【鍼灸師が指南】暖房で弱った身体を潤す4つの食材レシピ

カラダの熱取りレシピ

『鍼灸師・のぶ先生の「カラダ暦♪」』 Vol.099(2015/01/16号)

風邪をひいたり外気の乾燥や温かい室内でカラダに熱がこもることがあります。さむい・さむい冬ですが、余分な熱取りをすることで快適に過ごすことができます。

・発熱後・解熱時

消化に時間のかかる冷ごはんや乾麺は消化器での停滞時間が長いです。消化器に滞在中にカラダの熱を奪う作用があります。カラダの熱を取りのぞく冷ごはん・乾麺のうどんやソバ・そうめんは、あたたかくして食べる事で発熱後の解熱をうながします。

・暖房の熱で肌やノドの乾くとき

一度炊いたご飯を冷ますことで熱性の強いご飯が冷ます性質をもつようになります。冷ごはんの雑炊は水分をたっぷり含むのでカラダを内側から潤します。また、大根や葉物の野菜(白菜など)をくわえることで、胸にこもる熱や熱のこもる血行を冷ます働きが取りこめます。 大根入りの葉物野菜雑炊で暖房対策をしましょう。

・のぼせ・イライラ・便秘・手足のほてり

水菜・春菊・三つ葉・シャンツァイなど香りと苦みのあるハーブを加えたあたたかい乾麺のうどんは体内やカラダの表面のこもった熱を冷ましながら、カラダの芯を温める働きがあります。お出汁の味付けが塩気で濃くならないようにするのがオススメです。味が濃いようなら大根おろしやワカメなどの海藻類をトッピングするのもよいです。

・のぼせ・乾き・疲れがつづくとき

鏡餅のような乾いた餅を使った雑煮がオススメです。餅はカラダを滋養する働きが強く・カラダの芯から温めて疲労を回復します。つきたての餅よりも熱性が少ないのでカラダに熱をこもらせる作用がへらすことができます。ポイントは薄味で野菜を多めにすることです。

 

『鍼灸師・のぶ先生の「カラダ暦♪」』 Vol.099(2015/01/16号)

著者/のぶ先生
臨床歴20年の鍼灸師。東京都杉並区在住。「やさしい鍼」という流儀で治療を行っている。小学生の娘2人をもつ、子育て真っ最中のパパでもある。≪無料サンプルはこちら≫

【プレゼント】注意!彼女の誕生日は利下げオプションを残せ

女を喜ばせるのは金融緩和と同じ。愛の言葉も誕生日祝いも奮発し過ぎない

Question
shitumon誕生日のサプライズについてご相談です。

この年末年始に本命の彼女が誕生日を迎えるのですが、その際に何かサプライズをしたいと考えております。そこで、もし藤沢先生の方で何か良いアイディアがあればご教示頂けないかと思い、ご質問させて頂きました。(ちなみに金融日記の諸先輩方は、高級レストランとアクセサリー等のプレゼントという のが一般的なのでしょうか?)
その彼女とは1年以上の付き合いで結婚もぼちぼちしそうな雰囲気です。

 

藤沢数希の回答


女を喜ばすのは、金融政策で言えば、金融緩和みたいなものなので、できるならふだんはあまり喜ばせずに、リーマンショックのような金融危機や景気循環による不況のときのために弾はなるべく取っておきたいところです。

たとえば、ふだん「好き」とか「愛してる」と言わない男が、浮気がバレて彼女に怒られているときに、「愛してる」と言えば、非常に効果が高いでしょう。

しかし、いつも言葉を安売りしている(常に金融緩和している)と、いざというときに使える言葉が残っていないので大変です。

金利を下げると景気は良くなりますが、金利はゼロより下げられないので、いざというときのために利下げのオプションは残しておきたいのです。

参考バックナンバー:『週刊金融日記 第51号 愛の言葉と金融政策』

よって、誕生日だからといって無理をせずに、ちょっと美味しいディナーで、そんなに高くないものをプレゼントしておけばいいでしょう。

というのも、ここでのディナーとプレゼントが、次の記念日の彼女の期待値を形成するので、それを安々と下回れなくなるからです。

 

『藤沢数希メールマガジン「週刊金融日記」』

著者:藤沢数希
ブログ「金融日記」の管理人。高度なリスクマネジメントの技法を恋愛に応用した『恋愛工学』の第一人者でもある。『藤沢数希メールマガジン「週刊金融日記」』では、政治、経済、ビジネス、そして恋愛工学について毎週お届けします。

 

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【佐世保バーガー】創業40年!老舗のサクサクバンズは星二つ半

佐世保バーガー食べ歩きで勝手に☆でランキング
●サンドウィッチ&ハンバーガー ロン
 佐世保市大和町843-6

メルマガ『大原さんちの九州ダイナミック』を漫画家の妻・大原由軌子と共同配信しているライターの大原広軌です。佐世保バーガー食べ歩いて勝手に☆で評価する『ボーサセのガーバー』、コーナー連載3回目にして、嫁から泣きが入りました。

「皆さん一生懸命バーガーを作られているのに、それをおいしいだのそうじゃないだのなんて言う資格は私にはない」……。

意訳すると、「ヨゴレはお前が引き受けろ」ということだと思いますので、今号より大原広軌が引き継ぐこととなりました。よろしくお願いいたします。

とある土曜日、1円でも安いガソリンスタンドを探そうと燃料を無駄に消費しつつ車を走らせていると、片側1車線のそう広くない通り沿いにあのキャラクターが!

