上がらぬゼレンスキーの戦果。限界に達した欧米の「ウクライナ支援疲れ」

開戦から1年7ヶ月を超えるも、先の見えない状況が続くウクライナ戦争。欧米のウクライナ支援疲れも頂点に達した今、新たな難題がNATOに降りかかりつつあるようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、最新の戦況を詳しく解説するとともに、アメリカの「ウクライナ支援拒否」の動きに対するゼレンスキー大統領の反応を紹介。さらにNATO加盟国コソボと国境を接するセルビアの不穏な動きを注視しています。

前進止まったウクライナ軍。欧米のウクライナ支援も限界か

ロ軍最強の第76空挺師団は、南部コパニの東側面を防衛している。師団全体で、そこにしか投入されていない。相当損耗しているようである。師団規模は1万人であるが、相当に少ないようである。

オリヒウ軸にウ軍は集中して攻撃している。その他では、バフムトの南を攻撃している。それ以外では、ウ軍は攻撃をしていない。

ロ軍も全体的に攻撃をしなくなった。ロ軍は代わりに各地で空爆を行っている。

このため、あまり状況の変化がない状態である。

クピャンスク・スバトバ・リシチャンスク方面

ロ軍は、防衛のみで攻撃できない状態になっている。このため、ロ軍は航空優勢であることで、空爆を各地で行っている。ウ軍も、攻撃を行っていない。

ロ軍はクピャンスク南部のオスキル川にかかる4つ以上の橋を空爆して破壊したが、ウ軍は損傷した橋の近くに舟橋を設置したようだ。

バフムト方面

北西では、ロ軍はオリホボバシリフカに地上攻撃したが、ウ軍と戦闘中である。

南側では、ウ軍はクリシチーウカ、アンドリーイウカを完全奪還した。ウ軍は追撃して「T0513」道路に向かって線路を超えて攻撃している。この道路は、バフムトへの補給路になっている。この補給路を火器管制下に置いたことで、ロ軍の補給が困難になっている。

その他で、ウ軍はクルディミウカとイワニフスクにも攻撃している。

というように、ロ軍は、この地域で押されている。このため、ワグナーの戦闘員を再配置されるようだと英国防省は言う。規模は数百人程度で、バフムトの地形を知る熟練兵をバフムート周辺に集中配備したようだと。

ザポリージャ州方面

1.ベルカノボシルカ軸

東では、ノボドネツク、ノボマヨルシケ、シェフチェンコに攻撃をしているが、前進できずにいる。ここには大きな兵力を入れないので、攻撃も限定的になっている。

中央では、ウ軍は、ザビトネ・バジャンニャを攻撃しているが、前進できないでいる。

2.オリヒウ軸

ウ軍は、ロボティネの南ノボプロコピウカを攻撃しているが、このノボプロコピウカ方向で少しづつ前進している。ロ軍も徐々に退却している。

コパニ方向へウ軍は向かっているが、ロ軍最強の第76空挺師団が立ちはだかっている。

ベルボベ方向では、第2防衛線を越えてウ軍は、市内の西側に前進しているが、ロ軍陣地も強化されていて、クラスター弾をはねのける構造になってきたことで、前進できなくなってきた。ここに、第7強襲師団が逆襲に出て、一部ウ軍を押し戻している。

もう1つが、ベルボベの南東にロ軍第1防衛線沿いにウ軍は前進して、166高地方向に塹壕を横から攻めている。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

悪いのはジャニーズだけじゃない。名物芸能レポーターがTV界から干された真相

昭和から平成にかけて、芸能リポーターとして一世を風靡した故梨元勝氏。そんなワイドショーに欠かせぬ存在であった梨本氏が、ある時を境にテレビから姿を消してしまった理由をご存知でしょうか。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』ではジャーナリストの上杉さんが、ジャニーズ事務所と彼らの共犯者である日本のメディアが深く絡んだその真相の公表を宣言しています。

【ジャニーズカルテル(1)】ジャニーズ事務所とテレビ局との戦いに散ったジャーナリストたち

「恐縮です」

少しも恐縮していない様子でこう言いながらマイクを突き出してくる芸能リポーター、それが梨元勝さんだった。全盛期には何十本ものレギュラー番組を抱え、ちょっとしたタレントよりも売れっ子であった時期もある。昭和・平成時代に席巻した芸能リポーターの草分け的存在で、現在も活躍している「梨元学校」出身のリポーターも少なくない。その梨元さんがテレビ局を干された本当の理由をご存じだろうか?

