チェリーピッキングには陥らぬ。ネット時代にこそラジオを聴くべき理由

ネット全盛期の現代にあっても根強い人気を誇るAMラジオ。人気ブロガーのきっこさんも熱心な「AMラジオリスナー」だと言います。そんなきっこさんは今回『きっこのメルマガ』で、自身のラジオライフを披露。さらにネット時代だからこそラジオを聴くべき納得の理由を綴っています。

有楽町から浜松町にUターンの意味は?人気ブロガーが熱く語るラジオ愛

テレビのない生活も13年が過ぎ、今年で14年目を迎えるあたしは、今や完全な「ラジオっ子」となった。家で仕事をしてる時は朝から晩までラジオを流してるし、徹夜で原稿書きしてる時もラジオをBGM代わりにしてる。そんな「ラジオっ子」のあたしにとっての大ニュース、文化放送の平日の帯番組の4月の改編が発表された。

ラジオはテレビと同じく毎年4月と10月が改編期なので、基本的には各番組が半年ごとに見直しされる。そして、人気のある番組はそのまま継続、聴取率がイマイチな番組は何らかのテコ入れをしてリニューアル、聴取率が低空飛行の番組は打ち切りになり、新番組が始まる。

文化放送の平日の昼の帯番組は、現在は朝5時から8時が寺島尚正アナの『おはよう寺ちゃん』、8時から11時がアシスタントをつとめる坂口愛美(あみ)アナと曜日替わりパーソナリティーとの『おとなりさん』、11時から13時が野村邦丸アナの『くにまる食堂』、13時から15時30分が大竹まことさんと曜日替わりパートナーとの『ゴールデンラジオ』、13時30分から17時45分が西川あやのアナと曜日替わりスタジオ部員との『おいでよ!クリエイティ部』となってる。

ちなみに、今、この中であたしが欠かさずに聴いてるのは『ゴールデンラジオ』だけだ。仕事や用事で出かけてた日は、帰って来てからラジコのタイムフリーで聴いてる。後は、ゲストが興味のある人だった時と、看板娘のアンジェリーナ1/3が出る時だけ『くにまる食堂』を聴いてる。それくらいだ。

もともとあたしは文化放送のヘビーリスナーで、朝から夕方までずっと文化放送を聴いてた。月額350円でラジコプレミアムに加入したのも、エリアフリー機能で全国のラジオが聴きたいと言うより、あたしが仕事で全国どこへ行っても、東京の文化放送が聴きたかったからだ。だけど、2年前の2022年4月の改編で、上記のタイムテーブルに変わってしまったため、あたしのラジオライフは大きく変化した。

それまでのあたしは、朝9時から13時まで文化放送『くにまるジャパン極(きわみ)』を聴き、そのまま文化放送で13時から15時30分『ゴールデンラジオ』を聴き、大竹まことさんの番組終わりの「さよなら!」を聴いたらTBSラジオへ替えて、荻上チキさんと南部弘美さんの『Session』を聴いてた。だから、少なくとも毎日6時間30分は文化放送を聴いてたわけだ。

だけど、2022年4月の改編で、朝5時から9時まで4時間だった『おはよう寺ちゃん』は8時までの3時間に縮小され、9時から13時まで4時間だった『くにまるジャパン極』は11時から13時までの『くにまる食堂』へと2時間も縮小された。そして、こうして無理やりに作った8時から11時という枠に、鳴り物入りで始まった新番組が『おとなりさん』だった。でも、野村邦丸さんと局アナとの安定の放送に馴染んでたあたしにとって、お笑い芸人や歌手などが曜日替わりパーソナリティーをつとめるという新番組は、とても聴く気にはなれなかった。

それで仕方なく、あたしはこの時間帯だけTBSラジオ『伊集院光とらじおと』に引っ越そうと思った。そしたら『伊集院光とらじおと』も同じ時期に終了し、4月から『パンサー向井のふらっと』が始まると言う。それであたしは、さらに仕方なく、ニッポン放送『あなたとハッピー!』に引っ越した。

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福山雅治“完全復活”で記者の脳裏に蘇った幻の写真…『映画あの花』主題歌を聴きながら辿る意外なクレームの記憶

大ヒット映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で、主題歌のバラード『想望』をしっとりと歌い上げたシンガーソングライター・俳優の福山雅治さん(55)。一時は「崖っぷちと言われた」という福山さんの「映画による復活」を『デイリー新潮』が報じていますが、この記事を読んだ芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんは、福山さんの「7年前の幻の写真」と、所属事務所からの意外すぎる「異議申し立て」を思い出さずにはいられないようです。はてさて、その内容は?

