重要なのは死者を出さぬこと。PCR検査の件数批判に意味はあるか

メディアでたびたび取り上げられる、新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査の件数。コメンテーター諸氏は「少なすぎる」と批判的な言を口にしますが、はたしてそれは本当に問題なのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、「医療専門家以外の人間」として知り得た情報を元に、検査件数に対して我々はどのような受け取り方をすべきなのかを考察しています。

PCR検査が少ないことは本当に問題なのか

こんにちは!廣田信子です。

新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が出ました。とにかく、ひとり一人が、自分の行動を自制していくしかないです。本当に、私たちひとり一人が試されているのだと思います。

安倍総理の記者会見は、多方面に気配りし過ぎて、緊迫感が今一つ伝わりにくかったのは残念ですが、最初の、医療関係者等への感謝を述べ、彼らの安全に全力を尽くすというところは、安倍総理の感情が伝わりにくい言葉であっても、自分の気持ちとシンクロして、私は、何だか、うるっと来てしまいました。

テレビで紹介されていた看護師さんが目に浮かびました。親にはやめてほしいと言われたけど、自分の使命感でやっている。自宅には祖父母がいるので、うつさないよう病院の寮に泊まり込んでいる…と。

コロナ治療の最前線で働いている方の家族は、どんな思いで毎日を過ごしているのでしょうか。まさに、大事な家族を戦場に送っているような気持ちなのでは…と。それを思うと、自分が行動に気を付けることが、医療関係者の方々の負担軽減や安全に繋がるなら、それだけで頑張れる気がしました。

最前線でがんばっている方々の言葉の重さに対してマスコミの反応や、コメンテーターといわれる人の発言の軽さが際立ちます。いろいろ批判するのが仕事かもしれないけど、今、感染拡大を防ぐのに役に立つの?そんな仕事、今はいらない…と思って何だか苛立ちます。

繰り返される批判のひとつに、諸外国と比べてPCR検査の件数が少ないことがあります。しかし、今の日本のコロナ感染による重症者、死者の数の少なさからすると、これまでの検査のやり方には、それなりの合理性があったとまず認めるべきだと私は思います。もし、PCR検査の数が少ないために感染拡大が見えないところで進んでいたとしたら、重症者、死者の数が、こんなに低く抑えられているはずはありません。死者の数は明確なデーターです。

PCR検査をたくさんやって、たくさんの死者を出している国を日本も見習うべきというような発言は、意味がよくわかりません。水際対策が甘く、PCR検査の数も少なかった日本で、死者の数が圧倒的に少ない理由は、様々な要因があって、簡単には分析できないでしょうが、諸外国で感染者が多いのは、PCR検査の仕方そのものにも要因があるのでは…という感染症対策の経験があるドクターの発言が気になっています。外国のドライブスルー検査の様子や米国で検査を待つ人の行列を見て、あれでは、検査で感染者を生み出しているようなものだ…と。鼻に綿棒を入れて検体をとるという作業は、その作業をする側の人間に感染のリスクが高いし、流れ作業でするということは、その都度、手袋や防御服を替える訳じゃないので、次の被験者にうつしてしまう危険もあるというのです。ましてや、米国のように検査のために行列を作るなんで、感染者が確実にいる密接空間に長くいるようなものなので、そこで感染が広がってしまう…と。

さらに、PCR検査で正確な結果を出すということも大変なことなのだということが、下記の臨床検査技師の方の記事を読んでよくわかりました。

新型コロナウイルスのPCR検査が「偽陰性」となる原因は?

