なぜ“焦げたアンパンマン”石破首相は裏金議員を全員「非公認」にできないのか?

一旦決断したとされる次期衆院選での「裏金議員の原則公認」の方針が国民から激しい反発を受けるや、萩生田光一氏や下村博文氏らを「非公認」とする方向に舵を切った石破首相。この処分内容を評価する声が多方面から上がりましたが、人気ブロガーのきっこさんは異を唱えます。きっこさんはその理由を今回の『きっこのメルマガ』に記すとともに、今般の「なんちゃって処分」の納得のカラクリを解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:石破茂はアンパンマンになれるか?

このまま行けば似非ヒーローのコゲパンマン。石破首相はアンパンマンになれるか

キッカケは10月3日の朝日新聞でした。この日、朝日新聞が「自民、裏金議員を原則公認へ 衆院選で比例重複も容認、首相方針」という記事を報じると、国民の怒りが爆発しました。ツイッター(現・X)では「裏金議員」「原則公認」がトレンド入りし、「コレ、負けに行ってんの?自民党ってバカなの?」「公認はともかく、比例重複とは何事や!これじゃ石破が総理になった意味が無い!」「もう何でもありか。自民党」「石破さん、次はどんな嘘をつくのかな?」など、SNSは石破茂首相と自民党への批判が飛び交いました。

もちろん、これだけが原因ではありません。総裁選の間、とにかくすぐにでも解散総選挙を行なうと主張していた小泉進次郎氏に対し、石破茂氏は「予算委員会で野党と議論を尽くし、国民に判断材料を提供するのが新首相の責任だ」などと反論していたのに、いざ自分が首相になったとたん、予算委員会など開催せずに戦後最短のスピードで解散総選挙を行なうと宣言したからです。それも、まだ自分が首相に就任していない時点での宣言ですから、憲法にも抵触していました。

さらには、総裁選では「選択制夫婦別姓は少しでも早く実現すべき」と主張していたのに、公明党の石井啓一新代表から自公の「連立合意書」に「選択制夫婦別姓を進める」という文言を掲載するように打診されると、石破首相はこれに反対したのです。自民党内の保守派に気を使った結果ですが、これでは何のための総裁選だったのか、意味が分かりません。

マイナ保険証への一本化のために従来の保険証を12月で廃止にする問題についても、総裁選では「期限が来ても納得しない人が多ければ、従来の保険証との併用も選択肢として考えなければならないのは当然だ」と計画の見直しにまで言及していたのに、石破首相が任命した平将明デジタル担当相は「従来の日程通りに進める」と、これまた手のひら返し。

国民から見たら、裏切りと言うより悪質な詐欺に近いこれらの手のひら返しの連発を食らった後に、トドメのように降り注いで来た「裏金議員を原則公認へ」というニュースだったので、国民の怒りが爆発したのは当たり前です。そもそもの話、前任の岸田文雄首相が裏金問題を1ミリも解決せずにウヤムヤにしたことで支持率が急落し、このままじゃ選挙が戦えないという流れから始まった総裁選です。それなのに、次の首相も「党内融和」の名のもとに裏金議員を優遇って、これじゃミもフタもありません。

この記事の著者・きっこさんのメルマガ

ハリスvsトランプ、どちらが優勢?「石破」ばかりの日本が報じない米大統領選“真の争点”

米国の新しい大統領を決める選挙まで、あと1ヶ月になりました。日本ではすっかり報道が下火になってしまった米大統領選ですが、現地アメリカではどのような状況になっているのでしょうか? いま米大統領選のキーワードになっているという「男らしさ」について論じているのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、ハリス候補とトランプ候補に共通する「男らしさ」という言葉をめぐるあれこれについて詳しく紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:新旧「男らしさ」の戦い

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

米大統領選は、いまどうなっているのか?日本では報じられないこと

米国の大統領選がひと月後の11月5日に行われますが、英国The Economist(日経新聞に転載)に掲載されていた「米大統領選、男女の権利巡る対決に」と題された記事が、実に興味深かったのでとりあげ、あれこれ考えてみようと思います。

米国大統領選の争点の一つに「妊娠中絶の権利」があげられていますが、記事では、これを「ジェンダー」の視点で包括し、「男らしさ」というキーワードでさまざまな問題を交え、論じていました。

ハリス副大統領は、中絶の権利擁護を掲げ、バイデン政権の副大統領としても、中絶の権利が守られる必要性について、全米各地を回って訴えてきました。

一方、トランプ氏は、2022年に連邦最高裁判所が「中絶は憲法で認められた権利だ」とする、それまでの判断を覆した際に、自分が大統領在任中に保守派の判事3人を指名し、多数派になったことで実現したと強調するなど、人工妊娠中絶反対の立場を取り続けています。

そんな中、ハリス副大統領陣営は、各地の男性にハリス候補への投票を呼びかける「生殖の自由バスツアー」なるものを主催。

9月20日にはペンシルベニア州ピッツバーグのある醸造所で、医師、ソーシャルワーカー、米下院議員、ハリウッド俳優2人、テキサス州の人工中絶禁止法のために妻を敗血症で失いかけた夫、の6人による討論を行い、「政府は女性の子宮に口出すべきでないということだ」と討論者たちが結論づけると、大きな拍手がわき起こり、興奮してビールをこぼす人までいたと伝えています。

私から見れば「女性の問題」とされがちな中絶の権利を、海の向こうで男性たちが議論しているのが実に羨ましく思えるのですが、記事では件のような「夫としての立場」、すなわち、彼らが「息子たちの良い手本」となり、父として娘たちのため権利を取り戻そうと訴えることを、ある種の「男らしさ」の一つと表現。

