実にくだらない。プーチンが3月末までの「ドンバス占領」を命じた理由

ウクライナ東部において、すでに大攻勢に出たとの見方もあるロシア軍。プーチン大統領は3月末までのドンバス地方完全掌握を命じたと伝えられていますが、その裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんが、プーチン氏の思惑を推測し解説。その上で、「実にくだらないもの」と斬って捨てています。

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終盤に入ったウクライナ戦争で何がどのように起きているのか?:「デモくらジオ」(2月10日)から

冒頭でちょっとだけお話申し上げたいのは、先週の頭でお話しすることが出来なかったウクライナの話なんです。ウクライナに関しては、今年1年の中で非常に歴史的に大きな出来事になるだろう、去年からですけれどね。特に今、この戦争がその終盤に入ってきているのではないのか、まあ、そう願いたいところでもあるわけですが、そのような状況の中で何がどのように起きているのかについて、簡単に「こうではないのかな」という風に私が思うところを述べてみたいと思います。

まず、この間、ロシア軍がミサイルなどを多用して、ウクライナのインフラ施設、電気・水道・ガス、そういうものを破壊してウクライナ市民・国民の生活を破壊するために軍事力を行使するという、大変卑怯なやりかたをしてきた、卑怯かつ国際法に明らかに反する、国連憲章にも勿論反するだろうと思いますけれど。そういう試みを繰り返してきた。

そのために直接殺された市民も大勢いましたし、寒さの中で苦しみを味わわされた人も、何百万人とおられたわけですよ。その攻撃によってウクライナ市民の戦意を喪失させよう、あるいはウクライナ軍を圧倒して打ち破ろうという目論見は、まあ、失敗したということだと思いますね。世界中、いや、日本を含む大変多くの国からの支援。破壊されたインフラ施設を使えるようにするための、人々が臨時に暖をとるための様々な工夫、デバイス、そういうものの助けを得てウクライナのインフラを受け持っている人たち、組織がフル稼働して、必死に、攻撃されても攻撃されてもそれを直し続けたということがありますね。

で、その状況のなかでも東部の戦線ではロシア軍の攻勢がある。一部で非常に無謀な人海戦術まで行われていて、囚人兵あるいは部分的に動員された新兵、そのような人たちを大砲の援護もなく、ただウクライナ陣地に向かって叫びながら突進させるという…。それでは、ただ死にに行くようなものですが、それでもその戦術によって、ウクライナ側の防御態勢を見定めて、後ろから正規軍がそこを攻撃するという、およそ近代戦では考えられないような、なんとも泥臭いといえばむしろ軽く言い過ぎですが、実に血なまぐさい戦い方をしている。少しでもウクライナ軍の力を削ぐことに大勢の人を犠牲にしながらやってきた。今、そこにロシア正規軍とか、かなり軍隊らしい軍隊、精鋭の部隊を送り込むようなことにもなってきていると。

どうも、新しくゲラシモフさん、参謀総長が総司令官になったことによって、ハッキリとした目的が見えてきたといいますか。ゲラシモフさんというのは戦略家、戦術理論というのか、戦争の理論家として有名な方のようですが、プーチンさんから3月末までにドンバス地方を完全占領せよとの命令を受け、その目的に従って、その目的の範囲で合理的なことをひたすら行おうとしているように見える。これは、これまでの司令官たちとは全然違っていて、ある種の凄みを感じるわけですが、そういう形で戦線を打開しようとしているようです。

もう一つあるのは、3月末までというのはプーチンさんの時計での話ですが、ウクライナに対する西側諸国の支援、この間、戦車の供与、特にドイツ製の戦車の供与を巡ってのゴタゴタ、あるいはアメリカのF16戦闘爆撃機の供与を巡る鞘当てと言いますか、すったもんだがあったわけですが、戦車に関してはかなりの数のものがウクライナに供与されることになりました。しかしその時期の問題からいうと、3月末以降になるだろうと。あるいはアメリカ軍、アメリカが供与を決めたハイマースの弾となる新しい爆弾ですが、射程が150キロにも及ぶ。今までのものは70キロから80キロでしたから、射程を2倍にするような弾を大量に供給するということが決まっている。

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ホンマでっか池田教授が考える「共食い」が発生する条件と合理性

