顔認証でロシア兵の戦死者を特定。ウクライナの戦術は功を奏すか?

ウクライナに侵攻したロシア軍の前線の兵士には、多くの戦死者が出ていると伝えれられています。徹底抗戦するウクライナからある程度の譲歩を引き出し停戦が叶っても、プーチン政権の前途は明るくないと見るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さん。ロシア兵戦死者を顔認証で特定し、本人のSNSアカウントを通じ知らせるというウクライナの戦術が、ロシア国内での反戦気運高めると予想。コソボ紛争で空爆に参加した米軍パイロットを特定し脅迫した新ユーゴの戦術が進化した「新たな戦争の時代」の始まりを伝えています。

「新たな戦争の時代」が始まった

ウクライナの首都キエフ東部のロシア軍の後退について、生物・化学兵器を使う準備ではないかとの憶測も飛び交い、ウクライナ情勢は予断を許さない「危険水域」を漂い続けています。

そうした中で、ウクライナの東部と南部でのロシア軍の猛攻撃を停戦の兆しととらえる見方も出始めています。もともと親ロシア勢力が実効支配してきた東部ドネツク、ルガンスク両州と南東部のマリウポリ周辺でのロシアの実効支配について、ロシア側の要求通りに独立を認めることはないまでも、自治権を持つ州や地域にすることで合意し、停戦を実現するという方向です。

これなら、軍事侵攻によってウクライナの国土の10%以上を削り取ったことをロシア国民に成果としてアピールすることができ、プーチン大統領の顔も立つという考え方です。それでも、いったん揺らぎはじめたプーチン政権の前途は明るいものではありませんが、それに拍車をかける動きがウクライナ側から仕掛けられていることを見逃してはなりません。以下は、そのニュースです。

「ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相は3月23日(現地時間)、戦闘で死亡したロシア兵の顔をAIで特定し、SNSを介して家族や友人に知らせていると、Telegramに投稿した。

 

同氏は米Reutersに対し、ロシア兵のSNSアカウントを見つけるために、顔認証プラットフォームを手掛ける米Clearview AIの技術を使っていると語った。

 

ウクライナによると、2月24日のロシアによる侵攻以来、約1万5000人のロシア兵が戦闘で死亡したという。

 

Reutersは13日、Clearview AIがウクライナに顔認証プラットフォームの提供を開始したと報じた。Reutersが入手した同社のホアン・タン・タットCEOからウクライナ政府に送った書簡で同氏は、Clearview AIはロシアのSNS「VKontakte」で公開されている20億点以上のロシア人の顔写真を保有していると語った。

 

同社は、SNSに投稿された人物の画像に顔認識技術を適用し、自社のデータベースに追加していることで知られている。同社の顔データベースには100億点以上の画像が蓄積されている。この手法については人権団体などがプライバシー侵害だとして批判している」(3月25日付ITmediaNEWS)

このニュースに接して思い出したのは、1999年のコソボ紛争でのユーゴスラビア側の戦術です。NATO軍の熾烈な空爆に対して、ユーゴスラビア側はハッカー部隊を米国の国防総省のサイトに侵入させ、出撃しているパイロットの個人情報を盗み出し、留守宅に脅迫状を送りつけたのです。

このときの脅迫状戦術は効果を発揮したとは思えませんが、今回の戦死者の顔認証によるSNSを使った肉親や友人・知人への働きかけは、ロシア国内の反戦気運を高めていくうえで一定の効果が期待できそうです。

ウクライナでの戦いは、様々な面で新たな戦争の時代に入ったことを教えてくれています。(小川和久)

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コロナ禍なのになぜ?メルセデス・ベンツがトヨタを抜いた理由とは

多くの企業を苦しめ続けているコロナウイルスの影響。コロナ禍以前よりも売上が下がった企業が多いなか、メルセデス・ベンツはコロナ禍真っ只中でも大きな利益を出しました。これはなぜなのでしょうか。今回のメルマガ『【退屈な人生からの脱出法】鴨頭嘉人が教える「成長を続ける大人の情報源!チームカモガシラジャパン」』ではその秘密を教えるとともに、自分の身を自分で守るための秘訣を自動車業界の動きから読み解いています。

 

トヨタ車1台当たりの利益額は何円でしょう!?