そもそもPCR検査というものがどういうものなのか、やっと理解できました。コメンテーターの方々は、これを知っているのでしょうか。日本は日本のやり方で、やっていけばいいのです。私は日本の最前線にいる専門家の方々の英知を信じます。

世界の2大医学雑誌に学ぶ、2週間後の状況改善のためにできること

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、ついに7都府県に緊急事態宣言も発出された日本。可能な限り早く感染拡大を抑えるには、このウイルスの特徴をしっかりと捉え、それに見合った対策を講じなければなりません。メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは、世界の2大医学雑誌にヒントを求め、潜伏期間と体外での生存期間から、私たちが個人レベルでできる対策を改めて説きます。そして、個人の生活の有り様が2週間後の状況を左右するとし、自覚を促しています。

医学雑誌の中の新型コロナウイルスのこと

WHOがパンデミック宣言をする前、新型コロナウイルスの基本再生産数(=1人の患者が何人に感染させるかを予測する数値)即ちRo(アール・ゼロまたはアール・ノートと読む、因みにzeroとnoughtは同義)は1.4人から2.5人であった。

最も新しいデータにおいても一般Roは2人から3人であるからおおよそは想定の範囲内と言ってもいい。にもかかわらずWHOに対してこれほどの批判が集まるのは、この感染症が全世界の1人1人にとっての「我がこと」たり得る可能性を当初から強くは警告しなかったことへの非難もあろうが、それよりも東アジアの1都市の感染がこれほど早くイタリアに上陸するとも思わず、さらにこれほどの凄まじい勢いでヨーロッパ全土に拡がるとは想像もしていなかった欧州諸国の人々の動揺が反動的にWHOという組織に向けられたものと言った方が適当なような気もする。

WHOは飽くまで国連の下部組織であり、世界総合病院という訳ではない。最終的に自分の身を守るものは、自分の国であり、自分の自治体であり、自分のコミュニティーであり、自分の家族であり、自分自身である。ここのところを決して忘れないようにしたいものである。

最近はテレビなどでもたくさんの特集が組まれ、そういった番組内では専門家たちが口々にこのウイルスの手強さを指摘している。具体的に言えば、このウィルスのタフさは何と言っても時間的な多様性にある。その潜伏期間はWHOによると1日から12.5日である(最も多いケースは5・6日、つまり1週間程度)。

問題となるのは当然長い方だから2週間程度の経過観察は必要ということになる。逆に、12日間くらいは感染していても全く健康状態に問題のない人もいる訳だから知らず知らずのうちに多くの人を感染させる可能性もあるということである。これは飽くまで理論上のことだが、2週間一切の外出を禁止にしてその間新たに発症した患者を完全に捕捉できたなら、この感染は必ず終息に向かうということになる。Roが一気に1以下になるからだ。

ただこの方法は現実的にはかなり難しい。現代社会は2週間の空き家状態にはおよそ堪えられないからである。

緊急事態宣言も強制力なし。専門家が欲する台湾式リーダーシップ

4月7日、7都府県を対象に緊急事態宣言が発出され、対象地域の各知事は、外出自粛や施設の利用制限などを要請、指示できますが、いずれも強制力はなく罰則もありません。これでは無症状の感染者の外出は止まず、政府や各自治体が意図する封じ込めの実現に不安が残ると指摘するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんです。小川さんは、ロシアと台湾のような強力なリーダーシップを発揮し、超法規措置も必要だと持論を述べています。

台湾とロシアのリーダーシップ

4月に入って、日本でも新型コロナウイルス感染症への対策が進み始めたようです。医療崩壊を防ぐために、症状のない人や軽症者について自宅療養やホテルへの隔離措置が打ち出されました。停滞する経済活動の中で困難に直面している人々、とりわけ生活困難者に対しては自己申告による30万円の支給が決まりました。一住所当たり2枚のガーゼマスクの配布には異論反論が続出しているようですが、ともかく日本なりに動き出してはいます。

しかし、懸念は残ります。自宅療養です。まず家族への感染が心配ですから、療養者用の個室があるかどうか確かめる必要があります。また、自宅療養になっても、出歩く人は跡を絶たないでしょう。それを阻止する方策はどのようにするのか。

