米国と中国の対立に利用されるだけの台湾・日本は「明日のウクライナ」か?

NATOから「アジア太平洋パートナー国」として招待を受け、スペインで行われた首脳会合に出席した岸田首相。同会合では「戦略概念」に初めて対中政策を含めるなど、NATOとして中国への牽制姿勢を鮮明にしましたが、日本が米国を追従しその流れに乗り続けることは、はたして国益にかなう選択と言えるのでしょうか。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、日本が米中対立のコマとしてアメリカに利用される可能性を指摘。さらにどちらの大国が勝ちを収めるにせよ我が国が無傷でいられるはずはなく、今まさに日本は歴史の転換点に立たされているとの見方を示しています。

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日本が本当に「明日のウクライナ」にならないために

この1週間を振り返って思うのは、国際情勢がまた大きく動いたということだ。影響を及ぼしたのはドイツで開かれたG7エルマウ・サミット(6月26日から28日)とその直後に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会合。そして二つの会議に対抗するかのように行われたロシアとカスピ海沿岸国との首脳会議だ。

G7とNATO首脳会合の主題がウクライナ問題であったことは疑いない。しかし同床異夢の一面も晒した。アメリカと日本はNATOとアジアの同盟国をまとめ上げ、中国に対抗しようと動いていた。あからさまな対中包囲網形成の動きに、さすがに習近平政権も神経質を尖らせ始めたようだ。

直前(6月23日)にオンライン形式で開催された第14回BRICS首脳会議では、議長を務めた習近平国家主席が講演。「国連を中心とした国際体系と国際法を基礎とした国際秩序を守り、冷戦思考と集団的対立を捨て、一方的制裁と制裁の乱用に反対し、人類運命共同体の『大きなファミリー』によって覇権主義の『小集団』を超越する必要がある」と述べた。

あらためて言うまでもないが、「国連中心」の強調は、世界を対ロ経済制裁に巻き込もうとするアメリカへの批判だ。冷戦思考の「小集団」はNATOを筆頭に日本、アメリカ、オーストラリア、インドの四カ国の枠組み・クワッド(=QUAD)や英豪の新たな安全保障の枠組み・AUKUS。そしてインド太平洋経済枠組み(IPEF)などを指す。

日米が中国排除のために掲げる旗印は反権威主義国家だ。それを意識して習近平は「我々は開放・包摂的、協力・ウィンウィンというBRICS精神」だと強調する。

アメリカが次々に繰り出す仕掛けに、中国が防戦に躍起になっているというのがこれまでの印象だ。NATOの「戦略概念」でも、初めて中国について明記された。包囲網は明らかに一歩ずつ形成されているようだ。

だが、ロシアがウクライナを侵攻した直後に欧州の国々がNATOの重要性を再認識し団結を確認したのをマックスと考えれば、今回のG7からNATO首脳会合までへの流れは、むしろ思惑の違いが浮き立ったとの見方もできるのではないだろうか。

例えば、G7にはインド、南アフリカ、インドネシア、セネガル、アルゼンチンといった国も招かれていたが、彼らがG7との結束に動いたかといえば、決してそうではなかった。ドイツのテレビ局(ZDF)のインタビューに応じた南アフリカのナレディ・パンドール外務大臣は、「ウクライナ問題は10年前からグローバルな議論のテーマでした。しかし我々はこう言った席に一度も招かれていません。だから突然、この問題でこちらの方向性とか別の方向性で、などと言われる筋合いはない」と正論を口にし印象的だった。

G7出席に先立ち、アルゼンチンが「BRICSへの加盟を望んでいる」との情報が駆け巡り、会議に水を差すことになった。

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中国の過酷な受験戦争。なぜ「高考」が人生の成否を左右するのか?