このコロナ禍の状況の中で、我々の中には売り上げが下がったり、利益が出なくなったり、資金がショートしてしまったりという悩みを持っている人が多いと思います。

これは、政治のことも含めた大きな問題であって、個人の力だけで乗り越えられるものと乗り越えられないものがあると考えています。

しかし残念ながら、日本は経済において、国が守ってくれるという状況には全くないので、自分の身は自分で守ることが必要です!

今日は、自分の身は自分で守るためのヒントをお伝えします*\(^o^)/*

最近のニュースで、2021年の世界ランキングのデータが色々出ていますが、その中で自動車業界のデータが出ました。

特徴的だったのは、メルセデス・ベンツグループがトヨタ自動車を抜いて、1年間の利益額で世界一に輝いたことです。

元々トヨタ自動車は、販売数も利益額もトップで世界ナンバーワンの自動車会社だったのですが、ベンツに抜かれてしまいました!

なんと、メルセデス・ベンツグループは、2021年のコロナ禍の真っ只中で、しかも半導体不足で大変だった時期に、前年比で4.4倍の利益を出しています!とんでもなくすごいことだと思います!!

それにしても恐るべしですよね(≧∇≦)グループ全体の売上高が日本円で約3兆7,305億円と売上高も前年に対して9%のプラスになっています。

売上が9%しか伸びていないのに、利益が4.4倍になっているのです。経費の削減なども影響することはありますが、そんなことで4.4倍の利益にはなりません。勘のいい人は、なぜそうなっているのかわかりましたね♪

 

新庄ビックボスがブチギレ。「日本ハムは100敗する」小バカにした野球評論家に激怒、田尾&藪の阪神両OBは謝罪へ

開幕から4連敗と未だに勝ち星がない北海道ハムファイターズ。しかしビッグボスこと新庄剛監督の怒りの矛先は選手にではなく、日本ハムを“こき下した”野球評論家たちに向けられていた。YouTube で「日本ハムは今シーズン100敗する」と笑いながら予想され、ビッグボスは怒り心頭、Instagramで不快感を示した。

阪神OBの評論家3人の激辛予想に反応

ビックボスが怒りをあらわにしたのは元楽天監督で阪神OBの田尾安志氏のYouTubeチャンネル。同じく阪神OBの岡義朗氏と藪恵壹氏も加わって、今シーズンのパ・リーグの順位を予想した。

他チームとの戦力差が大きいことから、全員一致で日ハムを“ダントツ”の最下位とし、「下手をすると100敗するかもしれない」とダメ押しの一言。ちなみに、3人はビックボスと同じ阪神タイガースのユニフォームを着た“先輩後輩”にあたる間柄だ。

旧知の3人にボロカスに言われて、黙ってはいられなかったのか、ビックボスは自身のInstagramを更新。ストーリー機能に3人のYouTube動画を添付して、画面上に「笑いながら~この御三方達の性格がなんだか可哀想だなって思いました」と画面に文字を書き込み、続いて「95敗したらこのYouTubeに出てあげましょう」と書き加えた。

そして、最後には「藪氏は100敗らしい」「笑い方」の後に怒り顔の絵文字をつけ加えた。

よほど腹が立ったのだろう。あまり怒りの感情を見せないビックボスとしては珍しい。小馬鹿にされたことでビックボスがブチギレした形だ。

騒動を受け30日、田尾氏は自身のYouTubeで「不快な思いをされた方に謝罪します」とコメント、藪氏も「田尾さんが楽天1年目に97敗したという話があったんで、そこは笑い話になってしまった」と釈明した。

