バハマを襲う史上最強ハリケーンが残した、貧者への警告

海外のメディアのニュースを、日本のマスコミではあまり報じられない切り口で本当はどういう意味で報じられているのか解説する、無料メルマガ『山久瀬洋二 えいごism』。今回は、フロリダ沖合を襲った大型ハリケーンドリアンによるバハマの被害について、その背後にある環境問題・南北問題とともに解説されています。

バハマを襲ったハリケーンが残した、貧者への警告

【ニュース解説】

ハリケーンドリアンがフロリダの沖合にある小さな島国バハマを襲ったのは9月1日のことでした。

バハマといえば、タックスヘブンの楽園というイメージを抱く人が多いでしょう。
実際、ここには世界の富が集まっています。2016年に「バハマ文書」が暴かれ、世界の多くの企業や個人がバハマに架空の会社をつくり、脱税行為をしていたことが公になり、話題になりました。それに象徴されるように、金融業による収入が国の経済の柱となっていることは事実です。また、アメリカに近いことから、バハマは温暖な観光地としても知られたところで、富とレジャーがバハマの大方のイメージになっています。
実際、バハマ経済の65%は観光と金融サービスから産み出されているのです。

そんな人間の欲望の象徴であるかのような島に大型のハリケーンが上陸し、多くの死傷者行方不明者がでたときけば、一体誰が被害にあったのかと思うはずです。実際、富裕層の多く住むバハマの中心部では、ハリケーンのあとも何もなかったかのように人々がマリーンスポーツを楽しみ、金融関係者はそんな施設のあるホテルのレストランで投資や融資について情報を交換しているのです。

しかし、バハマは決して彼らだけの島ではないのです。そこにはカリブ海のもう一つの島国ハイチなどからの移民が多く住んでいます。そして、彼らの生活は決して豊かではありません。バハマも他の裕福な国々と同様に深刻な格差の問題を抱えているのです。

バハマの中心地から飛行機で北にほんのわずか飛べば、アバコ Abaco 諸島に到着します。ハリケーンドリアンで壊滅的な打撃を受けたのは、そこに住むハイチからの貧しい移民たちだったのです。

ここでハイチ系移民について解説します。ニューヨークで車を駐車場などにいれるとき、黒人系の係員同士がフランス語で話をしていることに気付くことがあります。彼らがハイチからの移民です。
ハイチはもともとコロンブスが寄港した島として、スペインの統治下にありました。当時、ハイチでは多くの黒人奴隷が鉱山の開発などに従事していました。その後、スペインの衰退を受けて、1697年にハイチはフランスの植民地となったのです。それがハイチの人々がフランス語を話す背景です。

ハイチはその後独立しますが、政治的経済的な混乱が続き、多くの人々が国を離れました。最近でも、地震やハリケーンなどの被害から立ち直れないまま、人々は貧困に苦しんでいます。
ハイチの隣国ドミニカ共和国では、そんなハイチからの移民への差別が今でも政治問題となっているのです。

バハマにもそんなハイチ系移民のコミュニティがあり、その数は8万人にもなろうかといわれています。人口が40万人にも満たない島国としては、それがいかに大きい数かがわかるはずです。バハマ政府はそうしたハイチ系の人々の中に不法入国者がかなりいるとして、近年強制送還の措置を執行し、近隣で物議をかもしたこともありました。

そんな貧しいハイチ系の人々にとって、毎年9月はリスクの多い月となりました。9月はハリケーンがカリブ海で発達しやすい時期だからです。

前々回に解説したブラジルでの森林火災など、世界は環境汚染に喘いでいます。最近のナショナル・ジオグラフィックの特集では、南極のペンギンまで人類が作り出した汚染によって、その羽毛から水銀が発見されていることが報道されていました。地球の環境汚染が最早危機的な段階になっていると多くの人が警告しているのです。