8月に行われた民主党全国委員会でも、同様の「男らしさ」が主張されたそうです。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

 

もう誘惑の塊。NYに住む日本人社長が、日本のコンビニへ7年ぶりに入ってみたら…

日本にいると当たり前のように利用しているコンビニエンスストア。でも、在米者から見るとその素晴らしさは異常なほどなのだそうです。今回のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』ではニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋さんが、7年ぶりに日本のコンビニに足を踏み入れた体験記を綴っています。

楽園/あるいは ランチパックは国の文化遺産に指定しろ

日本帰国時、コンビニエンスストアの店員の「いらっしゃいませー」の掛け声に条件反射的に反応しない。気合いを入れて無視を決め込む、と誓った、その結果報告です。

僕たち在米者からすると、久々に行く日本のコンビニエンスストアは、もう、ただのアミューズメントパーク。 楽しすぎてなかなか出られません。いや、本当。

まずアメリカには日本のコンビニのような魅惑的な店が、ない。品揃え豊富で、明るくて、清潔。日本のコンビニにあたる、この街の “24時間営業ストア” は「韓国人経営のデリ」になりますが、見た目は昭和の「八百屋さん」。暗い店内に搬入時の段ボールのまま、マジックで値段を書かれた果物や野菜。目つきの悪い店主。

従来より明るいワット数の電球を使う事により、入店するだけでワクワクする効果をもたらすコンビニは、日本の誇る「街のほっとステーション」。

入店と同時に流れる店舗別ジングルも心を躍らせます。アナウンスで「暖か~い、おでんの季節になりました♪ 現在、一品どれでも70円のキャンペーン中で~す」なんて言われたら、声のする方向に「はい!!?」と返事しそう。せずともおでんは買う。買わないなんて選択肢はあり得ない。そこまで大人にはなれない。これ以上ないほどセブンアンドアイホールディングスの思う壺。

だとして、誓ったばかりです。

入店時の「いらっしゃいませ~♪」に意志を持ち「 “ちゃんと” 無視をする」。

気を抜くとニューヨーク時のように返事をしかねない。何度も練習した奥義「聞こえるか聞こえないかくらいのドウモ + してるかしてないかくらいの会釈 イン 同時」を試す時がきた。

果たして、シッカリと練習の成果を出せたと思います。自分なりには完璧にこなせた。なんなら気合い入りすぎて、いらっしゃいませと声かけしてくれた店員をちょとにらみ気味だったかもしれないほど。

24年間のニューヨーク生活で、最大7年間、日本帰国をしなかった時期があります。その際の7年ぶりに入ったコンビニは、記憶が飛ぶほど興奮した。刑期を終え出所した犯罪者の気持ちが理解できた。そうか、こんな感じなのか、と。

特にパン売り場コーナーなんて、息遣いのハァハァが自分の耳に届くほど。

小麦粉の輸入が制限されているニューヨークでは、日系グロッサリーでも日本製のパンを見ることがない。つまり7年ぶりに日本のパンに遭遇!したということです。

この記事の著者・高橋克明さんのメルマガ

値上げをしたらもう戻れない。飲食店が値上げを決意する前にすべき3つのこと

値上げを一度してしまうと、下げることができません。ですから、値上げを決行するには慎重な調査が必要ですよね。外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一さんは、今回のメルマガ『飲食・デリバリー企業向け/業績アップメルマガ』のなかで、飲食店が値上げ前にやるべき3つのポイントを語っています。

飲食店が値上げ前にやるべき3つの事

値上げは下げられません。

しかし!

単純値上げだと既存店客数が落ち込む可能性もあります。

これの顕著な例がケンタッキー。既存店客数が減り続ける中で反面値上げを行なっていました。

値上げで既存店売上を維持できている時はまだギリギリよかったのですが。。

今期は遂に値上げではクッションのできない既存店客数のマイナスになっています。

既存店売上:99.7

既存店客数:91.4

既存店単価:109.0

今年の4月には既存店客数が「80.9」まで落ち込みました。

もちろん販管費は上がり続けているので、既存店売上がマイナスになってしまうと利益は吹き飛んでしまいます。

実際、同社で営業利益は前年比で7割近い減少。

そのため、「値上げはすべきだが慎重に」の発想はセット。

では値上げする前に何を行うべきか。簡単にできるのが3つあるので、そこはお願いできますと幸いです。

1)正しい理論原価と実際原価の差異を把握

2)強化商品の選定

3)粗利ミックス商品の選定

■正しい理論原価を出せてますか?

意外と毎月理論原価を追っていない企業さんが何気に多いです。

単品原価率を出しているので、「理論的には◯%のはずですが。。」みたいなやつですね。

しかし全ての商品の原価率が全部同じなんて面白くないですよね。

50%みたいな目玉商品もあれば、15%みたいなびっくり粗利商品も。

それぞれをバランスよく販売し、粗利を増やしていく訳です。

その考え方が、下記です。

交差原価率=単品原価率×売上構成比率

縦軸→全商品

横軸→売価、原価、原価率、出数、売上構成比率、交差原価率

こう並ぶエクセルを作ってください。

これで交差原価率の総和を出すと、それが「今の売れ筋に合わせた正しい理論原価率」になる訳です。

この記事の著者・堀部太一さんのメルマガ

【年齢差アリ】なぜか“トイレ臭い”女子の共通点って?秋の香り「キンモクセイ」と恋の呪いにお気をつけて

毎日清潔にして、身だしなみもバッチリ整えているのに、気になる男子から「クッサ!なんでこの女、トイレのニオイがするんだ…?」なんて思われたらショックですよね。実はこのトラブル、男性宅のトイレ芳香剤とあなたの愛用するフレグランスが“一致”したときに起こります。香水としても人気がある秋の香り「金木犀(キンモクセイ)」は特に危険ですが、石けん系や柑橘系など他の香りが原因になってしまうことも。この記事では、素敵な香りを“トイレ臭い”と感じてしまうしくみや、その錯覚をリセットする方法を、メルマガ『富田隆のお気楽心理学』の著者で心理学者の富田さんが分かりやすく解説します。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:キンモクセイ

