皇族でただ一人「朝敵」の汚名を着せられた、輪王寺宮能久法親王の強い“思い”

江戸城無血開城と聞くと、みなさんは誰を思い浮かべるでしょうか。今回のメルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ」』では時代小説の名手として知られる作家の早見俊さんが、西郷隆盛、勝海舟、篤姫以外のとある人物のエピソードを紹介しています。

朝敵となった親王

江戸城無血開城と聞くと多くの人は西郷隆盛と勝海舟を思い浮かべるでしょう。官軍と賊軍とされた幕府を代表した西郷と勝によって江戸を戦火から救った偉業とイメージされています。幕末に興味のある方なら、西郷と勝の会談の前に山岡鉄舟が西郷を訪ねて談判していたとか、天璋院篤姫も西郷に使者を送ったというエピソードを思われるかもしれません。

ですが、輪王寺宮能久法親王の名を挙げる人は稀ではないでしょうか。輪王寺宮とは徳川将軍家の菩提寺東叡山寛永寺の貫主であり徳川家康を祀る日光山東照宮の山主、更には比叡山延暦寺の山主(天台座主)です。後水尾天皇の第三皇子守澄法親王が就任して以来、皇子またが貫主、山主を務め、「輪王寺宮」と尊称されてきました。

能久法親王は1847年伏見宮邦家親王の第九皇子として誕生し、翌年孝明天皇の父仁孝天皇の猶子となります。ちなみに明治天皇の叔父に当たります。1858年、数え十二歳で勅命にとり輪王寺宮の後継者に任ぜられました。次いで1864年の十二月、親王の位の第一等を授けられ、1867年五月に東叡山寛永寺に入りました。

幕末、官軍が江戸に迫る最中、東叡山寛永寺の山主となっていたのが輪王寺宮能久法親王だったのです。宮は明治になって北白川家を継ぎ北白川能久となられました。

では、宮が何故、どのように無血開城に関わったのでしょう。そして、無血開城に関わったがために皇族でただ一人の朝敵の汚名を着ることになります。

朝敵となった親王の激動の人生は最後の将軍徳川慶喜が寛永寺、大慈院で蟄居した時に始まりました。この年の正月、鳥羽伏見の戦いに敗れ、大坂城から脱出した慶喜は幕府艦隊の軍艦開陽丸で江戸に戻ります。薩長を主力とした討幕軍は官軍の証である錦の御旗を掲げ、慶喜を朝敵として東征軍を編成しました。

不思議な肖像画を持つドリアン・グレイのお話が人生の参考になる理由

心理学の「ドリアン・グレイ効果」をご存じですか? 今回のメルマガ『セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術』では、著者で現役精神科医のゆうきゆう先生が紹介しているのは、その効果の原典である「ドリアン・グレイの肖像」という小説の内容とその効果自体についてです。

笑うと幸せになる!ドリアン・グレイ効果とは

こんにちは、ゆうきゆうです。

元気でお過ごしでしょうか?

さて、皆さんは「ドリアン・グレイの肖像」というお話をご存じですか?