ホテルを活用した隔離にはアパグループ(国内5万室以上)が名乗りを上げてくれました。オーナーの元谷外志雄氏の勇断は高く評価されるべきだと思います。日本財団も笹川陽平会長の号令のもと、船の科学館(東京)とつくば市の所有地に大型テントを展開し、1万人を収容する態勢を整えています。しかし、問題は政府です。勝手に出歩く人への取り組みは見えてきません。

どうしてこんなに後手後手なのでしょうか。それはリーダーシップの問題です。少なくともロシアのプーチン大統領や台湾の蔡英文総統の姿勢に見習う必要があると思います。

ロシアのプーチン大統領は2日、テレビを通じてロシア全土で経済活動を休日並みに抑制する「非労働日」の期間を今月末まで延長すると宣言しました。「やり過ぎと言われようとも、必要なことはやる!」

そして、国内対策を進めるとともに、クリミアの併合問題などでロシアに制裁を科している米国に対して、救いの手をさしのべたのです。米国に対しては、医療用のマスクや機材を積んだ大型輸送機が派遣されました。同様に経済制裁を続けている西欧諸国にも支援策を打ち出しています。

これは、プーチン大統領の「コロナ外交」とも呼ぶべき側面がありますが、非難される動きではなく、トランプ大統領も受け入れることになったのです。

現金の一律給付案に安倍首相「議員の収入は影響なし」発言が物議

安倍首相は7日、新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言を発令し、会見を行なった。「医療提供体制がひっ迫している地域が生じていることを踏まえれば、もはや時間の猶予はないとの結論に至った」として、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県の住民に対し、5月6日までの1カ月間外出自粛を要請した。

国民への「補償」は十分だと言えるのか?

会見では緊急経済対策についても言及。イベントなどの中止・延期要請、夜の街での自粛要請などによって影響が及ぶが、「損失はその業界に止まるものではない」として「個別に補償していくということではなく、困難な状況にある皆さんに現金給付を行ないたい」とした。また、収入が減少した世帯への現金30万円の給付について「自民党にも一律で給付すべきという議論があった」と明かした上で「本当に厳しく収入が減収した人たちに直接行き渡るようにしたいと考えた。なるべく早く補正予算案を通していただき、5月に直ちに出ていくようにしたい。今回スピードも重視した」と述べた。

昨日、弊サイトでも報じたが、現金給付の対象者となる世帯はあまりに少ない。支給の条件が厳しすぎるため、これでは必要としている人に行き渡らないのだ。安倍首相は「なるべく早く」「スピードも重視した」とした結果、「5月に出ていくようにしたい」と述べているが、申請手続きは複雑で時間がかかる。ちなみに年収約810万円以下の成人に1人約13万円、17歳以下の子どもには約5万4000円の現金給付を決定したアメリカは、本人がサインした小切手を銀行に持っていくだけですぐにでも換金できる。

安倍首相「国会議員の収入に影響ない」発言が物議

安倍首相は、一律給付について、東京新聞・中日新聞の後藤記者の質問に答える形で、

「例えば私たち国会議員もそうですが、公務員も今、この状況でも全然影響を受けていない、収入には影響を受けていないわけであります。そこに果たして5万円とか10万円の給付をすることはどうなのだという点も考えなければならないのだろうと思います」

と発言した。

国会議員や国家公務員には必要ないと思うのなら、まず対象者から除外すれば良いだけの話。アメリカでは先述の通り、給付対象者を「年収約810万円以下」と区切り、幅広い対象者を設定している。支給上限額を設け、所得で対象者を線引きし、給与が減った分を補償するだけでも救われる国民は増える。これほど容易なことであるのに、なぜ日本ではできないのか疑問が残る。この首相の発言について、ネット上では批判の声もあがっている。

※現時点での日本の対応については、政府の現金支給対象者に関する見解を示した下記サイトをご参照ください。

生活と雇用を守るための支援策(首相官邸)