中国人の人生の成否は「高考」で決まると言われています。高考とは、中国の全国統一大学入試のことですが、その仕組みは日本の大学入試とは大きく異なっています。中国出身で日本在住の作家として活動する黄文葦さんは、メルマガ『黄文葦の日中楽話』の中で、高考について詳しく紹介し、なぜその制度が浸透し続けているのかについて語っています。

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「高考」は科挙制度の延長線上にある

6月、中国の「高考」の季節。「高考」とは中国の全国統一大学入試である。その仕組みとしては受験生が統一試験に参加、点数が公開された後、志望校を選ぶ。どんな大学に行けるかは得点で決まる。

一つの点数ですべてを決めるのは合理的ではないけれど。実際に中国は昔から「試験大国」であり続ける。「高考」は科挙制度の延長線上にあると考えられる。科挙(かきょ)とは、中国で598年-1905年、即ち隋から清の時代まで、約1,300年間にわたって行われた官僚登用試験である。

科挙制度は、その創設と発展の両面において、中国史上重要な人材選抜制度として、中国の封建的君主制の発展を示し、支配者が中央集権を強化し、政治的結束を固めるための強力かつ効果的な手段であったといえるだろう。

科挙制度は、古代中国で試験により官吏を選抜する制度である。名声と利益を追求した結果、すべてのものは劣るが、読書だけは優れているという信念が生まれた。学問と科挙を経て、やがて出世し、名声を得ていくのである。

科挙制度は一定の効果を発揮したものの、中国社会の進歩を妨げ、芽生えた資本主義の発展を阻害し、中国の政治、経済、文化の後進性に直結したことは否めない。

科挙の試験内容が現実の社会と著しく乖離していたため、文人は書物の知識のみに関心を持ち、社会の現実や政治・経済の発展を軽視し、さらに封建的な思考や文化、根深い封建的思想の蔓延を促した。

封建時代末期の科挙試験制度は、「四書五経」の追求と模倣に執着し、試験の内容や形式の硬直化は、「勉強オタク」の増加を招き、その後の社会変革に深刻な支障をきたし、人々の心の覚醒を促すことは困難であった。

昔から逃げ場のない貧しい人々が、良い暮らしをするために科挙で好成績を収め、官吏になる夢を叶えるために勉学に励むことが唯一の道であった。試験で他人と差をつけよう、出世しようという考えは今も続いている。

現在の中国の「高考」制度や公務員選抜試験制度は、社会全体で人材を選ぶ科挙制度をある程度参考にしているらしい。

「高考」で良い結果を出し、いい大学に入るために、親はできるだけ子供に様々な塾に通わせ、有名大学に入ることはエリート階級になることと同じである。「高考」の成績優秀者は、科挙と同じように「状元」と呼ばれる。貧しい家庭の子どもたちが、受験でよい結果を出すことで、地元を離れ、貧困から脱出すること。

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勿論、受験でうまくいかず、貧しい生活を続けなければならない学生もたくさんいる。また、家庭の経済的な事情で授業料が払えない、学校を休学せざるを得ない子どもたちもたくさんいる。大学受験は人生の唯一の出口ではないはずだが、貧しい家庭の人にとっては人生の唯一の出口となる。

先進国では最下位。女性候補初の30%超も改善されない日本のジェンダーギャップ

7月10日に投開票を迎える参院選には、過去最多を大きく上回る181人の女性が立候補をしました。全候補者545人に占める女性の割合は33.2%となり、3割を超えたのは初めて。こうした動きの背景にあるのは、男女格差の後進国とも揶揄されるジェンダーギャップです。渋沢栄一の子孫で、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さんは、公表されたジェンダーギャップ指数のデータを紐解きながら、日本の問題点を指摘していきます。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

改善されない日本のジェンダーギャップ

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

世界経済フォーラムは2006年から各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)を発表しています。最新の2021年に公表されたレポートによると日本の総合スコアは0.656で、156か国中120位というかなりの下位でした。この総合スコアは、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等で、1が完全平等を示しています。