環境汚染と地球の温暖化の因果関係が云々される中で、明らかにカリブ海でのハリケーンは巨大化してきています。水温が上がり、湿気をもった上昇気流がハリケーンの成長を加速させているのです。

我々は地球の環境の変化は、自然に影響を与え、ホッキョクグマなど多くの種が絶滅の危機に瀕しているという報道をよく耳にします。しかし、弱者は単に動物や植物だけはありません貧困に苦しむ人々が劣悪な住宅に住みそこにハリケーンが上陸すれば当然深刻な被害に見舞われます

今回のバハマでの惨事はその典型的な実例だったのです。
ハリケーンドリアンでの行方不明者は2500人にもなろうかといわれています。しかも、その実態を正確に掴むことはいまだにできずにいるのです。カリブでも際立って豊かな国バハマに不法に移住してきた人々がどれだけいるのか、そしてどれだけの人が実際に把握されているのか、実態はなかなかつかめません。

地球規模で見れば格差は南北問題とされ、アフリカや中南米など南で生まれる貧困がヨーロッパや北米への移民の流れを作り出しそれが社会問題となっているといわれています。一方で、移民の労働力なしには、豊かな国の人々は自らの生活を維持しにくくなっていることも事実です。

日本も決して例外ではありません。また、貧しい移民がハングリー精神をもって豊かな国に溶け込んで、その国の生産性を引き上げてきた事実もアメリカの歴史などをみればわかってきます。しかし、バハマでのハイチ系移民の問題は、そんな豊かな国の中に潜んでいる隠れた「南北問題」を浮き彫りにしたのです。

現在世界の飢餓人口は、8億5千万人とされています。世界の総人口からみればおおよそ9人に1人が飢餓の恐怖に見舞われています。ハイチは、そんな飢餓に苛まれる国の一つです。そして、地球の気候変動が、この飢餓の問題と無関係ではないこともよく指摘されます。貧しい地域は気候変動による飢饉や食料不足の直撃を受けやすいからです。

バハマのビーチでカクテルを楽しむ人々のすぐそばに、そんな飢餓が同居している実態が今の世界の実情なのです。20世紀後半になって、豊かさが世界に浸透し、徐々に飢餓の問題が解決に向かうのではと思われていました。しかし、最近その治癒のペースが大きく失速し、過去へ逆戻りしつつあるという報道もあります。環境問題と南北問題、格差の問題は決して無縁ではなく、日本人にとっても他人事ではないのです。

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格段に強まるお客様との絆。「料理」を使った接客力向上の方法

レストランでの食事の際、テーブル上で料理を仕上げてくれるなどというサービス、盛り上がりますよね。素人目にはスタッフの負担が増えて大変そうに思えますが、お店サイドとしてみれば手間以上に得られるものも大きいようです。今回の無料メルマガ『飲食店経営塾』では飲食店コンサルタントの中西敏弘さんが「一座建立」という考え方を解説しながら、飲食店スタッフとお客様が共に楽しめる場を提供するためのヒントを提示しています。

「一座建立」という言葉をご存知ですか?

一座建立いちざこんりゅう)」という言葉があります。

これは茶道のことばで、意味は、お客様を招く時には、できる限りのことをしてあげようと工夫します。これにより招いた者(亭主)と招かれた客の心が通い合い、気持ちのよい状態が生まれます。これを「一座建立」と言うそうです。

また、この言葉には、場の一体感や充実感を得るために、身分や立場専門性が同一ではない主客がお互いに心尽くしと工夫を怠るべからずという考え方もあります。

招いた主人はもちろん、招かれた客もその場を尊重し、この場にいる瞬間を大事にして、楽しみながらひとつの時間・ひとつの空間を作り上げること、まさに一期一会の価値を生み出すことが一座建立の在り方だそうです。