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イベントではファンを湧かせる奇策が試合では不発

最下位を予想しているのは3氏だけでなく、多くの評論家が日ハムが上位に浮上するとは思っていないようだ。それを物語るようにソフトバンクとの開幕3連戦は全敗し、本拠地・札幌に戻った29日の対西武初戦にも敗れ、現在0勝4敗で最下位をひた走っている。

なかなか野球では思うような結果になっていないものの、ファンを大切にするビックボスのサービス精神はさすがだ。

29日の本拠地開幕戦のオープニングセレモニーでは、ドローンのように空を飛ぶ「ホバーバイク」に乗って登場。なんとフェンス前から内野近くまで、宙を舞って移動し観客の度肝を抜いた。

グラウンド外での奇策はことごとく当たってファンを沸かせるが、肝心の試合では奇策が空回りしている。

試合開始にならないとスタメンが分からない「ビッグボス方式」が裏目に出たのか、打線がつながりにくく、タイムリーがまだ1本しか出ていない。

また、2021年にドラフト8位で加入した北山亘基投手が異例の開幕先発に抜擢され見事なピッチングを見せたが、継投が失敗して敗れている。

さすがにここまで勝てないと、風向きが一気にかわる恐れもある。

30日の東京スポーツでは『日本ハム・新庄監督「空中浮遊」しても…4連敗で強まる逆風』と題して、「手のひら返しも時間の問題」論じるなど、ここに来てビッグボスを手放しで持ち上げてきたメディアの風向きが一気に変わる可能性を示唆した。

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30日は本拠地札幌ドームの西武との2戦目で、さすがに5連敗では格好がつかない。果たして、ビックボスはどんな手を使い、この逆境を跳ね返していくのだろうか。新庄監督の采配が試されるのはまだまだこれからだ。

四面楚歌の文在寅。退任後の自分を守る「防弾人事」が不発で窮地に

前回の記事(『文大統領の夫人を告発。権力利用して贅沢三昧、想像を絶する浪費ぶりに国民激怒』)では、任期満了直前の文在寅大統領を襲う向かい風について語った無料メルマガ『キムチパワー』。韓国在住歴30年を超える日本人著者が、 今回も文大統領の思惑通りにいかない様相を見せる今後の「人事」について語られています。

防弾人事

韓国という国はどうも「防弾」という単語が好きみたいだ。防弾少年団(バンタンソニョンダン)の生みの親の国というせいもあるかもしれない。

最近韓国で使われている単語の一つに「防弾人事」というものがある。なんのことか想像してみてほしい。そう。自分を守るための人事、文在寅が退任したあとで彼を守ってくれるべき人を各ポストにつけるという意味で使われている。この防弾人事についてのおもしろいコラムが文化日報にあった。筆者のことばも交えてご紹介したい。

「草が横になる/風よりももっと早く横になる/風よりももっと早く泣く/風より先に起きる」=金寿永(キム・スヨン)詩人『草』の一部分だ。

草だけが風より早く横になるのではない。政権が変わった後、公職社会はもっと早く横になる。これまで数回の政権交代を経験して公職社会が体得した生存の秘訣だ。5年前に文在寅政権になって、省庁ごとに「積弊清算委員会」を設置し、公務員を弾圧したことを経験した公職社会は、尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領が確定するやいなや、変化の速度の速さに茫然自失してしまうほどだ。

文大統領は、大統領選挙が終わって19日後の28日、尹次期大統領に会った。簡単そうだった会合がこれほど長くかかったのは、人事権で退任後の安全を図ろうとした文在寅の固執のためだ。

これまで大統領府は、残り約40日の任期の間、大統領に与えられた人事権を尹当選者に譲歩する考えがないことを明確にした。中央銀行にあたる韓国銀行総裁、監査委員2人、中央選管委の常任委員人事は自分(文)が行うという趣旨だ。

