去る者は追わず。なぜ退職の意思が固まった労働者を強引に引き留める会社は「トラブル対応」に追われるのか?

もうこの会社やめよう。そう決めた従業員を、「もう一度考え直してよ」と引き留める会社は多いと思います。しかし、そのことでかえって会社側がトラブル対応に追われることが多いのをご存知でしょうか? 今回、無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社会保険労務士の飯田弘和さんが、すでに退職の意志を固めた従業員を説得することで発生するアレコレについてわかりやすく解説しています。

退職の引き留め

労働者から、「退職させてもらえない」といった相談を受けることがあります(念のため言っておきますが、これは、私の顧問先とは関係のない労働者さんからの相談です)。

退職(辞職)については、労働基準法には定めがありません。

民法では、雇用期間の定めのない労働者は、2週間前に退職を申し入れれば退職できることになっています。雇用期間の定めがある労働者は、原則、期間満了まで働く義務がありますが、“やむを得ない事情”があれば退職できることになっています。

ところで、“退職させてもらえない”労働者は、労基署や弁護士などに相談します。相談していく中で、労働者は労働に係る様々な知識を得ます。今まで気づかなかった労働問題に気付くようになります。

たとえば、残業代の未払いがあることが分かることがあります。年次有給休暇についても、それが労働者の権利であり退職までの間に使うことができること、付与されていた年次有給休暇の日数が法定よりも少なかったことなどが分かることがあります。

在職中にハラスメントを受けていたならば、会社と加害者に対し損害賠償や慰謝料を請求できることを知ります。

最初から退職を認めていれば、円満退職で、何ら問題なく終わっていたものを、退職の申し出を拒んだがために、いろいろな問題が表出します。会社はトラブル対応に追われることになります。

また、このような労働者は、退職届を提出の後、そのまま年次有給休暇を使って退職日まで休むことが多いです。そうなると、後任者との引継ぎもままなりませんし、急に年次有給休暇で休み始めた当該労働者の穴埋めも大変です(必要最小限の引継ぎすら行わない場合には裁判等で不法行為と判断されることがありますが、逆に言うと、必要最小限の引継ぎさえ行えば問題ないということになります)。

そもそもの話として、退職の申し出を断られた労働者が、それで退職申し出を撤回することは殆どありません。

「勝手に辞めたら、損害賠償請求するぞ」などと脅す事業主もいますが、それがハッタリだということは、労働者にバレています。

退職の意思が固まった労働者を引き留めるのは無理です。そうであれば、できる限り、会社にとっても労働者にとって良い形での退職を目指した方がよいと思いませんか。

必要な人材に対して退職を慰留することは構いませんが、労働者にとって「辞めさせてもらえない」と感じさせる程の引き留めは避けるべきでしょう。

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年金受給者が死亡した場合に遺族がもらえる未支給年金は「遺族年金」と何が違うのか?

生前に年金を受給していた人が死亡した場合に、生前貰えなかった年金を一定の遺族が請求によって受給する年金を「未支給年金」といいます。ところで、この未支給年金は、遺族年金と何が違うのでしょうか? 人気メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、その違いについて事例をあげながら詳しく解説しています。 

必ず発生する未支給年金の要件と、遺族年金受給者が必ずしも未支給年金を受給するとは限らない事例

1.年金受給者が死亡した際に必ず発生する未支給年金と、遺族年金との違い

人が亡くなった際に生じる年金は遺族年金ですが、それと同時に発生しやすい年金があります。それが未支給年金です。

未支給年金というのは生前に年金を受給していた人が死亡した場合に、生前貰えなかった年金を一定の遺族が請求により受給する年金を言います。

年金というのは本来は受給者本人名義でしかもらえない一身専属権がありますが(年金の受給権を他の誰かには渡せない)、死亡者が生前貰えなかった年金に対しては未支給年金というような例外を認めています。