ちなみに1位はアイスランド(同0.892)、2位はフィンランド(同0.861)、3位はノルウェー(同0.849)という北欧国でした。人口が少なく、人口密度も日本と異なり、社会、産業、文化の違いがあることが背景にあるかもしれません。

ただ確かに東アジアの総合スコアは低い傾向がありますが、102位の韓国(同0.687)、107位の中国(同0.652)と比べても日本の順位はかなり劣ります。日本の順位は119 位アンゴラ(0.657)と121位シエラレオネ(0.655)の間です。

日本と韓国の社会・文化は同じような男尊女卑的な傾向がありそうですが、当初の2006年に比べ現在の韓国の総合スコアは+0.016と若干改善。しかし日本は同期間で+0.003と改善がほぼ観測できません。

一方、上位のアイスランドの改善(同+0.111)は群を抜き、フィンランド(同+0.065)とノルウェー(同+0.050)も顕著に改善がみられます。(中国は同+0.006)

分類別に検証すると「経済」では、日本のスコアは0.604で117位であり、総合スコアとほぼ同水準です。安倍政権時代に女性活躍が政策方針として設けられ、多くの企業は管理職比率30%を目指す等の目標を掲げました。女性の社外取締役候補は引く手数多で、有望者が集中的に複数の企業の役員を務める事態になっています。こうした状況を背景に、2006年の「経済」スコアの0.545と比べると現在は+0.059改善しています。

しかし、2006年当時の日本の「経済」スコアのランキング83位でした。世界の「経済」分野におけるジェンダーギャップの改善の方が日本よりスピード感があったのです。ちなみに、韓国の「経済」スコアは、0.586の123位であり、2006年は0.481の96位なので、日本の方が勝ります。

しかし、スコアの改善ペースを比べると、このままでは日本が追い越されるのは時間の問題です。「経済」分野で1位は北欧国ではなく、ラオス(0.915)です。

一方、日本の「教育」の男女平等スコアは0.983であり、かなり優秀です。ただ、順位は92位に留まります。原因は「教育」スコアが1.00の国々が26か国もあるからです。米国、カナダ、フランスという先進国だけではなくアルゼンチン等も含まれます。英国(0.999)、ドイツ(0.997)、イタリア(0.997)と比べると、実はG7で日本は「教育」の分野で最下位です。

では、「健康」の分野はどうでしょうか。日本のスコアは0.973で65位です。1位のスコアは0.980ですが、ブラジル、ミャンマーなど新興国を含む29か国です。健康における男女不平等であり絶対的水準でないので、医療へのアクセスや平均寿命が日本より低い国であっても、ジェンダーギャップが生じていない国々が最上位に入っているのでしょう。

同じ先進国である米国(同0.970)87位や英国(同0.966)110位と比べると、やはり日本は絶対的な水準でも男女平等性においても健康大国であると誇れます。

このように、日本のジェンダーギャップは「経済」では改善が必要とされ、「教育」はまずまず、「健康」は優秀という実態が見えてきます。

ウクライナのルハンシク州を露軍が制圧。東部戦線異状ありで重大局面。ロシアの“泥棒船”を拿捕したトルコの思惑とは

ロシア国防省は3日、完全掌握を目指しているウクライナ東部2州のうち、ルハンシク州の全域を掌握したと発表した。当初はロシア軍の主張を否定していたウクライナ軍だが、参謀本部は「兵士の命を守るため撤退することを決めた」とし、撤退したことを認めた。ロシア軍が掌握を目指す東部2州の1つが陥落したことで、大きな局面を迎えることになりそうだ。

ロシアがルハンシク州制圧を宣言で重大局面

ルハンシク州の親ロシア派の武装勢力の指導者パセチニク氏は3日、SNSに「われわれの歴史に永遠に刻まれる日だ」などと投稿。ルハンシク州のウクライナ側最後の拠点とされていたリシチャンシクをロシア軍が支配下においたことをアピールした。NHKなどが報じた。