キンモクセイといえば何の香り?年代によっても違う感じ方

散歩をしていると、金木犀(キンモクセイ)の香りを嗅ぐことが多くなりました。

この香りが嫌いだという人は少ないと思いますが、この香りを嗅ぐとトイレを思い出してしまうという人も少なくないと思います。

なぜかその昔、金木犀の香りを使っているトイレの「芳香剤」が多かったのです。

メーカー側の「推し」もあったのかもしれませんが、この香りを選ぶ消費者も少なくなかったのでしょう。

この、「皆に愛された」ということが仇になってしまいました。

一時期は、どこの家庭にお邪魔しても、トイレからは金木犀の香りが漂ってきたものです。それも、秋だけでなく1年中、この香りを嗅ぐはめになったのです。

その結果、多くの国民において、「レスポンデント条件付け」(またの名を「古典的条件付け」あるいは「条件反射」あるいは「パブロフ条件付け」)が成立してしまったのです。

つまり、トイレに入るたびに金木犀の香りを嗅ぐはめになった多くの国民は、本来はトイレとは無関係であった金木犀の香りから、トイレを連想するように条件付けられてしまったのです。

これには、ベルの音を聞くとよだれを垂らすように条件づけられた「パブロフの犬」と同じ原理が働いています。

しかも、この条件付けは強力で、秋になって「本物の」金木犀の香りを嗅いでも、ついついトイレを思い出すという人が続出し、その効果たるや何年にも及んだのです。

「香りの多様化」で、キンモクセイ以外のトイレ芳香剤と“かぶる”可能性も

かく言う私も、レスポンデント条件付けの呪縛から解放されたのは、ほんの数年前のことです。

お陰様で、今年になって金木犀の香りを嗅いでも、トイレを連想することはありません。

清々しい秋風や、鱗雲の浮かぶ青空、十五夜のお月様、といった秋の風物を連想するようになったのです。(やれやれ)

そして、これほど強力なレスポンデント条件付けが「消去(条件づけられた刺激と反応の関係が消え去ること)」されるに至った原因の中で最も有力なのは、「トイレで金木犀の芳香剤を嗅がなくなった」ことにあると考えられるのです。

思い出してください。最近、トイレで金木犀の香りを嗅いだことがありますか?

おそらく、無いと思います。

もちろん、トイレに芳香剤が置かれなくなったわけではありません。香りが「多様化」したのです。

仕事の合間にできる…低くなった「自己肯定感」を一瞬で回復させる方法

「自己肯定感」という言葉は、近年教育の分野にとどまらず、ビジネスの世界でも重要視されるようになっています。実は自己肯定感の高さは常に一定ではなく、状況によって上がったり下がったりすることもあるんだとか。そこで心理カウンセラーであり自己肯定感の第一人者である中島輝さんに、ビジネスパーソンと自己肯定感の関係についてお話を伺いました。仕事の合間に実践できる、簡単で効果的な自己肯定感のリカバリーテクニックを学んで、日々の業務に活かしてみませんか?

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自己肯定感を高めれば承認欲求の呪縛からも解放される

自分が自分であることに満足し、価値ある存在として受け入れられる感情のことを差す「自己肯定感」。人生を前向きに歩んでいくうえでのカギとなるものとして、年々注目度があがっているこの概念だが、そのいっぽうで日本人はこの自己肯定感が、欧米諸国の人々と比べてかなり低いと取沙汰されることも多い。

そんな日本人にとって圧倒的に足りないとされる自己肯定感だが、それを高めるためのトレーニング法やテクニックを世に伝える第一人者として精力的に活動されているのが、心理カウンセラーの中島輝さん。中島さんは日本人の自己肯定感が低い要因のひとつとして、ここ数十年の日本の経済的状況も大きいのではと話す。

「仕事をしていても、好景気の時代だと成果に結びつきやすかったり、新しい企画を発信しても採用されやすかったりと、他人から認めてもらえる機会が多くなるので、感情も前向きになりやすく、ポジティブでプラス思考な人が増えていきます。しかしここ数十年の日本は、バブルが弾けた後はずっと景気が悪く、そうなると仕事もなかなか成果が出ず、新しい企画も通らなかったりする。

さらに成果が上がり評価される人と、そうではない人とで二極化するような状況が出てくると、人によっては妬み嫉みといったマイナスの感情が膨らんで、ネガティブな思考へと向かっていくこともあります。そういう風にして、どんどんとポジティブマインドをすり減らしていく人が増えたことが、皆が自己肯定感という言葉に注目し始めるという、最近の流れに繋がっているのかなと」

他人に認めてもらえるという状況は、人間が生きていくうえでも、とてつもなく大きなエネルギーになるということで、誰もがそれを大いに願うもの。いわゆる「承認欲求」と呼ばれるものだが、ただ中島さんによれば、それを満たしたいという気持ちが強くなりすぎるのは、逆に自己肯定感が低くなっている状況であるとのこと。