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「サンドウィッチ&ハンバーガー ロン」とあります。小学生時代に何も知らずにタマネギの入ったハンバーグを与えてしまい、それから体調を崩してしまった近所の犬と同じ名前というところが気になると言えば気になりますが、1973年から40年以上も営業を続けているというその歴史に敬意を表し、いただいてみることにしました。

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アメリカンテイスト溢れる店内には、テイクアウト用の箱に書かれた芸能人のサインがこれ見よがしに飾られています。

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16年前、単行本デビューを控えていた時にティッシュの箱に練習した自分のサインもこっそり紛れ込ませようかとも思いましたが、後々笑いものになるのもアレなのでやめておきました。

カウンターにはハングルのメニューも置かれてます。

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どうやら定番はレタスベーコンチーズエッグの「ロンバーガー」らしいのですが、Sサイズもあるとのこと。子どもたちにはそれで充分かなと思い、カウンターの向こう側で黙々と卵を仕分けしている50歳くらいの男性に、「Sサイズっていうのはどれくらいの大きさなんですか?」と聞いてみるも返事ナシ。

あれ? と思った私の心中を察したのか、キッチン奥でレタスをちぎっていた男性の母親と思しき80歳は超えているであろう老女が「Sサイズはもの凄くちっさかですよ。ピンポン玉ぐらいですけん」とフォロー。

なるほど。ここで私が“なるほど”と思ったのは、Sサイズの大きさがピンポン玉大、ということではありません。「なるほど、ちょっとアレな我が子の面倒を見るために40年前にお店をオープンし、その息子は中学校を卒業してから厨房でずっと卵を仕分けしたり食器を洗ったりしているんだな…」という意味の“なるほど”です。

そんな親子が作るバーガーが万が一まずかった場合、それをそのまま伝えてもいいものなのだろうか。それは人道に悖(もと)る行為と受け取られてしまうのではないか……。

しかし、佐世保バーガーナビゲーターとしては、情にほだされた評価を垂れ流すわけにはいきません。ここは真実を伝えなければ、と思い、ロンバーガーのMサイズ(500円)を家族4人分注文。そして待つこと10分ほど。

「ロンバーガーお待ちのお客様、お待たせしました。お代お先によろしいですか?」

なんだよ息子、まったく普通に話せるじゃねえか。

アレ疑惑がかかっていた彼ですが、この時点で一般的な成人男性だと判明。どうやら先ほどはこちらの質問が聞こえていなかったようです。これで心置きなく味を採点できます。

で、こちらがロンバーガー。

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直径12~13センチほどのバンズに具材がはみ出しギリギリな感じでサンドされています。

佐世保バーガーを食べる時に禁物なのは、ためらいの気持ちを持つこと。かぶりつくのに躊躇してしまうと、具は落ちるわソースで手は汚れるわでろくなことになりません。ということでガバッといってみました。

初めての食感です。バンズがオーブンで焼かれているため、ほかのお店では味わえない“サクッ”という食感が非常に新鮮で、それだけでおいしく感じてしまいます。

パティも初めての味だったので思わずお店の男性に聞いてみたところ、ミートローフを使用しているとのこと。ベーコンの味もなかなかです。

そんな具材を引き立てているのが、少々甘目のマヨネーズ。こちらは自家製だと、やはり男性が教えてくださいました。

前回の「笹家」さん同様、子どもたちの食いつきもかなりよく、ロンバーガーの実力がうかがえます。

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というわけで「サンドウィッチ&ハンバーガー ロン」、「笹家」さんと同じく星二つ半(最高点は星三つ)。

まだバーガー巡りを始めて3軒目ですが、今のところこちらは充分人にオススメできるレベルであります。

info:「サンドウィッチ&ハンバーガー ロン」HP

『大原さんちの九州ダイナミック』
著者:大原広軌(おおはら こうき)
1969年、東京生まれ。フリーランスライター、構成作家。代表作は『精神科に行こう!(文春文庫)』。妻は漫画家の大原由軌子。2011年、家族とともに妻の実家がある長崎県佐世保市に移住。現在は夫婦でメルマガを配信しつつ、様々なメディアに寄稿する日々を送っている。

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田村耕太郎

【ビジネス起業】アジアに進出する前に知っておくべき3つの原則

アジアビジネスのアドバイザーの選び方

『田村耕太郎の「シンガポール発 アジアを知れば未来が開ける!」 』
Vol.146(2015/1/13発行号)