まず、未支給年金というのはなぜ年金受給者死亡時に発生するのかというと、年金というのは年金の受給権発生月の翌月分から死亡した月分まで受給する事が出来ます。

例えば6月受給権発生した人は請求によりその翌月である7月分から年金が貰えますが、初回振り込みは大体3ヶ月くらいはかかるので早ければ9月15日振込(普通は8月15日に支払う7月分の1ヶ月分)か10月15日に7、8、9月の3ヶ月分が振り込まれます。

その後は特に何も無ければ原則通りの偶数月に前2ヶ月分ずつを支払っていきます。

そうすると後払いなので、例えば12月15日は10月分と11月分が支払われますので、12月分を貰っているわけではありません。12月分は翌年2月15日に1月分と一緒に支払われます。

もし12月中に死亡しても12月分の年金まで貰えます。

とはいえ12月中に死亡すると、それは2月に支払われるものなので死亡した本人はもう受給する事が出来ません。

よってそこは一定の遺族に請求して受給してもらう必要があります。年金は本人以外は貰えないものですが、一定の遺族に例外的に請求を認めています。

年金の支払いサイクルが後払いなので受給者死亡時に必ず発生するのが未支給年金なのです。

どういう遺族が受給できるのかというと死亡時点で生計を同じくしていた配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹、3親等以内の親族までのうち、一番上の順位者が請求により受給します。

なお、生計を同じくというのは同居とか、住民票が一緒とか別居でも何か合理的な理由(単身赴任、入院、就学など)があれば大体認められます。別居してて何にも関わらないようにしてるみたいなのは無理ですね。

あと、一定の遺族の年齢ですがそれは特に定めはありません。

年金で言うと例えば「子」というのは18歳年度末未満(障害等級2級以上の状態にある子は20歳まで)の事を指す事が多いですが、この未支給年金はそのような年齢の制限はありません。

父母や祖父母が遺族年金を貰う時は本人死亡時点で55歳以上で支給は60歳からという制限はありますが、そのような制限もありません。

よって、遺族年金の一定の遺族関係と未支給の遺族関係は少し異なる事に注意しないといけません。

余談ですが「子」は死亡者本人の実子か養子でなければ貰う権利はありません。

※ 補足

遺族年金は本人死亡時に生計を同じくしていた一定の遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母)がいて、死亡時の請求者の前年収入が850万円未満(もしくは所得が655.5万円未満)でないといけません。

生計同一とその収入を合わせて、生計維持関係といいます。遺族年金は本人死亡時に生計維持されていた場合に、請求により受給する事が出来ます。

なお、夫や父母祖父母が受給するには本人死亡当時55歳以上でなければいけません(原則として60歳から支給)。子や孫の場合は18歳年度末未満(障害等級2級以上の場合は20歳到達日まで)でないといけません。

未支給年金とはこのように明確な違いがあります。

もう一つ、3親等以内の親族というのがありますが、これは平成26年4月改正からここまでの遺族が対象となりました。

それまでは兄弟姉妹まででしたが、高齢化によりお嫁さんが亡夫の親を介護してたのち看取るとか、甥姪と一緒に暮らすというようなケースもあるのでそれを考慮されたのでしょう。

範囲は広くなったものの、大半は上位順位者の人が請求する事がほとんどです。
上位の請求者が居ると、下の順位者の請求権はありません。

このように亡くなった方が受け取れなかった年金を、遺族が受け取るのが未支給年金です。

年金受給者死亡の際は遺族年金の請求の時に一緒に未支給年金もという事は多いため、大体はセットで考えていたほうがいいですね。

という事で、1つ事例を考えてみましょう。

この記事の著者・hirokiさんのメルマガ

ビッグモーターとは大違い。イエローハット創業者が学んだ「領収書の人生」

カー用品チェーン『イエローハット』の創業者である鍵山秀三郎氏。自転車一台で始めた商売を発展させた彼は、知人から教えられた「領収書の人生」を大切にしていると、今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』で紹介しています。「請求書の人生と領収書の人生」の違いとは何なのでしょう?