すでに韓銀総裁は、イ・チャンヨン国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局長を指名しており、監査委員も1人は必ず自分たちが推薦すると我を張っている。大統領府民情首席室公職綱紀秘書官を務めた李南九(イ・ナムグ)監査院第2事務次長を念頭に置いているという話が出ている。盧武鉉大統領時代、民情首席室で文大統領と一緒に勤務した崔載海(チェ・ジェヘ)監査院長を含め、監査委員4人さえ確保すれば、自分たちの思い通りに監査を阻止することができると計算したのだ。

月城(ウォルソン)原発はすでに裁判中だが、太陽光や風力発電、主要4河川の堰の解体、大統領府の特活費の使用(夫人金正淑の天文学的なアクセサリー代など)などが、すでに主要監査対象に浮上している状況を念頭に置かざるを得ない。

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マイナーな国家が滅亡した理由とは?世界から消えた48カ国の謎を追う

世界史の教科書には決して掲載されない、マイナーな国家が滅亡した理由。それを知ることによって、私達は何を学ぶことができるのでしょうか。今回は、メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の中で、Amazonでも売上1位に輝いたという国家滅亡史について書かれた一冊を紹介しています。

傑作。消えた48カ国とその理由とは?⇒『世界滅亡国家史』

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誤解しないための日韓関係講義

ギデオン・デフォー・著 杉田真・訳 サンマーク出版

こんにちは、土井英司です。

本日ご紹介する一冊は、教科書に載らないた48カ国のマイナー国家の「滅亡国家史」を、シニカルにまとめた一冊。

Amazon.comでも1位になったという、知的好奇心あふれる歴史書で、東京大学名誉教授の本村凌二氏(歴史学者)も、推薦の辞を寄せています。

それもそのはず、著者のギデオン・デフォー氏は、オックスフォード大学で考古学と人類学を専攻した秀才でありながら、作家・アニメ脚本家としても活躍の人物。アカデミー賞にノミネートされた『The Pirates! In an Adventure with Scientists』の脚本も執筆しています。

本書が秀逸なのは、基本面白おかしく48カ国の運命を語りながら、その成立と滅亡の原因をまとめている点。

ロシアとウクライナが戦争している今、何を安全保障上、考えておかなければいけないか確認するために、ぜひ読んでおきたいところです。

特に、「滅亡国家の教訓」として書かれた部分は、勉強になります。

忙しい人は、ここだけでも読んでおくといいでしょう(ちなみに教訓の1は、

「イギリスが助けてくれる」は実現しない

でした。笑)。

本書を読んでいると、歴史のなかで、国境が次々と書き換えられてきたことがよくわかります(次、どういう展開があり得るかの参考になります)。

庶民の立場から見ても、どんな土地に住むと間違いないか、教訓が得られるでしょう。

イチロー氏、自身初の“退場”すらもレジェンド。ネットで話題沸騰、語り継がれる審判への侮辱行為の真実

今、日米球界のレジェンド・イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が大きな脚光を浴びている。イチロー氏が指導した国学院久我山高校(東京)が第94回選抜高等学校野球大会でベスト4に進出。「イチローはやっぱり凄い」と再認識される中、メジャー時代のある動画がネット上で話題となっているのだ。

イチロー氏、現役時代の退場処分がレジェンドすぎ

イチロー氏といえば、日本とメジャーで4367安打を放った、言わずと知れた大打者。通算28シーズンをプレーし、MLBシーズン最多安打記録(262安打)、プロ野球における通算安打世界記録(NPB / MLB通算4367安打でギネス世界記録に認定)、最多試合出場記録(NPB / MLB通算3604試合出場)を誇っている。

そんなイチロー氏の凄さが改めて囁かれているのがこの動画だ。2009年9月26日に行われたマリナーズ対ブルージェイズ戦。5回に見逃しの三振をした際、判定を不服とするような態度をとったため、審判への「侮辱行為」とみなされ、イチローは自身初の退場処分を受けた。