一方、ウクライナ軍の参謀本部は3日のSNSの投稿で、ウクライナ軍が占領地と境界から撤退したことを認めた。ロシア軍に迫撃砲、軍用機、多連装ロケットシステム、弾薬、人員などで優位に立っており、ウクライナ兵の命を守るための決断だったことを記している。

その後、ウクライナのゼレンスキー大統領も動画を投稿し、「敵が火力で勝る地域において前線から兵士を引き揚げることはリシチャンシクにもあてはまる。われわれの戦術と近代的な兵器の供給の増加によって、われわれは戻ってくるだろう」とルハンシクの奪還を目指すとの考えを示した。

戦闘の舞台はドネツク州へ&トルコがロシア船を拿捕

ルハンシク州を制圧後、ロシア軍は隣りのドネツク州への攻撃を本格化するとみられている。

ウクライナメディアによると、ロシア軍によるスラビャンスクに対する3日の砲撃で少なくとも6人が死亡、15人が負傷したとしている。

スラビャンスクのリヤフ市長はSNSで「ここ最近でもっともひどい砲撃だ」と投稿し、市内では約15の火災が発生したようだ。また近接する都市クラマトルスクでも砲撃がありホテルなどが破壊されている。

ロシア軍はルハンシク州に続いて東部2州を早期に完全制圧し、徹底抗戦の姿勢を崩さないウクライナとの停戦交渉を有利に進めたい狙いがあるとみられる。

一方、アメリカ国防総省は1日、ウクライナに対し、新たに8億2000万ドル=約1,100億円の軍事支援を発表。

ホワイトハウスの防衛にも使われていると言われる地対空ミサイルシステム「ナサムズ」2基や、アメリカが既に供与してウクライナが既に実戦使用している高機動ロケット砲システム「ハイマース」の追加砲弾などが含まれている。ウクライナの装備も拡充されつつあり、さらに戦闘が激しさを増す可能性がある。

また、3日にはトルコ税関当局がウクライナのかねてからの要請を受け、ロシアの会社によって運行されていた貨物船を拿捕した。ウクライナ南東部ベルジャンシクから盗んだとされる穀物約4500トンが積み込まれていたという。

ロシアとウクライナに対して中立の立場だったトルコがウクライナ側に味方する行動をとったことで、今後の展開が変わる可能性も出てきた。膠着状態が続いていた戦争に大きな動きがあるかもしれない。

プーチンをクラスメイトに置き換えるとわかるG7参加者の酷い言動

ロシアのプーチン大統領は、いまやメディアの影響もあり、悪魔のようなイメージを持たれています。そして、それを批判してもよい、という空気も流れ始めているようです。メルマガ『石原加受子の実生活に使える「意識の世界」お話』の著者で「自分中心心理学」を提唱する石原加受子さんは、各国を代表するG7の参加者がプーチン大統領をからかうような言動を見せていることに懸念を覚えています。

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上半身裸で乗馬や釣りするプーチンをからかうG7参加者。些細な場面の言動に、真の姿が見える

6月に開催された先進国首脳会議G7で、各国の参加者が、上半身裸で乗馬をしたり魚を釣ったりするプーチンさんをからかった。

「BBC News」より。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2022年6月30日、自分のマッチョなイメージをからかった主要7カ国(G7)首脳について、彼らが上半身裸になったりしたら、それは「気持ちが悪い」と反撃した。さらに、G7首脳はアルコール摂取を控えて、もっとスポーツに励むべきだと応じた。

プーチン氏はかねて、上半身裸で乗馬をしたり魚を釣ったりする様子を国営メディアを通じて流すことが多く、6月26日にG7首脳会議がドイツ南部で始まった際には、ボリス・ジョンソン英首相らが「プーチンよりタフなところを見せつけよう」、「胸筋を見せてやらないと」などと冗談を飛ばしていた。カナダのジャスティン・トルドー首相も、自分たちも「胸を出して乗馬しようか」などと、プーチン氏をからかっていた。