おぎやはぎ矢作「払いたくないんでしょ」

俳優の坂上忍(52)は8日放送のフジテレビ系「バイキング」で「こういう時にこの程度の使い方しかしてくれないのかと落胆する人が多い。国難といいながら、我々から徴収したお金をこういう風に使うのか」と怒りをあらわにした。同番組に出演していたおぎやはぎの矢作兼(48)は「それぐらいにしか払いたくないんでしょ」と斬り、「違うところ(国)でできるのになんで日本でできない?」「出さないんだよな。親戚にもいるよな、ケチなやつ」と批判した。また、矢作の相方である小木博明(48)は「(自分が支給対象者となるのか)普通に見てわからない。こんなに難しいと、騙そうとする。今ごろ詐欺グループも会議してんじゃない?」と話した。

また、生活経済ジャーナリストの和泉昭子氏は「ドイツは給付金申請から3〜4日で振り込まれる」と明かし、「ありがたいと思った。普段税金払っていて良かったなと思ったと言っていた」とドイツ国民の声を紹介。政治評論家の有馬晴海氏は「がっかり」と述べ、安倍首相がリーマンショックの際に一律支給した際のデメリットを理由に一律支給をしないことについて「いいところだけ取ってやろうと思えばスピーディにできる」と批判した。

嵐も海老蔵も宮沢りえも…緊急事態宣言が与える芸能界への影響

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相は7日、改正特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発出した。期間は5月6日までの1カ月間となり、対象となるのは東京都、神奈川、千葉、埼玉各県の首都圏と大阪府、兵庫県、福岡県の計7都府県。この緊急事態宣言の影響は、芸能界のビックイベントに与える影響も大きそうだ。

5月の嵐のコンサートはどうなる?

2020年末での活動休止を発表している嵐。東京オリンピックが延期されたことで、その動向が注目されているが、嵐が現時点で公表している唯一のコンサートが、5月15、16日に新国立競技場で行う予定の「アラフェス」。単独アーティストが同所で開催する初の公演となる。

安倍首相が語った説明では、緊急事態宣言の効力の期間は5月6日まで。言葉通り受け取れば、嵐のコンサートはそれ以降の日の開催となる。しかし、会場の約7万人だけでなく、外にもファンが大勢集まることが予想されるため、関係者は難しい判断を迫られそうだ。

また、この嵐のコンサートは、東京五輪・パラリンピック組織委員会から「開閉会式会場である新国立競技場のさまざまなオペレーションの確認を兼ねる」とされ、いわばオリンピック本番に向けたテストの意味合いも含まれている。とはいえ、緊急事態宣言の効力消滅のわずか一週間あまりということもあり、期間関係者らも慎重に検討を重ねているという。

市川海老蔵の團十郎襲名公演は中止

歌舞伎界も影響は深刻だ。すでに4、5月の地方公演を取りやめ、今月の公演も14日まで中止。松竹は16日から再開させるつもりだったという。そんな中、注目されていたのが、5~7月に東京・歌舞伎座で予定している「十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行」だ。

市川海老蔵(42)が十三代目市川團十郎白猿を襲名する一大イベント。團十郎という名跡は歌舞伎界にとってとても重い名跡だ。チケットの発売が12日と間近に迫っていたが、松竹は政府の緊急事態宣言の発令を受け、公演を延期すると発表した。

今年の歌舞伎界で最大の注目行事。海老蔵さんは7日に公式ブログを更新し、「新しい日程は決まり次第ご報告させていただきます。すべての方々の健康と安全を考え、止むなく延期とさせていただきます」と説明。「また舞台に立つその日まで日々精進を続けてまいります。皆様もくれぐれもお体を大切にしていただいてそして近い将来、劇場でお会いする事を願っています」と思いをつづった。