この言葉を、以前、あるご支援先に紹介しました。そのご支援先は、お客様から「接客がすごくいい店」という評判のお店でした。何が、お客様のこころを一番掴んでいるかというと、サラダやパスタなどの数人で食べ分ける料理を、テーブルのその場でスタッフが必ずシェアするということを行っていたからです。

「もしよろしければ、今、ここで、取り分けちゃいますが、どうされますか?」

という一言をかけ、人数分に取り分けをします。ただ、黙って取り分けるとすごく場の空気が悪くなるので、お客様に好き嫌いはないか、この商品の特徴や由来などを説明し、できるだけお客様とコミュニケーションをとりながら取り分けを行います。

これを“いついかなる時”にも行うので、特に、初めてご来店されたお客様は「そこまでしてくれるのか?」とすごくお店のファンになられる方もいらっしゃいました。

この取り分けをするようになった由来(これは僕が考えたのではなく、そのご支援先の皆で話し合ってそうなったそうです)は、取り分ける必要がある商品があると、一般的に後輩や女性の人が取り分ける役割になります。でも、「うち(そのご支援先の店)に来た時ぐらいそんな気を遣わずにゆっくりと楽しんで欲しい」という思いから始まったそうです。

この考えをもっと深めて、できるだけお客様に気を遣わせないように、ドリンクの伺い、灰皿交換、おしぼり交換、皿のバッシング、取り皿交換も、言われる前に実行したり、お客様の行動をみてすぐに対応できるよう、お客様が求めていることを皆で共有しできるだけさりげなく気遣いをする取り組みをしていました。

そして、その発展版が、「一座建立」。

さらに、“お客様とスタッフも楽しめる空間づくり”ができれば、さらに、お客様に喜んでいただけるのではという思いもあり、僕がこの言葉を紹介しました。

サラダやパスタの取り分けも、すでに、「一座建立」だったのですが、この言葉を伝えることで、より「お客様とともに楽しもう」という考えを掘り下げて、違う取り組みにも生かしていきました。

例えば、テーブル上で料理自体を仕上げること。

繁盛店で、すでにやっているところもありましたが、テーブル上で火であぶって最後の仕上げをしたり、容器を振って最後の仕上げをしたり、プリンのような容器(プッチンプリンのような)を使って豆腐を提供したり、トマトを切り分けたら中から色々なものがでてくるように細工したり、デザートでは、コーヒーをあるものにかけることで中からメインのものがでてくるようにしたり…(言葉では全く楽しさが伝わらないのが悲しいですが…)。

通常はキッチンでやることの最後の工程をお客様のテーブル上で行うことでお客様とのその時間も大切にするようになりました(もちろん、全商品おこなうのではなく、数品だけです)。スタッフ皆が色々な仕掛けを考えて取り組んでくれたおかげで、より、お客様の評判も高まり、それだけでなく、満足度も向上し売上につながったと思います。

今回、この話をご紹介したのは、接客力をあげようとすると、どうしても「接遇」や「活気」、また、サプライズなどに走りがちです。でも、私たちは飲食店なので「料理を使った接客向上の方法もあるということ。お客様との接点での料理の仕上げや会話をするだけで、すごくお客様との印象が変わるということです。

今は、人不足で、できるだけ機会に頼ろうとする店が増えるだけに、「人で勝負したいお店は、こんな取り組みをすれば、お客様満足度がさらに高まるのではないでしょうか?

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韓国を襲う完全なる孤立。GSOMIA破棄とボルトン補佐官解任の余波

9月11日、トランプ大統領が自身の政権を支えてきたボルトン国家安全保障担当大統領補佐官を解任し、世界を驚かせました。これによって、イラン情勢、北朝鮮情勢の変化への期待と不安が囁かれていますが、元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんは、一歩進んだ見方をメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で示しています。それは、韓国及び朝鮮半島の国際的孤立が進むとの見方です。さて、どういうことなのでしょうか?

韓国を襲う完全なる孤立:ボルトン氏解任の余波?