これはオスカー・ワイルドという作家の、1890年に発刊された古い小説です。

今回はこの作品を踏まえ、人の「表情」についてお話しします。

■ 美しい男の恐ろしい話

イギリスに、ドリアン・グレイという美青年がいました。

ある日、バジルという絵描きがドリアンの肖像画を描いてあげます。

ドリアンは完成した肖像画を見ながら、自分の今後の人生について考えます。

「楽しく明るくとにかく遊んで、好き勝手に生きていくことこそが良い」

と彼は思いました。

そして今は美しい自分も、いつか老いていくことを感じ

「自分自身は老いず、この肖像画の方が老いていけば良いのに」

とつぶやきます。

その後、彼は奔放な人生を送りました。

たとえば女優の婚約者ができましたが、女優として落ちぶれてしまったので、ドリアンは彼女を捨ててしまいます。

彼はまさに、自分の本能の赴くままに好き勝手に生きて行くのです。

そして遊び呆け、多くの人を傷つける生き方をしていきます。

するとドリアンが皆にヒドいことをする度に、彼に代わって肖像画がどんどん醜く老いていきます。

ところが不思議なことに、ドリアン自身は全く老いません。

その後、ドリアンは人を殺してしまったり、アヘンや麻薬にハマってしまったり、捨てた女優の弟がドリアンを殺そうとしてきたり、様々なことが起こります。

このように周りとのトラブルが絶えず、彼はとても後悔をします。

最終的にドリアンはおじいさんくらいの年齢となりますが、見た目はやはり若いままです。

そして肖像画は、すっかり醜い老人の姿になっていました。

彼は肖像画を見て

「これは自分の良心の象徴だったんだ」

と気づきます。

彼は肖像画を壊そうと、絵にナイフを突き立てます。

するとドリアンのいる部屋から、叫び声が上がりました。

周りの人が驚いて見に行ってみると…。

肖像画は、「美しく若いドリアンの姿」に変わっていました。

そして…。

その肖像画の前で、ドリアンが死んでいたのです。

そう。

醜い老人の姿になって…。

横浜駅徒歩1分の立地でも昭和を変えない「珍味好き」が集まる店

豚の頭や舌などの部位を食べながら「やかん」から焼酎を注いで飲む。都会にありながらも、そんな雰囲気の昭和な居酒屋が今日もにぎわっています。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者、佐藤きよあきさんが、その人気の秘密を探ります。

高度成長期の安酒場、いまも健在!豚の珍味で焼酎を飲る

そこは、まるで高度成長期の酒場。

仕事を終えた労働者たちが、安い酒を飲み、語り、笑う場所。

まさに昭和前期の光景を現代でも見ることができます。

都市開発の進む、横浜駅徒歩1分という場所にありながら、古き良き時代を守っているのか、はたまた、取り残されたのか。

歴史のある飲み屋街の中でも、このお店は少し特殊で、ある種のマニアたちが集まっています。

お店の名は、「豚の味珍(まいちん)」。

店頭に掲げたメニューには、「豚の頭」「舌」「足」「胃」「尾」の文字と写真が。

豚本体の肉は扱っていません。

まだ豚肉の高かった時代に、安い部位を美味しく食べられるよう調理して、安く提供していたのでしょう。

その名残りのままに、現代まで続いてきたのです。

これらの部位を丁寧に下処理したのち、醤油ベースの秘伝の和風ダレでじっくり煮込んでいます。

2日間掛けて仕上げているそうです。

長時間煮ることで脂を煮出し、臭みを取り除いているのです。

なので、やわらかく、奥深い味わいのみが残っています。

そのままでも充分に美味しいのですが、お客さまは、ねりがらしを酢で溶いて、少量の醤油を足したものにつけて食べます。

これが、このお店の正統な食べ方です。

好みで、ラー油やおろしニンニクを足したりします。

激シブな昭和的食べ方です。

これをアテに、中国の酒器らしき、通称「やかん」から注がれた焼酎をストレートで飲ります。

いまどき、焼酎をストレートで飲む人も少ないのですが、それがこのお店のスタイルなのです。

この焼酎に、カウンターに置かれた「梅シロップ」を入れるのも定番です。

アテは他にも、「辣白菜(ラーパーサイ)」と言われる白菜の甘酢漬けや「腐乳(フニュウ)」と言われる発酵豆腐、「皮蛋(ピータン)」「くらげサラダ」「牛すじ」「牛もつ煮込み」「馬刺し」など、なかなかクセの強いものばかりが揃っています。

これほど、マニアックとも言える料理で、お客さまを魅了しているお店はあまり存在しません。

どちらかと言えば、敬遠されやすいタイプです。

しかし、多くの常連さんに愛され、いつも賑わっています。

お店は昭和のまま。提供するものも昭和のまま。

スタイルを変えることなく、昔のままに営業を続けていることが、長く生き残っている要因なのです。

時代の流れなど、関係なし。若者の求めるものなど、完全に無視。

これが当店。当店の売りはこれ。やるべきことを続けるのみ。

頑固一徹ではなく、お店を愛してくれるお客さまを大切にしているだけです。

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TSMC熊本 半導体バブルの盲点。日本大復活にあと1つ足りぬピースとは?白亜の工場が本邦経済の墓標となる恐れも

「我が国の半導体産業の栄光と凋落、その過程で味わった屈辱を思うと、私にはTSMC熊本工場が日本経済の墓標に見えてならない」と述懐するのは、メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』著者で米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんは「TSMCの新工場が、我が国半導体産業の反転攻勢の契機となる可能性はゼロではない」としながらも、日本が本当の復活を遂げるには失われた30年の敗因分析が欠かせないと指摘。岸田総理が第1工場の開所式に寄せたコメントには「漆黒の絶望しか感じない」とした上で、今後の課題を俯瞰的に解説しています。

TSMC熊本工場は、日本経済の希望か墓標か

半導体の受託製造(OEM)メーカー台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が2月24日、熊本県菊陽町に建設していた工場の開所式を行いました。TSMCは、この第1工場に続いて、第2工場の建設も決定。熊本は、その経済効果に湧いていると言われています。