訪問先のトルクメニスタンで報道陣を前にしたプーチン氏は、G7首脳らのこうした発言について質問されると、「ウエストまで脱ぎたかったのか、もっと下まで脱ぎたかったのか知らないが、どちらにしても気持ちが悪い光景のはずだ」と答えた。

さらに大統領は、19世紀のロシアの詩人アレクサンドル・プーシキンを念頭に、「人は賢い人間のまま、自分の爪の美しさに気を配ることもできる」と述べ、「私はこれに賛成だ。1人の人間の中で、心も体も、すべてが調和のとれた形で発達するようにするべきだ。しかし、何もかもが見事に調和するためには、酒の飲みすぎなど悪い習慣をやめて、運動して、スポーツに励む必要がある」と説いた。

「あなた方が話題にした同僚たちを、私は全員、個人的に知っている。お互いの関係において、今は最善の時期ではないので、これは理解できる。しかし、それでも彼らは全員リーダーなので、それぞれ気概の持ち主だということだ。なので、本人がその気になれば、望む改善をもちろん実現できるはずだ」

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ウクライナ戦争を利用する狡猾さ。国際社会の表舞台に復活した国の名前

ウクライナ戦争の停戦協議や北欧2国のNATO加入問題等で、その存在感を一気に高めたトルコ。紛争を巧みに利用した感も否めない中東の大国ですが、何が彼らにここまでの動きを取らせているのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者で元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、国際社会で主役の座を狙うトルコのエルドアン大統領の「魂胆」を解説。さらに各方面から多数寄せられているという、トルコと中国を巡る情報をリークしています。

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ロシアとウクライナをめぐる国際情勢が“復活”させたトルコ

「ここ数年、国際情勢において復活(Come back)を遂げた国を挙げるとしたら、どの国か?」

もしこのように尋ねられたら、皆さんならどの国とお答えになるでしょうか?

私はトルコと答えます。

クルド人勢力をターゲットにした度重なるトルコ・シリア国境付近(シリア北部)への越境攻撃の代償として、欧米諸国から制裁を課せられ、止まる気配がないインフレとトルコ・リラの価値の下落など、深刻な経済的スランプに陥り、“21世紀の経済成長のハブ”の一つとして数えられていた姿は見る影もないほどになっていました。

しかし、ロシア絡みの2つの案件がトルコを再び国際情勢のフロントラインに復帰させるきっかけとなりました。

一つ目は、2020年9月27日に勃発し、11月10日まで続いたナゴルノカラバフ紛争です。

事の仔細については以前書きましたのでここでは省略しますが、ロシアから欧州向けの天然ガスと原油が通るパイプライン2本が通るのがナゴルノカラバフ地方で、ここは地図上ではアゼルバイジャン領とされていますが、1988年以降、アルメニアに実効支配され、その後否決はされているものの、一時はアルメニア人による共和国が設立される直前まで来ました。

2020年の紛争では、これまでの劣勢を覆すために、トルコが同じトルコ系のアゼルバイジャンを全面的に支援し、形式上はナゴルノカラバフを取り返したという構図になっています。

この際、ウクライナ戦争にも投入されたトルコ製のドローン兵器が大きな役割を果たしています(逆にロシアが軍事同盟上、後ろ盾となっていたアルメニアは、ロシア製のドローン兵器が全く使い物にならなかったと言われています)。

この紛争は、トルコが中央アジア・コーカサスに勢力圏を拡大するきっかけを与え、11月10日以降の停戦合意後の平和維持活動にロシアと共に関わることで、国際案件でのフロントラインに戻ってくることにもつながりました。