人間社会にあってはタブー中のタブーとも言える「共食い」ですが、広く生物界を見渡せば、ある種においては当たり前に起きている現象です。44年前に「共食い」に関する論文を書いたことがあると語るのは、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田清彦教授。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』で池田教授は、自身の論文を振り返りながら、共食いが起こるいくつかのケースを上げ、効率的な共食いと言えるのはどんな条件の場合か述べています。

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共食いの生態学について

少し前の「生物学もの知り帖」で自分の体を子に食べさせるクモの、究極の子育ての話をしたが(第178回)、これは一種の共食いである。自分と同種の個体を食べる共食いは、人間社会では殺人以上のタブーで、最もおぞましい行為とされることもあって、動物生態学の分野でも、余り脚光を浴びることはなかった。しかし、動物社会を広く見渡すと、それほど稀な現象ではないことが分かり、その重要さが見直されてきた。

私は山梨大学に就職したばかりの頃、「動物個体群とくに共食い個体群におけるエサのムダ食い」と題する論文を書いたことがある。1979年のことだから、44年も前のことだ。野生生物の個体にとって、もっとも重要なことは、繁殖して次世代を残すことである。親になれずに死んでしまった個体の摂食量は、繁殖の役に立たなかったという点ではムダ食いである。

エサが少ない個体群では、ムダ食いを少なくすることが、種の存続のためには極めて重要である。共食いをしないで、安定的な個体群を維持できればそれに越したことはないが、エサが足りなくなって、餓死する個体が出てくるような場合は、共食いによって、生き延びるのは重要な戦略になる。共食いされて死んだ個体の摂食量は、全部がムダ食いになるわけではないからだ。

たとえば、カマキリの卵嚢をケージに入れておくと、暫くすると沢山のカマキリが孵化してくる。適当にエサを与えておくと、徐々に大きくなっていくが、数がだんだん減ってくる。カマキリは同種の個体もエサと看做すため、かなりの個体は食われてしまったのである。

エサが豊富な時は共食いをせずに、エサが不足した時だけ、共食いをすればいいように思うけれども、カマキリにはそのような戦略はインプットされていないようで、動くものは何であれ食べるというやり方で、生き延びてきたのだ。

一方、特別な状況の時に限って共食いをする動物もいる。例えば、ヒョウやライオンなどは、弱って生育の見込みのない自分の子を食べてしまうことがある。これは、資源を無駄にしないという観点からは合理的な行動であるが、常に行われるわけではない。

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まずリサイクルより生産量を減らせ。SDGsなファッションを真面目に考えた結果

持続可能でよりよい世界を目指す国連の指標「SDGs」。さまざまな企業がその取り組みについて発表していますが、ファッション業界ではどのようなことができるのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、 真面目にSDGsなファッションを提案しています。

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真面目にSDGsなファッションを考えてみよう

1.安売り商法はサスティナブルではない

地球上の資源は限られています。例えば、綿花です。通常、綿花栽培には大量の化学肥料、農薬等が使われます。これが蓄積されると土壌汚染につながります。

例えば、高いシャツでも安いシャツでも、使われる綿花の量は変わりません。低価格のシャツを大量生産し、大量販売することは綿花を大量に使うということです。また、大量廃棄ということになれば、完全に資源の無駄遣いです。

同じ資源の量で効果的な経済活動をするには商品の単価を上げることです。我々は、安い商品を消費者に供給することは正しいことだと思っています。しかし、資源を大量に使う廉価販売はサスティナブルではない、ということです。

安い商品を生産するために、人件費の低い海外生産を行っていますが、遠隔地から安い単価の商品を大量に輸入することは、エネルギーを大量に消費します。これまではエネルギーが安かったので、物流コストより生産コストを追求してきましたが、エネルギー価格が上がれば、消費地に近い場所で生産した方が良いということです。単価が上がっても、むしろ消費する数量が減れば、それだけでも資源の消費が減り、サスティナブルになります。

バーゲンセールもサスティナブルではありません。バーゲンを行うということは、商品を作り過ぎているということです。大量に作るからシーズン末に大量の在庫が発生します。プロパー価格で売れる量だけ生産すれば、資源を無駄遣いすることもありません。

そう考えると、売り逃しを防ぐという名目で、シーズン末まで店頭在庫の欠品を許さないという百貨店や量販店の商法もサスティナブルではありません。それがバーゲンにつながり、資源の無駄遣いにつながります。