請求書の人生と領収書の人生 鍵山秀三郎(イエローハット創業者)

鍵山秀三郎氏。『致知』読者の皆様にはお馴染み、イエローハットの創業者です。自転車一台で始めた商売を、一部上場に至るまで発展させてこられました。

また、社員の心の荒みをなくしたいと創業時に始めた掃除の実践は、今日まで半世紀以上にも及び、運動の輪は会社の枠を超え、日本全国のみならず世界にも広がっています。

その鍵山氏が『致知』2007年12月号に綴られ、当時大きな反響を呼んだ「請求書の人生と領収書の人生」というお話をご紹介いたします。

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“もっと、もっと、もっと”

際限なく求めて欲しがって生きるのは、「請求書の人生」であると、知人の有吉説志様から教えていただきました。

有吉様は、幼い頃お祖母さんから、寺社にお参りした時は「ありがとうございます」と請求書ではなしに領収書のお参りをしなさい、と教えられたそうです。

向上心や探求心は人の成長に欠かせない大切な条件ではありますが、度の過ぎた欲求は人を卑しくし、ひいては国家の尊厳を傷つけることにも繋がります。

有吉様のお話を通じて、求めるばかりではなく、いま与えられているものごとに感謝の心を持つ「領収書の人生」を歩めと教えていただきました。

日本には領収書の生き方をしている方が大勢おられますが、そういう方は世間から注目されることはありません。

請求書の生き方をする人が派手で目立つのに比べて、領収書の生き方をする人は地味で人目につかないところが共通しているからです。

誰からも注目されず、光の当たらないところで、いつ報われるか分からないことにも心を込めて取り組んでおられるそのお姿からは、卑しさは微塵も感じられません。

他人に頼ったり、求めたりすることなく、人の役に立つことだけを念頭において、一途に歩み続けるお姿は、人を惹き付ける豊かな魅力を備えています。

このような方々は、お互いに住む世界は異なっていても、一度会っただけで朴訥なお人柄に惹かれ、年来の知己のようになります。

語り合ううちに、この方の成功を祈り、ささやかであってもお手伝いをしたいという思いが湧いてきます。

そして、この領収書の生き方をされている方々同士のご縁を結ぶことの大切さを実感いたします。

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「何とか私を安倍派の会長に…」と森元首相の前で土下座した“小物政治家”の実名

会長を務めていた安倍元首相の死後1年以上が経つも、未だ後継者を決められずにいる自民党最大派閥の清和会。そんな中にあって何としてでも首相の座を手に入れたい権力亡者たちの争いは、水面下で激しさを増しているようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、地方紙で森喜朗元首相が暴露した後継会長レースの舞台裏を紹介。その上で、汚職にまみれた東京五輪の組織委員会会長だった森氏が政界に大きな影響力を持ち続けている現状に対して、不条理極まりないとの批判的な目を向けています。

安倍氏が残した混乱の種。森元首相が暴露した自民最大派閥跡目争いの舞台裏

自民党最大派閥「清和会」(安倍派)の跡目争いは、安倍元首相が亡くなって1年と40日を経ても決着がつかず、泥沼化の様相を深めている。

8月18日に開催する予定の幹事会と総会で、同派の塩谷立会長代理が新体制に移行する決意を固めているが、それに対して、もう一人の会長代理である下村博文氏が反発し、10日と16日の2回にわたって話し合いの場が持たれた。10日の協議を報じたのが以下の記事である。

自民党安倍派で共に会長代理を務める塩谷立・元総務会長と下村博文元政調会長は10日、国会内で新体制について協議した。塩谷氏は自身を「座長」とする「常任幹事会」による集団指導体制への移行を提案。下村氏は新会長を選出すべきだと主張し、平行線をたどった。(時事通信)