約25年前、彼の真の戦いはジャニーズ事務所とそれで始まった。筆者がニューヨークタイムズで働いていた頃、梨元さんに数回インタビューした。画面の中のイケイケの姿と違って、周囲に気配りする繊細な心の持ち主だった。

隔靴掻痒の感のあるテレビ局のジャニーズ報道の中、それでも批判の炎は消えそうにもない。すべてが後手後手、ジャニーズ事務所のみならず、コメンテーターや評論家、ジャーナリストも判断や解説がずれているようだ。いつまでも問題の本質を「性加害」に留め、世界的に問題視されている「児童虐待」には触れてこない。

10月2日の記者会見でも、「歌舞伎ルール」(日本の記者会見のスタイルを揶揄して海外メディアからはこう言われていた)が適用され、仕込みが散見され、健全なジャーナリストたちを排除する傾向がみられた。

結局、本当の罪状は隠されるのだろう。かつては、ジャニーズ問題の本質が「児童虐待」であることを早々に見抜いていた者もいた。そのひとりが梨元さんだった。

四半世紀前にこのジャニーズ問題を追及しながら世を去ったジャーナリスト(あえてジャーナリストと呼ぶ)の梨元勝さんの名誉回復の意味もあり、かつて取材した素材を中心に、現状のジャニーズ問題をめぐる報道を確認しながら、情報を加えて短期集中連載としてお届けする(参照ソース:【無料版】ジャニー喜多川氏だけが悪いのか?23年前の直接取材とメディアの対応【ジャニーズ問題】 – YouTube)。

この記事の著者・上杉隆さんのメルマガ

コロナ禍で若年層の自殺関連行動による救急受診や入院数は増えたのか?

今年4月、厚生労働省は昨年(2022年)1年間の自殺者数を発表。メディアは、小中高生の自殺者が初めて500人を超え、514人だったことを大きく報じました。ここで気になることの一つが、コロナ禍との関連。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、コロナ禍前後で18歳以下の若年層が自殺関連の行動をとって救急受診や入院した数を比較したカナダでの最新研究を紹介。統計的に有意と言えないまでも“意味のある”増加傾向が出ているデータもあるとして、他者との接触が制限される時期には一層の注意が必要と伝えています。

パンデミック期間中における思春期の希死念慮・服毒・自傷

今回は、パンデミック期間中における思春期の希死念慮・服毒・自傷について、救急受診や入院がどのように変化したのか調べた研究をご紹介します。

パンデミック期間中における思春期の希死念慮・服毒・自傷による救急外来受診および入院件数
Emergency department visits and hospital admissions for suicidal ideation, self-poisoning and self-harm among adolescents in Canada during the COVID-19 pandemic

カナダにおける研究で、10~18歳の若年者を対象としています。パンデミック前(2015年4月~2020年5月)とパンデミック期間(2020年4月~2022年3月)を比較して、自殺関連行動による救急受診や入院について調べています。

結果として、以下の内容が示されました。

  • 希死念慮、服毒、自傷に起因する救急受診が全体の救急受診に占める割合は、パンデミック前→パンデミック期間で、2.30%→3.52%とわずかに増加しているものの、統計的には明らかな差異ではありませんでした。
  • 入院に関しては、7.18%→8.96%で増加を示しており、この差異自体は統計的に大きな差異とはいえませんでしたが、傾向を調べる分析方法では意味のある増加傾向となっていました。

要約:『パンデミック期間には思春期の希死念慮等に由来する入院が増加傾向を示していた』

パンデミック期間など、外部環境との接触や他者との交流が制限される条件では、希死念慮に基づく行動化のリスクが増加する可能性を考える必要性を感じました。

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ついに解任。巨人・原辰徳監督が過去に起こした「愛人日記事件」と読売ジャイアンツが抱える“深い闇”