自信を持って見逃したボールをストライクと判定されたイチロー氏は、バットの先端でホームベースの外角の外れた地面に“通過したのはここ”と言わんばかりに線を引いた。

そのラインがあまりにも正確すぎるというのだ。確かに、画像を重ねてみると、イチロー氏がバットで示した通りのボールだったことがわかる。

これを見る限り、ストライクではなくあきらかにボールで、ホームベースをかすりともしていない。イチロー氏の選球眼がまさに“神レベル”だった。

「(退場の)可能性はあるだろうけど」と覚悟した上での線を引いた行為は「侮辱」と判断され、球審は迷わずに退場を宣告。わずか3秒の即決だった。

不名誉なプロ生活初の退場となったが、イチロー氏は試合後、「もうちょっと間を置いといて欲しいですよね。その作品としてはもうちょっと味わいたいですよね、その間を。その辺がちょっとね。演出能力の問題じゃないですか」と余裕のコメントを発していた。

ちなみに、日本のプロ野球でも29日に行われた中日対DeNAの一戦で、ストライクと判定された大和選手(DeNA)が同様にバットでベースの近くにラインを引く行為をし、それが侮辱行為にあたるとして退場処分を受けた。

これは世界共通のルールのため、いくらレジェンドであるイチロー氏でも致し方ない処分だった。

とはいえ、10年以上も前の1打席の出来事が時を経てネットで拡散されるという凄さ。改めてイチロー氏の偉大さを痛感させられたといえるだろう。

プーチンにナメられた安倍晋三元首相が「北方領土交渉」で“見誤ったもの”

3,000億円とも言われる経済協力を申し出た上に、4島一括返還の原則を「2島先行返還」にまで譲歩するも、結局何の進展もなく終わった安倍政権による北方領土返還交渉。なぜ安倍氏はここまでの低姿勢で、ロシア側との協議に臨んだのでしょうか。今回、その原因を安倍政権がプーチン大統領の演出する「大国ロシア」の幻想に惑わされたためとするのは、立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さん。上久保さんは当時ロシアが抱えていた4つの問題を解説した上で、その状況を見誤った日本政府を批判的に記すとともに、今後の対ロ戦略の課題を考察しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

なぜ安倍元首相はロシアになめられる弱い姿勢で北方領土返還交渉に臨んでしまったのか

ロシアのウクライナ侵攻で日本が対ロ制裁を科したことへの対抗措置として、ロシア外務省は「公然と非友好的な立場を取り、わが国の利益を損なおうとする国と2国間関係の基本文書の調印を協議することは不可能だ」と主張し、「北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を現状では継続するつもりはない」と表明した。

また、ロシア軍は千島列島と北方領土で3,000人以上が参加する軍事演習を開始したと発表した。数百台の軍用車両などで、敵の上陸に反撃する演習などが実施されたという。日本は、対露外交戦略の全面的な見直しを迫られているのは間違いない。

2012年、安倍晋三首相(当時)は、「領土問題を解決し、平和条約を締結する。戦後70年以上残されてきた課題を、次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ず終止符を打つ」と訴えた。そして、安倍首相はウラジーミル・プーチン露大統領と個人的な信頼関係を築き、ロシアに対する経済協力を進めることで領土交渉に臨むという戦略を描いた。

しかし、交渉は難航して進まなかった。安倍政権は、ロシアを交渉のテーブルに着かせる為に、次々と譲歩をしていった。2014年のロシアがクリミア半島を併合した時、欧米各国はロシアに対して厳しい制裁を科した。だが、安倍政権は、欧米に比べて緩い制裁にとどめただけでなく、欧米の制裁が続く中、ロシアとの経済協力を次々と進めていった。

2016年5月、安倍首相は「新たな発想に基づくアプローチで交渉を進める」として、エネルギー開発や極東地方の振興策、先端技術協力など8項目の「経済協力プラン」を提案した。12月には、ブーチン大統領が来日して開始された首脳会談で、北方領土での日ロ共同経済活動を提案し、8項目の「経済協力プラン」の推進で合意した。