16日の協議でも意見の食い違いは埋まらず、18日の幹事会・総会での意見対立を避けることに合意しただけに終わった。

実は、この塩谷・下村会談に至るまでの間、下村氏がある行動を起こしていた。森喜朗元首相が北国新聞の連載記事「総理が語る」(8月7日付)で、舞台裏を暴露している。

最近、下村博文氏が森氏の事務所にやってきたというのである。下村氏は、森氏に嫌われていることを知っている。後述するが、過去のいくつかの言動が森氏の怒りを買っていた。敷居が高いはずのその人のもとを何の用で訪ねたのか。

「(下村は)『何とか私を会長に』と言うんですが、『それは私が決めることじゃない。みんなが決めることだが、君には味方がいないじゃないか。だったら自分はどうあるべきか考えてみたらどうだ』と伝えたんです」

安倍元首相という指導者を失った安倍派の奇妙さは、代議士を引退している森氏の意向に沿って後継体制が話し合われていることだ。後継会長になり総理をめざしたい野心家はウヨウヨいるが、いずれも傑出した才覚を持ち合わせないため、互いに張り合っているのみ。そんななかでは、派閥の元会長というだけで意見がすんなり通ってゆく。

森氏はいわゆる「5人衆」、すなわち萩生田光一、西村康稔、世耕弘成、松野博一、高木毅の各氏による集団指導体制を発案したといわれる。しばしば森事務所に顔を出して持ち上げてくれるこの5人を気に入っているのだろう。

「少なくとも2年か、3年のうちに、5人のうちで自然に序列が決まっていく」と森氏は言うが、気の長い話だ。会長を置かないほうが、自分の存在感を維持できるという思惑でもあるのだろうか。森氏の暴露話は続く。

「『今までのご無礼をお許しください』と土下座までするので、『君は私に無礼を働いたのか。その自覚があるのなら私は絶対に許さない。帰ってくれ』と言ったんです」

三文芝居のセリフのようだが、実際にあったことらしい。「今までのご無礼」とは何を指すのか、二人の間ではわかるのだろう。われわれは、過去の出来事から推測するしかない。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

排外主義的な「スパイ防止法」自民案にチラつく統一教会の影。今こそ真にフルスペックの防止法を制定せよ

諸外国からスパイ天国と揶揄されるほど、さまざまな国の諜報員が「野放し状態」になっていると言っても過言ではない日本。他国並みの「スパイ防止法」の制定を求める声は少なくないものの、未だ実現に至りません。その原因はどこにあるのでしょうか。今回、政治学者で立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さんは、「中道主義」である自身がフルスペックのスパイ防止法を求める理由を、これまでの経験を交えつつ解説。その上で、我が国で同法を成立させるために必要不可欠な条件を提示しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

安倍政権以降の無品格。スパイ防止法の制定前に乗り越えるべき壁

中国で「改正反スパイ法」が施行された。「反スパイ法」とは、2014年に制定されたスパイ行為の取締り強化を目的にした法律である。この法律をめぐっては、スパイ行為の定義があいまいで、法律が恣意的に運用される懸念があった。実際、中国在留の日本人が、スパイ行為に関わったなどとして、少なくとも17人が拘束され、9人が実刑判決を受けている。

現在、拘束されている日本人の早期開放の目途は立っていない。ところが、今回の改正で、従来の「国家の秘密や情報」に加えて「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料や物品」を盗み取り、提供する行為が新たに取締りの対象となるなど、スパイ行為の定義が拡大された。中国の当局による取締りがさらに強化され、日本人の安全が一層脅かされると不安視されている。

海外で拘束されている自国民を早期開放させるために、自国に入り込んだその国のスパイを摘発し、自国民と交換する「スパイ交換」という手法が世界の主流だ。中国の「改正反スパイ法」に対抗するために、日本でも「スパイ交換」ができる法律の整備が必要だという主張がある。

自民党内には、外国による「スパイ活動を取り締まる法律」(以下、「スパイ防止法」)整備に向けた提言を年内に取りまとめようとするグループ(以下、推進派)がある。議員立法で、外部からの諜報活動に対抗して、機密情報が外部に漏出するのを阻止する「カウンター・インテリジェンス」に関する法律の成立を図る。同時に、公安調査庁、警察庁外事情報部、防衛省情報本部などカウンター・インテリジェンスに関係する部門が乱立している状態を解消し、これらの統合をする法律を閣法(政府提出法案)で実現する、という提言になるとみられる。