緊急事態宣言後も満員電車。決死の覚悟で出勤する人の悲痛な叫び

安倍首相は7日、新型コロナウイルスの感染拡大が急速で進んでいる事態を受け、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡を対象に「緊急事態宣言」を発令した。安倍首相は会見で、密閉・密集・密接の「3密」を避けるよう改めて呼びかけ、人との接触機会を最低7〜8割削減できたら2週間後には感染者の増加を減少に転じさせることができると述べていたが、緊急事態宣言が発令された後の今朝の電車の様子はどうだったのだろうか。

相変わらず「満員」の路線も

今朝の通勤時間帯には、一時「電車普通」がトレンド入り。「非常事態宣言とはなんだったのか」「割と電車混んでる。意味あるのか」「電車普通に混んでる」「電車に乗ってる人はなにが3密を避けろだバカとみんな思ってるはず」など、外出を自粛したくてもできない人たちからの悲痛のツイートが多く見られた。また、混雑する電車の様子を写した写真も複数投稿されていた。



ただし、中には人がほとんどいなくなった都心の駅や路線もあり、すべての駅や路線で満員電車や普通の混雑が解消されていないわけではないようだ。

緊急事態宣言で「減便」は実施されるのか?

政府は6日時点で、鉄道各社に対する減便の要請を検討していた。しかし、赤羽国土交通相は7日の閣議後の記者会見で「現時点で検討していない」と断言。「(鉄道は)生活、経済を支える重要な社会基盤」としたうえで「緊急事態でも維持することが求められている。輸送機能の確保に全力を挙げる」と述べた。事業者側からも「減便すると車両の混雑に拍車がかかり、感染リスクが高まる」との声があがっていたことも明かした。

緊急事態宣言も東京はロックダウン無しで感染爆発を防げるのか?

発令のタイミングがあまりに遅すぎたとの批判もある我が国の非常事態宣言ですが、その措置の内容の「甘さ」にも疑問の声が上がっています。はたして日本は爆発的流行を防ぐことはできるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住の作家・冷泉彰彦さんが、政府の対応に国民が不安を抱くのも理解できるとした上で、それでも国と都が東京のロックダウンを選択しない「肯定的理由」を考察しています。

改めて、東京は都市封鎖(ロックダウン)すべきなのか?

日本の非常事態宣言については、6日に東京都が会見、7日に公表、8日午前零時に発効ということになったようです。個人に対して強制力を伴う条項はないので、直ちに発効としても良かったのでしょうが、即時発効(effective immediately)という概念は日本のお役所にはないわけで、妙に落ち着いた導入になっている感じです。

さて、この非常事態宣言ですが、ザッとした印象としたところでは、人と人との接触度の削減目標(「q」)を例えば3月中旬との比較で言うと、40%から60%削減といった程度のもののようです。

そこで気になるのは、「接触の削減」をどうやって実現するかという「ポートフォリオ」の構成です。非常に単純に言えば、この「接触の削減」は「ゼロ化」というのはできません。食料は各家庭が備蓄して一切購入は認めないし、配達もない、電気や携帯が故障してライフラインが尽きても修理に人を動かすのもダメ、もっと言えば、警察も国防もダメというような厳格なものでなくては「ゼロ」は達成できませんし、その場合はメリットよりも弊害の方が大きいのは明らかだからです。

仮に0.2、つまり80%削減とすると、逆算して考えた場合に、20%の活動でライフラインの維持をしなくてはなりません。例えば、アメリカの場合は(一部の専門家の指摘では)18%程度ということでやっているようですが、具体的には、その18%というのはどのぐらいかというと、ニュージャージー州の場合は、以下のようになっています。

まず個人については、原則は家の中にいなくてはなりません。「STAY HOME(家にいること)」というのが強いスローガンとしてあります。では、どんな場合に外出して良いのかというと、

  • 食料品、生活必需品の買い出し
  • ケアの必要な家族への訪問
  • 健康維持のための散歩、ランニングなど
  • 出勤(営業の許可された業種の場合のみ)