映画主題歌『想望』大ヒットで福山雅治が復活

『デイリー新潮』が福山雅治と綾野剛の復活を記事にしていました。

綾野は置いておいても、福山に“復活”という言葉が当てはまるのかはわかりませんけれど。

私も何度か取り上げた『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、公開11週目で興行収入が42億円を突破、主演の福原遥と水上恒司の株もうなぎ登りです。

【関連】水上恒司に山﨑賢人は負けるのか?記者も驚いた『あの花』vs『ゴールデンカムイ』新春映画対決ウラ事情

そしてこの主題歌である至極のバラード『想望』を歌うのが福山です。

好きなんだ

君をまだ好きなまま

帰らぬ旅へ征かなきゃ

永遠の旅へ

あの福山の声で、あんなシーンに聞かされれば涙腺は崩壊するというものでしょう。

『想望』を聞いてまた映画を観たくなり、映画を観てこの曲を聴きたくなり…映画における使用楽曲の相乗効果の大切さをあらためてダイレクトに私たちに教えてくれているようなお手本ですよね。

福山雅治の自宅前で張り込み。本人・吹石一恵・赤ん坊のスリーショット写真を押さえたが…

『デイリー新潮』を読みながら私の脳裏に沸々と蘇ってきたのは、7年前の福山宅前の出来事でした。

当時の私の取材テーマは“福山雅治と吹石一恵と赤ちゃん”というカタールのバルシム選手が超えようにも超えられないとんでもなく高いハードルのような(マニアックな例えですみません)スリーショットでした。

ベタ張りしていた私にチャンスが訪れたのは、クリスマス直前の平日昼過ぎ、マンションのエントランス前のことでした。

停まったタクシーから吹石と、スリングにくるまれた赤ちゃんを抱いた“福山らしき人物”が降りてきたのです。

その瞬間、カメラマンとエントランス前に猛ダッシュしたのは今でも昨日のことのように憶えています。

タクシーのトランクには、ホームパーティ用でしょうか、たくさんの紙袋の塊が一杯に積まれていました。

吹石の、私たちの急襲にもかかわらず堂々と、平然とした表情でエントランス内に入って行った姿がとても印象に残っています。

芸能マスコミにはこれが初めてのファミリーのスリーショットになりますから、私の血圧も200以上にもなるくらいの感覚で、カメラマンとガッツポーズしたものでした。

意気揚々と編集部に報告し記事化の準備に入りました。

すると…冷静になって考えれば“たぶん…”とは思いましたが、福山の所属事務所から当り前のように異議申し立てが入りました。

デヴィ夫人が文春関係者を刑事告訴も「1700万円持ち逃げ」は問題の本質にあらず?双方の主張を対比して分かった“重要ポイント”

『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)など数多くのバラエティ番組に出演し「奔放キャラ」で知られるタレントのデヴィ夫人84)。そんな彼女が27日にインスタグラムを更新し、昨年、自身のスキャンダルを報じた『週刊文春』の関係者らを名誉毀損及び信用棄損で刑事告訴したことを明らかにした。

デヴィ夫人が問題視したのは、『週刊文春』の「《イッテQから追放危機》デヴィ夫人か゛モナコ慈善団体から1700万円を持ち逃げ」という記事の内容。

文春によるとデヴィ夫人は23年5月まで一般社団法人「アミチエジャポン(以下 アミチエ)」という慈善団体の代表理事を務めていたというが、団体所在地の自身の別邸への移転、「アミチエ」団体名の商標登録の個人出願など、アミチエの私物化に動いていたという。これに対してデヴィ夫人は、団体を乗っ取ろうとしたことも私物化しようとしたこともないと反論している。

さらに文春は、23年1月にデヴィ夫人が、1,788万円の残高があるアミチエ団体名義の通帳や印鑑を持ち逃げ”し、再三の返還要求にもかかわらず「返却いたしません」と弁護士を通じて返答したとも報道。これに対してもデヴィ夫人はインスタグラムで「1700万円を持ち逃げしたことも一切ございません。逆に私は、AMITIEに1100万円以上の金員を寄付しております」と全否定している。

ほかにも文春は、23年1月にデヴィ夫人がウクライナを訪問した際の渡航費用や物資輸送費現地での食費などをアミチエに請求したが、同団体は事前にウクライナ渡航を知らされておらず、あくまで夫人の単独行動だったため、団体理事らが苦肉の策として物資輸送費335万円の支出を認めたという「デヴィ夫人による資金の私的流用問題」を伝えているが、今回この部分に対応する反論はなされていない。


元政治家タレントもデヴィ夫人にエール

そんなデヴィ夫人の「文春刑事告訴」を受け、ネットユーザーは大きく反応。

《夫人良くやってくれた文春の書き得を許すな》

《いいぞ、徹底的にやってくれ!》

《週刊誌だけが儲かる構図を壊してほしい》

《さすがデヴィ夫人、文春の廃刊を祈る》

《週刊誌のあり方を変えられるのはデヴィ夫人しかいない!》

等といった書き込みが溢れ、ネット世論は「デヴィ夫人の優勢」となっているようだ。東国原英夫氏(66)も自身のX(旧Twitter)こんなポストを投稿した。


デヴィ夫人「極めて悪質」週刊文春関係者らを刑事告訴したと報告、併せて昨今の週刊誌報道を厳しく批判「報道の自由に名を借りた言葉の暴力」(中日スポーツ)→今後、客観的に、飽くまで中立的にウォッチして行きたい。個人的には、「デヴィ夫人、頑張れ!」である。