「特に70代以上といった高齢になるほど、承認欲求は強くなるんです。人間には食欲・睡眠欲・性欲といった基本的な欲求があるといいますが、歳を取るとあまり寝なくてもよくなるし、子孫を残そうという気も無くなるので、そういった欲求は無くなっていきますが、その代わりに食欲と承認欲求はすごく残る。

高齢者の施設に講演などで伺うと、そういった年代の人から「誰かに認めてもらえた」とか「ありがとうって言ってもらえたのよ」っていった話がしきりに出てきますし、また逆に自分の息子やその奥さん、あるいは看護師さんなどに対する愚痴話とかも多かったりするのですが、そういうのも「自分の言い分を認めてもらいたい」っていう気持ちが、根底にあるがゆえですからね」

ただ高齢者に限らず、他人から自分のことを褒められたり認められたりするという機会を得ることは、リアル社会ではタイミング的にもなかなか合うことがなく難しいというのが実際のところ。そういった状況が最近のSNS上において、承認欲求を満たそうとする人々が増えている一因と言えそうなのだが、中島さん曰くそんな時に暴走しがちな承認欲求を埋めるためにも、自己肯定感が大事になってくるという。

自分で自分のことを褒めてあげることが、まさに自己肯定感なんですね。自分で自分のことを「大丈夫」だとか「いける」とかって言ってあげたりして、自己肯定感を高めていくと、自己承認という形で自らの承認欲求が満たされていく。そうするとSNSに頼らなくても良くなるわけです」

いっぽうで、先ほども話にあがったような他人に対しての妬みや嫉みといった感情も、自己肯定感のコントロールによって解消されるという。

「そもそも妬みや嫉みがどのような状況で生まれるのかっていうと、やはり一番最初は比べてしまうことだと思うんです。他人と比べて自分のマイナス点を見てしまうことで、自己肯定感ぐっと下がってしまうと。でも自己肯定感を高める取り組みをしていると、自分と他人を比べた時に変に落ち込んだり嫉妬することなく「自分の強みとかってまだあるよな」という風に、肯定的な側面を見ることができるようになるんです。

マイナスな自分にばかり焦点を当てるんじゃなく「自分の生き方はこうなんだし」といった、しっかりとした自分軸を作って生きていく、そしてそんなあるがままの自分を受け入れるといった方向性で自己肯定感を高めていくと、他人への妬みや嫉みといった感情はなくなっていきます」

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自己肯定感の第一人者が辿った壮絶な半生

このように、現代人が抱える様々な病巣といったものを解消する手だてとしても、自己肯定感を高めることが非常に効果的だというのだが、そう語る中島さんが自身の人生のなかで、自己肯定感という概念と向き合い始めたのは、幼稚園の年長だったわずか5歳の頃だという。

造り酒屋を営んでいた両親が多忙を極めていたため、幼少期より親戚である里親夫婦に預けられていたという中島さんだが、実の子どものように可愛がってくれたというその里親が、事業失敗による借金苦が原因で突然失踪。その年頃にとってはあまりにもショッキングな出来事が、大きなきっかけとなったというのだ。

「大切な存在だったその人がいなくなった瞬間、普通なら泣いたり悲しんだりするものなんでしょうけど、あまりの衝撃でその時に自分のなかで確立されたのが「自分は人に愛される資格がなくて他人に迷惑をかける存在だ」というアイデンティティでした」

生きていること自体が迷惑をかけていると思い込み、これ以上誰にも迷惑かけていかずに生きていくにはどうすればいいのかと、幼いながらも思索しはじめたことが、後から考えると自分と自己肯定感との関りの端緒だったのでは振り返る中島さん。

「どうすればそういったアイデンティティが自分の中で違うものに変えれるんだろう、どうすれば他人を信じられるようになるんだろう、どうすれば自信つけられるんだろう……。自分が生きていく術として、そんなことばかりを考えざるを得なかったんですが、30代半ばに至るまで続いたそういった試行錯誤の連続が、自己肯定感を高め保つためのメソッドを体系化することにも繋がることになりました」

小学生の頃には幻聴や幻覚といった精神的な不調をきたすようになり、さらにその後の学生時代には円形脱毛症、不安神経症、強迫観念、躁鬱などの症状も現れるも、他の人にはそんな苦悩をなかなか打ち明けることもできす、一人抱え込んでいたという中島さん。

さらに大学を出た後に継いだ家業は、バブル崩壊で多額の借金を抱えるなど危機的な状況で、精神的な病と戦いながら会社存続のために奮闘する最中、ついにはパニック障害まで発症するに至る。

そんな壮絶な人生を歩むなかで、中島さんが抱える様々な困難を理解する数少ない存在だったのが、K社長という中島さんの幼少期からの家族の友人だったという人物。優しい言葉や時には叱咤激励を交えながら、常に支え見守ってくれたというこの方のことを、中島さんは命の恩人だと語るのだが、その人物が亡くなったことが精神的な立ち直りのきっかけとなったという。

「ガンになって急に亡くなったその方の社葬に、当時はパニック障害で外出もままならない状況のなか参列したのですが、自分のことをずっと見守ってくれていた存在が亡くなってしまった事実に直面したことで、それまでは自らを愛される資格がなくて迷惑をかけてばかりのダメな人間なんだと思っていたのが「人間って、たった一人でも承認してくれる人がいれば、生きていけるんだな」って思うに至ったんです。

自己肯定感を高めるためには、小さな成功体験をひたすら繰り返していくというのがセオリーなんですが、それこそ5歳のころから続けてきた心のなかでの試行錯誤で、それが積み重なっていたところに、恩人の死というインパクトの大きい出来事が重なったことで、自分のなかで何かがスパークしたという感じでしょうね。自分の居場所作ってくれていた人が亡くなったのだから、これからは自分がそういう存在になりたい……この時そう願ったことが、今の活動の原点となっています」