年末年始から、アジアでの色んな規模での事業展開についてのアドバイザリーの要請をいくつかいただく。シンガポールにいると内外から色んなお話をいただく。

私は常に3点申し上げている。

1.事業家自身、まずはできるだけアジアを体系立てて学ぶこと
2.その上でアドバイザーを選ぶ目を持つこと
3.アジアでの事業展開は現地パートナー選びが全て

「自分は事業に専念したいので、進出支援はアジアのことが詳しい方に一任したい」という方がいるが、私は敢えて「できるだけご自身でも事前にアジアを勉強してください」とお伝えする。それには理由がある。まずアジアはチャンスだが、リスクも多く、そして多様である。そして自分で初めて勉強してはじめて怪しいアドバイザーを見抜けるようになる。

ASEANだけでも10カ国あり、それらは政治制度も経済発展段階もインフラ整備状況も民族も規模も宗教も全然違う国である。「まずどこに出たいか」は事業家自身が決めるべきだと私は思う。もちろん、そういう相談にも乗るが、相談しようにも、事業家自身がある程度の知識がないといい議論にならない。

このあたりが「エイヤー」の事業家が多く、そういう人を食い物にする自称アドバイザーが多い。事業の内容、会社の強み、競争状態、必要な最低のインフラ、人口規模、経済発展段階、事業パートナー候補等変数も多く、私が知る限り、欧米企業でも「この事業ならいつどこに誰と組んで出るか」について体系立てたシステムを築けている企業はないと思う。ただ、できる限り最新の状況と正確な数字で多様な変数を検討すべきだ。これをやっておけばアドバイザーをテストすることができる。

自分なりに学んでいけば、正しいアドバイザーを選べるようになる。ちゃんと勉強して現地に足を運んでいれば、正しいアドバイザー候補に出会える確率が高まる。そしてアドバイザー候補をちゃんとテストすればいい。最新情勢をアップデートしていて数字で話せ、ちゃんと最低英語もできて、目指す国の有力パートナーと話ができるかどうか? 日本人でも欧米人でもきちんと体系的に勉強していて、経験もあるアドバイザーは、私の知る限り非常に限られている。意外と自分の世界の狭い人脈に頼って、公開情報を適宜集めているくらいの人が多い。

アドバイザーというなら、どの国でどの現地企業のどのレベルと話ができるかはっきり聞いてみればいい。それはアジア新興国での事業展開はいい現地パートナーと出会うかどうかで80%以上決まると思うからだ。相手とどういう形で出会い、どういう組み方になるか? それにどういう形でインパクトを与えられるアドバイザーなのか?

本人が何かの理由で独力でやってみたいならそれでもいいが、よほどのことがない限り、知らない土地での地力展開は避けた方がいいと思う。現地で実績とネットワークがあり、裏から表の事情まで勝手知ったるパートナーがいるかどうかで、成功の確率は天と地ほど違うと思う。成長のスピードも大違いだ。

上記はあくまで初歩の初歩の話である。私自身できるアドバイザリーは色んな意味で非常に限られているので、全部のご相談に乗れるわけではありません。アジアに出る前にアジアをどうやって学ぶか、アドバイザーのバックグラウンドチェックくらいはお問い合わせがあった皆さんにもお伝えしていますが……。

日本人でも欧米人でも上記の初歩の初歩をみたすアドバイザーは非常に限られています。きちんとテストしましょう。英語を話せないとか問題外だと思います。事業家自身の考えが固まってないうちからアドバイザーになりたがる人も要注意かもです。アジアの最新情勢を体系的に常にアップデートしているアドバイザーも非常に限られています。

あくまでも一般論です。

 

『田村耕太郎の「シンガポール発 アジアを知れば未来が開ける!」 』
Vol.146(2015/1/13発行号)

著者/田村耕太郎(前参議院議員)
第一次安倍政権で内閣府大臣政務官(経済財政・金融・地方分権担当)をつとめる。エール大、ハーバード大、ランド研究所にて研究員の経験あり。早稲田大学、慶応大学大学院(在学中にフランス高等経営大学院に単位交換留学)、デューク大学法律大学院、エール大学経済大学院を各修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。日本人政治家で初のハーバードビジネススクールのケース「Politician in Leather Suits」の主人公になる。
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高野孟

【原発の天敵】東京五輪をテコに一気に進む「水素社会」の未来を解説

ビックリするような偏見もまだ……

『高野孟のTHE JOURNAL』Vol.168(2015.01.12号)

昨年12月18日、世界に先駆けて燃料電池車(FCV )「ミライ」を発売したトヨタ自動車は、年明けの5日には、同社が保有する燃料電池関連の約5680件の特許をすべて無償で提供すると発表した。「水素元年」と言われる今年に相応しい大胆な措置で、同社こそが水素カー時代を切り拓く先導役であることを世界にアピールするとともに、他社の参入を促して市場拡大を加速し、部品の高性能化や低コスト化、当面のネックとなっている水素ステーションの普及に拍車をかけようとの狙いがあると見られる。