東国原氏はサッカー日本代表の伊東純也選手(30)が刑事告訴された際にもユーチューブチャンネルで声を上げ、大炎上している。

【関連】伊東純也「性加害疑惑」で東国原英夫氏が大炎上のナゼ。「虚偽なら大変なこと」指摘も“弁護士ハシゴ状態”に世間は注目

それでもデヴィ夫人にエールを送ったのは、週刊誌報道に対する“思うところ”があったためなのだろうか。

元祖セレブタレントの旧名は根本七保子

東京の西麻布に生まれたデヴィ夫人ことラトナ・サリ・デヴィ・スカルノの旧名は根本七保子。赤坂の高級クラブの勤務を経てインドネシアに渡り、同国の初代大統領スカルノに見初められ1962年に第3夫人となる。そのため現在も国籍はインドネシアとなっている。スカルノ失脚後はフランスに亡命し、社交界では「東洋の真珠」と呼ばれていたという。

1970年代には日本で芸能活動を開始。「元祖セレブタレント」として人気を博すも、1992年にはアメリカでパーティ中に会話していた女性の顔面をシャンパングラスで殴りつけ大怪我を負わせ、傷害罪で34日間刑務所に収監されるという騒動を起こしている。

そんなデヴィ夫人といえば記憶に新しいのが、2019年にグランドプリンスホテル高輪を相手取り起こした高級毛皮の破損を巡る裁判だ。かつて在京キー局のワイドショー制作に関わったことがあるという50代のテレビ関係者はこう話す。

「17年に夫人がグランドプリンスホテル高輪で行われたクリスマスパーティを訪れた際、クロークに預けた4,000万円もするという超高級毛皮のコートをホテル側が破ったとして訴えた裁判は、当時ワイドショーでも大々的に取り上げられました。結局、東京地裁に『預かる前から破損していた』というホテル側の主張が認められて、夫人が完敗した形になりました」

そんなデヴィ夫人が今回提訴した刑事訴訟だが、ことはそう簡単ではない。

「カネの持ち逃げ」とは別のところにある問題の本質

まず注目したいのは、「1700万円を持ち逃げ」という『週刊文春』の記事に含まれるワード。この表現は、金銭的に困窮したデヴィ夫人が、アミチエの金庫から1,700万円の札束を鷲掴みにしてそのまま逃亡したというイメージを抱かせるものでもある。事実、ネット上でもこんな反応が散見されている。

《仮にも一国の大統領夫人だったデヴィ夫人がそんな“はした金”を持ち逃げするか?》

《テレビにあれだけ出てればギャラだって相当なものだろうし1700万円なんて大した金額じゃないだろ》

《美川憲一も「芸能界で真面目に働いていれば簡単に家の1軒や2軒は立つ」って言ってたから、そんなおいしい世界を追われるリスクを1700万で犯すかね?》

これについて以下のように指摘するのは大手週刊誌にも執筆経験を持つ50代の男性ライターだ。

「文春さんの記事を冷静に読んでみれば、論点としているのは“慈善団体の私物化”や“慈善事業との関係性が疑わしい活動への費用捻出”だと思うんですよ。そういう疑いがあるというデヴィ夫人が、団体名義の通帳や印鑑などを持ち去ったということが報じられているわけですから、きちんと記事を読み込めば、『はした金の持ち逃げ』という見方は、また違ってくると思いますね」

さらにこう続ける。

「折しも今、国会議員の政策活動費の使い道や脱税が話題になっています。さらに例えばサラリーマンが会社の業務と関係のない支出を経費精算すればそれは不正になりますし、私のような個人事業主が単なる遊興費を経費に計上することは認められません。それと同じく、慈善活動を目的とした一般社団法人のアミチエさんが、組織として正しい支出を図るのは当然です。ゆえに、デヴィ夫人が団体の通帳や印鑑を個人的に持ち出しているのは問題とされてもおかしくないとも言えますし、ウクライナへの物資輸送費を団体が出したのも適切だったのかという点が問われても不思議ではないとも思えます」(同前)

文春サイドの続報によれば、アミチエは銀行と交渉し、通帳の再発行を受けることができたという。しかしながら、未だ帳簿や印鑑はデヴィ夫人のもとにあるとも伝えている。

【関連】デヴィ夫人(83)モナコ慈善団体から「持ち逃げ」した1700万円が返還されていた 理事に対して「口座も作れない人達」と逆ギレ告発も

デヴィ夫人が問題視した記事のタイトルは、確かにミスリードと受け取られても仕方がないものかもしれない。しかし男性ライターが指摘するように、今回の騒動の本質は「カネの持ち逃げ」とは別のところにあるとは言えないか。