更に言うならば、委託仕入れという仕組みもサスティナブルではありません。委託仕入れは返品可能です、店頭の商品を次々と返品して、新しい商品を展開するという百貨店商法そのものが資源の無駄遣いを奨励しています。

小売店が自社の利益の最大化を考え、原料や生産者のことを考えないことも、サスティナブルではないということです。

タオル業界で面白い話を聞きました。ホテル仕様の重くて大きなバスタオルはサスティナブルではない、というのです。綿花を大量に使用するし、洗濯でも洗剤や水を大量に消費します。電気の使用量も増えます。

一方、日本の浴用タオルは小さくて薄く直ぐに乾きます。欧米ではタオルはドライタオルです。乾いた状態で水分を吸収するために使われます。日本の浴用タオルはウェットタオルです。濡らして石鹸を付けて身体を洗います。そして、浴場を出る時に、硬く絞って体の水分を拭います。日本の浴用タオルは実にサスティナブルなのです。

サスティナブルな商品を考える時に、日本の伝統的な暮らし方が大きなヒントになるのかもしれません。

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幸福度が高い東南アジアの人々は、生きにくそうな日本人と何が違うのか?

NHK「クローズアップ現代」で若者の海外『出稼ぎ』に関する特集が組まれ、大きな話題となっています。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさんが、マレーシア人と日本人を比較し「生きやすさ」というものについて語っています。

※本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』2023年2月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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クローズアップ現代の移住特集。果たして「生きやすさ」ってなんなんだろうか

若者が海外に出ていく話をクローズアップ現代が特集し、話題です。

日本人が海外で出稼ぎ!? 若者たちが海外を目指す背景にあるもの

どこに住むかで収入が変わる時代

世界経済がグローバル化し、世界の工場になる国、世界の頭脳が集まる国、貿易のハブとして生きる国、みたいに国による役割分担がある時代です。

さしづめ、マレーシアから見ると、今の日本は「漫画文化と観光の国」でしょうか。

そんな時代には、実は「どこに住むか」が重要になります(そこに目をつけたのがFireの「地理的アービトラージ」の人だったりします)。

本放送を私は見ていないのですが、以下の動画(切り抜き)で印象に残ったのは、話している人たちの笑顔です。

この特集はお金にスポットライトを当てているけど、実は、お金だけの問題でもないのかなーと。

新事業作りで失敗ばかりの「暴走社長」をサポートする“5つのステップ”

意欲ある2代目社長が、次々に新事業を企画しては失敗して、社員たちの信頼を失っている。そんな社長のそばで悩む経営企画室長の相談に答えるのは、世界的なコンサルティング会社マッキンゼーで14年間もの勤務経験を持つ、ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクターの赤羽雄二さん。今回のメルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』では、社長1人に任せずに、成功する新事業を創り出すには、どんなステップを踏むべきか具体的にアドバイスしています。

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社長が新事業を作り出すことにあせっており暴走気味です。どうしたらいいでしょうか?

Question

shitumon

中堅機械メーカーの経営企画室長をしています。売上は数百億円のレベルです。社長が新事業を作り出すことにあせっており、次々に新しいものに手を出しては失敗して社内では総すかん気味です。2代目社長で10年前に代替わりしたのですが、最初から信頼が薄い感じです。本人はやる気があって頑張っているので、何とかしてあげたいのですが。

赤羽さんからの回答

ご相談どうもありがとうございます。ちょっともったいない状況ですね。社長のアプローチが悪いのか、あるいは社員の理解不足なのかわかりませんが、会社全体としては、せっかくの努力が実を結ばず、早い段階での立て直しが必要かと思います。

社長に助言できる状態なら次のようにアプローチされるのがお勧めです。直接助言できない場合は、取締役などを巻き込んで進めてください。

1.新事業はねらって当たるものではないので、2~3事業並行して取り組みます。新事業創出支援チームを作り、社内でもっともできる部長をリーダーとしてメンバー2名、計3名が今後の新事業創出支援をしていきます。

2.新事業は、事業可能性が大きい分野で、その事業をぜひやりたいという強い意思を持った人材がいる場合に、挑戦する価値があります。お勧めは、会社の事業ビジョン、基本戦略方針に基づき、「こういった分野での新事業を立ち上げます。本気で取り組みたい新事業推進リーダーを募集します。上司には相談せず、社長と事務局だけが見るメールアドレスに応募してください。新事業リーダーはメンバーとして必要な人材2名を社内から指名できます」ということで社内で手を挙げてもらいます。