そうは言っても、世界の自動車メーカーの次世代自動車についての考え方は様々で、国内ではホンダと日産が15~17年度中に水素カーの発売に踏み切るが、三菱自動車はプラグインハイブリッド車(PHV )に、マツダは従来型のガソリン・エンジンやディーゼル・エンジンの性能向上に力を入れているし、また海外では、フォルクスワーゲンがFCV の研究は怠っていないものの当面はPHV と天然ガス車の開発に重点を置いている。トヨタとFCV で提携しているBMW やホンダと組む米GMは2020年頃の発売を目指しており、発売を決して急いでいない。また日産と組む独ダイムラー、米フォードも、2017年に3社同時にFCV を出すだろうが、依然として電気自動車(EV)との両睨みという姿勢である。

トヨタは18年前、ホンダは16年前に、ハイブリッド車(HEV )でも世界の先頭を切ったのだが、HEV はしょせんはガソリン車の燃費を向上させるもので、21世紀後半まで生き残れる技術ではなく、環境規制の最先端を行く米カリフォルニア州の「ゼロ・エミッション・ヴィークル(排気ゼロ車)」規制では、18年以降、PHVを除くHEVは規制対象となる。電気自動車(EV)はゼロ・エミッションに違いないが、充電時間の長さと航続距離の短さが壁で、とてつもなく高性能のバッテリーが開発されない限り普及に限界がある。そこでFCV に車のミライを賭けようというのがトヨタの覚悟である。

●政府、自民党、東京都を動かしたトヨタ

トヨタのミライ発売は、政府が莫大な補助金を用意することなしにはあり得なかった。初年度の販売台数は700台で、1台の価格は700万円、そのうち200万円を政府が補助するので、ユーザーは500万円で手に入る。もっとも、初年度分については、中央官庁、水素社会モデル特区を進めている福岡県や九州大学、水素ステーションの技術で提携する岩谷産業、トヨタグループ内などに填め込み先が決まっていて、一般ユーザーはこの春までに50万円の予約金を払うと同じ条件で来年以降に手に入れることができる。水素カーが売れても、水素ステーションがなければ話にならないが、普通のガソリンスタンドの建設費用が1億円かそれ以下であるのに対して、水素ステーションは今のところ5~6億円かかると言われており、政府としては、従来の水素の輸送や貯蔵についての厳しすぎる規制を見直して建設コストを下げるよう図ると共に、建設費用の半分を補助して、15年には東京、名古屋、大阪、福岡を中心に100カ所、25年までには全国で1000カ所の建設を促すことにしている。これらを中心に、他方のエネファーム(家庭用燃料電池)の普及も含めて、15年度の概算要求で約700億円の水素関連予算が計上されている。

この動きを突き上げているのは、自民党議員100人超が参加する水素議連(FCV を中心とした水素社会実現を促進する研究会)である。小池百合子、福田峰之両衆議院議員が会長、事務局長を務めるこの議連をバックアップしてきたのがトヨタで、ブレーンとしてコンサルタント会社を送り込んで同議連が提言をまとめるのを助け、それを下地にして昨年4月に経産省が策定したエネルギー基本計画に「“水素社会”の実現に向けた取組の加速」の1項を入れさせることに成功し、さらにそれに基づいて2カ月後の6月には、資源エネルギー庁が「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表するよう仕組んだ。これらには、後に述べるように肝心なところで曖昧模糊としている欠陥があるのだが、ともかくも「水素社会の実現」が初めて政府公認の戦略となったのである。

エネルギー基本計画
水素・燃料電池戦略ロードマップ

これと並行して、トヨタは小池を通じて舛添要一都知事に「東京五輪で水素カーを走らせて世界を驚かせよう」と働きかけ、彼をその気にさせることにも成功した。小池が舛添にそれを囁いたのは、2月の都知事選に応援に行った選挙カーの上でのことだったと言われているが、舛添の当選後、3月には豊田章男トヨタ社長がちゃっかりとオリンピック組織委員会副会長に就任している。

こうして、トヨタの強烈な働きかけを背景に、政府・与党と東京都が一体となって、東京五輪を当面の段落として水素社会化を一気に進めようとする構図が出来上がった。トヨタの商魂のなせる業と言えばそれまでだが、私は、他の先進国に先駆けて水素社会を実現することが最大の成長戦略(という言葉は嫌いで成熟戦略と言い換えたいが)であり、また脱原発の決め手であると思っているので、この流れを強く支持する。

●水素はダメだという誤解や偏見も

新聞では日本経済新聞がはっきりと水素社会化を推進する立場の報道をしており、また経済雑誌や科学雑誌も同様の大特集を組んでいる(例えば『週刊ダイヤモンド』14年10月25日号「トヨタを本気にさせた水素革命の真実」、『ニュートン』15年2月号「水素社会の到来」など)。

それに対して、水素なんかダメだという足を引っ張るような論調も散見される。最もレベルの低い反対論は、大前研一の「水素は爆発するから危険だ」「水素を低コストで製造するには原発の夜間電力を使わなければ採算に合わない」といった主張で、これについては本誌14年8月4日号(No.743)で取り上げたので繰り返さない。大前は元々は原子炉の設計が専門で、ゴリゴリの原発推進派だが、総じて水素反対論はその陣営から発せられていることが多いようだ。