安倍政権は、北方領土交渉そのものについても、ロシアに譲歩しようとした。2018年のシンガポールでの首脳会談では、首相が「4島返還要求」を封印し、「2島返還」にハードルを下げることを提案した。首相は、北方領土について「日本固有の領土」という表現を使わなくなった。

しかし、セルゲイ・ラブロフ露外相は、安倍首相の譲歩に対して冷淡だった。「第2次世界大戦の結果、合法的にロシアに4島の主権が移ったと日本が認めることが第一歩だ」と主張し、ロシアがこの提案に乗ることはなかった。

それどころか、ロシアは北方領土で軍事演習をし、「領土の割譲禁止」という条項を盛り込んだ「憲法改正」まで行った。それなのに、安倍政権はロシアに明確に抗議をすることはなかった。その後も、交渉がまったく進まないまま、安倍政権は2020年9月に退陣した。

卒業式や入学式は日本人にとって「実害」しかないと断言できる理由

桜前線の順調な北上とともに、今年も巡り来た入学式シーズン。しかしながら日本における入学式は、子供たちに大きな「実害」をもたらす儀式と言っても過言ではないようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、そう判断せざるを得ない根拠を解説。さらに学習の場である学校に、日本流の入学式や卒業式が不要である理由を詳述しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年3月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

 

卒業式も入学式も止めてしまえ、というお話

日本は卒業シーズンが一巡して、今度は入学式や入社式のシーズンになります。ところで、こうした「卒業式」や「入学式」というのは、本当に子どもや学生の成長に寄与しているのでしょうか?

この間、パンデミックの時期ということもあって、こうした儀式が簡素化されてきたわけですが、これを機会にもう一度、こうした式の意義について考えてみたいと思います。

ちなみに、「共同体の一員になる儀式」が重視されるために、入学式が重要である日本とは異なって、「出口=個人の達成」の方を重視するアメリカでは、卒業式しかありません。特に入学式というのはなく、どの学校でも新入生にはガイダンスとかオリエンテーションはあっても、歓迎のセレモニーというのはありません。さらに言えば、新卒一括採用がないので、入社式というのもありません。

一方で、アメリカの場合、卒業式は盛大で、高校の卒業式は家族で参加して祝います。大学の卒業式も、大学院の卒業式も、基本的には家族総出で参加します。仕事が忙しいので、親が欠席するようなことは、まずありません。とにかく、子供が大人になるための「達成」だから祝うというのがお約束になっています。

大学の場合は、卒業式の来賓スピーチが特に注目されます。毎年5月が近づくと「某大学では誰々が呼ばれた」というような話題がネットを駆け巡りますし、実際に当日が来ればその「大物」によるスピーチの内容が社会的な関心を集めます。

現在は、オバマ夫妻を筆頭に、引退した政治家や、著名な文化人などが「卒業スピーチ」の人選としては人気です。ちなみに、「卒業生に対してスピーチ」をするという形にすると、主役である卒業生に対して「失礼」ということで、どの大学もゲストには「名誉博士号」を授与して、その授与を記念した講演をさせるというのが建前になっています。

有名なところでは、亡くなったスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った2005年のスピーチがあります。このスピーチは当時の多くの若者の心を揺さぶり、その後、比較的すぐにジョブズが他界したことから、伝説にもなっています。

特に、有名なのは “Stay Hungry! Stay Follish!” というメッセージです。ちなみに、このフレーズのことを「ハングリーであれ。愚直であれ。」という「訳」が出回っていますが、そんなに「お行儀の良い」内容ではありません。強いて言えば「渇望せよ。逸脱せよ。」というニュアンスだと思います。

その少し前の

Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life. Don’t be trapped by dogma, which is living with the results of other people’s thinking. Don’t let the noise of others’ opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.

