習近平の読み。「台湾はウクライナより落としやすい」は本当か?

台湾について近い将来の統一は言うに及ばず、武力併合の姿勢すら隠すことのない中国。そんな習近平政権は一月ほど前まで、とある基地に30万もの兵力を結集させ台湾侵攻の準備を整えていたものの、決行を断念したとの情報も伝えられています。なぜ中国政府は侵攻延期の判断を下したのでしょうか。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』ではジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、さまざまな要素を勘案しその理由を推測。さらに中国サイドの「ウクライナより台湾のほうが落としやすい」という見方が正しいか否かを検証しています。

この記事の著者・宇田川敬介さんのメルマガ

 

ロシアのウクライナ侵攻と台湾進攻の関連性

前回、「ロシアのウクライナ侵攻がうまくいったら台湾進攻を行う」ということを決めていたという情報が入っていますということをかきました。

ある意味で「ウクライナ」よりも「台湾」の方が簡単であるというように北京の共産党政府は思っていました。

ウクライナの侵攻は、2008年のグルジア戦争から始まる内容であることは間違いがありません。

プーチン大統領の野望である「旧ソ連の最大版図の復活」ということにおいて、プーチン大統領は中国が考え出した超限戦を学び、その内容を徐々に試していたということになります。

その内容の結実が2014年のクリミア半島侵攻であったことは間違いがないのです。

【関連】プーチンが真似てクリミア併合に成功。中国考案の「超限戦」とは?

そして、2014年以降、ウクライナはクリミア半島だけではなく、ウクライナ全土を狙っていることを察知し、抵抗をしています。

その抵抗が「ユーロマイダン運動」であり、そしてロシアに近い住民とウクライナ政府との間で始まった「ドンバス戦争」ということになります。

こののちに、様々な意味で「ハイブリッド戦争」が行われています。

簡単に言えば武器工場の爆破や、反政府工作、アゾフ連隊などに対する「印象工作」がそれにあたります。

そして、それらの内容が全て結実したと思ったのか、あるいは、結実しないので、戦争以外にはないと考えたのか、いずれにせよ今年の2月24日に、戦争が始まったということになります。

このことについてはすでに書いている通りですし、また今後も書くことになるでしょう。

さて、ウクライナの戦争が現在で4カ月になっています。

なぜここまで戦争が続いているのでしょうか。

それは間違いなく、ウクライナの国民が抵抗しているからということになります。

今回のロシアのウクライナ侵攻は、ご存じのように、NATOもアメリカも支援をしていません。

つまり、いくらかの義勇兵はいるものの、基本的にはウクライナ国民がウクライナを守るためにロシア軍と戦っているということになります。

その軍隊が必死に抵抗をしていることから、ロシア軍が攻めきれないということ位なります。

またウクライナ人の民間人、つまり戦闘に参加していない人々は、そのまま国外に避難しています。

もちろんそのまま亡命してしまう人もいますし、ウクライナに戻って戦いに参加する人も少なくないと聞きます。

そしてウクライナの戦いに参加しないことは良くないことのような報道があり、そのことによって徐々にウクライナに帰国し戦争に参加する人が増えているということになります。

つまり「亡命(避難)」「援軍」「帰国」「支援」これらが全てウクライナ国外との間に成立していることが、ウクライナを強くしているということになるのです。

もしかしたら、NATO軍などが中に入って支援すれば、形勢が逆転するかもしれないということになるのです。

この記事の著者・宇田川敬介さんのメルマガ

 

細胞数が少ないネコやイヌのがん発症確率がヒトと変わらないワケ

日本人の死因の1位は長年「悪性新生物」いわゆる「がん」です。今年4月19日に亡くなった世界一長寿の田中力子(カネ)さんの死因は老衰でしたが、45歳のときに膵臓がん、103歳のときに大腸がんの手術を乗り越えて歴代世界2位の長寿を全うされたとのことです。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみ、生物学者の池田清彦教授が、がんと年齢の関係について考察。がん細胞が偶然発生するものであれば、ゾウやクジラなど細胞数が多い種ほど発症確率が高くなりそうなのに、そうではない理由について推論を述べています。

この記事の著者・池田清彦さんのメルマガ

 