9月11日、驚くべきニュースが飛び込んできました。アメリカ・トランプ政権のタカ派路線を支えてきたともいえるボルトン国家安全保障担当大統領補佐官が突然解任されました。

それもまた、トランプ大統領お馴染みのTwitterでの更迭だったようです。これまでにも更迭・解任は多数ありましたが、ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官の“このタイミング”での解任は、荒れ狂う国際情勢に対して大きな影響・変化を与えそうです。

その最大の矛先は、イラン問題や北朝鮮問題ではなく、実は韓国をめぐる国際情勢ではないかと考えています。それはなぜか。カギはボルトン補佐官解任で対話の機運が高まると予想される北朝鮮情勢の行方と日韓のGSOMIAの破棄の行方です。

対イランの強硬姿勢と並び、ボルトン補佐官は北朝鮮に対しても強硬姿勢を崩すべきではないとの主張を行ってきました。様々な分析によると、シンガポールでの第2回米朝首脳会談が何も決まらずに物別れに終わったのは、国家安全保障担当大統領補佐官であったボルトン氏が、最後までトランプ大統領に対して、強硬姿勢を崩すべきではないとの助言を行ったことが最大の理由ではないかという、半ばスケープゴートにも思える、意見が強いようです。

実際には、北朝鮮側がアメリカの出方を見誤ったことと、両国とも、事務レベルでの調整を徹底せず、トップ間のやり取りに賭けて、具体的なディールを話し合い、クリエイティブな解決策を見つけ出すための準備ができていなかったことが主因だと考えますが、ボルトン氏を更迭するにあたり、責任を押し付けた形になりました。トランプ大統領の特徴ともいえますが、これにより、彼の周りからはどんどん優秀な“味方”が去ることになります。

北朝鮮サイドとしては、以前より、ボルトン氏の存在が、deal makingを難しくしていると考え、何度も米朝協議に関与させないようにアメリカに要求してきましたので、今回の解任劇は、両国間の対話への機運を高めるかもしれません。少なくとも“心理的には”ですが。

しかし、もし米朝間の対話ムードが高まり、二国間で直接的にdeal makingが進展するとどうなるか。確実に『仲介者気取り』の文大統領と韓国は“邪魔者”として、両国から遠ざけられることになるでしょう。実際に北朝鮮からは、昨今、非常に辛辣な言葉が韓国に浴びせかけられていますし、南北首脳会談で何度も“約束”したはずの金正恩氏のソウル訪問も、無期限に延期されたままです。

文大統領は何一つ北朝鮮のメッセンジャーとしての役割を果たせておらず、またトランプ大統領の意図についても誤った情報を金正恩氏に伝えたとして、「同胞でありながら、最大最悪の裏切り者」と文大統領と韓国政府を貶しています。

特に、「南北対話を推進し、共栄の朝鮮半島を作る」と言いながら、米韓軍事演習については一向に止める気配がない韓国に「二枚舌で全く信用できない」と、文大統領と韓国の横っ面を叩き、韓国切りを実行しています。

園児も「所有」を主張。NY在住日本人社長が幼稚園で見たアメリカ

日本の識者がときどき口にする「欧米では」や「アメリカでは」などの先進性を引き合いに出す言葉について違和感を表明するのは、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で、米国の邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんです。個性を伸ばす教育が進んでいるとされるアメリカで、双子の息子と娘を通わせ始めた幼稚園で見た光景を紹介し、いい面があることを否定はしないが、すべてが日本より優れているとも思えないと、もやもやした違和感を伝えています。

うちの子が通う幼稚園に見るアメリカ

たとえば、テレビのコメンテイター。よく「欧米では」って枕詞、聞きませんか。政治であれ、福祉であれ、雇用であれ、「欧米では日本より進んでいて…」とか。なにかあったら、「欧米では」「アメリカではすでに」「ヨーロッパはもう」とか。