自ら「球界の盟主」と言って憚らない東京讀賣巨人軍。そんな巨人を激震が襲った。続投が有力視されていた原辰徳監督が、3年の契約期間を1年残し事実上の「解任」となったのだ。2024年に球団創立90周年を迎える巨人を2年連続のBクラスに沈めた責任は重く、詰め腹を切らされた形だ。後任には阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチの昇格が決定している。

不倫問題で反社会的勢力に1億円を支払った過去も

原氏といえば二度目の巨人監督就任中だった2012年6月、過去に不倫関係にあった女性が残していた日記が反社会的勢力の手に渡り、彼らの求めに応じて1億円を支払ったとのスキャンダルが週刊文春で報じられ大きな話題となった。

その3年後のシーズンオフ、チームの成績不良の責任を取り監督を辞任。実際は今回同様の解任だったと伝えられている。後任には現役続行にこだわりを見せていた高橋由伸氏が就任したがわずか3年で「クビ」となり、何事もなかったように後釜に座ったのが原氏だった。巨人初の同一人物による3度目の監督就任だったが、前回の解任騒動を知るファンからは、自分を切った球団に里帰りすることに対して「プライドはないのか」と言った批判の声が聞かれたのも事実だ。

「投げる不動産屋」

そんな巨人には裏暗いエピソードが事欠かない。その筆頭格が桑田真澄元投手だろう。読売グループがかなりの額を肩代わりしたとも言われる元義兄による20億円の借金問題、渡邉恒雄氏がもみ消したと噂される金銭受領を伴う野球賭博疑惑、古くは密約の存在が囁かれたドラフトの強行指名等々、枚挙にいとまがない。

ナベツネという「絶対的権力者」の存在

こうした暗い過去の背景には、前出の渡邉恒雄氏、通称「ナベツネ」の存在がある。日本プロ野球会において絶大な権力を握り続ける渡邉氏だが、そもそもなぜここまでの影響力を持つに至ったのであろうか。ある野球関係者は語る。

「なんと言っても『読売新聞のドン』ですからね。政治部記者時代から培ってきたコネもあって、それこそ政界を動かすレベルの力があることは周知の事実ですから、野球界を牛耳るなんて朝飯前以前の話ですよ」

さらにこうも続ける。

「とにかく無茶苦茶ですよね、今はもうなくなりましたけど、逆指名制度をゴリ押ししたのもナベツネですし、カネと権力で野球なんてどうにでもなると思っているのは明白です。1リーグ制騒動のときの古田(敦也氏。当時のプロ野球選手会長)への『たかが選手が!』発言がナベツネのすべてを表してるんじゃないですか?」

ナベツネからすれば、監督もまた「たかが」と見下す対象でしかないのかもしれない。

今回解任された原辰徳氏といえば、健康食品や化粧品を扱う大手企業ファンケルのCMキャラとしてお馴染みだった。そのファンケル、社名の由来は「不安を蹴る」。原監督から阿部監督へ首のすげ替えによって、巨人軍の不安も蹴り飛ばされると良いのだが。

理不尽な要求をしてくる来店者は、果たして本当に「お客様」なのか?

理不尽な要求、無理難題をふっかけてくる厄介なお客様。そういった人に対して店員としてどう接するべきなのでしょうか。今回、無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』の著者で接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんは、自身の体験も踏まえてその対処法について語っています。

お客様ではない人たち

店に立っていると、たまに厄介なお客様が来店されることがありますよね。

正当に正当性を主張されるのとはわけが違って、単なる理不尽な要求を繰り返してくるような人や、無理難題を押し付けてくるような人です。

居酒屋みたいなところなら、何度注意しても騒ぐのをやめない人なんかもいます。

こうした人に対して、丁寧な対応で接することはあります。

いきなり「出ていってください」とはなかなか言いようがありませんから、まずは丁寧に接していく。

しかしそれでも話の通じない人はいて、対処に困ります。

あらゆるところでこういう場面では毅然とした態度で接することが大事だと言われています。

毅然と断る、毅然と店の利用を控えてもらう。

そうすることで、理不尽な要求を避けましょうという話です。

これは本当に大事なことだと思います。

僕自身、販売員ではなくなって今の仕事をし出してからも、ごくたまにこういう人と接することがあります。

こんな人はどこにでもいるのです。

無理難題をふっかけてくるような人には、はっきりと「できません」とお断りをするようにしていますし、それ以上付き合うこともなくなるようにしています。

ユニクロ柳井正氏が座右の銘にしている「店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる」は誰の言葉か?