「いずれにしても今回は民事訴訟による損害賠償請求ではなく刑事告訴です。場合によっては訴えられた側、つまりは文春さんの関係者が逮捕される可能性もゼロではありません。誰に非があるのかは捜査の進展を見守るほかありませんが、少なくとも現時点で『デヴィ夫人が圧倒的有利』という認識は甘いのではないでしょうか」(同前)

繰り返しになるが、デヴィ夫人はインスタグラムで「1700万円を持ち逃げしたことも、一切ございません」としているが、帳簿や印鑑持ち出しやウクライナへの物資輸送費についての言及はない。

「テレビのど真ん中」にいる人間の週刊誌批判に説得力はあるか

以上ように、『週刊文春』の報道内容とデヴィ夫人の主張とを対比してみてわかるのは、実は彼女が報道された核心部分について何も反論していないという事実だ。さらにこのような指摘もある。

「デヴィ夫人は、報道機関が持つ権力やそれによる私刑を批判していますよね。あの箇所には違和感を抱きました」(40代の男性ネットメディア編集者)

確かにデヴィ夫人は、反論文の中で以下のように主張している。

一部の週刊誌が強い権力を持ち、一般の方が週刊誌に情報を提供し、週刊誌が他方当事者である著名人の言い分を公平に載せることなく著名人を貶め、社会から抹殺している事象が、多数見受けられます。

「週刊誌はメディアとしてはあくまで亜流であって、テレビこそが最大権力を握っています。夫人は自分自身がそちら側の人間ど真ん中であることを巧妙に隠しているように読めるんですよね」

未だテレビが大きな影響力をもっているのは否定できない事実。そのテレビの世界で生きている自分を、あたかもメディアの被害者のように語るのは巧妙な手口と言えるのかもしれない。

「そんな夫人に『頑張れ』と言っている東国原さんもテレビ側の人間ですし、何かしっくりこないものがあります。過去、芸能人は一方的に上から物を言えましたが、SNSの登場で今は一般の方も発言力を持つようになりました。そんな時代に芸能人が報道機関による誹謗中傷に物申す、といえば聞こえはいいですが、私は彼らの特権意識や言論統制につながる動きこそ警戒すべきだと思っています」(同前)

事実、デヴィ夫人がインスタを更新した途端に声を上げた東国原氏。この事自体が、テレビやデヴィ夫人の“特権性”を如実に示しているという見方は説得力がある。

上述の「毛皮のコート訴訟」では敗北したと言ってもいいデヴィ夫人。週刊誌と戦争するのは個人の自由だが、スカルノ元大統領第3夫人としてのプライドをもって、「自分自身の個人トラブル」と「社会問題」をはっきりと分けて処理していただきたいものである。

米ブッシュ元大統領さえ利用。統一教会が「信者鼓舞」に使った裏情報とは?

旧統一教会の関連団体「天宙平和連合」へのビデオ出演で約3億円の講演料を受け取っていたことが話題となったトランプ前大統領。そんな教団が、95年にやはり関連団体「世界平和女性連合」のイベントにジョージ・H・W・ブッシュ氏を招いていたことをご存知でしょうか。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さんが、教団内で語られた講演時のブッシュ氏を巡る「裏情報」の内容を紹介。さらに彼らが信者たちとこのような情報を共有する目的を解説しています。

旧統一教会信者と国民との間で情報格差が生まれる恐れ ブッシュ氏、本当は悩んでいたとの裏話

2月22日に解散命令請求の裁判において、文科省と旧統一教会の双方から意見を聞く「審問」が行われましたので、こちらの話を中心に書きます。盛山文科大臣の教団側からの情報リークを含めて、情報戦において教団側は、相手の個人情報を握って、ベストなタイミングで霊感商法などで追い込むといった、ノウハウの40年以上の蓄積がありますので、かなり手ごわいといえます。

国やマスコミの側の対応も負けてはならないと思っています。

非公開の裁判ながら、すばやく情報を出す、教団側の巧みさ

本来、解散命令請求の裁判は、非公開で行われる裁判です。

しかしすぐさま教団側は裁判後に会見を通じて、田中富広会長が意見陳述を行い「資金集めを目的とした団体」と指摘されていることについて「明らかな間違い」との主張を展開したといいます。

報道を通じた内容を見る限り、これまでの主張と変わりないものですので、裁判においてさしたる影響はないとは思いますが、ただ情報を素早く出した点に、相変わらず教団の巧みさがみえています。

解散命令請求の裁判における、旧統一教会信者と国民との間で、情報格差が生まれる恐れも

解散命令請求の裁判は多くの人たちが注目しているところであり「どんな審問だったのだろうか」と多くの人たちが関心を寄せているところに、いち早く会見を通じてその内容を出す。

相変わらず情報戦においては長けている部分もみられますので、今後は文科省も何かしらの裁判の経過について話をする必要が出てくるかと思います。

なぜなら、このままでは国民と信者との間に、解散命令請求の裁判における情報格差がうまれてくる恐れがあるからです。

どのような形で裁判が進んでいるかは、国民の側には知らされていませんが、信者内部では赤裸々に、そして自分たちの都合の良いように伝えられてしまう可能性があります。私も信者時代にも、信者らのモチベーションを鼓舞のためでしょう。「ここだけの話」といって、礼拝の説教やイベントへ参加者を募る動員の出発式には、裏話をしてくることがよくありました。

この記事の著者・多田文明さんのメルマガ

ローソンへの出資で俄然注目のKDDI。次なるターゲットはどこか?