物事には、いろんな側面ってあるはずだと思うんです。点ではなく、線でもなく、球体と言えるかもしれない。どの角度から見るのかが重要。日本で「最新の進んでいる世界」の代表として「欧米では」という言葉を聞くたび、「どの点を、というか、どの面を、というか、どの角度からしゃべっているだろう」と思ってしまうのです。

それら見識者の方々が「欧米では、すでに進んでいて」と言いたくなるいちばんの代表的な業界は「教育」ではないでしょうか。もしくは「教育現場」。日本の文部科学省の教育カリキュラムはなんかは、そんな方々にとって格好の的。非難しやすい対象です。

「日本の教育は詰め込み主義ですよね、自力で考えて答えを導き出すようなカリキュラムではなく、とにかく先生が教科書を読んで、それを丸暗記させる。そうなると今の子供達は、今後、肝心な人生という課題に自分で答えを導き出す力がつかないと思うんですよ」みたいなこと、聞いたことありますよね。

でも、そう言ってるその方も、学生時代、日本の教育を受けてきているはず。あなたと同じように、将来、自分で考え、答えを導き出す子供達も、この先今の教育現場から出てくるとは思えないのだろうか。

先日、元貴乃花親方、貴乃花光司さんにインタビューした時のこと、現在、青少年の育成事業に関わっている貴乃花さんは「今の子は…ってセリフは絶対に言っちゃダメなんですよ」と言いました。子供達に触れ合う中で、いちばん気をつけていることが、「今の子は…」というセリフを言わないこと、なのだとか。

「だって、我々が子どもの頃も言われていましたよ、そのセリフ」と彼は笑いました。「恒例行事みたいなもんですよね。結局、同じなんですよ。親の世代も、僕たちの世代も、そして今の子供達の世代も」そういう貴乃花さんを見て、僕が子どもの頃、こんな大人が近くにいたらなぁと思ったのでした。

少し話が逸れましたが、今の子供達に関わらず、日本の教育制度は戦後からそう変わっていない。「欧米」に比べて、今の日本の子供達が特別かわいそうだとは思えません。

…とは言っても。確かに、アメリカの教育は日本に比べて「自分で考え、主張する」という意味では進んでいます。その見識者の方々の言っていること自体は確かに当たっている。

なぜ日本では「インクルーシブ教育」の議論が前に進まないのか?

さまざまな福祉活動に関わるジャーナリストの引地達也さんは、障がい者の教育のあり方について、多くの問題が国民全体に認知されておらず、議論も進まない現状を数多く伝えています。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、どのような障害を持っていても、その地域のすべての子どもが同じ教室で教育を受けられる環境であるべきという「インクルーシブ教育」の議論が進まない背景について解説。政府やメディアが距離を置き全体像でしか語らない状況を変える必要があると述べています。

今こそ「インクルーシブ教育」の議論を進めるべき

「インクルーシブ教育」との言葉は一般にまだまだ馴染みが薄い。障がい者の教育に関わる人には、目指すべき姿として「当たり前」だが、それ以外の世界では全く認識されていない概念でもある。この乖離が日本でインクルーシブが進んでいない現状であり、「インクルーシブ教育」の現在地だ。

政治やメディアの責任も指摘しつつ、このあたりで大きな国民的な議論には出来ないだろうか、と考えている。特に現在、現場で進行しているのは2014年に日本が批准した障害者権利条約に基づく、「インクルーシブ教育」の実現に向けた動きで、すべてを包摂する教育に向けても、「通常学級に障がい者を入れる」という考え方が先行してしまっている感がある。

新しい「インクルーシブ」の概念を統一しなければ、本来のあるべき姿としてのインクルーシブの実現は程遠い。だから議論が必要なのだと思う。このインクルーシブ教育の基本となるインクルージョンが世界的に認知されたのは、1994年。ユネスコがスペイン・サマランカで開催した「特別なニーズ教育に関する世界会議」で採択された「サマランカ宣言」であった。