 

オレ達の時間は限られている。だから自分の人生を生きるんだ。他人の人生のために生きではダメだ。ドグマに束縛されるな。何故ならばドグマというのは他人の思考の結果に過ぎないからだ。他人の余計な雑音に邪魔されて、自身の内なる声が掻き消されないようにせよ。何よりも自身のハートと直感に従って生きる勇気を持て。君たちが何を為したいのかは、既にそこでしっかりと認識されているからだ。その他のことは、人生にとって大したことじゃない。(筆者意訳)

などというあたりも、凄い表現だと思います。恐らくは死期を悟っていたであろう天才の魂の言葉とでも言えるでしょう。

 

高笑いの米国、冷静な中国。EUが「ウクライナ戦争」最大の“敗者”となる訳

連日さまざまなメディアで伝えられている、ロシアのウクライナ侵略に関するニュース。しかしその報道スタンスは、当然ながら各国により異なるものになっています。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、中国でのウクライナ紛争の報じられ方を紹介。「紛争の勝者はアメリカ、敗者はEU」という説得力に富む見立てを取り上げ詳しく解説しています。

 

中国がロ烏戦争でEUが最大の敗者になると考える理由

日本と中国を比べたとき、ウクライナの問題を論ずる姿勢に大きな違いがある。

ロシア応援団(=反米)ともいえる一派がウクライナ擁護派を攻撃する対立の構図は、親ロと親烏の割合さえ変えれば日本で起きているものと大差ないように思われる。だが、明らかに違っているのがメディアの報道姿勢だ。

日本の報道がロシアとウクライナの戦況に大きくフォーカスしていったのとは対照的に中国は大国の思惑に重心を置いた報道が目立つのだ。

自然、前者はロシアの攻撃で被害を受けたウクライナの市民に焦点が向けられ、「無差別攻撃」、「侵略」、「戦争犯罪」というロシアの残酷さを強調した見出しが踊る。当然、その反動として「ウクライナ側にも原因が……」といった意見は淘汰され、強い同調圧力も働く。反対意見が活き残る空間が急速に失われていったのである。

かつて日本を取材した著名な中国人ジャーナリストが「(日本には)言論の自由はあるが、日本人の言論は不自由だ」と喝破したような現実が目の前に広がっている。

学歴が大好きで先生の言うことに従わない人間を攻撃する傾向の強い日本人は、ときに国際政治を考えるのに不向きだと感じることがあるが、まさにいまがそれだ。

誰もがロシアを憎むのが当たり前で、それに従えない者に牙を剥く。国も同じで、中国には制裁をちらつかせて従わせるのが正義だという空気が広がっている。

だが、その正義の制裁は果たしてどんな法的根拠を持っているのか、と問われてきちんと答えられる日本人はいるのだろうか。またアゼルバイジャンとアルメニアの戦争では何もしなかったのに、なぜ今回は行うのか、と問われたときはどうだろうか。

問題は、今回の制裁がもし国際社会の“善意”に後押しされているとしたら、その善意が一つの重要な国際秩序に深刻なダメージとなることを多くの人が気付いていない点だ。国連軽視の傾向だ。

国際連合には欠陥がある。安全保障理事会のメンバーに対して無力であるからだ。ただ、そんなことは元々分かっていたことで、脆弱な秩序を、それでも大切にしてきたのが戦後の国際社会だ。しかし今回、国連の機能不全を理由に正面から国連を蔑ろにする制裁を行えば、それこそ国連に対する死刑宣告にも似た効果を及ぼす。それは良いことだろうか。

結局、残るのはアメリカの正義であり、それに従えないと考える国々は新しいグループを形成せざるを得なくなる。これが世界を二分して戦う第三次世界大戦の入り口になることは言を俟たない。