ローソンの共同経営に乗り出すことを発表したKDDIが、携帯事業による赤字に苦しむ楽天グループを次なるターゲットにするのではないかと噂されています。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、以前から語っていたKDDIが楽天グループを取り込む大きなメリットを解説。先日指摘したように折半出資を王道パターンにしているKDDIが、共同出資の相手として選ぶ可能性のある企業の名前を1つ挙げています。

KDDI、ローソンの次は果たしてどこだ?──ネットとリアルをつなげるための新たなパートナーとは

KDDIがローソンに5000億円を出資し、三菱商事と共同経営体制になると発表されたことで、にわかに注目されているが「いずれ、KDDIは楽天グループも傘下に収めるのでは」という見方だ。

筆者が度々、語ってきた「仮説」で、昨年、NewsPicks主催の討論番組で披露してきたのだが、当時は「なんでKDDIが?」というツッコミが多かった。「大型買収ならソフトバンクでしょ」という声が圧倒的ななか、世間ではKDDIが過小評価されている感があった。しかし、今回、ローソンに出資したことで俄然、世間のKDDIに対する評価が変わってきたように思う。

KDDIは通信の会社であり、世間の企業におけるDXを進める立場にいるものの、ウェブ上での「顧客接点」においては若干、弱かったりする。ソフトバンクがLINEやヤフーを持つなか、KDDIにはウェブにおけるauユーザー以外のオープンな顧客接点は皆無に等しい。

そんななか、KDDIが楽天グループと組めば、シナジーは絶大だ。もちろん、KDDIにとって楽天モバイルには興味はなく、楽天グループ全体と組めることが重要だ。

ネットショッピングやトラベルなどのWebサービスだけでなく、銀行や証券なども一緒になり、パンダとタヌキが組み合わさった強大な経済圏が誕生することになる。KDDIが弱かったネットショッピングを補完するという関係性においてはベストではないか。

一般メディアでは単に「KDDI・ローソン・楽天」という組み合わせによって、セブンイレブンやファミリーマートを倒せるのではないか、さらにGAFAMに対抗できるのではないかといった論調があるが、もしかすると単に「KDDI・ローソン・楽天」という枠組みにはとらわれない可能性だって考えられる。

今回のローソンへの出資に関しても、実はKDDIだけでなく、ENEOSが本来であれば出資するつもりだったとの報道がある。幹部の不祥事により頓挫し、KDDI単独での出資になったようだ。

将来的にKDDIが楽天グループに出資すると言うことになった場合、KDDIだけでなく、もう1社ぐらい別のパートナーを連れてくることも考えられるだろう。KDDIと仲が良く、資金的に余裕があるが、将来的な成長に不安を感じている企業。例えば、JR東日本とKDDIがタッグを組んで楽天グループに出資するなんてことがあれば、結構、面白いことになるのではないか。

東日本に鉄道網を持ち、豊富な人流データを握っている。Suicaによって、ユーザーの行動履歴だけでなく、購買データも持っている。JREポイントとPontaと楽天ポイントが組み合わされたら、ネットとリアル、両方でポイントが貯まるなんてことになれば、俄然、ユーザーの利用意向も促進されるだろう。

KDDIは今回、ローソンという「リアル」への進出を果たしただけに、もはや何でもあり、誰とでも組める体制になっているといえる。我々が全く想像し得ない「座組」で、新たな出資を仕掛けてくる可能性は十分にあり得そうだ。

この記事の著者・石川温さんのメルマガ

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皇族でただ一人「朝敵」の汚名を着せられた、輪王寺宮能久法親王の強い“思い”

江戸城無血開城と聞くと、みなさんは誰を思い浮かべるでしょうか。今回のメルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ」』では時代小説の名手として知られる作家の早見俊さんが、西郷隆盛、勝海舟、篤姫以外のとある人物のエピソードを紹介しています。

朝敵となった親王

江戸城無血開城と聞くと多くの人は西郷隆盛と勝海舟を思い浮かべるでしょう。官軍と賊軍とされた幕府を代表した西郷と勝によって江戸を戦火から救った偉業とイメージされています。幕末に興味のある方なら、西郷と勝の会談の前に山岡鉄舟が西郷を訪ねて談判していたとか、天璋院篤姫も西郷に使者を送ったというエピソードを思われるかもしれません。