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ビジネスパーソンにも求められる自己肯定感の知識

こうして心理カウンセラーとしての道を歩み始めた中島さんだが、これまでに自身がメンターを務めたクライアントの数は、ゆうに1万5000名を超える。そのなかには上場企業の経営者も多く含まれるなど、最近ではビジネスの世界でも自己肯定感という概念が、大いに取り入れられつつある状況だ。

「自己肯定感をどう取り扱うのかという視点が、このところはビジネスの世界でも重要なテーマとなりつつあります。社員の自己肯定感というものは、低すぎるのはもちろんダメですが、かといって高すぎると「アレをやりたい、コレをやりたい」と収拾がつかなくなってしまうので、実際Google社などでは、自己肯定感を適度な高さにいかに抑えるかということにも取り組んでいるといいます。

社員らが会社が掲げるパーパスに沿う形で効率的に動いてもらうため、いかに自己肯定感の上げ下げを巧みにコントロールしていくかというのが、今後マネジメント側に求められるひとつの能力となっていきそうです」

直接対面してのカウンセリングやセミナーといった手段だけでなく、数多くの著作や自身のYoutubeチャンネル、さらには毎日配信しているメルマガなどを通じて、自己肯定感に特化したトレーニング技術を日々伝えている中島さん。

自己肯定感を自在にコントロールできるようになるためには、持続型のトレーニングを日々行い、何事にもブレない自分軸を育むことも大事だということだが、そのいっぽうでその場その時の状況で低くなってしまった自己肯定感をパッと一瞬で回復させる、いわゆる瞬発型のテクニックも数多くあるという。

「仕事の合間のちょっとした時間にでもできることが、すごくシンプルなんですが空を見るってことなんです。何かに行き詰まったら空を見る、メンタルがマイナスになったなと思ったら空を見る、と。自己肯定感が低くなっている状態だと、どうしても自分の視野が狭くなってしまうので、その視野をグッと広げてあげて心に幅を持たせてあげるためにも、空を見ることはとても有効なんです。

あとは姿勢を正して深呼吸するだけでも効果はありますし、また先ほども伝えたように、自分で自分にいい言葉を言ってあげるというのもおすすめ。その際は「上手くいく」「できる」とか「なんとかなる」っていう風に、断定的に言い切ってあげるのがコツです。

自分の感情のマネジメントやコントロールっていうと、一見難しそうにも見えますが意外とシンプルなもの。まずは今の3つぐらいを覚えていただいて日頃実践するということから、自己肯定感を高める取り組みを始めるのもいいかな、と思います」

崩壊していたもう一つのビル…9.11事件をめぐる今なお不可解なナゾ

9・11事件から13年が経過した今でも、多くの疑問が解明されないまま残っています。ワールド・トレード・センターの崩壊や、旅客機が衝突しなかった第7ビルの不可解な倒壊、米国防総省の謎めいた破壊など、公式説明では説明しきれない点がいくつも存在しています。メルマガ『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』の著者で環境、経済、平和などのさまざまなNGO活動に関わる環境活動家の田中優さんが、当時から指摘され続けている9つの謎を取り上げ、改めて真相に迫ります。

プロフィール:田中優(たなか ゆう)
「未来バンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表。横浜市立大学、恵泉女学園大学の非常勤講師。著書(共著含む)に『未来のあたりまえシリーズ1ー電気は自給があたりまえ オフグリッドで原発のいらない暮らしへー』(合同出版)『放射能下の日本で暮らすには?』(筑摩書房)『子どもたちの未来を創るエネルギー』『地宝論』(子どもの未来社)ほか多数。 

この記事の著者・田中優さんのメルマガ

なぜ明らかにならない「9.11 事件」

いまなお消えない9つの謎」というこの記事は、「911事件」から9年経った2010年9月に「週刊朝日」に掲載された記事だ。その核心の9つの謎とは以下のものだ。

(1)ワールド・トレード・センター(WTC)ビルはなぜ崩壊したのか?

(2)旅客機が衝突していない第7ビルはなぜ崩壊したのか?

(3)ビル崩壊の現場を十分な検証もせずに片づけたのはなぜなのか?

(4)米国防総省(ペンタゴン)ビルにできた穴は、なぜ衝突したとされる旅客機の大きさより小さいのか?

(5)米軍の緊急発進はなぜ遅れたのか?

(6)刑事捜査もせず、なぜ戦争に突き進んだのか?

(7)ビンラディンはなぜ9.11事件の容疑で指名手配されていないのか?

(8)容疑者の人違いはなぜ起きたのか?

(9)度重なる警告はなぜ「無視」されたのか?

これが当時から謎だった。一応の公式見解のような説では「9.11事件は、アラブ人の若者たちによって準備され、米国の防衛網の盲点を突いて実行された」とされていて、首謀者と見られるオサマ ビンラディンが計画実行し、アメリカのCIA部隊がビンラディンを急襲して殺し、それで勧善超悪的な結末がついているものとされている。しかし一般に信じられているストーリーでは説明できない、していない点が多すぎる。

むしろブッシュ政権は、2001年9月11日に大規模なテロ事件が起きると知りつつ放置したか、もしくは事件の計画そのものに関与していたと考えたほうが、無理がないのだ。

米国は、約40年間続いた冷戦に代わる構造を再構築するために、新たな戦争を望んでいた。アメリカ経済にとって、必須なのが軍事で、冷戦から長く続く平和な時代は経済の起爆剤として戦争を期待していた構図にある。そのきっかけとして、9.11が起きたのではないか。

「9.11」から始まった「対テロ戦争」という有事体制の中で、米国メディアは体制に引きずられながら真実には無関心のままだった。一方、インターネットは、その埒外にあったため、公式発表への疑問点も数多く報じられてきた。それは事件直後から今日まで続いているが、いまだ不明瞭なままだ。これだけ情報が流通する中で、なぜ不明瞭なままであるのかがぼく自身にとっては不思議だ。

9.11を考える入り口として、9つの謎とされる上記9つの謎を見てみよう。

あらかじめ爆弾が仕掛けられていたのではないか?