3.秘密厳守で、審査を進め、2~3名の新事業推進リーダーを選びます。そこで初めて全社に発表し、後は6ヶ月、ビジネスプラン作成とMVP(実証ミニプロダクト)開発を進めてもらいます。鍵はやる気のある人材に提案させ、その中から選抜して、新事業推進リーダーに抜擢することです。また、そのリーダーが同志として全力投球できる優秀人材を2名指名できることです。これはこれまでの社長主導での思いつきで進めるアプローチとは真逆です。

4.6ヶ月という短い期間での検討、実証実験をへて、6ヶ月後には事業化提案をしてもらいます。可能性が大きければ事業化を進め、可能性が小さければそこでプロジェクトを解消すれば、会社としての費用は小さくすみ、スピードは圧倒的に早まります。6ヶ月ごとに2~3事業を並行して進めれば、1つはまともな事業が立ち上がります。

5.新事業創出支援チームはこのプロセスすべてを全面的に支援します。

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人口の数は関係ない。なぜ徳島県海部町は日本一自殺が少ないのか?

昨今、日本では高齢者の自殺が増えている一方で、日本一自殺が少ないことで話題となっている街があります。今回、メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者で一級建築士及びマンション管理士の廣田信子さんは、そのコミュニティの「秘密」を解き明かしています。

日本一自殺が少ない町「海部町」のコミュニティ

こんにちは!廣田信子です。

2013年11月に発表したマンションコミュニティ研究会の本、『これからのマンションコミュニティはこの一冊から「集まって住むってステキ!」』の中で、私は、目指す都市型コミュニティの形ということで、日本一自殺が少ない町、徳島県「海部町」のコミュニティを紹介しました(「海部町」は、今は市町村合併で「海陽町」の中にあります)。

岡檀(おか・まゆみ)さんの研究論文を読んで感動した話です。

今でも鮮明に覚えていて、マンションのコミュニティを考える場合の私の原点です。

10年が経過し、地元の自治体で、岡檀さんの講演があると言うので、聞きにいきました。

慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 特任准教授、一橋大学 経済研究所客員教授になっていらっしゃいました。

変わらないお話に心魅かれました。

久しぶりに、「海部町」のコミュニティを紹介したいと思いました。

自殺率は、コミュニティの性質と深い関係があるといいます。

一見、人間関係が濃い地方の方が、自殺率が低いと思われますが、実は、そうではないのです。

海部町には、「病、市に出せ」という格言が伝わっています。

悩みは、一人で抱え込まないで、周りの人に開示して助けを求めよというものです。

それが、回りまわってみんなのためになると自然に思われているのです。

ですから、海部町では、「がん」になっても、「うつ」になっても周りに隠しません。

みんなで悩みを共有してサポートするのです。

でも、これは意外に難しいことです。

近い関係ほど、弱みを見られたくない、迷惑を掛けたくないという心理が働き、一人で悩みを抱え込んでしまいがちです。

なぜ、海部町の人は周りに助けを求められるのか…です。

ロシアの勝利か、人類滅亡か。狂気のプーチンがウクライナの次に侵攻する国の名

2月24日の侵攻開始1年という節目に、大攻勢を展開すると見られているロシア軍。現在も各地で激しい攻防が続いていますが、ウクライナ軍が思わぬ苦戦を強いられている地域もあるようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ロシアの人的被害を厭わぬ戦術に、ウクライナと西側諸国がどう対応すべきかを考察。さらにプーチン大統領がウクライナの次に侵略を狙っている国の名を挙げ、戦争が拡大傾向にあることを指摘しています。

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ロシア軍に高速道M03号線を切断されたウクライナ軍の危機的状態

ロ軍が人海戦術でバフムト北側の高台を奪い、ウ軍補給路の高速道M03号線を切断される危険的な状態になっている。今後の戦況を検討しよう。

ロ軍の大規模攻勢が始まった。クピャンスク方面、スバトボ・クレミンナアの反撃、バフムト包囲の3ケ所である。ホハレダラはロ軍海兵隊が大損害が出て、頓挫している。このロ軍大規模攻勢には、1,800両の戦車、3,950両の装甲車、2,700の火砲、400機の戦闘爆撃機が準備されているという。