ですが、私はこの白亜の工場が、日本経済の墓標に見えてなりません。

日本の半導体産業のかつての栄光とその凋落、凋落の過程で見せた様々な悪戦苦闘と判断ミスの数々、そして悲惨とも言える現状。そうした負の歴史と現状を思うとき、どう考えてもこのピカピカの新築の巨大工場は墓標です。

もちろん、日本の半導体産業の将来はゼロだとは言えません。また今回の新工場がその反転攻勢の契機となる可能性もゼロではありません。

ですが、仮に今後の日本の半導体産業が、そして日本経済が攻勢に転ずるのだとしたら、やはりこの30年の日本経済の迷走と、敗北に次ぐ敗北の歴史を正視して、そこから修正を行うしかないのです。

その意味で、今回の開所式にあたっての政治家の発言には漆黒の絶望しか感じません。

岸田総理は「TSMC社の世界戦略の中に日本が重要な拠点として、しっかりと位置づけられることを歓迎します。2号棟についても支援を決定しました」と開所式に寄せたビデオメッセージで述べたそうです。その支援についてですが、日本政府はTSMCに対して補助金として1兆2千億円を投入するそうです。

「日本の屈辱」の象徴としてのTSMC熊本第1工場

では、なぜこのTSMCの白亜の工場が日本経済の屈辱の歴史の象徴なのか、2つの工場に分けて考えてみましょう。

まず今回、開所式が行われた「第1工場」ですが、これは最先端の半導体を製造する工場ではありません。チップの中にどれだけ多くのトランジスタなどを詰め込むかという「集積度」は大きくなく、つまりは半導体として旧世代に属します。

また、その多くは汎用品、つまり発注主が細かく設計仕様を指定してくるのではなく、あらかじめ多くのニーズに応じることができるように設計されたものです。

こうした旧世代の汎用品は、その多くが自動車に搭載されるマイコン用です。この分野では、数年前までは日本は世界をリードしてきました。リードするというと、格好良すぎるのですが、とにかく世界ではトップのシェアを維持していたのです。

そんな中で、東日本大震災による工場被災などで、日本での汎用半導体の生産に色々な問題が出るようになっていました。世界的な半導体不足とか、そのために起きた新車の供給不足といった問題はこのためでした。

実は、日本の汎用品メーカー(ルネサスなど)はシェアは獲得していたものの、決して経営状態は良くありませんでした。

これは、力関係として買い手、つまり発注をする自動車メーカーのほうが強く、半導体メーカーとしては価格交渉などで屈辱的な状態に置かれていたからでした。

シェアがトップで、ほぼ独占状態にありながら、どうして価格で強気に出ることができないのかというと、それは半導体メーカーの株を自動車メーカーや、自動車の部品メーカーが握っていたからでした。

それだけではなく、自動車産業は半導体メーカーに役員を送り込んでおり、経営陣の多くは自動車産業の出身だったのです。

株を握られ役員まで送り込まれていては、強気の価格交渉などできるわけがありません。テクノロジーは旧世代の汎用品ということもあり、自動車産業はこうした半導体メーカーを下請け、コストダウンの対象としか見ていませんでした。

そもそも頑張っても付加価値にならないのですから、これではイノベーションが進むはずはありません。

問題は勿論分かっており、現在では経産省も後押しする形で、こうした日の丸半導体メーカーは、もっと高度な仕事にシフトするように動いています。

岸田総理は化学物質PFASをご存じない? TSMC熊本工場に地下水汚染と健康被害リスク…数年後「想定外」マジ勘弁な

台湾の半導体製造大手TSMCが熊本県菊陽町に建設した第1工場の開所式にビデオメッセージを寄せた岸田総理。「半導体はデジタル化や脱炭素化の実現に不可欠なキーテクノロジー」であるとして、今後建設される第2工場とあわせて1.2兆円の補助金を投入すると説明しました。これに関して、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんは、「工場誘致に税金を使うこと自体は悪くない」としながらも「ちゃんとした条件交渉をできているかどうか心配」と指摘。その不安の一例として、工場周辺で危惧される化学物質「PFAS」による地下水汚染や健康被害のリスクを挙げています。(メルマガ『週刊 Life is beautiful』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題「PFAS汚染問題」

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

岸田総理も大はしゃぎのTSMC熊本工場に「2つの懸念」

日本政府が5000億円近い補助金を提供することにより誘致に成功した、TSMCの熊本工場ですが、それに味をしめたTSMCが第二工場の建設を計画しているそうです。経済産業省は、9000億円規模の補助金による支援を検討しているそうです。