そして、ドローン兵器の性能をアピールすることで、このあたりからトルコ製の軍備・兵器の売り上げが上がっています。

そして、ナゴルノカラバフ紛争を機に、ロシアとの距離感が近づき、かつロシアに対するトルコの発言力が増したことでしょう。

ロシアとしては裏庭ともいえ、かつ現在進行形のウクライナ戦争でも時折話題に上る中央アジア・コーカサス地域の各国に“他国”の影響が及ぶことを嫌うはずですが、同地域に対して影響力を拡大する中国への牽制、もしくはcounter-forceとしての役割も、トルコに期待したという算段があるのかもしれません。

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幕を開けた新冷戦。欧米日本vsプーチン習近平の時代を日本はどう生き抜くか

ウクライナ戦争を期に結束を高める西側諸国。一方のロシアも中国との関係性を深めるなど、世界の二極化が進行しています。これらの状況を受け、新冷戦時代の構図が従来の「米中の2国対立」から「欧米日本vs.中露の陣営対立」に変化すると読むのは、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、G7サミットやBRICS首脳会議等で発せられたメッセージを取り上げ、両陣営の対立がもはや避けられない状況であることを解説するとともに、我々日本国民が真剣に考えるべき事柄を提示しています。

新冷戦は米中対立ではなく“欧米日本VS中露”の陣営対立

ロシア・ウクライナ戦争が5ヶ月目を迎えた中、昨今の世界情勢を国際政治学者として眺めてくると、新冷戦と呼ばれるものは米中対立ではなく、“欧米日本VS中露対立”の様相を呈してきていると感じる。

6月26日から3日間、ドイツ南部エルマウでG7サミットが開催されたが、そこでG7諸国はロシアと中国へ対抗していく姿勢を改めて鮮明にした。G7諸国はロシアに対して、ロシア産金の輸入禁止など対ロシア制裁の強化で合意した。これまでG7諸国は石油やダイヤモンド、ウオッカ、魚介類などロシアの主力産品の輸入を停止してきたが、金を輸入停止にすることでロシア経済にさらなる打撃を与えるつもりだ。また、G7諸国は中低所得国に向けたインフラ整備に今後5年間で6,000億ドル(約81兆円)の投資していく計画を明らかにした。日本も650億ドル(約8.8兆円)以上を担うことを発表したが、これには中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗していく狙いがあることは間違いない。

近年はトランプ政権下の米国と欧州の亀裂が深まり、トランプ政権下の米国と中国との間で“1対1の経済戦争”が激化したことから、新冷戦と言えば米中対立を指す風潮があった。しかし、バイデン政権が欧州との関係改善を真っ先に進め、新型コロナの真相究明やウイグル人権問題、台湾問題などで欧州や日本と共に中国に対抗していく姿勢を重視するようになり、大国間対立の構図は“欧米VS中国”へ変化していった。そして、ロシア・ウクライナ戦争が生じたことにより“欧米vs.ロシア”の対立も一気に激化し、中国にとってロシアと戦略的共闘で接近する重要性が高まり、結果として“欧米VS中露”のような対立構図が色濃くなった。

そして、岸田政権発足以降、どちらかというとこれまで曖昧だった日本の姿勢はよりクリアーになっている。日米首脳会談だけでなく、頻度が増すクアッド会合や岸田総理のNATO首脳会合参加など、日本のロシアや中国へ対抗する姿勢、意思は内外に強く強調され、これまで以上に欧米と足並みを揃えるようになっている。これまでは中国やロシアとの経済、貿易関係などから、日本は米国と完全歩調を取ってきたわけではないが、岸田政権になって以降、日本の姿勢がクリアーになっているとの見解は内外の専門家からも聞かれる。

値上げラッシュで募る不安。インフレが続くと年金にどんな影響を与えるのか

7月に入り、さまざまな商品やサービスの値上げが相次いでいます。私たちの生活を直撃するインフレ、それは年金にどのような影響を与えるのでしょうか?毎回、年金についての詳しい説明と事例を用いた解説で人気のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』の著者で、年金アドバイザーのhirokiさんは今回、不安な物価上昇について教えてくれます。

