたモノづくりの国では、為替変動に影響しないビジネスのあり方を模索しつつ、ローカルに根を下ろしていくことに可能性があると伝えています。

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2023年、どう生きる?

1.混乱と転換の年

2023年が混乱の年になることは間違いないだろう。ロシア・ウクライナ戦争は長期化しそうだ。EUの混乱も収まらないだろう。中国のコロナ対策と経済活性化の見通しは暗い。台湾有事の可能性も高まるばかりだ。中東ではイスラエルとイランの対立が激化し、新たな国際紛争が始まるだろう。

米国はこれらの国際問題を解決する気があるのか、それとも混乱を煽りたいのかが見えない。米国国内も課題が山積している。

日本も安倍氏暗殺後、防衛増税問題、統一協会問題、相次ぐ大臣の辞任など岸田首相のリーダーシップが問われている。金融政策は実質上の利上げに転じ、ドル円為替は円安から円高に転じたが、これも長期的にどうなるかは見通せない。

コロナ禍で休業を余儀なくされた中小零細企業は助成金で延命してきたが、返済の時期が近づいている。かねてからの後継者問題も重なり、大量の廃業、倒産も予想される。高齢化による農家、酪農家の廃業、倒産も心配されている。国内でもコメ不足や牛乳不足が起きる可能性は高い。

中国に過度に依存した製造業は、撤退するにも多大な経費が掛かる。といって、これまで通り継続するのも難しい。東南アジアに移転するか、国内に回帰するか。国内に回帰したくても、電力不足と労働力不足が足を引っ張る。

中国製品に依存してきた流通業も、サプライチェーンの見直し、商品政策の見直しが急務だ。このように、2023年はまだまだ混乱が続くだろう。そして、企業も個人も転換が迫られている。

2.日本を見直そう

コロナ禍の混乱状態の中、日本が底力を見せる場面は少なくなかった。ワクチンができる前、既存の日本製の薬で効果が期待できるものが次々と発見された。また、ワクチン開発にも複数の企業が手を挙げた。マスク不足の時には、日本中の繊維関連企業で布マスクが生産した。アルコール消毒液が不足すれば、酒造メーカーが対応した。

日本はやはりモノづくりの国だ。ワクチンも薬品もマスクも何でも作れる。太陽光パネルも半導体も世界一になった実績がある。コスト競争に負けたが、そのノウハウと経験は現在も失ってはいない。トヨタは自動車販売で世界一になったし、次世代の水素エンジンやEVの開発でも世界をリードしている。

日本は、ロケットも飛行機も新幹線も作れる。原子力発電所、高性能の火力発電所、水力発電所、地熱発電所も作れる。天然ガスの液化技術、海水の淡水化技術等も得意分野だ。あらゆる製品をつくり出す工作機械も世界一の技術を持っている。

ハイテクばかりではなく、職人の手仕事も健在だ。日本製のはさみや包丁は海外でも人気だ。醤油、日本酒等の発酵技術から発展したバイオ技術のレベルも高い。あらゆるモノ作りの技術のレベルが高く、国内市場の規模も決して小さくはない。日本は、海外から見たら羨ましくなるような可能性にあふれた国だ。

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