ファーストリテイリングの柳井正も心に留める、惜しまれつつ廃刊した雑誌「商業界」主幹の倉本長治の商人学。その真髄はどのようなものなのでしょうか。今回の無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』で紹介しているのは、倉本長治の名言の解説などをもとに、商いをするうえで必要な考え方をまとめた必見の一冊です。

必読⇒『店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる』

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店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる

笹井清範・著 柳井正・解説 プレジデント社

こんにちは、土井英司です。

本日ご紹介する一冊は、ファーストリテイリングの会長兼CEO、柳井正さんも推す、「商業界」主幹の商人学をまとめた一冊。

著者は、惜しまれつつも廃刊となった雑誌「商業界」の最後の編集長で、現・商い未来研究所代表の笹井清範氏です。

柳井正氏は、本書のタイトルになっている「店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる」という言葉を座右の銘とし、執務室に飾っているようで、本書の解説も引き受けています。

この解説部分がなんと16ページもあり、内容がまた「熱い」。

いま時のITビジネスの経営思想をバッサリ切り、真の商売とは何か、経営とは何かを説いた内容で、ここだけでも読み応えがあります。

「はじめに」からは、元「商業界」編集長の笹井氏の執筆部分で、これは、全12巻の『倉本長治著作選集』をベースとした各種資料、倉本氏が評価した商品たちの思想、著者自身の取材体験を元に書き下ろされています。

倉本長治の凜とした思想や日本を代表する商人たちの言葉があまりに美しくパワフルで、腐敗・混迷が続く現在の日本が恥ずかしく思えてきます。

何のために商売をするのか、商いはどうあるべきか、商人はどう生きればいいのか、改めて大事なことを教えていただいた気がします。

なかでも、いま問題となっている値づけの話、仕入れの話は、これからの商売の大きなヒントになると思います。

個人的にはロングセラーのヒントもいただいて、大満足の一冊でした。

まるでテーマパーク。山口県の“かなり変わったファミレス”「いろり山賊」をご存知ですか?

わくわくを体験できる場所、テーマパーク。そんなわくわく感を味わえる「ファミレス」が凄いと話題となっています。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者、佐藤きよあきさんが紹介するのは、山口県で人気のあるファミリーレストラン「いろり山賊」です。いったい何が凄いというのでしょうか?

ファミレスを巨大化したら、大人気テーマパークが誕生した!!

「テーマパーク」。

それは、日常を離れ、ひとときのワクワク・ドキドキを楽しむ場所。

地域の人はもとより、遠くからもたくさんの人が集まり、しばし幸せな時間を過ごします。

山口県岩国市の山奥に、そんな施設があります。

山道を車で走っていると、突如ド派手な空間が目の前に現れます。

かなりの数の鯉のぼりが泳いでいたり、七夕飾りがズラリと並んでいたり。

城のような建物や茅葺き屋根の古民家などが並び、和風の庭園には、提灯がたくさんぶら下がっています。

お祭り会場のようにも見えます。

江戸時代をモチーフにしたテーマパークなのか?

それとも、民俗村なのか?