一方、「スパイ防止法」については、1985年に中曽根康弘内閣が初めて法案を国会提出して以来、根強い反対派が存在し、その制定を阻止してきた。反対派は主に、リベラル派のメィア、弁護士、市民団体、共産党など政党に幅広く広がっている。

反対派の主張は、「スパイ活動」の内容が広範囲・無限定であり、結果として「調査・取材活動、言論・報道活動、日常的会話等のすべてに対して、当局の恣意的な取り締まりを許してしまう」というものだ。つまり、「スパイ防止法」は人権侵害の危険が大きいと批判しているのだ。

私は、大学教員の立場から、「スパイ防止法」の制定に肯定的である。その理由は、日本の大学が国際化を進め、海外との先端的な学術研究のネットワークの構築や、海外からの優秀な研究者・学生を受け入れて、かつ言論の自由、思想信条の自由、学問の自由を守るために必要だからだ。

「トイレで女性が襲われる」性的少数者への差別デマを吹聴する“保守論客”の名

トランスジェンダー職員の女性トイレ使用を制限した経産省に対して、違法判決を下した最高裁。誰もが自分らしく生きられる社会の実現に大きく寄与するこの判決ですが、どうしても受け入れられない向きも存在するようです。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、漫画家・小林よしのりさん主宰の「ゴー宣道場」参加者としても知られる作家の泉美木蘭さんが、「経産省トイレ使用制限違法判決」を猛批判する論客の主張を紹介。その内容を幼稚で差別意識丸出しの戯言とバッサリ斬っています。

差別したい八木秀次氏の経産省トランスジェンダー叩き

性的マイノリティーの人たちの職場環境に関する訴訟で、7月11日、初めて最高裁が判断を示した。

経済産業省に勤め、女性として生活している50代のトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だとして国を訴えていた裁判で、最高裁が「トイレの使用制限を認めた国の対応は違法」との判決を下したのだ。

原告の経産省職員Aさんは、2009年に「性同一性障害」と診断され上司に相談。健康上の理由から、性別適合手術は受けられず、戸籍上は男性のままだが、職場での説明会を経て、女性用の休憩室や更衣室の利用が認められた。

ただし、トイレについては、職員の執務室があるフロアから2階以上離れた女性用トイレしか使用が認められず、人事院に処遇の改善を求めたが、退けられたため、訴えを起こしていた。

「2階以上離れたトイレ」に限定された経緯はこうだ。

説明会の際、Aさんが退席した後、担当者が職員たちの意見を求めたところ、「数名の女性職員がその態度から違和感を抱いているように見えた」という。そこで、担当者が、1つ上の階の女性トイレを使用してもらうのはどうかと案を出した。すると、1人の女性職員が、自分は日常的にそのトイレを使っていると述べたという。

そこで、経産省では、Aさんに対して、執務階とその上下階のトイレの使用を認めず、それ以外の階の女性トイレの使用を認めたらしい。

Aさんは、この説明会が開かれるまでは、男性の服装で勤務していた。

トランスジェンダーに対する社会的な理解も乏しいなか、戸惑って即座には受け入れがたいという様子を見せた人もいたようだ。

説明会の翌週から、Aさんは、女性の服装で勤務するようになり、2階以上離れた女性トイレを使うようになった。他の職員とのトラブルは一切起こらなかった。

2年後の2011年には、Aさんは家庭裁判所の手続きを経て、名前を女性らしいものに変更し、職場でもその名前を使うようになった。

さらに2年後の2013年末、Aさんは、トイレの使用に関する経産省の措置を不服として、他の女性職員と同等の処遇を人事院に要求。だが2015年、人事院は要求を拒否したため、法廷闘争となった。