ロシアの戦車製造能力は月50両、装甲車製造能力は100両もあり、このため、プーチンも戦争に負ける気がしないようである。世界で一番、生産能力を持つ国であると、英紙デイリーメールは言うが、本当であろうか。

もし、本当なら、ウクライナへの戦車、戦闘機、火砲の一層の供与が必要になる。そうしないと、ウ軍が負ける事態にもなるからである。

バフムト・ドネツク方面

ロ軍・ワグナー軍はブラホダトネも占領し、ウ軍が撤退したT1503号主要道の西側までワグナー軍が攻撃して占領した。ここからザリジネスクを占領し、直角に曲がり、M03高速道路に向けて、攻撃している。

M03は補給路でもあり、ここが使えないと、補給路は地方道00506道しかなくなる。

このため、M03を守るために、ウ軍は予備役の第30機械化歩兵旅団を投入して、ロ軍の前進を止めたが、ワグナーの兵員は技能が高く、ウ軍の機関銃攻撃をかわして、ウ軍の高台陣地を占領した。

一方、ロ軍も反撃のために、ブラホダトネに兵を集めている。それと、ワグナー軍も、バフムトフカ川の渡河に成功して、パラスコビイウカに迫っている。このことでM03補給路が占領される可能性が増している。そろそろ、バフムトからウ軍の撤退を考えるべきである。しかし、ゼレンスキー大統領は、バフムトからの撤退はあり得ないという。

現時点でもバフムトに6個旅団を配備しているが、バフムト周辺にも予備役を入れて、守ることになる。歩兵突撃のロ軍に対して、ウ軍は陣地戦ではなく、装甲歩兵で回り込み、撃滅した方が良いように思う。敵に居場所を知られると、砲撃が来ることになる。

もう1つ、人海戦術に対抗する防御戦術を確立しないと、ウ軍も今後も撤退を繰り返すことになる。

バフムト市東側の工場地帯、住宅地などにもロ軍が侵入しているが、あまり前進できていない。南側のオプトネから市内に攻めるロ軍も前進できていない。

どうも、ロ軍は、ワグナー軍囚人兵のような突撃ができずに、攻撃力が落ちているので、なかなか、ウ軍を突破するのは大変かもしれない。歩兵突撃だけの攻撃では、陣地戦での突破は容易ではないようだ。その点、ワグナー軍はすごい威力である。

バフムトの南側のイワニフカにロ軍が攻めてきたが、ここはウ軍が防衛している。

T0504主要道の交差点にもロ軍は攻撃してきたが、ここで止めないとチャシブ・ヤールを取られる。チャシブ・ヤールは、バフムトへの00506道の補給路上であり、ここを取られるとバフムトへの補給がなくなる。このため、執拗にロ軍は攻めてくる。

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滲む米国社会への絶望。バイデンは年頭演説で何を「語らなかった」のか?

現地時間の2月7日、米連邦議会で行われたバイデン大統領の一般教書演説。昨年の中間選挙で共和党が下院の過半数を獲得し、「ねじれ状態」となってしまった議会での演説は、どのような内容だったのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、「何を語らなかったかに注目」し、その内容を分析。さらに大統領が最も盛り上げたかった箇所について考察するとともに、台湾有事切迫論に一切触れなかった理由を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年2月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

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バイデン年頭演説は何を語らなかったか?/捻れ議会に経済・社会再建への協力を切々と訴えたが……

政治家の演説には、何を語ったかよりも何を語らなかったかに注目した方がいい場合が、往々にしてある。

バイデン米大統領が2月7日行った年頭恒例の一般教書演説がその典型で、日経新聞による全文翻訳を元に大雑把に計測すると、外交について述べたのは冒頭と末尾の修辞的部分を除く全体の何と、7.5%。後は専ら国内問題で、半導体産業の蘇生やインフラ修復の公共投資による雇用創出、富裕層・大企業の優遇削減による税の不公平の是正、メディケアの拡大と福祉・介護の充実などを通じての「中間層の空洞化」の逆転、すなわち米経済の再建の話ばかり。今は手元に比較材料を持たないが、恐らくこれほどまでに徹底的に「内向き」な一般教書演説は珍しいのではあるまいか。