かなり巨大な施設なので、知らない人には見当もつかないのではないのでしょうか。

ここは、見ためからは想像もできないのですが、ファミリーレストランなのです。

『いろり山賊』。

「山賊が食べるような豪快な料理を食べてもらいたい」という思いから、名づけられました。

ここの名物は、若鶏をいろりの炭火で焼いた「山賊焼」。

鮭、昆布、梅の入った、普通の2、3倍はある爆弾型おにぎり「山賊むすび」。

肉とわかめとねぎをのせ、出汁を効かせた「山賊うどん」。

ほとんどのお客さまが、これらを注文します。

他にも、川魚料理や皇牛(すめらぎぎゅう)を使った料理、宴会コース、喫茶、各種弁当や草もち・おはぎなどのテイクアウトなどがあります。

週末ともなると、1、2時間の行列ができるほどなのですが、なぜ、そこまで人気があるのでしょうか。

名物の「山賊焼」や「山賊むすび」を目当てにやって来る人がほとんどなのですが、それだけで、これほどの行列ができるとは考えられません。

その秘密は、この施設そのものにあったのです。

インボイス導入の大混乱を招いた「三悪人」は、官僚と国会議員とマスメディアだ

10月1日から開始されたインボイス制度。同制度の導入を巡っては直前までフリーランサーが反対の声を上げ続けるなどまさに大混乱となりましたが、その原因はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉さんが、官僚と野党議員、そしてメディアの三者に責任があるとしてその理由を解説。さらに「インボイス問題」をどう解決してゆくべきかを考察しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年10月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

「ご存知ですかキャンペーン」の不毛。インボイス導入の混乱を招いたもの

制度が変わる時は、いつもそうなのですが、国会に制度改定が提案されて論戦が行われる際には、国民に対して詳細は説明されません。その代わりに、実際に法案が可決して制度が実施される時になって大騒ぎになるのです。

例えばですが、監督官庁は広告代理店に多額の税金を払って「ご存知ですか?」というキャンペーンをやったりします。また、同時にマスコミもこの時点になって「混乱だ」とか「困る人が出る」などと騒ぐのです。

ここ20年、いや40年ぐらい同じことの繰り返しと言っても良いと思います。消費税の導入、後期高齢者保険、子育て制度、そして軽減税率に今回のインボイス、いつもそうです。法律を審議している時は、世論を刺激するような報道は伏せられて、法案が可決成立し実施段階になって「ご存知ですか?」キャンペーンを行う、こればっかりです。

主権者をナメているというのもそうですが、これでは民主主義の利点である決定への全員参加による合意形成ということが成り立っていないと思います。

一体誰が悪いのでしょうか?

独自の正義感と優越感を持った中央官庁の官僚たち

1番目は中央官庁の官僚です。彼らは独自の正義感と優越感から、自分たちが立案した新しい制度は「国のためになる」と信じて疑っていません。ですから、野党議員がいちいち自分たちの提案した法律案にイチャモンを付けたりするのは面倒であり、サッサと法案を通して欲しいと思っているのです。

さらに言えば、中央官庁の官僚は制度を管理するのが仕事であり、実際に制度変更が実施される場合に困る現場、つまり各自治体や官庁の窓口の人々がどう困るのかなどには、そんなに関心はないと思います。

また今回のインボイス問題について言えば、財務省としてはそもそも「軽減税率」などやりたくなかったはずです。それを公明党などがねじ込んできて、10%に統一すればいいのに8%も残って税率が複数になったわけです。

財務省としては、それで実務が面倒になるなど「知ったこっちゃない」という感覚もあるでしょうし、さらに言えば「8%に削減されて減った税収を、捕捉強化で取り戻す」ことも考えたに違いありません。

欠陥人材が多い野党議員たち

2番目は、野党議員です。今回のこともそうですが、行政の窓口がどう困るのか、それ以前の問題として納税者は、中小事業者はどう困るのか、世間を知らない議員の多い野党には、問題を聞き出す能力も、聞いて問題の根深さを理解する能力も欠けているのだと思います。

野党と言えば、経済活動とは無縁で利益の追求は悪だなどという、全くおかしな宗教に染まっている人とか、政治も経済も「塾で学んだだけ」という立身出世そのものが目的化している欠陥人材が多いわけで、これでは制度変更に困る国民の代弁はできないのも当然だと思います。

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無能さ極まる経済対策。増税クソメガネ岸田が祟られる“アベノミクス”の亡霊