制裁をしろと叫ぶ人々は、一方でこの方向に向けて世界を押し出していることを自覚しなくてはならない。

その意味で、終始一貫して国連の秩序を強調──これはアメリカの秩序への反発もあるのだが──し続ける中国は筋を通しているとはいえないだろうか。

その中国から見たとき、今回のロ烏戦争にはアメリカ・北大西洋条約機構(NATO)が果たした役割が大きいと映る。簡単に記せば、ロシアがレッドラインを示して危機感を伝えているにもかかわらず、その安全保障空間をNATOが侵食し続けたからだ。

 

世界中の人がコロナ禍で気づいてしまった「流行なんていらない」という真実

ありとあらゆる常識を覆した新型コロナウイルス感染症ですが、ファッションの世界もその影響からは逃れられなかったようです。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、ファッションのとそのビジネスの歴史を詳細に振り返るとともに、コロナ禍が変えたファッションに対する人々の意識を解説。さらに「アパレル業界の今後」についても考察しています。

 

コロナ禍で世界が気づいてしまったファッションの真実。本当に「流行」は必要なのか

1.ファッションは金持ちが楽しむもの?

ファッションを楽しむという行為、あるいは衣装を競い合うという楽しみは、もっぱら上流階級のものだった。

ファッションは常に変化するのが特徴だ。シーズン毎に新しいコレクションが発表され、それをお金持ちが注文する。

高級注文服と訳されるオートクチュールが存在するのは、オペラ座がある都市と言われている。オペラの劇場、オペラ歌手、オーケストラが存続するということは、それらを支える富裕層が一定以上存在することに他ならない。

かつて、多くのファッションデザイナーは、上流階級の一員だった。外交官の娘が、世界中を旅行して、世界中の文化や芸術に触れてコレクションを発表し、デザイナーとしてデビューする。こんなプロフィールを持つデザイナーが多かった。

外交官は上流階級に所属しており、その親戚、友人、知人等も上流階級。上流階級が上流階級相手の商売をする。それがファッションビジネスの原点でもある。

2.大量生産による大衆ファッション

西欧におけるファンションの大衆化は米国から始まった。

米国のアパレル産業は、パリでコレクションを買いつけ、それを大量生産し、安価な製品として販売することで成長した。パリにとって、アメリカのバイヤーは最大の顧客であると同時に、パリのファッション産業と競合するアメリカアパレル業界の代表でもあった。そのため一時期、パリから米国向けの輸出は、その他の国よりも1カ月遅らせたほどだ。

この米国の既製服業界のノウハウは、日米繊維交渉決裂後、1970年頃に日本に伝えられた。当時の日本の繊維産業は盛んに対米輸出をしていた。しかし、米国政府が国内繊維産業からの陳情を受け、日本政府に対米輸出の制限を主張し、数年の貿易交渉の末、日本側の自主規制で決着した。そのため、日本の繊維産業は輸出から国内需要への転換を求められ、その手段として、米国既製服産業のノウハウを導入した。

ここから、日本のアパレル企業はライセンスブランド中心のビジネスモデルを採用し、多ブランド戦略によって百貨店の売場シェアを確保し、急激に成長した。

そして、現在に到るアパレル企業の業態が確立した。欧米のコレクション情報、トレンド情報を元に、年2回のコレクションを月毎の商品計画に組み直し、デザインバリエーションを増やし、週単位のきめ細かな商品展開計画に落しこんでいった。

そして、消費者は新しいシーズンの到来と共に、新しいデザインの商品を購入するという購買習慣を身につけた。

この手法はファストファッションに引き継がれ、世界に拡大した。その結果、起きたことは、世界的なアパレル製品価格の下落と、人件費の低い新興国への生産拠点の移動。既存アパレル流通の破壊とグローバル企業による寡占化である。各国の付加価値の高い規模の小さいアパレル企業は次々と淘汰された。そして、画一的なトレンド情報に基づく同質化した商品が市場にあふれ、ファッションの魅力は希薄になった。同時に、単価の下落に伴う生産数量の増加と大量廃棄が社会問題化したのである。