狂信的な原発再稼働と海外輸出促進派である葛西敬之=JR東海名誉会長が支配する月刊誌『WEDGE 』15年1月号が「水素に未来はあるか」という特集を組んで、「現状のFCV や水素価格には化石燃料を中心とした社会に優るメリットは見つけられない」という論調を打ち出しているのも、原子力ムラ側からの水素否定論の1つと考えてよい。

一番激しいのは、会員制月刊誌『選択』15年1月号の「欺瞞に満ちた『水素社会元年』」で、

▼水素は天然ガスなどの炭化水素を「改質」して取り出す過程で二酸化炭素を排出するので、「究極のクリーン・エネルギー」という触れ込みは眉唾物である。

▼水素を直接燃焼させる水素エンジンや水素発電なら二酸化炭素は発生しないが、窒素酸化物が排出されることではガソリン車やガス火力発電と変わらない。

▼太陽光や風力など再生可能エネルギーで水を電気分解して水素を製造すればコストはタダ同然だが、日本では再生可能エネは普及途上で水素製造に回せるほどの余剰はない。

▼いまだ実用レベルに達していない未熟な技術を、補助金で無理やり普及させというというのは愚行だ。

──などと罵倒しているが、その論点はほとんど幼稚で、この技術そのものが発展途上であるというのに今の段階だけを取り上げてどうのこうのと言うばかりで、将来のことを何も考えていないという情けないレベルである。

【国際情勢】2015年、岐路に立たされる日本(3)「“憲法改正”は中国の罠である」

『ロシア政治経済ジャーナル』No.1145(2015.01.12号)より
第1回第2回

安倍総理を救った、歴史的大事件

安倍総理を救ったある歴史的大事件」とは? すぐ答えが出た人も多いでしょう。

そう、ロシアによる「クリミア併合」です。

アメリカ側からの論理(つまりプーチンはヒトラーの再来である)は、皆さんご存知ですね。では、ロシア側は、この歴史的事件をどう説明しているのでしょうか?

プーチンの怒りの原因は、2012年2月、ヤヌコビッチ大統領が失脚し、ロシアに亡命したことです。ヤヌコビッチは、民主的選挙で選ばれた大統領であり、なによりも親ロシアでした。

そして、革命によって誕生した親欧米新政権は、クリミア半島のロシア黒海艦隊を追放し、その場所にロシアの宿敵・NATO軍を招きいれる意向を示していた。

これが実現すると、NATO軍がロシアのすぐ隣に駐留するようになる。プーチンは、これが許せなかったのです。要するに、ロシアは「安全保障上の理由」でクリミアを併合した。

野心を挫かれたアメリカは当然反発。日本と欧州を巻き込んで、「ロシア制裁」を強化していくことにしました。

靖国を参拝した安倍総理。クリミアを併合したプーチン。「どっちがアメリカの脅威?」と質問すれば、100人中100人が「プーチンがアメリカの脅威」と答えるでしょう。

アメリカは、日本を「プーチン包囲網」に参加させる必要がある。それで、安倍総理がバイデン副大統領の警告を無視して靖国参拝を行ったことを「許した」のです。

形成される「陣営」

孤立したプーチン・ロシア。しかし、欧米がプロパガンダしているような「世界の孤児」になったわけではありません。

中国は、アメリカの制裁要求を完全無視して、ロシア側につくことにしました。なぜでしょうか?

中国が南シナ海を狙っているのと同じ理由。つまり、中国はロシアの石油・ガスをとても必要としている。(ロシアと中国は陸続きなので、アメリカは石油・ガスの流れを邪魔できない。)さらに、中国は、ロシアの最新兵器も必要としている。

これで、

アメリカ・EU 対 ロシア・中国

という世界の対立軸が鮮明なものとなりました。では、日本はどう動いたのでしょうか?

日本は、もちろんアメリカ側につくことにしました。遠慮がちながら、対ロシア制裁も発動した。

欧米(プラス日本) 対 ロシア・中国

冷静に考えて見ると、これは日本にとってきわめて有利な状況です。中国が何を目指していたのか、思い出してみましょう。

中国が目指していた構図は、

中国・ロシア・韓国・アメリカ 対 日本

です。

しかし、靖国参拝時の反応を見てもわかるように、事実上

中国・ロシア・韓国・アメリカ・欧州 対 日本

になる。なぜかというと、欧州はアメリカと一体化して動くことが多いから。こうなると、日本は1937年の日中戦争時同様、まったく勝ち目のない状態になります。

ところが、実際は、

アメリカ・欧州・日本 対 ロシア・中国

になった。

これで、中国の「反日統一戦線構築」戦略は、ひとまず挫折したのです。

中国の対日戦略は“続行中”

そうはいっても、全ての日本人は、中国の戦略を決して忘れるべきではありません。もう一度、中国の「対日戦略」を復習しておきましょう。

1、日本は「右傾化している」「軍国主義化している」「歴史修正を求めている」と全世界で強力にプロパンガンダする

2、中国、ロシア、韓国、【アメリカ】で【反日統一戦線】を構築し、日本を世界で孤立させる

3、これによって、日米同盟を破壊する

4、日中戦争時、アメリカが日本を助けない状況をつくりだす

5、尖閣、できれば沖縄も奪う

となります。

結局、中国の戦略の要は、「中国、アメリカ、ロシア(当時ソ連)は、一緒に日本をぶちのめした。ところが日本は、ふたたび我々に反逆しようとしている。だから、もう一度一体化して、一緒に日本をぶちのめそう!」です。