半導体工場の誘致に税金を使うことそのものは悪くないと思いますが、ちゃんとした条件交渉を国ができているかどうかがとても心配になります。日本の政治家は、しばしば「結論ありき」で物事を進めるため、「誘致すること」が前提で官僚が交渉をしたところで、良い条件が引き出せるわけがありません。

そんな中で、最近になって浮上してきたのが、地下水の問題です。

熊本は、日本の中でも珍しく綺麗な地下水が豊富な地域で、地域の住居・農場・工場に提供されている上水道の水源は、その地下水です。

半導体工場は、大量の水を使うことが知られていますが、今頃になって、これが地下水に与える影響を心配する声が聞かれるようになりました。

懸念事項は二つあります。

一つ目は、半導体工場が大量の水を使うことにより、地下水が枯れてしまうのではないか、という心配です。私のような素人から見ても、「そんなことは工場を誘致する前にちゃんと調べておけよ!」と言いたくなります。

半導体工場がどのくらい水を使うかは前もって分かっているのですから、いわゆる「環境アセスメント」の段階で、地下水が十分にあるかどうかは調べておくべきであり、今頃になって「地下水が枯れてしまうかも」と心配するのは馬鹿げた話です。

二つ目は、PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)と呼ばれるフッ素化合物による地下水の汚染です。

PFASは、1940年ごろから普及していった化学物質で、水や油をはじき、熱に強い性質を持つため、消化剤、揮発剤、表面処理剤として、幅広く使われるようおになりました。フライパンに焦げ目がつかないようにするテフロン加工、布地が水を弾くようにするゴアテックス、などが代表的なものです。

PFASは、その性質上、自然界や体内で分解されにくく、一度環境が汚染されてしまうとなかなか消えなかったり、生物の体の中に蓄積されてしまう特徴があり、”Forever Chemicals”と呼ばれています。

その後、PFASの中でも、特にPFOSとPFOAと呼ばれる物質に、血清総コレステロールの増加、抗体反応の低下、がん、出生時体重の減少などのリスクがあることが判明し、製造元による自主規制や、規制当局による製造・使用、輸出入の禁止などが進んでいます。

日本にも及ぶ悪影響。プーチンの停戦案に乗った世界が払わされる代償

国際社会のさまざまな努力も虚しく、開戦から2年を超えてしまったウクライナ戦争。これまでに3万1,000人のウクライナ兵が命を落とし、最新の戦況はロシア有利とも伝えられています。そんな中にあってウクライナに現状での停戦を求める声も各所から上がっていますが、これに異を唱えるのは元国連紛争調停官の島田久仁彦さん。島田さんはメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』で今回、現段階での停戦に反対する理由を解説するとともに、自身が考えるウクライナ戦争解決のシナリオを記しています。

ロシアを国際社会から締め出す。欧米陣営が乗ってはいけない安易な停戦案

予想外に長引く戦争への支援疲れからか、このところ欧米諸国とその仲間たちからウクライナに対して停戦を促す圧力が強まってきています。

しかし、“停戦”は有効な出口と呼べるのでしょうか?

先週号でも触れましたが、ロシアにとっての停戦は、ただ単に武器を置けば戦争はすぐにでも終わりますが、ウクライナにとっての停戦は、これまでのロシアの傾向から見ると、武器を置くことがすなわちウクライナという国家の終焉を意味することになるため、到底受け入れることが出来ない選択肢であることが見えてきます。

【関連】プーチン露が総攻撃へ、敗北確定ウクライナ。西側メディアの「大本営発表」に騙され続けた世界

ゆえに、ウクライナにとっては戦い続けるほか、選択肢はないように思われますが、その継続のためには欧米諸国とその仲間たちからの切れ目ない支援と、ロシアの軍事力を凌駕するほどの対応能力の提供が不可欠になります。

アメリカからの支援が望めない中、EUは500億ドルの追加支援に合意し、それに加えてドイツ(11億ユーロ)とフランス(30億ユーロ)が独自にウクライナへの長期的支援の確約を与えましたが、問題はその実施と提供までに時間が掛かり、もっともはやく提供できると言われているドイツからの砲弾でさえ、早くても今年末頃のデリバリーになるようですので、ウクライナがそこまで持ちこたえることが出来るかです。

これまでのようにNATO支援頼みの戦略では恐らく無理だと思われるため、今、ウクライナも独自に攻撃ドローン兵器の量産と投入に乗り出していますが、反転攻勢当初の大活躍の状況とは異なり、ロシア軍がNATO・ウクライナ軍の予想を超えていち早くGPS誘導弾とドローン兵器への対応が出来るようになり(ジャミング技術の投入など)、ドローンでのロシアへの攻撃が以前に比べて難しくなったと言われています。