哺乳類の種の寿命に関わりなくがんの発症確率がほぼ同じなのはなぜか

2018年7月22日それまで世界一の長寿者であった都千代さんの死去に伴い、新たに世界一の長寿となった田中力子(カネ)さんが2022年4月19日に亡くなられた。存命期間は119歳107日。122歳164日のジャンヌ・カルマンさんに次いで、世界第2位の長寿記録である。35歳の時にパラチフスを患い、45歳で膵臓がん、76歳で胆石、90歳で白内障、103歳で大腸がんと4度の手術を乗り越え、119歳まで生きたのだから、その生命力は大したものだ。

膵臓がんと大腸がんを克服しての119歳の長寿は常識では考えられないすごさだと思う。103歳の時の大腸がんの手術を執刀した順天堂大学医学部の鎌野教授(当時)は、腸閉塞が進行しており癒着が強く、年齢的にも全身麻酔の加減が難しく、手術は困難を極めたが、何とか成功して、転移もなかったと述べている。100歳以上のがんの手術例はその当時日本では10人くらいしかおらず、良く手術に踏みきったと思う。普通の人であれば、体力的にも、手術死する可能性の方が高いと思う。

膵臓がんの手術をしたのは45歳、1948年のことだ。私が生まれた1年後で、当時の医療水準で、手術をして治るような膵臓がんが良く見つかったと思う。なんか不思議な気がするね。最終的な死因は老衰ということであるが、もしかしたらどこかにがんがあったのかもしれない。歳をとれば遺伝子に異常が蓄積して、がんが発生したり細胞が多少異常になったりする。がんについて言えば、いくつかのがん関連遺伝子が突然変異を起こして、細胞ががん化するわけだが、例えば、7つのがん関連遺伝子があるとして、生まれた時にすべて正常な人は、すべてが異常になるまでには時間がかかる。しかし十分長生きすればいずれすべて異常になるだろう。

そういうことを考えれば、がんの発症確率は歳とともに増加することになる。実際、日本における年齢別の10万人当たりのがんの発症数は50歳辺りから急激に上がるので、基本的には老化と共に発がん確率が上がることは確かだと思う。但し、必ずしもすべてのがんで、年齢と共に発がん確率が上がるわけではない。

例えば、女性の乳がんや子宮がんは65歳辺りをピークに発がん確率は下がってくる。これは恐らく、生まれつき発がんしやすい遺伝的組み合わせの人がいて、それ程高齢にならないうちに、当該のがんのがん関連遺伝子がすべて異常になってがんが発症するのだろう。その極端な例は家族性のがん(familialcancer)で、生まれつきがん関連遺伝子のいくつかに異常があり、比較的若いうちにがんを発症する。BRCAというがん抑制遺伝子が生まれつき壊れている家族性の乳がんと、APCというがん抑制遺伝子に生まれつき異常がある家族性大腸がんがよく知られている。

この記事の著者・池田清彦さんのメルマガ

 

女性限定ジム『カーブス』が見つけ出した”隠されたニーズ”とは?

女性限定、30分のみのスポーツジムという触れ込みで大きく利益を伸ばす「カーブス」。人気の秘密はどこにあるのでしょうか?そこで今回は、メルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』の著者で、MBAホルダーの理央 周さんが「カーブス」が成功した理由について迫ります。

この記事の著者・理央 周さんのメルマガ

カーブスの強さの秘密に学ぶ 顧客ニーズとビジネスモデルの作り方

女性向けのスポーツジム「カーブス」を運営している、カーブスホールディングスの、2021年9月から今年2月期の連結決算での純利益が、前年同期比3.5倍にもなったことが少し前に話題になりました。

カーブスは、とてもユニークなスポーツジムです。

大きく謳っている「女性限定」ということに加えて、「1回30分」だけ、という点が、他と違います。

このアプローチは「アンバンドリング」というビジネスモデルで、「自社ビジネスの中身を分解して、切り売りする」というやり方です。

定食屋さんが、1,000円の焼肉定食を、別々で食べたい人のために、焼肉単品で800円、副菜200円、ご飯100円、味噌汁100円とばら売りするのと同じです。

フルサービスの床屋さんのメニューから、髭剃りやシャンプーをなくした、QBハウスや、ピーチのような格安航空会社LCCと同じですよね。

カーブスはもともとは、米国で生まれたサービスで、ホームページによると、創業者が、糖尿病、高血圧、肥満が原因で母親を亡くしたため、「母のような女性が通いやすいフィットネスクラブをつくる」という想いから創業したとあります。