(1)ワールド・トレード・センター(WTC)ビルはなぜ崩壊したのか?

まずはこの点から見ていこう。一般的にものが燃えるということは、有機物が酸素と化合して燃えるといのが普通だ。しかし「ワールドトレードセンター」は木造ではなく鉄筋コンクリート造のビルだ。木造ではないのだから燃えない。そのすぐ後にビルが倒壊したのだから、1700℃が融点と言われる鉄骨を溶かせるほどの温度を作り出すことは難しい。

よく長距離を飛ぶためのジェット燃料のせいでと言われたりするが、それは効率を高くするためのターボとかのおかげであって、ケロシンと呼ばれる燃料はそもそも灯油とほぼ同じだから、ただ燃えるだけではそんな高い温度にはならない。

そして不思議なのはこのビルの頑丈さを乗り越えて崩壊させたことだ。世界中の航空機事故の中にはビル激突したものもある。しかしそれらはすべて直後にビルを崩壊させたものはない。では「ワールドトレードセンタービル」だけが例会的に脆弱だったのか。

それは正に逆で、「ワールドトレードセンタービル」はそれすら想定して、簡単に崩れ落ちない構造だった。ちょうど夏の網戸のような構造で、何かが差さって来ても全体の強度は落ちないように作ってあった。もし本当に鉄骨を壊すほどの強度のある飛行機が突っ込んだとしても、鉛筆で網戸を刺したのと同じで、ビルそのものには影響しなかったはずだ。この「ワールドトレードセンタービル」は一か所から全体を崩壊させるような構造になっていない。そんな構造になっているのは日本の特殊な木造建築物だけで、一か所を外すだけで全体が崩れる仕組みを施した建築物だけだ、特にワールドトレードセンタービルの場合、設計したのは 日系アメリカ人 で、どんな想定でも壊されない構造目指したもので、このような衝撃で壊せるようなビルではなかった。大体ものすごく大きなビルにトンボのような小さく軽い航空機が飛び込んだぐらいで、ビル全体を崩壊させはしないのだ。

(2)旅客機が衝突していない第7ビルはなぜ崩壊したのか?

それと併せて検討したいのが、倒壊した「ワールドトレードセンタービル」から、他の崩壊しなかったビルより遠距離にあった「第七ビル」がなぜか崩壊したことだ。倒壊した「ワールドトレードセンタービル」からの瓦礫が当たったためと言われているが、当たったものは大きくはないし、それはさすがに無理がある。それよりは崩壊した「ワールドトレードセンタービル」と同様に保険が掛けられていた事実の方が、説得力があるだろう。

ちなみにぼく自身は、これはビル解体を周囲に影響させずに壊す方法である「 制御解体 」が行われたのだと思っている。「制御解体」する場合、あらかじめ準備が必要で、そのための騒音や空室にするなどが必要で、実際にそうしていた期間もあるし騒音もあったそうだ。むしろ不思議なのは、それを経験した人たちの証言の少なさだ。知っていてか知らなくてか、そうした証言の少なさが実態の立証の妨げになっている。社会全体が一定のウソに向けて口裏を合わせるようになってからは、アメリカは日本以上に「同調性」が高いように思う。

WTCのツインタワーは旅客機が突っ込んだ後に崩壊したが、その様子を見た多くの建築専門家が「あらかじめ爆弾が仕掛けられていたのではないか」と指摘していた。爆弾を次々に爆破させてビルを解体する「制御解体」との見方だが、米政府は調査結果をもとに、それは根拠のない間違いと一蹴している。

「旅客機の衝突による衝撃と火災によって崩壊した」という公式発表が出ると、報道もその線に沿ったものになっていったが、それ自体が信用できない。そもそも崩壊は航空機の突入では無理で、「制御解体」のような必要個所へのタイミングを合わせた破壊が必要だ。

それもうと一つ重要な破壊方法がある。木造のような火災では鉄を溶かすほどの熱慮量がない。ここに必要なのは 鉄を溶かすほどの熱量 だ。しかも日本から出かけた消防士も証言しているが、火災のような燃え方ではなく、じわじわと化学的な反応のような燃え方だ。

それにぴったりなのが「 テルミット反応」 で、ここで見ることができる。

アルミニウムと酸化鉄(?)を反応させることで激しい酸化還元反応が起こり、単体鉄が生成する。

反応は次のようになる。

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この反応は酸化還元反応で、電子のやり取りとしてはアルミニウムが電子を3個放出し酸化されて発熱する。

これは軍事的には利用されているが、アメリカ以外では大規模に利用されてはいない。この軍事物資軍事物資利用についての証言がされていないのも不自然だ。今回の911事件には不可欠な物資だろう。それがどこに誰がどのように使ったのか知ることができれば、一歩全体像に近づくことができるのではないか。

建物への航空機の突入という衝撃的な事例に引っ張られて、何が本当に起きたことなのか、異国のことだけにわかりにくい。ペンタゴンに突入したものが、言われているように航空機であったのかどうかも穴の大きさからみして疑わしい。