この状況を覆すには、ウクライナ軍が制空権を掌握する必要が出てくるのですが、F16の供与・投入が遅れており、兵器と戦略をアップグレードし、精密誘導弾や弾道ミサイルを投入してウクライナ各地のインフラ設備や兵器生産拠点をピンポイントで破壊するロシアの攻撃に晒される結果になっています。

ゆえにゼレンスキー大統領も認めるように、今はまず攻撃よりもウクライナの防衛戦を固めることが必要であり、「これ以上、ロシア軍にウクライナ領を奪われないようにすることが大事」と言えます。

それはまた士気にも大きく関わります。

いつ終わるかわからない戦争と毎日ならない日はない空襲警報による心理ストレスは、国内に厭戦機運を拡げ、前線の士気も下がり続けるばかりであると聞きます。

「踏ん張って戦っても、ロシア軍が待ち伏せしていてやられてしまう。兵力では100倍、弾薬数では10倍以上の差があるロシア軍がじわりじわりとウクライナに浸透してきている。もうウクライナにはそれに対抗できる砲弾も弾薬もない」という嘆きは前線の兵士の間に広がっています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

気遣いを示す人。辛口評論家が明かす大脚本家・山田太一の素顔

『岸辺のアルバム』や『ふぞろいの林檎たち』といった数々の名作テレビドラマの脚本で知られ、23年11月29日に老衰のため89歳で鬼籍に入った山田太一氏。辛口評論家として知られる佐高信さんは、そんなシナリオ界の巨匠と長いつきあいがあったと言います。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では佐高さんが、山田氏とのエピソードを紹介。彼が語った、作品中に「細々とした日常」を描くようになったきっかけや、好きだった俳句を作らなかった理由等を明かしています。

しわのない人生はつまらない。脚本家・山田太一が意表を突かれた一言

ふと手に取った本に2015年秋に山田太一が信州岩波講座で講演した時の一節が引かれていた。演題は「80年を生きて」である。

ある時、山田は画家の木下晋のおばあさんの絵に圧倒された。鉛筆で細密に描かれた目や額や頬のしわがすごい。その後、偶然、木下に会って、「どうしておばあさんばかり描いているんですか」と尋ねた。答えは「しわのない肌なんてつまらない」それに山田は意表を突かれたという。

ものを書く時の支えが、私にとっては、城山三郎と共に山田だった。編集者時代からの長いつきあいだったことにもよる。城山や山田に恥ずかしくないものを書きたいと思ってきた。

本になっただけでも山田との対談は3回分あるが、改めてそれを読み返してみた。最初は何とJR東海のPR詩『ひととき』の1991年夏号掲載である。

そこで山田は、日本の神父がフランスの修道院に行ったらノミがたくさんいたので「こんなにノミがいたら死んじゃう」と言って、「死んじゃ困るのか」と反問された話を紹介している。

そして「そのぐらいの革命的な反問をわれわれはしょっちゅうしていないと駄目だというところがあるんじゃないか」と山田は結んでいる。

『俳句界』の2008年5月号の対談では、山田がズボンに夏と冬の別があることを知らなかったことから入った。母親がいない男世帯で育ったからだという。

「作品で日常の細々としたことを描くようになったのはそのショックからだと思います」

客が来た時に座布団をパッと裏返して出すということも知らなかった。その時、山田は「私は今年74歳になるんですが、周りが実に病人だらけなんです」と言って、次の久保田万太郎の句を引いた。

どこ見ても病人ばかり藤咲ける

何となく俳句の雑誌だからと、そこに話を持っていく気遣いを示す人だった。

今は亡き人と二人や冬籠

この万太郎の句も山田は好きだという。

風花やいつおぼえたる顔みしり

私も万太郎ではこの句が好きだと応じた。

山田のドラマに、次の安住敦の句が出てくる話がある。故郷に帰る話である。

鳥帰るいづこの空もさびしからむに

安住も万太郎の系統の俳人だが、やはり、その系統の能村登四郎の次の句を賀状に引いたことがある。

幾人か敵あるもよし鳥かぶと

「うわあ、すごい句ですね」と感嘆した山田に、俳句はつくらないかと尋ねた。

「深入りすると、定型のために心情も感覚も変えていってしまいそうな感じがして」

句作はしないと山田は言ったが、学生時代の親友、寺山修司の才能に圧倒されたからでもあるらしい。「私は資質としては韻文ではないですね」と山田は言っていた。(文中敬称略)