1審の地裁ではAさんの訴えが認められたが、2審の高裁では、「経産省の処遇は、全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を果たすための対応」として逆転敗訴。

だが、最高裁は2審を覆し、5人の裁判官全員一致の結論で「国の判断は他の職員への配慮を過度に重視し、Aさんの不利益を軽視したもので、著しく妥当性を欠いている」と結論付け、違法と判断した。

主な理由として列挙されているのは、以下の通りだ。

  • Aさんは性同一性障害と診断され女性ホルモンの投与を受けている。執務室から離れたトイレを使用せざるを得ない状況は「日常的に相応の不利益を得ている」
  • 2階以上離れた階の女性トイレを使用していてもトラブルは生じていない
  • 説明会では、一部の女性職員が違和感を抱いているように「見えた」に留まり、明確に反対している職員はいない
  • ほかの職員に事情を説明してから、人事院の判定が出るまでの4年10か月の間、経済産業省が対応の見直しを検討しなかった

この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ

ビッグモーターと損保ジャパンの怪しい“密約”関係。不適切請求「スルー疑惑」も

多くの不祥事が明らかになった中古車販売大手ビッグモーター。店長になると1日に2000件ものLINEが届くといった報道もありますが、これだけ異常な企業の問題が、なぜ今まで浮上してこなかったのでしょうか? 今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんがこの騒動に言及。数年前から問題を起こしていた同社についてだけでなく、損保側の問題、そして国の対応の遅さや内部告発制度の不備なども鋭く指摘しています。

プロフィール伊東 森いとうしん
ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

ビッグモーター事件 損保側にも問題が 遅れた国の対応 内部告発制度の不備も

中古車販売大手ビッグモーターについてのメディア報道が、一向に収まる気配がない。ビッグモーターの売上高は7000億円であり、業界最大手を誇る。その企業が危機に瀕している。

客から預かった車両を傷付け、保険金を水増し請求するという手口は、ビッグモーターの”異常な”企業風土により生み出されたという。

その企業風土は、2017年~18年ごろ、創業者に兼重宏行社長の息子の宏一氏が副社長として実権を握るようになったころに生まれる。

”利益至上主義”が徹底され始めたのも、この時期であったという

特に環境整備点検と呼ばれる幹部らによる店舗視察は、各店舗を点数化し、その成績次第で、従業員のボーナスを決める制度であるとともに、社内の力関係が如実に表れるものだった。

このような制度が、さらに利益至上主義の文化を強める。

問題は、ビッグモーターの雇用環境にもあったようだ。

 <社員数は約5000名ですが、その陰にはおよそ4万人近い退職者の存在があります。数字を残せる人だけが残っていきます。生命保険会社も似たような仕組みですよね。ある程度、誰でも入社でき、自分や家族、友人を生命保険に加入させて、それ以上契約を取れなくなったら自然に辞め、数字を残せる人だけが残っていく…。>(1)

大量に採用して大量に辞めさせるのは、高い車を買わせて120回ローン(10年間)を組ませ、ビッグモーターが扱う任意保険に入らせるためだったというのだ。

業務成績を上げて店長に昇格しても、今度は怒涛の”鬼LINE”が待っている。店長などはいくつものLINEグループに参加しており、休日や昼夜問わずに1日に2000件ものLINEが来るという。

またビッグモーターでは、業務連絡だけでなく、降格や異動の言い渡し、さらにはミスに対する注意や叱責までもがLINE上で行われていた。

目次

  • 損保側にも問題が 寡占による”もたれ合い”
  • 遅れた国の対応
  • 内部告発制度の不備も

 

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

元お天気お姉さんが解説。なぜ台風は「強く、遅く」なったのか?

沖縄や九州に長く影響を及ぼした台風6号に続き、時速10kmから15kmほどで移動を続けた台風7号が日本を襲い、お盆の列島は大混乱となりました。どちらの台風も速度が遅く、勢力をあまり落とさず異例のコースを辿りましたが、こうした傾向は今後も続きそうです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、気象予報士で『ニュースステーション』のお天気キャスターを務めていた河合薫さんが、迷走する台風が増えている理由を説明。地球温暖化の進行で、台風の威力がますます強くなることを覚悟して、「早めの避難」などの対策が必要になると伝えています。

台風は強くて、遅くて、長くなる?