こうしたことが解決されないまま、「オサマ ビンラディンが計画実行した911テロ事件」とするには立証か希薄すぎはしないか。「勧善超悪的な結末」だけで納得するのは、全くの素人ならともかく、世界の常識人を納得させることはできないだろう。こんな世界でいいはずがない。ぼくとしては納得できるところまで調べたい。

ぼくにとっては納得できないことばかりのままなのだ。(つづく)

(メルマガ『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』2024年9月15日号より抜粋。続きの「なぜ明らかにならない「9.11 事件」その2」はご登録の上お楽しみください。初月無料です) 

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自分はいまどの段階にいる? 自己改革小説の第一人者が語る「マズローの罠」

近年、SNSで「承認欲求」という言葉が話題となり、多くの人がマズローの欲求段階説に触れる機会が増えました。自己実現や他者からの承認を求めるこの理論は多くの人に共感されていますが、実は見過ごされがちな落とし穴が存在します。自己改革小説の第一人者である喜多川泰氏は、その一例としてボランティア精神に注目し、無償の奉仕が必ずしも承認欲求に基づいていないことを指摘。マズローの法則を超えた人間の本質について、深く考えさせられる視点をメルマガ『喜多川泰のメルマガ「Leader’s Village」』で伝えています。

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 マズローの欲求5段階説の落とし穴

「夢を叶える」「自分のやりたいことをやって生きる」

そう願って生きる人が、学びの世界に入ると、比較的早い段階で「マズローの5段階の欲求」なる考え方と出逢います。

僕が最初に知ったのは大学の授業だったかな。おそらく皆さんもご存知だと思うので、説明はサラッとにしておきます。

マズローによると、人間の欲求というのは5つの段階に大別されていて、下層の欲求が満たされて初めてその上層の欲求が生まれてくる、もしくは、上層のことを実現したいと思える余裕が生まれてくるというもの。下から順に、「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現への欲求」。それぞれ呼び方はいろいろある(例えば「社会的欲求」は「集団と愛への欲求」と言われたりもする)けど、「そういうことになってる」と教わると、なんとなくそんな気がしてくる。

そして、

「なるほど、そういうことになってるのね」と受け入れて、「自分は今どこかしら」と確認してみたりする。

「衣食住に困っていないし、まあいろいろあるけど安全な方かな。会社に所属しているし、愛すべき家族もいる。でも会社から必要とされているようにあまり感じない。家族からもあまり「ありがとう」という言葉をかけてもらっていない。そうか、私は私を認めてほしいのね!承認欲求だわ。それが満たされなければ、自己実現への道を歩むことはできないのね!」

とかね。

権威的知識は人をそこに縛りつける力がある。権威じゃなくとも、人は「みんなそう言ってる」に弱い。「あの偉い人が言ったから絶対そうだ!」「みんなそう言ってるから間違いないだろう」と思い込んでしまう。

知識が人の人生を豊かにするなら大歓迎だ。でもこの知識が多くの人にとって「非行動」の「言い訳」に使われていることを思うと、知識というのはそれ自体が大切なのではなく、それをどう使うかを学び続けなければならないと痛感する。

ある地域では町内会の組長は住民が順番にやることが原則となっている。隣の家がやったら、翌年は自分が組長をやらなければならない。いろいろ忙しいのはみんな同じだからと思って引き受け、一年頑張ったあと隣に引き継ぎに行くと、「うちはそういうの無理。仕事してるから」仕方なくその隣に行くと、「うちは無理。ワンちゃん飼ってて目が離せないので」しょうがなくその隣に行くと、「順番で言えばうちは3年後でしょ。前の二軒がやってからじゃないとやらないよ」なんて言われる。

そんな経験をしたことはないだろうか。

彼らは五段階どころか、町内会の組長をやる上で、クリアしなければならない段階が「早期リタイヤ欲求」「ワンちゃんの世話欲求」「大変なことはできるだけ最後に欲求」の先にある。他にも500段階くらいありそうだ。

ある本には、「マズローは亡くなる直前、実はその先があると言った。自己超越の欲求だ」と書かれていた。要は自己実現が満たされた後は、誰かの役にたつ自分でいたいと思うようになり、それこそが最高の幸せであるということだ。

僕はその場にいなかったしマズローではないから、彼がどう考えていたかはわからない。でも、自分で発表したはいいが「本当にこれでよかったのかなぁ」とちょっと自説が揺らぐような事例がいくつかあったんじゃないかと想像できる。

というのも、これを考え出したプロセスは、「自己実現をするために」というのが最初の目的としてあったように思うんですね。「自分のなりたいものになる。ほしいものを手に入れる。それが幸せな人生だ」という大前提ありきで、そこに到達するためには何をクリアしていかなければならないのかというゴールに向かって創り出した説のように僕には思える。

でも、その大前提が違っていたら…

例えば「今の自分のお金のために」という価値観以外に、「未来の誰かの幸せのために」という価値観で生きている人だっている。その人たちの方が幸せそうに生きているように見えた、といった事例は実際にあっただろう。明治になり開国したばかりの日本にやってきた欧米の人たちは、みな一様に驚いたという。それは、日本人が他のどの国の人たちよりも、幸せそうで満ち足りているように見えたからだ。

ところが、彼らはそれが信じられない。

なぜなら、日本人はみな貧しかったから。「人よりも楽して儲かる。多くを持っている。それが幸せ」という価値観しか知らずに生きてきた人にとって、幸せというのはたくさんのものを手に入れた後にやってくるものだ。「未来の誰かの幸せのために、今日、誰かの役に立つためにできるだけのことをする。それが幸せ」という価値観で生きる人を見るのは驚きだったでしょう。それこそ、生理的欲求すら満たされてないのに幸せそうに生きている人たちがそこにいたわけです。そりゃぁ驚きますよね。