相次ぐ物価の上昇に、青息吐息状態の日本国民。それでも岸田首相は実効性のある経済対策を打つことができずにいます。首相の言うところの「異次元の経済対策」は、果たして発動されることはあるのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野さんが、岸田首相がいわゆる「バラマキ」しかできない理由を解説。未だアベノミクスを精算できない政権と日銀を厳しく批判しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年10月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

岸田政権を呪い続けるアベノミクスの亡霊

アベノミクスを終わらせられない岸田政権の自縄自縛/それで単なるバラマキに走る「経済対策」の馬鹿らしさ

岸田文雄首相は9月26日の閣議で「総合経済対策」を10月中にまとめるよう各閣僚に指示し、それを受けて自民党は29日からその具体策の議論に着手した。岸田の狙いとしては、ガソリン代や電気・ガス代の値上がりに対する「激変緩和措置」の補助金が10月検針分から半減するとか、食品4,533品目の値上げが10月に予定されているとか、生活の基幹部分に関わる物価急上昇の打撃が浸み渡りつつある中で、それを埋め合わせる大胆な政策を提示し、そのための大規模補正予算を組むことで人気を回復し、あわよくば年内もしくは来年早々の解散・総選挙のきっかけを掴みたいというところなのだろう。

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「国際政治は生き物」を実感。カナダとインドの関係はなぜ“悪化”したのか?

欧米諸国が重要視してきたインドとの連携に綻びを生じさせる出来事がカナダで起こりました。カナダが、国内でのシーク教徒の指導者殺害事件にインド政府の工作員が関与していると非難したことにインドが反発し、外交官追放の応酬となったのです。この事態の裏にある動きを、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授が解説。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、この件がアメリカとインドの関係には波及せず、カナダが梯子を外された格好になったことと、そのカナダがゼレンスキー大統領招聘時に重大な失策を犯し欧米で非難されていることに言及。国際政治は生き物だとの実感を伝えています。

中国やロシアに対抗するため「欧米とインドの連携が大切」といった単純な発想はどこまで国際社会に通用するか

国際政治は生き物である。日本ではあまり感じないが、中国の視点から世界を眺めていると、この言葉の意味が実感される。例えば、昨今のカナダをめぐる情勢の変化だ。なかでも対中包囲網を築くため、アメリカを中心として西側先進国が仲間に引き入れようと躍起だったインドとの関係悪化だ。

きっかけは9月半ば、カナダのジャスティン・トルドー首相が、カナダ国内で殺害されたシーク教徒の指導者について、「インド政府の工作員が関与した可能性がある」と議会で言及したことだった。

問題の事件は今年6月18日、カナダ西部ブリティッシュコロンビア州のシーク教寺院の外で起きた。何者かに射殺されたシーク教の指導者、ハーディープ・シン・ニジャール氏はカナダ国民。ニジャール氏はシーク教徒の独立国家を支持していたとされ、インド政府は目の敵にしていた。2020年には彼を「テロリスト」にも認定していた。

トルドーがインド政府の関与に触れると、モディ政権は即座に激しく反応。インド外務省は「(インドの関与説を)ばかげている」と一蹴。「政治的な動機に基づくもの」とカナダを批判した。だが、カナダ側も一歩も引かず両国の対立は激化した。トルドー政権がインド外務省のパヴァン・クマル・ライ外交官を国外に追放すると、インド政府もすかさず対抗措置としてカナダの外交官1人に5日以内の国外退去を通告。外交官追放の応酬となった。

カナダにはインド系住民が推定で200万人弱暮らしているとされ、なかでもシーク教徒は、インド・パンジャブ州を除いて、世界で最も多い。つまり国内政治の視点からこの事件を放置できなかったとの見方がある。

ただトルドーが強気だった理由はそれだけではなかった。カナダが突出してインドとの軋轢を深めたいと考える理由はなく、実は、ニジャール氏殺害にインドの工作員が関与した可能性が高いと判断したのはアメリカを中心としたファイブアイズの情報網だったからだ。トルドー自身、「アメリカと非常に緊密に連携していた」と打ち明けている。

この記事の著者・富坂聰さんのメルマガ