台風7号が予想よりも遅く、西側にずれてゆっくりと日本列島を北上しましたが、みなさんご無事だったでしょうか?本メルマガでは温暖化や環境問題にも度々言及していますが、今回は「台風と温暖化」についてあれこれお話しします。

ご承知のとおり私は元お天気ねーさんです。そんな私が台風の異変を最初に感じたのは、2002年以降だったと記憶しています。番組に出演する間際まで台風の位置や周辺の雨雲、風速などをチェックするのですが、関東沖に接近した台風の雨雲の美しさに驚愕したのです。

「美しい」などという表現は適切ではないかもしれません。でも、やはり美しかった。なにせ気象図鑑などで見た「レインバンド」がくっきりはっきりとレーダーにうつっていたのです。

レインバンドとは、台風の中心に向かって伸びる積乱雲の列の呼び名で、スパイラルバンドと呼ばれることもある「渦を巻くような雲列」のこと。みなさんも日本列島から離れた海上で気象衛生が捉えた画像で、「台風の目」がくっきりと見えるのをテレビなどで見たことはあると思います。

台風の目がはっきりしているのは、遠心力によって中心に風が吹き込めなくなっている状態です。この時、台風の目の周りをぐるぐると取り巻くようにできるのが、レインバンドです。

台風を発達させるのは海上の水蒸気です。台風は水温が27度近くないと発生しません。一方で、水温は日本列島に近づくにつれ低下します。それは台風のガソリン=水蒸気が減ることを意味します。台風の元気がなくなれば、中心付近の風も弱まり目がはっきりしなくなる。目の周りのレインバンドも崩れた形になる、が「それまでの普通」でした。

ところが、その時のレーダー画面には、全く雲のない「台風の目」の周りを、きれいな隊列をなした雲が何重にもわたってうつっていました。当時は勢力の強い台風が接近すると「戦後最大級の~」という言葉が使われていましたが、その時も「戦後最大級の台風が関東に上陸する予想」になっていました。

レインバンドが明瞭ということは、台風の中心気圧も低いし風も強い。豪雨に加えて突風など風の被害も出る。実際、その時はかなりの突風が都内でも吹き荒れ、外から中継するのも怖かったです。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

中国版リーマンショックも。不動産大手「碧桂園」破綻なら中国経済は“崩壊寸前”に

若者世代の失業率が急上昇するなど、減速著しい中国経済。ここままの状態が続けば習近平国家主席が掲げる「共同富裕」も画餅に帰すこととなってしまいますが、そもそも何がこのような状況を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、その原因を徹底解説。さらにこの先中国で、「反日機運」が高まる可能性を指摘しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年8月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

地獄へと進む中国経済。ことごとく失敗した習近平の政策

中国が予想外の利下げ-7月経済指標低調、若者の失業率公表停止

中国人民銀行は8月15日、中期貸出制度の1年もの金利を2.65%から2.5%へ、短期金融市場の公開市場操作金利である7日物リバースレポ金利を1.9%から1.8%へ引き下げることを発表しました。

こうした利下げの背景には、中国の深刻な経済の減速があります。都市部失業率は5.3%である一方で、16歳~24歳の6月の失業率は21.3%と過去最悪を更新しており、国家統計局は7月の若者失業率の公表を直前になって停止し、調査方法を見直すことを明らかにしました。

報道によれば、取りやめの理由として政府は、「卒業前に就職活動を行う学生を統計に含めるべきか検討が必要なため」としています。

中国の失業率については様々な報道や憶測が流れており、ある報道によれば、「16-24歳の若者の失業率は6月に21.3%と過去最高に達した。中国通信社が先週民間の調査データを引用して報じたところによると、卒業後半年以内に出身地に戻った学生の割合は2022年に約47%で、18年の43%から上昇した」と、あります。