この記事の著者・佐高信さんのメルマガ

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有田芳生氏が断言。岸田「6月電撃訪朝」を実現させる機運など北朝鮮にはない

昨年夏にも囁かれた岸田首相の電撃訪朝。結局実現することはありませんでしたが、ここに来て『週刊現代』が「6月訪朝」をスクープとして報じました。低下の一途を辿る支持率を向上させる秘策とも伝えられますが、はたして岸田首相は、北朝鮮の地に降り立つことになるのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストの有田芳生さんが、『週刊現代』の記事の誤認箇所を指摘。さらに岸田首相の6月訪朝の可能性について考察しています。

岸田総理の「6月訪朝」はあるのか?

「岸田総理 6月訪朝」「極秘計画すっぱ抜く」「スクープ!」と『週刊現代』が巻頭記事で書いている。いまや週刊誌が売れない時代だ。この「スクープ」がどれほど読まれるかは疑問だ。しかし新聞に大きな広告が出るから、印象だけは広がっていく。もっともいまや紙の新聞も読まれなくなっている。「スクープ」記事を一読して「極秘計画」が「すっぱ抜かれた」内容でないことがわかる。まず致命的な誤認がある。「日朝平壌宣言」(02年)に

『国交正常化の暁には、日本から1兆円規模の経済協力を行うという約束』

があったと書いているが、そんな事実はない。さらに

岸田政権が待望する訪朝を実現させる機運が、北の中枢でも高まっている

とある。そう思い込む理由はある。それは昨年このメルマガで書き、政府が情報漏れを疑って「犯人探し」をした一連の動きである。客観的な事実を経過的に振り返っておく。

岸田文雄政権は北朝鮮拉致問題を安倍晋三政権が「内閣の最重要課題」と位置付けたことを踏襲している。「総理直轄のハイレベル協議」で日朝首脳会談を実現すると公言したのは、2023年5月27日に「家族会」「救う会」などが開催した「国民大集会」だった。その2日後の29日に北朝鮮のパク・サンギル外務次官が談話を発表した。その一節にこうある。

もし、日本が過去に縛られず、変化した国際的流れと時代にふさわしく相手をありのまま認める大局的姿勢で新しい決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が互いに会えない理由がないというのが、共和国政府の立場である。

日本のメディアは「朝日両国が互いに会えない理由がない」という部分を強調した。岸田発言の2日後にコメントを出した異例の早さは、事前の準備があったからだ。それは日本政府と北朝鮮が2023年3月と5月にタイのバンコクで接触をしていた。そこで「総理直轄のハイレベル協議」が提案されていたようだ。それを北朝鮮労働党の組織指導部で検討し、金正恩委員長にも報告され、異例の早さの談話が出された。

2024年元旦に能登半島を大震災が襲った。1月5日、金正恩委員長は岸田総理にお見舞いの電報を送った。

日本で不幸にも年初から地震によって、多くの人命被害と物的な損失を受けた知らせに接し、遺族と被害者に深い同情とお見舞いの意を表す

被災地の人々が1日も早く地震の被害から復旧し、安定した生活を取り戻すことを願っている

これまた異例の対応だった。日本政府へのメッセージだ。

この記事の著者・有田芳生さんのメルマガ

英国での研究事例も。「大成功のイメージ」だけでは“詰んで”しまう納得の理由

「将来〇〇になりたい!」と夢や目標を持つのはいいことのはずですが、「〇〇になって大成功」している姿をイメージしているだけではうまくいかないようです。今回、大目標を成し遂げるコツを教えてくれるのは、『石川和男の『今日、会社がなくなっても食えるビジネスパーソンになるためのメルマガ』』著者で、「5つの仕事を掛け持ちする時間管理の専門家」の石川和男さん。簿記知識ゼロの社会人1年目から税理士試験に合格した経験を例にあげ、確実な成功術を伝えています。

大成功をイメージすると…詰む

大成功をイメージすると詰む。ブラック企業に勤めていた当時の私の最終目標は、税理士になることでした。しかし、最初から税理士試験の勉強をしていたわけではありません。はじめから大きな目標だと、挫折してしまう危険性があるからです。

イギリスのハートフォードシャー大学教授で、プロマジシャンとして活躍していたリチャード・ワイズマン氏は著書『その科学が成功を決める』(木村博江訳/文藝春秋)で「成功する自分をイメージする方法はむしろ逆効果」といったことを言っています。