このこともあり、ホームページには、50代女性の方々の体験談がまず出ています。

この年代の女性のために作ったジムだとわかるので、「わたしもいってみよう」という気持ちになりますよね。

筋トレや、エクササイズって「続きにくい」ですよね。何事も習慣化することって大事ですが、習慣にするには「報酬」がないとなかなかできないそうです。

この記事の著者・理央 周さんのメルマガ

私もスポーツジムに行っていましたが、コロナで休会しています。そこで、自宅に置けるマシンを買って腹筋をやっていますが、出過ぎたお腹を引っ込めたい、という目標があるので意外と続いています。

「ホストで遊ぶため」公務員が風俗バイトでクビ。SNS売春でメンズ地下アイドルに貢ぐ女性も急増中

横浜市は27日、風俗店で働いていた女性職員を地方公務員法に反したとして停職3ヵ月の懲戒処分にしたと発表。女性は同日付で依願退職したが、働いた理由を「ホストで遊ぶためにお金が必要だったから」としている。副業解禁時代に反する処罰にネットでは同情的な声も聞かれるが、その一方では令和の時代ならではの新たな問題も発生しているという。

お堅い公務員のフーゾク店バイトが発覚

横浜市が懲戒処分にしたのは市立脳卒中・神経脊椎センターの女性事務職員(24)で、今年の2月から5月にかけて、平日の勤務外時間と休日に東京都や川崎市内の複数の風俗店で30日間働いて約50万円の収入を得ていたという。読売新聞などが報じた。

市の聞き取り調査で職員は「ホストクラブで遊ぶ金を稼ぐためだった」と理由を述べたとしているが、もちろん公務員の副業は地方公務員法第38条で、任命権者の許可がなくてはできない仕組みになっている。

副業として認められるのは第一次産業のみに限られ、実家の農業や畜産業、水産業など小規模のものに限られている。副業は原則禁止であり、ましてや風俗店の副業を任命権者が認めるはずがない。

2月には東京都内の税務署の女性事務官(27)が複数のソープランドで150日間勤務し、計125万円の収入を得たとして懲戒処分になっている。この職員もホストクラブ代を捻出するための副業だったことを認め、同日付で退職している。

こうした報道に対して、ネットの意見は当事者に対して意外にも同情的だ。お金欲しさに風俗で働くのは珍しくもなく、公務員の風俗勤務だけが禁止されるのはおかしいという意見が多い。

「むしろお金欲しさに横領するよりはまし」「副業禁止するなら給料を上げろ」などと、副業解禁が当たり前の世間の常識に逆行する制度に憤る声が集まった。

【関連】小室圭さん、宮内庁にも見限られた?すでに「3回目も不合格シフト」で準備中、ダメなら帰国が濃厚か

ホストだけではない、男性アイドルにハマってSNS売春

同情的な声があるとはいえ、禁止されているルールを破ったわけなので処分されることは仕方ない。ホストに通うため風俗店に勤務するという女性は昔からおり、この手のニュースは特別珍しいことではない。しかし、最近では少し事情が変わってきているという。

「ホストで遊ぶためという女性は今もいますが、増えてきているのは“推しのアイドルに貢ぐため”という女性です。アイドルといってもジャニーズとかの王道ではなく、“メン地下”いわゆるメンズ地下アイドルですね」(風俗事情に詳しいライター)

女性のアイドルと同じように、ファンとしてはメン地下にいくら貢いだかが重要となる。その金額により、数分間会話をすることできたり、デートができたりと特典が異なるのだという。

「アイドルではありますが、やってることはほぼホストと変わりません。チェキ1枚でいくらとかからスタートしても、応援を続ければファン心理としてどんどんエスカレートしていきます。結局、自分が持っているお金だけでは足りず、自らが体を売ってお金を工面するようになるのです」(同・ライター)