が例外として認められるだけです。また、家族への訪問は1名で行くことが望ましいとか、75歳以上の家族を訪問する際は検温しなくてはならないといったルールを設けている町もあります。散歩や買い物などの場合、同居の家族とはいいのですが、それ以外の人間の場合は6フィート(1.8メートル)の「社会的距離」を置くことも義務付けられています。

上の欄でご紹介した警察の捜査ですが、厳しい市町村になると、ポリスカー(パトカー)が巡回していて、「バスケットボールをしていたら摘発する」「家に複数の車両が停まっていたら踏み込んで集会を解散させる」「事務所専用のビルの駐車場にクルマがあったら踏み込む」などの対応を取っています。

改めて強調しておきたいのですが、別に警察国家にしようとか、人権を抑圧して19世紀に戻そうというのではありません。「接触削減率」を達成するには、そのような強めの規制をしなくてはならない、という感染症制圧のセオリーに基づいて行政が実施しているだけです。

ちなみに、捜査当局が神経を遣うのがカトリックとか、ユダヤ教の正統派などで、彼らは非常に家族の結束を大事にするので、大家族で集合したり、コロナ禍の中でも10人集めて「婚約式」をしてしまったりという話があります。そこに警察が介入すると双方イヤな思いをするわけですが、そうした件も含めて、とにかく「削減率」を達成しなくてはならないということで、やっています。

さて、その場合に気になるのが「営業許可の出ている業種」です。これ以外の場合は、絶対に「出勤、営業禁止」で、自宅で「リモート」をやるしかありません。では、どんな業種が許可されているのでしょうか?非常に詳しく定義づけをしているのがNY州です。ここでは、全体が次の12のカテゴリに分けられています。

  1. 医療サービス提供
  2. 基幹インフラ(ライフラインと運輸、宿泊)
  3. 基幹の製造業(医療関連、食品関連、生活関連、化学、半導体、通信、防衛)
  4. 基幹の小売業
  5. 基幹のサービス業
  6. ニュースメディア
  7. 金融サービス
  8. 貧困層支援事業
  9. 建設業
  10. 防衛関連
  11. 社会インフラとしての行政サービス等
  12. 民間の経済活動を維持するインフラ

この中で、例えば4.の基幹の小売業についてはもっと具体的に次のように定義されています。

  • 食料品店
  • 薬局
  • コンビニ
  • 野菜の直売店
  • ガソリンスタンド
  • レストランとバー(テイクアウト、デリバリーのみ)
  • DIY用品・資材販売店
  • ペットフード店

更に5.の基幹のサービス業についても具体的に決められており、

  • ゴミ収集
  • 郵便、配達サービス
  • ランドリー
  • ビル清掃業
  • 託児所
  • 自転車修理
  • 自動車修理
  • 自動車の通信販売、人間の介在はデリバリー時のみで事前アポ必須
  • 倉庫、デリバリー
  • 葬儀、火葬、埋葬
  • 基幹産業関連の備蓄・保管
  • インフラ維持、修繕
  • 動物のシェルターとケア

となっています。つまり、消費者としてこうした4.と5.に行く場合は外出していいし、同じように4.と5.のカテゴリの職種に従事している人は、出勤していいわけです。

という具体的な例外を除いては、一切ダメということになっています。例えばですが、金融サービスは許可業種ですが、その金融サービスの企業において、経理や人事の仕事をしているとか、ソフトウェアの開発や保守をしているという場合は、ダメです。職種が許可されていないからで、こうした業務は全てリモートになります。

全米に悲鳴。ロックダウンで医療崩壊回避も経済崩壊を招く悲劇

新型コロナウイルスの蔓延による医療崩壊を阻止するため、大規模なロックダウンが行われているアメリカ。しかし、「荒療治」とも言えるその施策は大国の体力を確実に奪いつつあるようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、世界的エンジニアで自身も封鎖環境にあるワシントン州に住む中島聡さんが、ロックダウンにより米国各地で起きている深刻な事態を紹介するとともに、このまま行けばアメリカは日本以上の借金大国になる可能性もあると記しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2020年4月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