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石破総理の「トンデモ政策」で日本人が覚醒するワケ。アジア版NATO、日米地位協定改定がもたらす“気づき”と世界水準の政治リアリズム

石破総理が提案する「アジア版NATO創設」と「日米地位協定改定」。結論から言うと、現時点ではどちらも非現実的なトンデモ政策だ。だが悪い話ばかりではない。石破氏のプランが各国から総ツッコミを浴びることで、多くの日本国民が自分たちの置かれた立場や「絶対的な非対称性」で形づくられた国際政治の現実に気づくかもしれないからだ。米国在住作家の冷泉彰彦氏が詳しく解説する。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日本の安全保障は非対称関係

「アジア版NATO創設」「日米地位協定改定」石破総理の2大政策

石破新内閣が発足しました。裏金議員について前言を翻して非公認とか、重複立候補認めずといったやや強めの対応をするなど、政局運営には試行錯誤が伴っているようです。今回、仮に解散があるとして、その結果によっては連立の組み換えや政権交代など様々なバリエーションを想定しておかねばなりません。

さて、そうは言っても、新しい政権が出来たのは事実です。ですから、今の時点では、とりあえず首相になった石破氏の政策について考えてみたいと思います。

今回の所信表明演説では見送っているわけですが、石破氏は日本の安全保障について、2つの提案を行っています。アジア版NATOの創設と、日米地位協定の改定です。

「アジア版NATO」の非現実ぶりに各国から不快感

まず、アジア版のNATOについてですが、アジア諸国からは早速不快感が出ているようです。

何よりも、NATOの場合は「加盟国への攻撃は全体への攻撃とみなす」という文字通りの集団安保体制です。仮に日韓にASEANとインドがアジア版NATOを組んだとすれば、北朝鮮有事にも、印パ紛争にも、中印紛争にも日本が参戦することになります。

石破氏とすれば「だからこそ、各地の紛争を抑止できる」と言いたいのでしょうが、話はそんなに単純ではありません。例えば、インドはパキスタンとは鋭く対立する一方で、ロシアとは是々非々の関係です。中印関係の対立にも独特の経緯があります。そんな中で、インドは多角的な2国間関係で亜大陸の安全を確保している以上、単純な「東西対立」に組み込まれることを善しとはしないわけです。

例えば、アジアNATOが全員参戦するという脅しでパキスタンを黙らせるとか、核の武装解除をするというのは非現実的です。日韓とASEANが攻めてくると脅しても、パキスタンとしては「やれるものならやってみろ」ということになります。

冷静に考えればアジアNATOがインドのために結束してパキスタンと戦うなどという前提が成立するわけがありません。となれば、インドの入ったアジア版NATOというのは全くの非現実です。

プーチンから「お前は馬鹿か」と嘲笑されること必至。石破氏「アジア版NATO」構想で露呈したウクライナ問題の歴史的経緯を知らぬ新首相

かねてから「軍事オタク」として知られてきた石破茂氏。そんな石破氏が首相就任直前、米シンクタンクに寄稿した論文が大きな話題となっています。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、石破首相が論文内で主張する「アジア版NATO」構想について、「これが本当に防衛政策に強いと言われた政治家の言説か」と猛批判。その上で、論文内容がいかに誤謬に満ちたものであるかを詳細に解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:石破「アジア版NATO」構想の支離滅裂/それは一体誰を「敵」とし誰を「味方」として結集される軍事同盟なのか?

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

誰が「敵」で誰を「味方」か。支離滅裂にすぎる石破首相の「アジア版NATO」構想

石破茂内閣は発足早々ヨタヨタで、何よりも不味かったのは、臨時国会で所信表明演説とそれに対する各党代表質問だけでなくその後の予算委員会までじっくり議論に応じ(そこまでNHK中継が入る!)、「国民の皆様に充分な判断材料を提供した上で総選挙に訴える」かのようなことを言っていたのに、手の平を返したようにいきなりの9日解散、27日投開票の「戦後最速」とも言われるバタバタ政局を選んだことで、早速その無定見ぶりが批判に晒されることになった。

戯言に満ち満ちている「アジア版NATO」構想のお粗末

批判のしどころは色々あるが、私が一番酷いと思うのは、彼が長年温めてきてそれなりに自信を持っているかに言われている「アジア版NATO」構想である(文末にハドソン研究所への寄稿の和訳全文を掲載し、本稿で取り上げる最初の3パラグラフに〔A〕〔B〕〔C〕とアルファベットを挿入してある)。しかし、私に言わせれば「これが本当に防衛政策に強いと言われた政治家の言説か」と疑わざるを得ない、戯言(たわごと)に満ち満ちている。

第一に、〔A〕は、ウクライナがNATOに入っていなかったために集団的自衛権に基づく米国の参戦を得ることが出来ず、そのためロシアに侵略されたという石破の認識を示している。何のために彼がこれを強調するのかと言えば、「だからアジアにもNATOのようなものが出来て日本がその一員になれば盟主=米国の庇護を受けられるので、侵略に対する抑止力が一層強化される」と、アジア版NATOの必要性を説明するためだろう。

しかし、たったこれだけの短い文章の中にもいくつもの誤りや曖昧さがあり、これだけを見ても彼が「軍事オタク」かもしれないが(いや、そうであるが故に?)「国際政治オンチ」であることが窺い知れる。

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