このように陥ってしまうのは若い女性が多い。そうした今どきの女性たちは風俗など煩わしい働き方ではなく、SNSを通じて売春行為をするという方法を選ぶ。

「例えば、ネットでは“交縁”という造語が飛び交っています。新宿・歌舞伎町にある某公園で援交するから、“こうえん”というのですが、ここでいわゆる“立ちんぼ”をする若い女性が急増しています」(同・ライター)

貢ぐために道を踏み外してしまう現実がそこにはあるようだ。

【関連】海外に出る“パパ活女子”が急増中。富豪を相手にガッポリ稼ぐ、暗躍する闇の仲介エージェント

つまらない日常を忘れさせてくれるホストやメン地下にハマる気持ちはわかる。しかし、度が過ぎてしまえば自らの人生を台無しにしてしまう可能性が高い。取り返しがつかない事態になる前に、ほどほどにした方がよさそうだ。

なぜ、月1万円で暮らすバリ島の人たちは「幸せ」でいられるのか?

日本でも物価が上昇し、私達の生活にも打撃を与えています。特にガソリンの値上がりは相当なダメージを負う方も多いのではないでしょうか。今回のメルマガ『尾原のアフターデジタル時代の成長論』では、Google、マッキンゼー、リクルート、楽天の執行役員などを経て、現在はIT批評家として活躍されている尾原和啓さんが、 値上げインフレ時代における、自分の価値の考え方について紹介しています。

この記事の著者・尾原和啓さんのメルマガ

物価上昇インフレ時代に振り回されないための「自分の価値」の思考法

今、石油の値段がガンガンに上がっていたり企業の物価指数が9パーセント上昇したり、コンビニさんとかいろいろなところが値上げを始めています。今日は、この値上げインフレ時代の「自分の価値の考え方とチェック方法」という話をしたいと思います。

月1万円で暮らすバリ島の人たちはなぜハッピーなのか? 

石油とかお菓子とかミルクとか、いろいろなモノが値上がりすると、「自分の生活が苦しくなってしまうのではないか」と不安にとらわれることが多いと思います。そうなった時に、“価値の原則”がわかっていれば、自分がインフレに振り回されてしまうのか、そうじゃないのかがわかる話なので、その因数分解をしていきたいのですよね。

例えば冬だと、特に北国に住んでいる方々にとって、石油の値段が上がるのは死活問題です。部屋を暖めるためにはどうしても石油を使うので、石油の値段が上がれば生活は苦しくなります。

一方で、逆もあるわけですよね。例えば僕が生活のベースにしていたバリ島って、現地の方の1人当たりの給料は1万円です。でもバリの方々って、みんなハッピーなのですよ。それはなぜかと言うと、バリの方々には地元に住む家がありますし、常夏の国だから暖房や冷房はいりません。水と自然に恵まれている国なので、近くの水田に稲を植えれば1年間に3回収穫できます。虫を取ってくれるアヒルなどがそこで育つので、アヒルや豚を食べていれば生きていけるからです。

つまり、外の価値に依存しなくても生きていける比率がどれだけあるかによって、外の価値の上下に振り回されなくてよくなるわけですね。

この究極が、バリ島の農家の方々や酪農の方々です。物々交換や自分が手の届く範囲の中で価値をいただいているから、世の中がいくらインフレになろうが関係ありません。

この記事の著者・尾原和啓さんのメルマガ

だけど、日本という国に住んでいると、例えば電気は7割以上が化石燃料系に頼っています。化石燃料系は内部でほとんど採れないので、外部に依存する。そうすると、値段が上がれば僕たちのコストが跳ね上がってしまうので、そのぶん生活が苦しくなってしまうわけです。

プーチンの「偽悪戦略」に乗せられた人類。露がキーウ近郊にまで攻め込んだ意図

突然のウクライナ軍事侵攻という歴史的暴挙に出たプーチン大統領。しかしその背景は、巷間語られているほど単純なものではない可能性もあるようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では著者で国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、ロシアがウクライナ東部だけでなく首都キーウ近郊にまで軍を進めた理由を、人類を欺く「偽悪戦略」だったとする持論を展開。その画策者をプーチン大統領と米国ネオコンとした上で、なぜ彼らがかような戦略を進める必要があったのかを詳細に解説しています。

プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類

今回のウクライナ戦争の、私にとって理解困難な謎の一つに「なぜロシアは2月24日の開戦時に、異様に大規模な全面戦争をいきなり始めたのか」というのがある。ロシアが今のウクライナ戦争で達成したいことは、ウクライナの極右政府や軍が東部2州(ドンバス)のロシア系住民をいじめたり殺したりしていたのをやめさせることだ。開戦前、ロシアの政府や軍は、ドンバスを助けるために軍事的なことをほとんどしていなかった。ロシアの軍や諜報機関の要員たちが私服でロシアからドンバスに越境して露系民兵団の顧問をしていただけだ。露軍はドンバスに入っていなかったし、兵器の支援もしていなかった(民兵団はウクライナ軍からの転向者が持ってきた兵器で戦っていた)。次の段階として、露軍がドンバスを助けるなら、まず兵器を越境支援するとか、露軍がウクライナ全土でなくドンバスだけに侵攻するといった展開が予測された。私はその線に沿って開戦を予測する記事を開戦前の今年1-2月に書いた。

ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも
ロシアがウクライナ東部2州を併合しそう

だが、2月24日に実際に露軍がウクライナに侵攻した時、露軍は電撃的にウクライナ全土の制空権を奪い取り、ドンバスだけでなくキエフに北部などにも地上軍を入れた。露政府が発表したウクライナ侵攻(特殊作戦)の目的は、ドンバス露系住民の保護だけでなく、それよりはるかに広範な、ウクライナ全体の非武装中立化と極右勢力排除(非ナチ化)だった。私は、ロシアが一足飛びにウクライナ全土を戦争の対象にしたので驚いた。露軍が東部ドンバスだけに侵攻しても米国側は猛烈な対露制裁をやるのだろうから、それならロシアとドンバスを安全にするために非武装中立化や非ナチ化、全土の制空権剥奪といった大きな目標を掲げたのでないかと考えたりした。

ロシアは意外と負けてない

もし2月24日に露軍がウクライナ全土でなく東部ドンバスだけを侵攻対象にして、ドンバスの露系住民がそれまでの8年間に米国傘下のウクライナ極右政権からいかにひどいことをされてきたかを世界に向けて強調して説明していたら、ロシアは今のように米国側から猛烈に敵視されなかったかもしれない(単に米国側に無視されて極悪のレッテルを貼られて終わっていたかもしないが)。これまでドンバスの露系住民をひどい目に合わせてきた「犯人・黒幕」は米国だ。ロシアは被害者の側だった。米国が2014年にウクライナに諜報的に介入して親露政権を転覆して米傀儡の極右の反露政権を就任させた後、極右政府はドンバスなどの露系住民に前政権が与えていた自治を剥奪し、弾圧してドンバスで内戦を勃発させ、8年間で1万4,000人の露系を殺した。米国はこの8年間、ウクライナを傀儡化してロシアの在外邦人である露系住民を殺し続ける「ロシアを怒らせる策略」を続けてきた。

優勢なロシア、行き詰まる米欧、多極化する世界

ウクライナ紛争が長期化しそうなウラ事情。世界の紛争地でカネを儲ける「会社」の正体

2019年に発生したカルロス・ゴーン氏の国外逃亡事件を支援したことで、日本でも広く知られることとなった民間軍事会社(PMC)の存在。現在交戦中のウクライナ・ロシア両軍にもPMCにより多数の戦闘員が派遣されていると伝わりますが、PMCとはいかなる組織で、どのような活動実態を持つのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、PMCを「冷戦後の世界の歪みにつけ込んで大きく膨れ上がったビジネス」とした上で、彼らがこれまで手掛けてきた「仕事」を詳しく紹介。さらに冷戦後に進んだ戦争の民営化ともいうべき状況が、ウクライナ戦争の長期化にも影響している可能性を指摘しています。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

 

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年6月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

戦争を後押しする「民間軍事会社」の存在

ウクライナのゼレンスキー大統領は開戦直後から、自国民(の特に成人男性)に対しては「武器を取ってロシア軍と戦え」と呼びかけると同時に、広く世界に向かって「ウクライナ国際防衛軍団」に参加してウクライナ軍と共に戦う外国人義勇兵を募ってきた。