その意味で、外交が余りにも語られることが少なかったことが第1の特徴。第2に、その外交関連部分の半分はウクライナ、半分は中国で、それ以外のことはほとんど何も触れられていないという驚くべき視野の狭さ第3に、その中国関連部分で、昨秋まであれほど大騒ぎしていた「台湾有事切迫」論に全く触れていないこと。

まあ、結局のところ、米国は国内の経済と社会の建て直しで精一杯であるのに加えて、議会が捻れてしまっている中では何が実現できるかがますます定かでなくなって追い詰められている。従って、もはや世界のことなどほとんど構っていられない(せいぜい7.5%程度でそれ以上は無理だよ)というのがバイデンの本音で、そういう彼の心境が図らずも生々しく表れてしまったのがこの演説だったということである。

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河野太郎氏が“ネット検閲”を画策? SNSマイナンバー紐付け発言が物議…国民の懸念は本当に「フェイクニュース」なのか

河野太郎デジタル相が12日のテレビ番組で明らかにした「マイナンバーカード認証によってSNS利用に年齢制限をかける」という案が大炎上している。河野氏は一連の騒動を「フェイクニュース」と切り捨てたが、一部では本格的な“ネット検閲”への布石との見方も浮上している。

マイナンバーカードでSNSを規制?河野太郎氏が炎上

河野太郎デジタル改革担当大臣が12日、『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に出演。『スシロー』をはじめ大手飲食チェーンで、醤油ボトルに唾液をつける様子などを動画で撮影しSNSに投稿する迷惑行為が相次いでいることについて持論を展開した。

河野氏は、少年や若者の迷惑動画がたとえ「おもしろ半分」であっても、社会や投稿者の人生に多大な影響を与えるとして、ネットリテラシー向上が急務と指摘。

さらに、悪質な行為への対策として、マイナンバーを活用してSNS利用に年齢制限をかけるのが有効との認識を示し、「いろんなサービスのアカウントをつくるときに、マイナンバーカードで認証を最初にするということにすれば、年齢制限をきっちり守ることができますから。そういうところにも役に立ってくるんだろうと思います」と説明した。

ところがこの発言を、あるまとめサイトが「日本政府、YouTubeやツイッターなど利用にマイナンバーカード登録義務化する方針」というタイトル文言で伝えたことから、「海外企業にマイナンバー情報を渡せと?」「子供のいたずらをダシにネット検閲か」「まるで中国みたいだな」など、河野氏が痛烈な批判を浴びる事態に。

これに対し河野氏はツイッターで、まとめサイトを引用しつつ「フェイクニュースの出元はここか」とチクリ。自分を批判する人々が「デマ」を拡散していることを強くアピールしたが、それでも一連の騒動は収まりそうにない状況だ。

国民の懸念は「フェイクニュース」ではない

現時点の情報を整理すると、日本政府が「ネット利用時のマイナンバー登録を義務付ける方針」を持っているという指摘は事実ではない。河野氏も番組内で、そこまで踏み込んだ発言はしていない。この点はたしかに、まとめサイトのミスリードと言える。

ただし、それでもなお、河野氏に対する懸念の声をすべて「デマ」扱いするのは早計だ。自身への批判を十把一絡げに「フェイクニュース」と切り捨てる河野氏は、与党大臣としての説明能力に欠けている面がある。

「河野さんが言うように年齢制限を設けるとすれば、SNSを利用する日本国民全員が、マイナンバーカードによる初回認証を行うことになるんですよ。投稿を“禁止”されるのは未成年者だけですが、私たち大人も、自分が成人であることを証明するために結局マイナ認証をさせられるわけです。思想・良心の自由を考えると、非常に恐ろしい事態ですね。

河野さんの発言を批判している人たちは、何よりこの点を憂慮しているんです。『YouTubeやツイッターなどの利用にマイナンバーカード登録義務化』は、将来的には十分あり得るディストピア。このような真っ当な懸念を『デマ』や『フェイクニュース』の一言で切り捨てるのは頭が悪い人だけでしょう。

また、『初回アカウント作成時にマイナ認証』というフローも実効性に疑問があります。世界的規模のSNSプラットフォームがマイナ認証に対応する場合、日本からのアクセスとその他地域からのアクセスを区別して画面遷移を変える必要がある。その地域判定にはユーザーのIPアドレスなどを利用しますが、ノーログポリシーのVPNなどを噛ませば海外ユーザーになりすますのは簡単なんですよ。未成年者がそうやって一旦アカウントを作成してしまえば、その後、国内の生IPでアクセスしてもBANされることはない。訪日外国人観光客と区別するのは不可能ですし、寿司テロなどの迷惑行為を抑止することはできません」(ITジャーナリスト)