ちょうどいいチャンスというか、今年は終戦70年。いわゆる戦勝国の国々では、いろいろな催し物が予定されている。そのたび、「中国、アメリカ、イギリス、ロシア(当時ソ連)は一体化して、ナチスドイツと日本と戦った同志である!!!」と過去を思い出させることができる

そう、終戦70年の2015年は、中国がふたたび「反日統一戦線」を構築する絶好のチャンスなのです。

二つの大問題

しかし、中国が「日本は右傾化している」「軍国主義化している」「歴史を修正しようとしている」と主張するとき、その「根拠」「証拠」が必要になります。それはなんでしょうか?

中国が使っている一つの証拠は、「靖国参拝」です。このプロパガンダが世界でかなり浸透していることは、2013年末の総理参拝で明らかになりました。

今年は、さらに二つの問題に焦点があたりそうです。一つは、「安倍談話」です。

青山繁晴先生は、「総理はわざわざ問題をつくっている」とおっしゃられていますが、私も賛成です。「村山談話」と同じ談話は出せないでしょう。同じ内容なら出す意味がない。

では、たとえば「日本は侵略国ではない」というニュアンスの談話を出せばどうでしょうか? 日本の保守は、「あっぱれ!」と喜ぶことでしょう。私だって、心情的には喜ぶに違いありません。

しかし、すべての言動には、「結果がつづく」ことを考えなければなりません。

プーチンが「クリミア併合」を断行したとき、ロシア国民は大喜びでした。その後「過酷な制裁」を課され、ルーブル暴落とインフレで生活が苦しくなるなどと考えた庶民はいなかったのです。

「保守派を喜ばす安倍談話」の結果はどうでしょうか? そう、中国の主張、「日本は歴史の修正を目指している」の証拠になってしまう。いったい「歴史の修正」とはなんでしょうか?

いままでの歴史観の本質は、

アメリカ・イギリス・ソ連・中国=善  日本=悪

です。

これを安倍総理は、

日本だけ=善  アメリカ・イギリス・ソ連・中国=悪

と「180度ひっくり返したい」ように戦勝国からは見える。

こういう「歴史観修正」は、日本人にはうれしいことではありますが、戦勝国側は決して受け入れられませんし、許さないでしょう。つまり、「安倍談話」は内容次第で、「アメリカ、イギリス、中国、ロシア」を同時に敵にまわす危険性を秘めているのです。

安倍総理は

・支持基盤である保守派の喜ぶ談話を出せば、世界的に孤立し、中国の罠にはまる

・戦勝国を喜ばす談話を出せば、支持基盤である保守派を幻滅させる

という、非常に厳しい状況に自らをおいてしまったのです。それで青山先生は、「自分で問題をつくっている」とおっしゃった。そう、一番いいのは、「安倍談話」を出さないことです。

もう一つの問題は「憲法改正」です。

選挙で大勝した安倍総理は、いよいよ「憲法改正」に意欲を見せはじめました。

皆さんご存知のように、私は「アメリカ製憲法」を「神聖視」していません。心情的には、「アメリカ製憲法はどんどんかえてしまえ!」と思います。それどころか、「日本人自身の手で憲法をつくれ!」とすら思います。

しかし、事実として、憲法改正を一番喜ぶのは習近平です。

日本がアメリカ製憲法を直せば、日米関係はよくなりますか? 悪くなりますか? 日米関係が悪くなれば、中国は尖閣、沖縄をとりやすくなりますか、とりにくくなりますか?

だから、私は、安倍総理が「中国の罠」にはまる、現時点での「憲法改正」に反対です。それで得をするのは、中国と韓国なのですから。

というわけで、中国は今年、「終戦70年」というキーワードを利用して、ふたたび、中国、ロシア、韓国、アメリカによる「反日統一戦線構築」にまい進するという話でした。

日本は、「安倍談話」「憲法改正」など、中国のプロパガンダの正当性を裏づけるような言動について、極力慎重であるべきです。

ここで失敗すれば、日本は中国の罠にはまり、「いつか来た道」を歩みはじめることになります。しかし、ここを見事クリアできれば、日本は安泰でいられるでしょう。

2015年、岐路に立たされる日本(1)
2015年、岐路に立たされる日本(2)

information:
『ロシア政治経済ジャーナル』
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【悲惨】“駅弁大会の甲子園”で駅弁がひとつも売られていない意外な県

駅弁が1つも出品されていない沖縄県と○○県

全国各地のデパートで開催されている「駅弁大会」だが、そのなかでも屈指の規模を誇り、“駅弁大会の甲子園”と称されているのが、今月20日(火)まで新宿・京王百貨店で開催されている「第50回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」。その模様はテレビなどでも取り上げられ、人気の駅弁の前には大行列ができるなど、毎年大いに賑わいを見せる一大イベントだ

そんな全国の有名駅弁が一堂に会する当大会。しかし公式サイトにある販売駅弁のリストをよく見てみると、約300点もの大量の駅弁が並ぶにも関わらず、なぜか1つも駅弁がない都道府県もなかには存在するのだ。

その都道府県とは・・・・・・沖縄県? はい、正解! そもそも沖縄には鉄道が存在しないため駅弁もない、というのは有名な話。なんでもモノレール「ゆいレール」のとある駅で、駅弁が存在するようだが、今回は出品されていない。

実は意外なことに、駅弁が1つも出品されていない都道府県が、沖縄県の他にもうひとつ存在する。それは大分県だ。

京王百貨店の広報担当の方に訊いてみた!