ですが、輪王寺宮能久法親王の名を挙げる人は稀ではないでしょうか。輪王寺宮とは徳川将軍家の菩提寺東叡山寛永寺の貫主であり徳川家康を祀る日光山東照宮の山主、更には比叡山延暦寺の山主(天台座主)です。後水尾天皇の第三皇子守澄法親王が就任して以来、皇子またが貫主、山主を務め、「輪王寺宮」と尊称されてきました。

能久法親王は1847年伏見宮邦家親王の第九皇子として誕生し、翌年孝明天皇の父仁孝天皇の猶子となります。ちなみに明治天皇の叔父に当たります。1858年、数え十二歳で勅命にとり輪王寺宮の後継者に任ぜられました。次いで1864年の十二月、親王の位の第一等を授けられ、1867年五月に東叡山寛永寺に入りました。

幕末、官軍が江戸に迫る最中、東叡山寛永寺の山主となっていたのが輪王寺宮能久法親王だったのです。宮は明治になって北白川家を継ぎ北白川能久となられました。

では、宮が何故、どのように無血開城に関わったのでしょう。そして、無血開城に関わったがために皇族でただ一人の朝敵の汚名を着ることになります。

朝敵となった親王の激動の人生は最後の将軍徳川慶喜が寛永寺、大慈院で蟄居した時に始まりました。この年の正月、鳥羽伏見の戦いに敗れ、大坂城から脱出した慶喜は幕府艦隊の軍艦開陽丸で江戸に戻ります。薩長を主力とした討幕軍は官軍の証である錦の御旗を掲げ、慶喜を朝敵として東征軍を編成しました。

不思議な肖像画を持つドリアン・グレイのお話が人生の参考になる理由

心理学の「ドリアン・グレイ効果」をご存じですか? 今回のメルマガ『セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術』では、著者で現役精神科医のゆうきゆう先生が紹介しているのは、その効果の原典である「ドリアン・グレイの肖像」という小説の内容とその効果自体についてです。

笑うと幸せになる!ドリアン・グレイ効果とは

こんにちは、ゆうきゆうです。

元気でお過ごしでしょうか?

さて、皆さんは「ドリアン・グレイの肖像」というお話をご存じですか?

これはオスカー・ワイルドという作家の、1890年に発刊された古い小説です。

今回はこの作品を踏まえ、人の「表情」についてお話しします。

■ 美しい男の恐ろしい話

イギリスに、ドリアン・グレイという美青年がいました。

ある日、バジルという絵描きがドリアンの肖像画を描いてあげます。

ドリアンは完成した肖像画を見ながら、自分の今後の人生について考えます。

「楽しく明るくとにかく遊んで、好き勝手に生きていくことこそが良い」

と彼は思いました。

そして今は美しい自分も、いつか老いていくことを感じ

「自分自身は老いず、この肖像画の方が老いていけば良いのに」

とつぶやきます。

その後、彼は奔放な人生を送りました。

たとえば女優の婚約者ができましたが、女優として落ちぶれてしまったので、ドリアンは彼女を捨ててしまいます。

彼はまさに、自分の本能の赴くままに好き勝手に生きて行くのです。

そして遊び呆け、多くの人を傷つける生き方をしていきます。

するとドリアンが皆にヒドいことをする度に、彼に代わって肖像画がどんどん醜く老いていきます。

ところが不思議なことに、ドリアン自身は全く老いません。

その後、ドリアンは人を殺してしまったり、アヘンや麻薬にハマってしまったり、捨てた女優の弟がドリアンを殺そうとしてきたり、様々なことが起こります。

このように周りとのトラブルが絶えず、彼はとても後悔をします。

最終的にドリアンはおじいさんくらいの年齢となりますが、見た目はやはり若いままです。

そして肖像画は、すっかり醜い老人の姿になっていました。

彼は肖像画を見て

「これは自分の良心の象徴だったんだ」

と気づきます。

彼は肖像画を壊そうと、絵にナイフを突き立てます。

するとドリアンのいる部屋から、叫び声が上がりました。

周りの人が驚いて見に行ってみると…。

肖像画は、「美しく若いドリアンの姿」に変わっていました。

そして…。

その肖像画の前で、ドリアンが死んでいたのです。

そう。

醜い老人の姿になって…。

横浜駅徒歩1分の立地でも昭和を変えない「珍味好き」が集まる店

豚の頭や舌などの部位を食べながら「やかん」から焼酎を注いで飲む。都会にありながらも、そんな雰囲気の昭和な居酒屋が今日もにぎわっています。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者、佐藤きよあきさんが、その人気の秘密を探ります。