ザル規制ほど実は危険?ネット検閲への道

SNSアカウントとマイナンバーが紐付けされるのは、ネット上で悪事を働かない一般ユーザーとしても気持ち悪いのは間違いない。

ただ、河野氏の提案する方式が「やってる感」だけの無意味なものだとすれば、私たちが“ネット検閲”を過剰に心配する必要はないとも言えるのだろうか?

「まったく逆です。ザル規制だからまあいいか、という考え方がいちばん危ない。初回のみの認証に実効性がなければ、じゃあ毎回マイナ認証を要求しようとか、国レベルでツイッターやTikTokへのアクセスを遮断しようとか、そういう動きに繋がっていくことは容易に想像できます。“日本の中国化”です。

どれほど無意味でも、すでに『初回マイナ認証』が仕組みとして導入されている状態なら、それを少しずつ厳格化していくだけなら国民の反発は生じにくい。そのときは“寿司ペロペロ”とはまた別の社会問題が“ネット検閲”の理由付けに利用されるんじゃないですか?国家は、国民の言論を統制したいという根源的欲求を持っている。このことを決して忘れてはいけないと思います」(前同)

陰謀論ではなく、ごく自然な推論として、マイナンバーカードによるSNSの年齢制限と、国家による本格的な“ネット検閲”は「地続き」と考える人たちが少なくないようだ。

今はそうでなくても、近い将来に懸念される最悪のシナリオ。それに対する不安の声を「フェイクニュース」の一言で一蹴して本当にいいのだろうか。

ネット上の言論とマイナンバーの紐付けは、民主主義を根幹から破壊する危険かつ異常な発想。そう感じる国民が多いからこそ、河野氏への抗議の声がこれほどまでに広がっているのだろう。

プーチンの暴走で発射可能に?露がソ連から受け継いだ核ミサイル管理システム

ウクライナをサポートする西側諸国を、核兵器をちらつかせ牽制するプーチン大統領。許されることのない核の使用は、はたしてプーチン氏個人の判断のみで行うことが可能なのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、米国外交専門誌に掲載された「ロシアの核発射手順」を紹介。さらにこのような緊急事態の情報を独自に収集できない日本に対する、偽らざる思いを記しています。

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ロシア、核発射のプロトコル

ロシアが核を使うことはありえるでしょうか?

米国では大統領だけが核のボタンを押せます。そのボタンが入った黒いブリーフケースをもってお付きの人が大統領に同行しているのです。

ロシアではどうなのでしょう?

プーチンの気がおかしくなって突発的に核のボタンを押すことがありうるのでしょうか?

外交専門誌フォーリンアフェアーズの2月6日に掲載された論文を抜粋紹介しましょう。

【参照】How Russia Decides to Go Nuclear

米国は、ロシアが実際に核兵器を使用する可能性があると繰り返し警告し、クレムリン自身も定期的に核攻撃の可能性を提起してきた。

 

もちろん、究極の兵器がこの紛争で使用されたことはないし、今後も使用されないことを望む。

 

しかし、ロシアとNATOの緊張が続く限り、核戦争の可能性は残る。

 

米欧の指導者は、クレムリンのミサイル使用をいかに阻止するかを考えなければならない。

 

そのためには、ロシアの核兵器を管理するプロトコル(手順)を理解する必要がある。

 

米国と同様、プーチン大統領もいわゆる「核のブリーフケース」を持ち、側近が常に携行している。

 

だが、核の発射には他の2人の同意が必要である。

 

その2人とはセルゲイ・ショイグ国防相と、ヴァレリー・ゲラシモフ軍参謀総長だ。ロシアが核兵器を使うには、プーチン氏のブリーフケースと、2人の軍幹部のブリーフケースの両方から命令が出なければならない。

 

こうしたチェック・アンド・バランスはソ連から受け継いだものである。

 

ソ連の指導者たちは、老齢の共産党指導者や認知症患者など一人の人間が、気まぐれに核ハルマゲドンを引き起こすことができないようにしようとした。

 

同時に、軍部が勝手に攻撃できないようなシステムになっていた。

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