宣言は「インクルーシブな方向性を持つ学校は、万人のための教育を達成する最も効果的な手段」と明確にすべての人のための教育としてあるべき姿を示したが、この宣言を具体的に検討する態度を日本政府もメディア側もとってこなかったまま、障害者権利条約が採択され、先進国が軒並み批准する中で、日本で条約に対応するための議論が始まることになった。しかし、その動きも民主党政権と文科省、メディアがビジョンを描けないまま、活発化することはなかった。これが2014年までの20年である。

障害者権利条約批准に向けての躓きもあった。民主党政権が2009年12月に障害者権利条約批准に必要な国内法整備に向けて始まったのが、「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革」とされる「障害者制度改革」。内閣総理大臣(発足当時は鳩山由紀夫首相)を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」が設置され、インクルーシブ教育の議論はこの本部に置かれた「障がい者制度改革推進会議」の教育部門の議論から始まった

同会議は2010年1月から2012年7月まで合計38回行われたが、まずは15回を経て第一次意見をとりまとめた、その中で「インクルーシブ教育システム」については「検討を行う」という表現となり、この慎重な言い回しは文科省の消極性を示すものとなった。そして、私が朝日、毎日、読売の3紙を調べる限り、この模様を報じた記事はなかった

文在寅政権の「南北統一思考」の先に見えるバラ色とは真逆の未来

修復の糸口が見えない日韓関係に加え、法相に任命したチョ・グク氏に関係する疑惑など、問題山積みの文在寅政権について、「南北統一思考」の先鋭化が気になると警戒するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、民族統一を果たしたドイツやベトナムとは違う朝鮮半島独自の事情を説明し、どういう形態であれ統一には大きな困難が伴い、その先に待っているのは「地獄」かもしれないと、注意を呼びかけています。

南北統一の先の気になる火種

ギクシャクする日韓関係や自国内の政権基盤を揺るがす問題が多発する中、韓国の文在寅政権の「南北統一思考」が先鋭化している印象があります。

文在寅大統領は、日本統治からの解放を祝う8月15日の「光復節」の式典で、「光復100周年を迎える2045年までには、平和と統一を実現した『ワン・コリア』として世界の中でそびえ立てるよう、(自分の任期中の2022年までに)その基盤をしっかりと整えることを約束する」とぶち上げました。

そして、文在寅大統領の側近でブレーンの立場にある文正仁特別補佐官は9月8日、ロシアの国営タス通信に対して、その「統一へ向けてのロードマップ」にあたる構想を次のように示しました。「韓国と北朝鮮が10~15年の間に欧州連合(EU)のような経済連合を組むことは可能」。

確かに韓国と北朝鮮は、昨年9月の南北首脳会談でも「2032年のオリンピックの共同開催に向けて立候補する」と表明しています。これはすなわち、2032年までに「安全な国家」に生まれ変わった北朝鮮と、連邦とまでは行かないにせよ、共存共栄する方向が生まれている可能性を示唆しています。

この方向は、韓国、北朝鮮との懸案に決着をつけ、良好な関係が実現するのであれば、日本にとっても望ましい道筋ではあります。しかし、文在寅大統領がいう「ワン・コリア」の実現には大きな困難が伴うだろうというのが私の見方です。

東西ドイツの統一は、互いに戦うこともなく、米ソ冷戦の中で分断されたということもあり、両国民から歓迎されましたが、外国人の目ではわからない問題がひそんでいたのです。

統一直前、東西ドイツを歩く機会があったのですが、東ドイツの人々の多くが社会主義体制の中で勤労意欲などの点で「ドイツ人らしさ」を失っており、西ドイツ人から「こいつらはドイツ人じゃなくなったとまで蔑まれているのに驚かされました。

この問題は当然、地域的な経済格差としても影を落とすことになります。東ドイツ人の失業率は高まり、そこに西ドイツに多い外国人労働者の問題がのしかかってきます。仕事を奪われたという被害者意識もあって、移民排斥などを前面に出したネオナチの台頭につながり、深刻な社会問題となっています。