傭兵か義勇兵かの区別はあいまい

これはなかなか難しい法的な問題を孕んでいて、ウクライナ人の愛国者や外国人戦闘員がウクライナ正規軍の下に組み込まれていることを相手が識別できない形で市民に混じって戦った場合は、ロシア軍に一般市民に対する無差別攻撃の口実を与えることになり、現にそのような形で過剰な被害が出たケースも多いと推測できる。またウクライナ人にせよ外国人にせよ、非正規戦闘員と見做されれば戦時国際法による捕虜としての人道的な扱いを受けられない可能性があり、6月7日にロシア側が発表した英国人戦闘員3人に対する死刑判決がそれに当たる。

もちろんウクライナ政府は、外国人戦闘員たちは「義勇兵(volunteer)」として応募してきて、「無給で奉仕する」との誓約書に署名した上で軍制下の「ウクライナ国際防衛軍団」に組み入れられるので、正規兵として扱われるべきだと主張するが、ロシア側はそれを認めず、彼らは金銭で雇われた傭兵であって捕虜として扱われる権利を持たないと主張している。実際には、正規と非正規の区別はあいまいで、例えば米国はじめ世界各国に多数生まれている「民間軍事会社(PMC)」が、言わば人材紹介会社の業務として軍人経験者を集め、それを社員として派遣した場合、ウクライナの政府や軍とその個々の戦闘員との間では直接の金銭関係が生じないので、純粋な気持ちで応募した「志願兵」であるかに振る舞うことができる。

他方、ロシア側にもPMCがあり、3月12日付APなどが報じたところでは、「ワグネル・グループ」はシリア軍の現役兵士を対象に「ウクライナでの戦闘任務」に参加しないかと誘う広告を掲げて数千人を確保、シリア軍の給料の50倍に当たる月額3,000ドルを支払うと公言している。これも、形式的にはワグネルという民間会社と個々のシリア軍人との契約ではあるが、ロシア側も認めているように、傭兵であることは明白。だとすると、戦死してしまえばもちろんのこと、捕虜になっても命の保証は何もないことになるが、国家破綻状態のシリアでは、50倍の給料というのは命を賭けるのに十分な金額なのかもしれない。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

 

傍観者も加害者同然。いじめ被害の女子高生が語った悲痛な胸の内

いじめに気づきながら傍観者のポジションに立つという、日本人にありがちなパターン。しかしそれは被害を受けている側から見れば、加害者に協力しているのも同然の行為に映るようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、関東近郊のとある私立高校で起きたいじめ事件の一部始終を公開。さらにいじめのため不登校に追い込まれた女子高校生の、悲痛な心の内を紹介しています。

この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ

 

傍観者も加害者。関東近郊の私立高校に通っていた不登校中のA子さんのケース

関東近郊の私立高校に通っていたA子さん(現在高校2年生)は、現在、いじめとその二次被害に苦しみ、学校には通うことが困難な状態になっている。

授業はリモートで受けて、テストの日だけ、時間をずらして別教室で受けている。

いじめは高校生になって部活動に入ってからすぐに始まった。

「全国大会には出ることができるかできないかというレベルですが、県大会ではいつも結構いい線いくみたいな部活でした」(A子さん)

「入るつもりはなかったけど、先輩にしつこく誘われて、だんだんやる気になってその部活に入ることにしました」(A子さん)

しかし、入ってすぐにいじめは始まった。

「私はもともと身体が柔らかくて、ストレッチとか筋トレは中学校の時からよくやっていたので、体力には自信があるんです。だから初心者なのに柔軟性のチェックで、すべてクリアできたとき、先輩たちからは、ものすごく喜んでもらえたけど、経験者の同級生の目はちょっとヤバいと思うくらい怖かったです」(A子さん)

はじめのうちは、無視、仲間はずれが行われていたが、次第に先輩の悪口を言っていたなどのデマが拡がるようになった。部活の同級生同士のLINEは何度も外しになっていたし、裏でグループをつくられては悪口を言われるなどが繰り返されていた。