高度成長期の安酒場、いまも健在!豚の珍味で焼酎を飲る

そこは、まるで高度成長期の酒場。

仕事を終えた労働者たちが、安い酒を飲み、語り、笑う場所。

まさに昭和前期の光景を現代でも見ることができます。

都市開発の進む、横浜駅徒歩1分という場所にありながら、古き良き時代を守っているのか、はたまた、取り残されたのか。

歴史のある飲み屋街の中でも、このお店は少し特殊で、ある種のマニアたちが集まっています。

お店の名は、「豚の味珍(まいちん)」。

店頭に掲げたメニューには、「豚の頭」「舌」「足」「胃」「尾」の文字と写真が。

豚本体の肉は扱っていません。

まだ豚肉の高かった時代に、安い部位を美味しく食べられるよう調理して、安く提供していたのでしょう。

その名残りのままに、現代まで続いてきたのです。

これらの部位を丁寧に下処理したのち、醤油ベースの秘伝の和風ダレでじっくり煮込んでいます。

2日間掛けて仕上げているそうです。

長時間煮ることで脂を煮出し、臭みを取り除いているのです。

なので、やわらかく、奥深い味わいのみが残っています。

そのままでも充分に美味しいのですが、お客さまは、ねりがらしを酢で溶いて、少量の醤油を足したものにつけて食べます。

これが、このお店の正統な食べ方です。

好みで、ラー油やおろしニンニクを足したりします。

激シブな昭和的食べ方です。

これをアテに、中国の酒器らしき、通称「やかん」から注がれた焼酎をストレートで飲ります。

いまどき、焼酎をストレートで飲む人も少ないのですが、それがこのお店のスタイルなのです。

この焼酎に、カウンターに置かれた「梅シロップ」を入れるのも定番です。

アテは他にも、「辣白菜(ラーパーサイ)」と言われる白菜の甘酢漬けや「腐乳(フニュウ)」と言われる発酵豆腐、「皮蛋(ピータン)」「くらげサラダ」「牛すじ」「牛もつ煮込み」「馬刺し」など、なかなかクセの強いものばかりが揃っています。

これほど、マニアックとも言える料理で、お客さまを魅了しているお店はあまり存在しません。

どちらかと言えば、敬遠されやすいタイプです。

しかし、多くの常連さんに愛され、いつも賑わっています。

お店は昭和のまま。提供するものも昭和のまま。

スタイルを変えることなく、昔のままに営業を続けていることが、長く生き残っている要因なのです。

時代の流れなど、関係なし。若者の求めるものなど、完全に無視。

これが当店。当店の売りはこれ。やるべきことを続けるのみ。

頑固一徹ではなく、お店を愛してくれるお客さまを大切にしているだけです。

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TSMC熊本 半導体バブルの盲点。日本大復活にあと1つ足りぬピースとは?白亜の工場が本邦経済の墓標となる恐れも

「我が国の半導体産業の栄光と凋落、その過程で味わった屈辱を思うと、私にはTSMC熊本工場が日本経済の墓標に見えてならない」と述懐するのは、メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』著者で米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんは「TSMCの新工場が、我が国半導体産業の反転攻勢の契機となる可能性はゼロではない」としながらも、日本が本当の復活を遂げるには失われた30年の敗因分析が欠かせないと指摘。岸田総理が第1工場の開所式に寄せたコメントには「漆黒の絶望しか感じない」とした上で、今後の課題を俯瞰的に解説しています。

TSMC熊本工場は、日本経済の希望か墓標か

半導体の受託製造(OEM)メーカー台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が2月24日、熊本県菊陽町に建設していた工場の開所式を行いました。TSMCは、この第1工場に続いて、第2工場の建設も決定。熊本は、その経済効果に湧いていると言われています。

ですが、私はこの白亜の工場が、日本経済の墓標に見えてなりません。

日本の半導体産業のかつての栄光とその凋落、凋落の過程で見せた様々な悪戦苦闘と判断ミスの数々、そして悲惨とも言える現状。そうした負の歴史と現状を思うとき、どう考えてもこのピカピカの新築の巨大工場は墓標です。

もちろん、日本の半導体産業の将来はゼロだとは言えません。また今回の新工場がその反転攻勢の契機となる可能性もゼロではありません。

ですが、仮に今後の日本の半導体産業が、そして日本経済が攻勢に転ずるのだとしたら、やはりこの30年の日本経済の迷走と、敗北に次ぐ敗北の歴史を正視して、そこから修正を行うしかないのです。

その意味で、今回の開所式にあたっての政治家の発言には漆黒の絶望しか感じません。

岸田総理は「TSMC社の世界戦略の中に日本が重要な拠点として、しっかりと位置づけられることを歓迎します。2号棟についても支援を決定しました」と開所式に寄せたビデオメッセージで述べたそうです。その支援についてですが、日本政府はTSMCに対して補助金として1兆2千億円を投入するそうです。

「日本の屈辱」の象徴としてのTSMC熊本第1工場

では、なぜこのTSMCの白亜の工場が日本経済の屈辱の歴史の象徴なのか、2つの工場に分けて考えてみましょう。

まず今回、開所式が行われた「第1工場」ですが、これは最先端の半導体を製造する工場ではありません。チップの中にどれだけ多くのトランジスタなどを詰め込むかという「集積度」は大きくなく、つまりは半導体として旧世代に属します。