大分県といえば、日豊本線をはじめとした主要路線が通り、九州有数のターミナル駅である大分駅も存在するなど、沖縄県と違って鉄道に縁のない土地ではない。にもかかわらず、駅弁がひとつもないのは、少し意外な話。

どうして大分県の駅弁は、今回ひとつも出品されていないのか。そんな素朴な疑問を、京王百貨店の広報担当者にぶつけてみたところ、「毎回、全国各地の駅弁製造業者に出品のお願いをしているのですが、いろんな事情で条件が合わないこともあります。その結果、今回は大分県の駅弁はゼロになってしまった」(京王百貨店 広報担当者)とのこと。

近年の駅弁業界は、電車のスピードアップ化にくわえ、コンビニやエキナカ施設の拡充によって、苦境に立たされている業者も多いとも聞く。それも今回の“大分の駅弁がない”という状況の、ひとつの遠因となっているのかもしれない。

ちなみに、大分県の駅弁がひとつも売っていないことに関しての、お客様からの問い合わせやクレームに関しては、「現時点で全くない」(京王百貨店 広報担当者)とのことだった。

満たされぬ“大分分”を補給するには?

このように、大分県の駅弁が“ひっそり忘れ去られてる”状況も、特に大きなクレームが発生しているわけでもなく、それどころか大盛況ということであれば、それはそれで何よりな話。

ただ、なかには「大分のものが1つもなくて寂しい・・・」と嘆く、“大分愛”溢れる方もいらっしゃるかもしれない。そんな方は、当大会と同時開催されている「全国うまいもの」で、大分・竹田市の銘菓「荒城の月」は売られているようなので、そちらをゲットすべし。

また先日配信したばかりの、まぐまぐ!のオフィシャルメルマガ『大物産まぐ!』では、タイミングが良いことに“大分大特集”ということで、中津からあげや日田やきそばといった、大分県が誇るご馳走の数々ををどどーんと紹介している。深刻な“大分不足”を、コレでしっかりと補ってみてはいかがだろうか。

Information:
『第50回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会』
『大物産まぐ!』(2015/01/08号)

【アンケート結果】農協改革、約90%の人が『JA全中の権限全廃に賛成』

 農家の保護に厳しい意見があいつぐ

イエスノー自民党が成長戦略のひとつに掲げる農協改革。全国農業協同組合中央会=JA全中が法律に基づいて地域の農協に行っている、会計監査の権限を撤廃する方向で調整していて、通常国会に必要な法案を提出する方針となっています。そこで今回、まぐまぐイエスノー世論で、JA全中の権限撤廃についてアンケートを実施しました。

回答は、YES:「自由競争はメリットが多い!権限全廃に賛成!」NO:「潰れる農家も出てきてしまう!権限全廃に反対!」の2択とし、有効回答数863票中(2015年1月15日時点)、YES:「自由競争はメリットが多い!権限全廃に賛成!」が761票、NO:「潰れる農家も出てきてしまう!権限全廃に反対!」が102票を集め、約90%の人が、JA全中から権限を撤廃したほうがいい、と考えていることが判明した。

約90%の票を集めた「自由競争はメリットが多い!権限全廃に賛成!」では、「既得権益を撤廃すべし」や、「日本の農家をダメにしたのはJA全中だ」といった意見が多くみられました。以下に回答者のコメントを一部抜粋します。

「農、協全中は自分達の既得権守るだけ、殆どの農家も「日本の食糧を守れ」とのタテマエ掲げ、要は補助金目当てとしか思えませんTPPで農家はつぶれると言いますが、過去どれだけ莫大な補助金を貰ってても今の体たらくです。」

「既得権を守っていたら日本農業の未来はない。食料は世界人口が増えてく中で主要な戦略物資になる。生産しない事に金を出すなど論外。農地の私有制を制限して職業の自由化を農家にまで推し進められるようにすべき。農業をやりたい勤め人は多くいる。ここだけ封建的で遅れている。またそれを守ろうとしている利権屋が各政党にいる。」

農業はサービス業。頑張って 国内外消費者の(安全で美味しい物を食べたいという)欲求を満たした農家にはがっちりと儲けてもらいたい(それが若者の農業離れに歯止めをかけ、魅力ある農業への第一歩)。日本の高級米を食べている中国、台湾などの富裕層がさらに美味しく食べるために日本製高価格帯炊飯器を買い求め来日するのは今や日常的な光景」