例えば、学生を2つのグループに分けて、片方のグループには、試験で良い点数を取った最高のシーンを毎日イメージしてもらう。もう一方のグループには、何もイメージしてもらわず、いつものように試験勉強をしてもらいました。その結果、なんとイメージしなかった後者のほうが、点数が高かったのです。

また、ダイエットに参加した女性グループでは、痩せている自分をイメージしながら過ごしたグループより、イメージしなかったグループのほうがダイエットに成功したそうです。さらに就職活動でも、成功イメージを想い描いたグループより、描かないグループのほうがうまくいったという結果になりました。

ワイズマン氏は、原因として次の2つをあげています。

  1. 現実逃避をして、目標を達成しようとする努力を怠ってしまった
  2. 途中で遭遇する挫折に準備しなくなってしまう

ダイエットできた自分をイメージする「だけ」で、食事制限などの努力もせず、美味しいものがあるとつい食べてしまう。就職活動で内定をもらって喜んでいるイメージ「だけ」して、面接の練習もせず、希望している企業を調べもしない。だからこそ、大きすぎる目標をイメージしてしまうと、現実が見えにくくなり対策を怠りがちなので危険なのです。

そのためには、大きな目標を立てるだけでなく、途中途中での小さな目標も複数立てて、これらの小さな目標を達成しながら大きな目標を現実にしていくのです。

目標は小さいほど現実味を帯びやすくなるので、自分の現時点での能力や立ち位置と、目標との乖離が把握しやすくなります。その結果、危機意識を持つようになったり、具体的に何をすればいいのかが見えやすくなったり、何より行動に移す際のハードルも下がります。

そして、挫折もしにくいのです。思ったよりも難しいとなっても、目標が小さければ何とか頑張る気も起きます。さらに、人生で勝利を味わってこなかった場合には、小さな目標を達成することで、勝ち癖をつけることもできます。行動することで成功できるという体験を積むことができます。

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愛知県の「家庭ごみ開封調査」が波紋。全国に波及の恐れ?食品ロス削減名目も「キモすぎ」反感の声9割以上…

SDGsの観点からも注目を集めている食品ロス。しかし「いくらなんでもやり過ぎでは」との声が噴出しているのが、愛知県のこんな取り組みだ。

報道によると愛知県は今年度、回収されたゴミ袋の中から無作為で選んだものを開封し、一般家庭でどれほどの量の食品ロスが発生しているか調査するという。その狙いを「県民の意識を高めてもらう」としているという。27日、中日新聞が伝えた。

【関連】家庭ごみ袋を開封「食品ロス」調査します 愛知県が19年度以来、夏と冬に実施予定

この報道にネット上では上記のような「いくらなんでもやり過ぎ」という声のほか、以下のような書き込みがあふれる事態となっている。

《ゴミみたいな調査だな》

《他にやり方ないのかよ》

《戦時中じゃないんだから》

《ゴミまでチェックされるとかあの国以下だろ》

《とにかく気持ち悪い》

等々、上げればきりがないほどで、そのほとんどが「ゴミ開封に抵抗を示すポストばかりだ。

ゴミから「個人情報やプライバシー」が暴かれる危険性

そもそもゴミ袋の開封を快く思う人間など皆無に等しいと言っても過言ではないだろう。さらにこんな指摘をするのは、サブカルチャーに詳しい50代の男性ライターだ。

「他人のゴミ袋を開けると聞いて真っ先に思い浮かべるのは、“鬼畜系”を名乗って活動していたライターの村崎百郎さんです。ゴミを漁って人のプライバシーを暴くことを『自分の趣味』として売っていて、さまざまな雑誌や書籍でその成果を披露していましたからね。あとこれは村崎さんではないのですが、40年以上前のある雑誌が、当時の国民的アイドルの家から出たゴミを漁って得た内容物を紙面に載せたというケースも記録として残っています」

確かにネット上にも、「プライバシーの侵害だろう」「ストーカーかよ」といった書き込みが多数見られた。

「ゴミは個人情報の宝庫です。漫画の『闇金ウシジマくん』でもカネを持って逃げたターゲットのゴミ袋を確保するシーンが描かれていましたから。“プロ”もゴミに含まれる情報の価値を認めているということですよね」(同前)

今回の愛知県のケースでも、“なにかのはずみ”で個人情報やプライバシーが暴かれ、見られたくないゴミが人目にさらされる危険がないとも言い切れない。

家庭系食品ロスより事業系の方が多いという事実

百歩譲って「ゴミ分別」がきちんとなされているかというチェックなら理解できないこともない、という声も少数ながら存在する。「何でもかんでも一緒に燃やしたら焼却炉が壊れる」「分別無しで焼くと税金注ぎ込んで作った焼却炉に不具合が出るのでは」という意見だ。