中国、若年失業率の公表一時停止 海外投資家の信認さらに低下も

このメルマガでもこれまで述べてきましたが、若者の失業率が危険水域に達し、もはや公表できないほどのレベルになっているということです。

【関連】就職先なく、死んだも同然。中国の若者たちは習近平に見捨てられた

中国経済の減速ぶりを示すニュースは毎日にように流れており、今や「世界の工場」だった中国が、その地位を失ったにも拘らず過剰生産を続けていることから、「世界のゴミ捨て場」となっているとの報道もあります。

「上海では豚汁がタダで、北京ではタバコが無料」の自嘲的揶揄が意味するものとは…過剰生産を続けてきた中国が今支払う代償

とくに危機的状況にあるのが、中国不動産です。中国有数の不動産開発業者である碧桂園がデフォルト(債務不履行)の危機に直面しており、同社が発行したドル建て社債2,250万ドルの利払いを期日だった8月6日までに履行できない事態にまで陥っています。

中国不動産「碧桂園」赤字1兆円…社債利払いできず、デフォルトなら恒大集団より影響深刻か

碧桂園は8月10日、2023年1~6月期の最終利益は450億~550億元(約9,000億~約1兆1,000億円)の赤字になるとの見通しを発表しました。昨年1~6月期の最終利益が19.1億元の黒字だったといいますから、この1年で急速に経営状態が悪化したことになります。

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「ナチスの殺害者数はデタラメ」と主張。ドイツで出会った“極右”日本人の話

十人十色という言葉の通り、性格や考えは人によって異なります。しかし、あまりに極端な主張をしてくる人に対しては、疑問を感じることもあるでしょう。今回のメルマガ『Taku Yamaneのイェーデン・ターク』では、著者で長くドイツに暮らすTaku Yamaneさんが、ドイツのホステルで出会った「極右日本人」の話を紹介しています。

フランクフルトのホステルはやばい

いつもご愛読ありがとうございます。

先週末はフランクフルトに行って来て、ユースホステルに泊まりました。実はフランクフルトの宿に泊まったのはこれが初めてだったのですが、結構やばい奴に遭遇したので報告します。

極右日本人

4人部屋に泊まったのですが、なんと日本人男性と相部屋になりました。40歳半ばくらいですかね。動画を見ていたのですが政治討論番組みたいなもので「ああこれやばい奴かもしれん…」と自分のセンサーが働きました。

早速話しかけられて、簡単な自分の現状を話すしていると、「やっぱり日本と比べて暮らしにくいでしょう」と来ました。

これで自分の予想が半分くらい当たりました。「いえ、僕はドイツの方が好きですけどね」と返します。

で、また少し話すと「あなたみたいなエリートがこんな所で若者と一緒に泊まるの嫌でしょう」と来ました。「別に全然そんなことないです」と言います。当たり前ですよね。自分で選んだんですから。嫌だったら普通のホテル取るでしょ。

これで自分の予想が80%くらいあたります。

相手がどう考えているか決めつける人間、しかもネガティブな方向に決めつける人間、まともな神経をしている訳ありません。

で、何の仕事をしているかというと歴史ノンフィクション作家だそうです。なんともナチスドイツにかけられた濡れ衣を晴らしたいらしいです。簡単に言うと、残っているナチスドイツの殺害者数などなど、でたらめばかりだそうです。

残念ながら、ナチスドイツの罪っていうのは殺害者数ではないんですよ。そんな殺害数を訂正した所でナチスドイツの評価は変わらない。

結局この人の思想の元は、日本の太平洋戦争に対する罪を晴らしたいという思いの延長なんですよね。日本に関する情報もでたらめばかりだそうです。

ま、実際の話は僕もよく知らないんですが、こういう類の人って顔が似てるような気がするんですよね。目と顔が妙にギラギラしていて、瞳孔が開いている感じ。体は人を表すと言いますが、まさにって感じでしたね。

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