また、その多くは汎用品、つまり発注主が細かく設計仕様を指定してくるのではなく、あらかじめ多くのニーズに応じることができるように設計されたものです。

こうした旧世代の汎用品は、その多くが自動車に搭載されるマイコン用です。この分野では、数年前までは日本は世界をリードしてきました。リードするというと、格好良すぎるのですが、とにかく世界ではトップのシェアを維持していたのです。

そんな中で、東日本大震災による工場被災などで、日本での汎用半導体の生産に色々な問題が出るようになっていました。世界的な半導体不足とか、そのために起きた新車の供給不足といった問題はこのためでした。

実は、日本の汎用品メーカー(ルネサスなど)はシェアは獲得していたものの、決して経営状態は良くありませんでした。

これは、力関係として買い手、つまり発注をする自動車メーカーのほうが強く、半導体メーカーとしては価格交渉などで屈辱的な状態に置かれていたからでした。

シェアがトップで、ほぼ独占状態にありながら、どうして価格で強気に出ることができないのかというと、それは半導体メーカーの株を自動車メーカーや、自動車の部品メーカーが握っていたからでした。

それだけではなく、自動車産業は半導体メーカーに役員を送り込んでおり、経営陣の多くは自動車産業の出身だったのです。

株を握られ役員まで送り込まれていては、強気の価格交渉などできるわけがありません。テクノロジーは旧世代の汎用品ということもあり、自動車産業はこうした半導体メーカーを下請け、コストダウンの対象としか見ていませんでした。

そもそも頑張っても付加価値にならないのですから、これではイノベーションが進むはずはありません。

問題は勿論分かっており、現在では経産省も後押しする形で、こうした日の丸半導体メーカーは、もっと高度な仕事にシフトするように動いています。

岸田総理は化学物質PFASをご存じない? TSMC熊本工場に地下水汚染と健康被害リスク…数年後「想定外」マジ勘弁な

台湾の半導体製造大手TSMCが熊本県菊陽町に建設した第1工場の開所式にビデオメッセージを寄せた岸田総理。「半導体はデジタル化や脱炭素化の実現に不可欠なキーテクノロジー」であるとして、今後建設される第2工場とあわせて1.2兆円の補助金を投入すると説明しました。これに関して、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんは、「工場誘致に税金を使うこと自体は悪くない」としながらも「ちゃんとした条件交渉をできているかどうか心配」と指摘。その不安の一例として、工場周辺で危惧される化学物質「PFAS」による地下水汚染や健康被害のリスクを挙げています。(メルマガ『週刊 Life is beautiful』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題「PFAS汚染問題」

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

岸田総理も大はしゃぎのTSMC熊本工場に「2つの懸念」

日本政府が5000億円近い補助金を提供することにより誘致に成功した、TSMCの熊本工場ですが、それに味をしめたTSMCが第二工場の建設を計画しているそうです。経済産業省は、9000億円規模の補助金による支援を検討しているそうです。

半導体工場の誘致に税金を使うことそのものは悪くないと思いますが、ちゃんとした条件交渉を国ができているかどうかがとても心配になります。日本の政治家は、しばしば「結論ありき」で物事を進めるため、「誘致すること」が前提で官僚が交渉をしたところで、良い条件が引き出せるわけがありません。

そんな中で、最近になって浮上してきたのが、地下水の問題です。

熊本は、日本の中でも珍しく綺麗な地下水が豊富な地域で、地域の住居・農場・工場に提供されている上水道の水源は、その地下水です。

半導体工場は、大量の水を使うことが知られていますが、今頃になって、これが地下水に与える影響を心配する声が聞かれるようになりました。

懸念事項は二つあります。

一つ目は、半導体工場が大量の水を使うことにより、地下水が枯れてしまうのではないか、という心配です。私のような素人から見ても、「そんなことは工場を誘致する前にちゃんと調べておけよ!」と言いたくなります。

半導体工場がどのくらい水を使うかは前もって分かっているのですから、いわゆる「環境アセスメント」の段階で、地下水が十分にあるかどうかは調べておくべきであり、今頃になって「地下水が枯れてしまうかも」と心配するのは馬鹿げた話です。

二つ目は、PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれるフッ素化合物による地下水の汚染です。

PFASは、1940年ごろから普及していった化学物質で、水や油をはじき、熱に強い性質を持つため、消化剤、揮発剤、表面処理剤として、幅広く使われるようおになりました。フライパンに焦げ目がつかないようにするテフロン加工、布地が水を弾くようにするゴアテックス、などが代表的なものです。

PFASは、その性質上、自然界や体内で分解されにくく、一度環境が汚染されてしまうとなかなか消えなかったり、生物の体の中に蓄積されてしまう特徴があり、”Forever Chemicals”と呼ばれています。

その後、PFASの中でも、特にPFOSとPFOAと呼ばれる物質に、血清総コレステロールの増加、抗体反応の低下、がん、出生時体重の減少などのリスクがあることが判明し、製造元による自主規制や、規制当局による製造・使用、輸出入の禁止などが進んでいます。