しかし、今回の「食品ロス」に関する調査に関しては、やはり否定的な意見が目立つばかりだ。

《役人がやってる感出したいんだろうけどなんか陰湿》

《得られたデータからどういう対策を取るつもりなんだか》

《愛知県の職員は暇なのか?バイト雇うのか?いずれにしてもムダ》

さらにこんな声も多数上がっている。

《家庭より外食とかのほうが食品ロス多いだろそっち調べろ》

《なんで一般家庭なんだ?コンビニはどうなんだよ》

《なぜスーパーとかファストフード店を調査しない?》

スーパーやコンビニといった事業系の方が食品ロスは多く発生しているはず、なぜ一般家庭のゴミを調べるのだ、という意見だ。これについて民放局で情報番組の制作に関わっていた50代のテレビ関係者に聞いた。

「食品ロスについて仕事でいろいろ調べたことがあるのですが、農水省が出した『令和3年度食品ロス推定値』では、家庭系の食品ロスが244万トンだったのに対して事業系は279トンで、事業系が35トンも多かったとしています。さらに値上げもありますし、お値段はそのままでも中身を減らすシュリンクフレーションもあって、家庭に入ってくる食品の量やサイズは減る一方なんですから、貴重な食べ物を捨てまくるような一般家庭はほとんど存在しないんじゃないでしょうか」

政府の無策により爪に火をともすような生活を強いられている庶民は、そう易易と“まだ食べられるもの”を捨てないという指摘は確かに頷ける。

全国に波及?「ごみ袋開封」が愛知以外でも始まる可能性

それでも愛知県が一般家庭のごみ袋の開封にこだわるのはなぜなのか。当方のそんな疑問に40代の男性ネットメディア編集者は以下のように答えてくれた。

「あくまで私見と断っておきますが、もしかしたら戦時中の“隣組”のような相互監視システムを作ろうとしている、という考え方も成り立つと思います」

隣組とは、第二次世界大戦中に各町内会の内部に作られ、ウィキペディアには「同調圧力を通じた思想統制や住民同士の監視の役目を担うこととなった」とある。

さらにこうも言う。

「『愛知、特に名古屋市はネトウヨとも言われる河村たかしさんが市長だからこういう動きが出ているだけで、自分が住んでいる土地は関係ない』といった内容を書き込んでいるネットユーザーもいるようですが、そう思うのはかなり危険です。全国に広がる恐れも十分にありえます」(同前)

いったいどういうことなのだろうか。

「今回の愛知の施策がまったく意味不明かつ役所の自己満足でしかないからこそ、警戒が必要だと思うんです。あまり頭の良くない政治家や役人は、環境問題や食品ロスに関する実績を作れば『自分は役に立っている』と言い張れますから、“ごみ袋開封”を知って、『その手があったか!』と飛びつくのが目に見えています」

日本全国津々浦々、政治家や役人は住民のためにすべきことではなく、「なぜそれを?」と思わざるを得ない施策をさも重要そうに実行しがちだ。かような暴挙を我々は、何としても阻止しなければならない。

「日本一分別が厳しい町」と「かなり緩めな市」との大きな差

上で「百歩譲って『ゴミ分別』がきちんとなされているかというチェックであるならば理解できないこともない、という声もある」としたが、その分別が異常に細かい自治体も存在する。例えば徳島県上勝町では、13種45分類することが求めら得れており、生ゴミは各家庭で堆肥にすることが推奨されているという。さらにゴミ収集車もなく、各自がゴミステーションに持ち込むというシステムだ。

【関連】上勝町のごみ分別

逆に、かなり緩めと言われているのが大阪市。生ゴミも植木鉢も鳥かごもアイロンも同じ袋に入れ、「普通ごみ」として出せるというから驚きだ。

【関連】大阪市 普通ごみ収集

とは言えやはりほとんどの地域では細々とした分別が求められるのが現実。前出のテレビ関係者が冗談めかして言う。

「『焼却炉能力の劇的向上でごみはすべて燃やす』『分別は不要』『SDGs?無視無視』などといった公約を掲げる政治家が出てくれば選挙で台風の目になるかもしれませんし、そんな政策が実現した土地には移住希望者が殺到する、なんてこともあるかもしれませんね」

地球温暖化が喫緊の問題となっている今、そのような政治家が正しいのか否かは有権者が判断することになろう。しかし愛知県の「家庭ごみ開封調査」が全国に波及することは、有権者としては何としてでも避けたいところだ。