米国のコロナ対策

先々週のメルマガに、「医療破綻前夜の米国」という文章を書きましたが、まさにそこで予想していたような状況になりました。特にひどいのがニューヨークで、ニューヨーク州だけで1日1,000人以上が新型コロナウィルスで命を落とすような状況になっています。

この状況を受けて、ニューヨーク州だけでなく、私が暮らすワシントン州やカルフォルニア州でも、州単位での「ロックダウン」が行われるようになりました。食料品を含む生活必需品を販売する店や、電気ガス水道などのインフラを除いた、全てのビジネスに対して、営業停止もしくは自宅からの業務への切り替えが「命令」として通達されたのです。

医療崩壊を避けるにはやむを得ないとの判断ですが、これが地域経済に深刻な影響を与えています。レストラン、バー、小売店などが軒並み閉鎖になったため、そこで働く従業員の大半がレイオフされることになりました。

私の息子もシアトルでレストランを2軒経営していますが、従業員26人中22人をレイオフしました。私の息子だけが特別ではなく、シアトルで13軒のレストランを経営するトム・ダグラスも、850人いた従業員を5人に減らし、「この騒ぎが収まった後も、半分のレストランは再オープン出来ないだろう」と語っています(参照:「Tom Douglas Gives a Reality Check About His Restaurant Group: ‘We Are Broke’」)。

結果として、大量の人が同時に職を失うことになりましたが、彼らの大半が貯蓄を持たない「その日暮らし」の人々なので、いきなり収入がなくなって家賃が払えなくなるという状況が多発しています。

そんな状況に対処するために、州知事は「今月に限って言えば、店子が家賃を滞納しても追い出してはいけない」という命令を出しました。さらに、連邦政府が緊急で可決した2兆ドルの予算のうち、4分の1ほどを失業者や低所得者層に向けて配ることを発表しました(一人当たり1,000~2,000ドルの現金が支給されます)。

しかし、それも一時しのぎでしかありません。たとえ、このロックダウン状況が4月末に解消されたとしても、多くのレストランや小売店はそこまで持ちこたえることは出来ないので、職場復帰は絶望的です。つまり、少なくとも今年いっぱいは、失業率が20%を超えるような異常な状態になることがほぼ確実なのです(参照:「US jobless claims skyrocket to 6.6 million, doubling last week’s record, as coronavirus layoffs persist」))。

つまり、医療崩壊を避けるための施策が経済崩壊を引き起こしているのです。

連邦政府は国単位でのロックダウンの指示は出していませんが、トランプ大統領が「ベストケースでも10万人の人が命を落とす」と発言してしまったことが波紋を読んでいます。

米国の専門家のシミュレーションによると、新型コロナによる死亡者の数を

  • 何もしなかった場合、100万人以上
  • 様々な施策をした場合:10万人~24万人

と見積もったレポート(とそれをベースにした、官僚からの説明)を受けてのことです。

医療者が警告、新型コロナ情報に触れる際に忘れてはいけないこと

新型コロナウイルスから自分と家族の身を守るために重要となってくるのが、正確な情報を得ること。しかし流れてくる情報は玉石混淆状態と言っても過言ではなく、どれを取り入れるべきなのか迷ってしまうのも事実です。そんな時我々は、何を指針とすればいいのでしょうか。今回の無料メルマガ『人間をとことん考える(人間論)』では著者でかつて薬剤師としての勤務経験もある小原一将さんが、医療者の視点で見た「正確な情報の受け取り方」を記しています。

落ち着いて、この事態を冷静に対処しよう

社会が見たこともない状況になってきた。コロナウイルスは収束する兆しどころか、ますます拡がりを見せている。

私は一応医療者であり、周りに専門家がいるのでかなり冷静に物事が見られているとは思う。だからこそ、ウイルスではなくこの異常な状況が気になる。今回はメルマガの主旨とは少し逸れるかもしれないが、私の考えを述べていければと思っている。