先輩らもかなり注意をしてくれていたし、一緒に帰るなど気を使ってくれてはいたが、その数は次第に減っていったという。

部活の同級生は、自分のクラスの同級生を使って、A子さんのクラスメイトにも、身に覚えのない悪口を言ったなどを流され、徐々に周囲の目が厳しくなっていった。

堪りかねて、A子さんが顧問の教師に相談した。

顧問 「(いじめのことは)知ってますけど、なにか、私にできることってありますか?」「あなたが謝ればすむことじゃない」

など散々な対応をされて、加害生徒らを呼び出し、その場でA子さんは謝罪をしろと強要されたのだ。

結局、A子さんはその場で立ったまま悔しくて大号泣することになり、これを見かねて、別の先生が間に割って入り、A子さんは保健室で休むことになったのだ。

この日を境に、A子さんは学校に行くことに恐怖感が生じるようになり、過呼吸になって自宅の廊下でうずくまってしまう状態などから、不登校状態になった。

この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ

 

日本のメディアが完全に騙されている「日本の農業は過保護」の大ウソ

ウクライナやロシアの農作物の輸出が激減し、他国に「食」を依存することの危険性が改めて浮き彫りになっています。カロリーベースの食料自給率が4割を切るわが国にとっても喫緊の課題ですが、そもそもこれほど食料自給率が下がってしまったのはなぜなのでしょうか。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で評論家の佐高信さんは、『クライテリオン』7月号に掲載された東大教授の鈴木宣弘さんと京大教授で同誌編集長の藤井聡さんによる「日本の農業は過保護というウソ」を暴く対談を紹介。日本の農業政策の問題点を炙り出しています。

この記事の著者・佐高信さんのメルマガ

 

日本の農業は過保護という嘘

隔月刊の『クライテリオン』7月号が届く。編集長は藤井聡だが、西部邁主宰の『表現者』の後継誌で、西部と私の縁で送ってくる。

東大教授の鈴木宣弘と藤井の対談「農こそが日本を守る」には膝を打って共感した。
「農業は過保護だ何だって嘘つかれてるでしょう?」
と鈴木が問いかけると、藤井が憤慨して、「嘘ですよ!」と同調し、こう返す。

「国の補助金なんて、半分から3分の1ぐらいまで減って、G7の中でも最低です。しかも関税は日本は圧倒的に低くて、多くの外国の農家の方が圧倒的に高い関税に守られている。だからもう、関税は高いは、補助金は多いはで、どれだけジャブジャブ公的資金で守ってもらってるんだよ!っていうような外国の農家と、TTPやらEPAやらの自由貿易の枠組みで喧嘩させられているのが日本の農家です。もうこれは完全な残酷物語です。日本の政府は本当に酷い」(『クライテリオン』7月号より。引用部以下同)

過保護だと喧伝している勢力の先頭に立っているのが竹中平蔵で、メディアも完全にそれに乗せられている。農業経済が専門の鈴木が藤井に応じる。

「外国の農家は補助金漬けで、輸出補助金も使い放題で、どんどん安く売りつけてくる。日本は輸出補助金は絶対に使っちゃ駄目で、国からの保護も一番少ないのが現状です。多くの日本人は、農作物の輸出で栄えている諸外国は『農家に競争力がある』ということが原因だと思っているようですが、それは嘘です。実態は、外国農家はあらかた藤井さんの言うように保護漬けなのです。いわば国家戦略として農業を武器として世界をコントロールするんだ…ということで攻めてくる人たちに、我々は竹槍だけで戦っているようなものですね」

度を過ぎたアメリカ依存がここでも弊害をもたらしている。アメリカは農業大国であり、日本は小麦等を買わされているのである。食料自給率が4割を切っている大きな原因がそこにある。鈴木が続ける。

「そういう本当の姿も知らないで、日本がだらしないみたいなことを言う人が多い。本当に冗談はやめてくれと言いたいですね。これだけ補助金なしで頑張って生き延びてる農家というのはほとんどが優秀な精鋭部隊です」

農業滅びてトヨタが儲けるでいいのか?

「中国の爆買いなどの影響で穀物価格が上がり、日本が買い負けをして、なかなか国内に入ってこない。それから化学肥料の原料であるリンやカリも100%輸入ですから、中国もなかなか売ってくれなくなって、もう肥料を作れなくなるんじゃなかって言ってた矢先に、ロシアとウクライナの紛争が…」

鈴木の憂いは尽きない。そんな時に中国を敵視した経済安保をやるのだから、自公政権はバカとしか言いようがない。

この記事の著者・佐高信さんのメルマガ

 

image by: Shutterstock.com