「全中は農業従事者の最大の寄生虫。早く潰さなければ改革が遅れTPPに間に合わなくなる。反面、地方の農協は、自分たちの給料やボーナスの事を考えるより、地域の特性を生かし、集中生産、ご当地名産などについて、もっと積極的に指導に当たるべきだ。」

そして、102票を集めた「潰れる農家も出てきてしまう!権限全廃に反対!」では、やはり農家が潰れないか心配という意見が多くみられました。以下に一部抜粋します。

「良い事と思うが依存してきた農家も高齢者の農家もある。農協のあり方も含め、いきなりバッサリではなく猶予期間は有ったほうが良い。/ これからは機械化・自動化された野菜工場も増え農協から外れていく。正月の間、水やりを忘れミニトマトと茄子の1/3が枯れてしまった。電子機器などの製造業は楽だが自然と戦う農業は難しい、先祖は農家。」

「コメ作中心にきた農業は、減反など国の施策に振り回されてきた。農家はそんなに強くなったのだろうか。農協にいつまでも権限を与えることが本当に農家のためになるとも思われないが、食の確保は国として、優先的に考えるべきである。すぐ倒れるから芸者と呼ばれるコシヒカリが主流の昨今、さらにコメの値段は下がっている。農は全般的に先を見た施策が必要である。」

 

Information:
ニュース、芸能、恋のお悩み。世の中を「Yes or No?」で斬る投票サイト
『まぐまぐイエスノー世論』

小川和久

【自由の国・フランス】人権尊重主義がテロを引き起こす皮肉

なぜテロリストは見逃されたのか

『NEWSを疑え!』第362号(2015年1月15日号)

フランスのシャルリー・エブド紙に対するテロについて、「当局は容疑者のクアシ兄弟をいったん監視対象者に選んでいながら、テロを防げなかったのはなぜか」という疑問や批判の声が上がっている。

しかし、フランスが「潜在的テロリスト」の監視を抜本的に強化することは、人権を尊重する法治国家であるかぎり、多くを期待できないことは知られてよいことだろう。監視対象者の人数があまりにも多く、自由の身である潜在的テロリストを含む対象者を見失うことは避けられないからだ。

この問題は、フランス人の監視対象者による欧州でのテロが、2012年と14年にもあったことで証明される格好になった。

例えば2012年3月、モハメド・メラが出身地のフランス南西部トゥールーズと近郊のモントーバンで、兵士3人とユダヤ教徒学校の教師・児童4人を射殺した後、警察との銃撃戦で死亡したケースなど典型的だ。

メラについては、フランス国内情報中央局(DCRI)が2009年からスンニ・イスラム過激派(サラフィー・ジハード主義者)との関係を監視していた事実が、テロの5カ月後に公開されることになった。

メラがアフガニスタンとパキスタンへ渡航し、帰国するたびに、DCRIはメラの危険度を「過激化しつつある前科者」(2011年1月)、「特別な監視対象者」(9月)、「直接の脅威」(11月)と格上げしたものの、それでもフランス当局はメラの海外渡航を止めることもしなかった。

2014年5月、フランス人メフディ・ネムーシュがブリュッセルのベルギー・ユダヤ人博物館を銃撃し、職員・参観者4人を射殺した事件は、さらに先進国政府の懸念を裏づけるものとなった。イスラム教徒の多い先進各国は、自国民がシリア内戦に参戦し、帰国後にテロを行なう可能性を懸念してきたが、ネムーシュの事件は初めてのケースとなった。

ネムーシュが強盗罪で服役中にサラフィー・ジハード主義者となったことは、刑務所当局がDCRIに知らせていたが、ネムーシュは2012年末、出所直後にシリアへ向かった。

ネムーシュは2014年3月、ドイツのフランクフルト空港を経由して帰国した。ドイツの税関当局は、ネムーシュがトルコから東南アジアを経由してきたことが不審だと、フランス当局に知らせた。

しかし、フランス当局はネムーシュを監視しなかった。ネムーシュがマルセイユで逮捕されたのは、ブリュッセルから乗ってきた列車が麻薬取締のため捜索された時、テロに使った銃を持っていたからである。

フランス当局がメラとネムーシュを見失った原因は明らかだ。テロ容疑者の起訴の当否を判断する役目の、マルク・トレヴィディク予審判事によると、フランス人サラフィー・ジハード主義者の人数も、経歴の多様性も、インターネット上の宣伝のせいで激増したが、監視要員の数も、逮捕と起訴に必要な証拠の基準も、この変化に追いついていないという(2014年9月3日付ロピニオン紙)。

過激派がさらに多い、中東の一部の国の対策は、モスクを常に盗聴して、テロを称賛する若者を逮捕し、説教と職業訓練と就職あっせんを行なっても改心しない者は釈放しない、というものだ。しかし、「自由の国・フランス」が同じような方法を取り入れることができないことは明らかだ。

なお、文中に登場するDCRIは2014年1月、国内治安総局(DGSI)に再編されている。

 

『NEWSを疑え!』第362号(2015年1月15日号)

著者/小川和久(軍事アナリスト)
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。
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