ケガや風邪、生活習慣病の予防に30代からの「筋肉貯金」のススメ

運動不足になりやすい夏の間に筋肉が落ちてしまったカラダは、低体温ぎみになり、免疫力も低下してしまいます。涼しくなったらすぐにカラダを動かして筋肉を取り戻したいところですが、メルマガ『鍼灸師・のぶ先生の「カラダ暦♪」』の著者、のぶ先生によれば、「筋肉貯金」をするためのハードトレーニングは3日に1回でいいそうです。慌てずに徐々に習慣化するようアドバイスしています。

筋肉貯金

【「筋肉貯金」というのがあるらしい】

ネット上の記事を観ていて、ふと「筋肉貯金」という文字に目が止まりました。ひとはある一定の年齢になると、筋肉量が減ります。

成長期から20代くらいまでは、男性も女性も性ホルモンの分泌がよく、自然と代謝が高まり、肥満しにくく一度獲得した筋肉量はある一定までは維持されてきました。

30代ともなると、普段運動習慣のない人は徐々に低下する性ホルモンの分泌や、相対的に減少する筋肉量の低下による低体温や免疫力の低下などで、体力が急に落ちたように感じます。顔の表情筋なども引き締まる力が低下し、たるみやしわが気になり始める頃でもあります。

40代ともなれば、男女ともに始まる更年期の影響で、筋肉量は益々低下。今度はベースになる代謝力が弱いため、運動してもなかなか効果的に筋肉量が増えないばかりか、弱まる関節のため、ちょっとした運動でも関節痛や腰痛などがおこりやすいコンディションになってしまいます。

【寝だめ食いだめはできないが】

よく「寝だめ」「食いだめ」はできない、といいます。栄養補給や睡眠による回復は、体内に蓄積しておくことができないため、毎日ほどよく行わないとかないません。でも、筋肉に関しては運動することで、筋肉量を増やすことは可能です。

また、1日使って増えた筋肉量は、数日休んでも急に減ることはありません。年齢によってはかえって、1日ハードトレーニングをしたら、2日ほど休む習慣があった方がカラダの回復と筋肉量の増強には効果的です。(2週間安静状態が続くと、ガタンッと筋肉量が減ることがあります。ケガなどによる筋肉の安静が必要な期間が長いと、トレーニングした甲斐が無駄になるというわけですね。)

【「筋肉貯金」をするには関節のケア】

体表部の運動に関する筋肉をまんべんなく活躍させることで、代謝や運動パフォーマンスが高まるため、ケガや風邪、生活習慣病の予防に役立ちます。

また、メンタル面も丈夫になり、自分に自信をとりもどすこともできるので、適度な運動習慣やスポーツへの積極的な取り組みは、自らの若々しさを保つ上で、とても手軽で効果的な取り組みとなります。

ただ、筋肉にばかりこだわりを持って、運動を支える関節への負担を顧みることを忘れてしまうと、思わぬケガをして、かえって運動不足の原因になりかねません。10代から20代の一度に大量の筋肉量を貯金できたころに比べると、関節や疲労の回復力を考慮すると、ほどよい身の丈に合った筋肉貯金におさえておくことの方が、長い目で見ると確実で効果的です。

目安は翌日に疲労感が残らないこと。運動し始めは、翌日から数日後にかけて疲労感や筋肉の痛みを感じることがあります。あわてずゆっくり運動習慣や新しい運動を試みて、じっくり長い期間をかけて運動に慣れていくことが必要です。

ある一定程度の運動量をこなせるようになると、急にカラダが楽になり、比較的ハードな運動もこなせるようになることができるので、先々の励みにして様々な運動に取り組む積極性が身につくとよいですね。