コロナウイルスで日本や世界が滅亡するかの如く報道されている。連日増え続ける感染者数に不安な気持ちになる。確かに致死率は疾患がある方や高齢者の方は高い傾向があるので気を付ける必要があるのだが、それで地球や人類が滅ぶとは思わない。

これだけの事態になる前からマスクが飛ぶように売れて、食糧の買い溜めなどが起こっていた。はっきり言って私はコロナより人間のパニックの方が怖い。

大物芸能人が、コロナが原因で亡くなったことはとても悲しい出来事であり、私も子どもの頃によく見ていた人なのでショックだった。しかし、それとコロナが危険であるかは別のものだ。

有名芸能人の命を奪ったから危険なウイルスであるというのは、あまりにも論理が飛躍している。

情報は無数に氾濫して、いつも私たちを惑わそうとしてくる。絶対に忘れてはいけないのが、メディアから発せられる情報は誰かの手が加わっているものだということ。それが正しいと思って受け取るのはもちろんダメだが、無意識に情報として取り入れるのもおすすめしない。

ファクトフルネスという本にも書いてあるが、メディアはなるべく聴衆の注目を集めるためにセンセーショナルなものしか発信しない。「今日は10人の患者が元気に退院しました」という報道よりも「今日も1人の患者が感染しました」の方が注目を集めやすい。

情報を取るのであれば、公的機関や専門家の意見をまず参考にしてもらいたい。

このように書くと、専門家も間違うことがあるだろうと反論される。その答えとしては、当然専門家も間違うことがあると言わざるを得ない。

とはいえ、一般の方よりは圧倒的に多くの知識を持ち、そこから導き出された考えや答えを持っている。

薬剤師として働いているときによく言われたのが、近所の◯◯さんが言っていたとか、職場の人が言っていたという情報だ。なぜ医療の専門でもない一般の人間の情報を、目の前の医療者よりも大事にするのだろうと思っていた。

今でもこの答えは出ていないのだが、メディアが陰謀論や秘密を見つけたとか言ったような煽り方をするのが原因の一つではないかと思っている。

大きな迷惑でしかない。

私も陰謀論や都市伝説はとても好きだが、それと情報の正確性は全く違う。少なくとも一般的な情報源に本当に秘密にしておきたいことが載ることはない。もし載っていたとしたら、もうそれは秘密にしなくて良いものである。

このメルマガを読んでいただいている方の数はメディアに触れる数に比べればとても少ないのだが、今私ができることとしてここに書くことが良いと判断して書かせていただいた。

まずは落ち着くこと、そして正確な場所から情報を受け取り、自分の身と家族を守ために最善の行動をとってもらいたい。

もし何かお困りのことがあれば、私も医療者として分かる範囲でお答えすることもできる。

私は会社を経営していて、家族もいる。同じような境遇の人も多いだろう。皆で協力しながら、この事態を乗り越えていきたい。

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安倍首相が緊急事態宣言を発令。東京など7都府県を対象に5月6日まで

新型コロナウイルスの急速な感染拡大を受け、安倍晋三首相は7日、改正特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発出した。対象となるのは、東京都、神奈川、千葉、埼玉各県の首都圏と大阪府、兵庫県、福岡県の計7都府県。期間は5月6日までの1カ月間となり、対象地域の各知事が外出の自粛や施設の利用制限などを要請することになる。

安倍首相は宣言の中で、「接触削減をすることで、2週間後にはピークアウトできる」と語り、必要がなくなった場合には、速やかに緊急事態を解除するとした。

諮問委員会から意見を聴いたうえで、緊急事態宣言を行った安倍首相は、7日午後7時から記者会見を開き、緊急事態宣言に基づく措置の内容などについて国民に説明、協力を呼び掛ける。

image by:首相官邸HP