暦も秋になり、徐々に気温が穏やかになると、運動が急に恋しくなることがあるかもしれません。そんなカラダの欲求にこたえられる準備を、今からはじめられるとよいですね。

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口喧嘩じゃない。弁護士が伝授、自分の主張を相手に判らせる方法

利害が対立する交渉場面では、なんとかして自分の主張を相手に認めさせることばかりに考えが向きがちですが、むしろ「相手の声に耳を傾けるのが大切」とするのは現役弁護士の谷原誠さん。谷原さんは無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』で、生産的な議論に役立つ相互理解の重要性についてわかりやすく解説しています。

自分を抑える勇気

こんにちは。弁護士の谷原誠です。

議論したり、口喧嘩したり、交渉したりするときに、人は、「どうしたら自分の言うことをわかってくれるだろう」、などと考えます

自分は自分の考えが正しいと信じていますので、「自分の考えが正しいはずだから、相手が自分の考えを理解してくれたら、同じ考えになるはずだ」、などと考えます。そのために、何とかして、自分の言いたいことを全部相手に伝えようとします。

しかし、多くの場合に望む結果は得られません。なぜなら、相手も同じように、自分の考えが正しいのだから、自分の考えを全部理解してくれたら、相手は同意してくれるだろうと考えているからです。つまり、2人で議論する場合、2人ともがいかにして自分の考えを相手に伝えようか頭で考えていることになります。

そうすると、どうなるかというと、相手が話してる途中でも、自分の考えと違う場合には、話を遮り、質問し、相手の言葉にすぐ反論し、相手が全て言いきらないうちに相手の会話を終わらせます。その結果、相手の考えを全て理解する前に自分の主張を開始することになります。

しかし、相手も同じことを考えているわけですから、こちらが発言している途中でそれを遮り、質問し、反論することによって、こちらが全部主張を言い切る前に相手の反論が始まることになります。

そして、相手が何か話している最中には、その話を理解しようというよりは、「また、そんなことを言っているのか。じゃあ、次はどう言ったら相手はきちんと理解してくれるのだろう」などと考えていたりします。

そうやって、結局、どちらの言い分も全て相手に伝わらずに議論が進んでいくことになります。これでは、生産的な議論にはならないことは、明らかです。

生産的な議論にするには、自分の主張をしっかり相手に伝えて理解してもらい相手の主張をしっかり聞いて自分が理解した上で議論を構築していく必要があります。

ではどうすればいいかというと、どちらか一方がすべての主張を言い切るまで他方は反論したりせず全てを聞いて理解するということになります。そして、全てを理解したら、反対側の当事者が、相手が全て理解するまで説明を続けることになります。そうすると、お互いが、相手の主張を理解した上で、ではどうすれば良いのか、解決策は何かということを考えることができることになります。

相手がこの原則を身に付けているならば、自分から言いたいことを言うことができるでしょうが、相手がこの原則を身に付けていない場合には、自分の方がまず聞き役に回るということが必要になってきます。この習慣を身に付けるには、自我を抑え、我慢をすることが必要になってきますが、結局はこの方が良い結果が得られると信じて習慣化してみることをお勧めします。

私は、この原則については、利害対立の交渉をうまく進めるためのアプローチとして、平成17年に『思いどおりに他人を動かす交渉・説得の技術』(同文館出版)の中で紹介しました。

その後『7つの習慣』(スティーブン・コヴィー博士)を読んだ時、人間関係のアプローチとして、「理解してから理解されるという原則として紹介されているのを発見し、全く異なるアプローチでも、同じ考え方にいきつくのかと思い、感動した記憶があります。

成功法則に関する本が、だいたい同じ内容が書いているのも、特に真似をしているわけではなく、どんなアプローチをとってもだいたい同じ原則にたどり着く、ということなのではないか、と思った次第です。

私の新刊です。

人生を変える「質問力」の教え』(WAVE出版)

法律相談は、こちらから。

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今日は、ここまで。

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