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戦後以降の物価上昇の経緯と、将来は一体いくらの年金が貰えれば安心なのかという問い

1.猛烈に物価が上昇した過去。

最近は物価の上昇で生活必需品などの値上げがひっきりなしですね…さすがに困りますね。

日本は平成になってからは経済成長が停滞し、ほとんど物価も賃金も上昇しませんでしたので、もうこれ以上物価が上がる事は考えにくいだろうと思われていました。

僕自身も物価が上がらない事は無いでしょうけど、そんなに影響があるほど上がる事はもはや無いのかなあ…と考えたりもしました。

しかしながら今回突然のロシアの軍事侵攻のせいで一気に世界中が物価上昇に見舞われました。世界の主要な国で戦争のような重大な有事が発生すると、案外簡単に物価上昇が起きるものなんだなと思いました。

そういえば物価の上昇で生活に特に直撃したのは、第二次世界大戦後の昭和20年前半と昭和48年の石油危機の時が有名ですよね。戦後すぐの日本はどこもかしこも焼け野原だったので、供給するモノがほとんどないような状況でした。

モノがないのに戦後に海外から帰ってきたり、戦争終わったから軍人も戻ってきたりしたので、約700万人程の人が増えました。

そんなに人が増えても、供給するモノがあまりにも足りないので猛烈な物価上昇が起きました。人が多いので何かを買いたいという需要は高くなったのに、供給するモノが無いからひたすら物価は上昇しました。物価が200倍ほどになって、ハイパーインフレと呼ばれました。

今じゃ禁止ですけど、日銀引き受けという事をやっていて、つまり日銀にせっせとお札を刷らせていたりもしました。機械的にひたすらお札を刷ってしまったらますますインフレになってしまいます。

例えば、100円で買えていたものが2万円出さないと買えないような状況ですね。貨幣の価値は200分の1になってしまってますね。

物価が上がると貨幣価値が下がってしまうので、それまで老後のためなどに貯めていた積立金はもうほとんど価値を失いました。

厚生年金の積立金もほとんど価値を無くしたので、そこでもう年金廃止論も出たりしました。

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積立金価値を失ってしまったので、昔の人はその時のトラウマがあるのか長期的な積立金や保険などに対しては疑り深い面があります。

久しぶりの夏のイベントは要注意。7年前の台湾大規模火災の教訓

今年の夏は、コロナ禍で中止されていたイベントやお祭りが再開されるケースが多く、久しぶりのレジャーの現場では不慮の事故に細心の注意が必要です。加えて最速の梅雨明けで長い夏となることで、水辺の事故が増えそうです。そんな突然やってきた「真夏」に、7年前の台湾の大型プール施設での火災事故を思い出し振り返るのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、火災が起こった顛末を当時の記事などを元に紹介。多くの人の命を奪い、人生を変えてしまった事故の教訓を伝えています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年6月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【台湾】7年前の悲劇を振り返り、夏の事故に気をつけよう

【空撮写真】かつて賑わった「八仙水上楽園」 火災から7年、物寂しい廃墟に/台湾 – フォーカス台湾

今年の日本は統計開始以来、最も早い梅雨明けとなりました。すでに猛暑日が続いていますが、夏にかけて海やプールの需要が高まることでしょう。台湾でプールと言えば、7年前の6月27日に起こった新北市にあった「八仙水上楽園」の大規模火災を思い出します。

火災の原因は、レジャー施設のイベント会場で行われていたコンサートで、舞台の上から客席に向けてまかれたカラースプレーでした。この粉末のスプレーが何らかのきっかけで引火して、会場に集まっていた600名以上の観客を巻き込んだ大火災となったのです。
台湾のテーマパークで爆発、229人負傷 イベントで粉じん爆発か 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

7年前当時、コンサートやイベントでカラースプレーを撒くのが流行していました。会場が盛り上がるからでしょう。ところが、事故があった当時、撒いたスプレーの量が多かったこと、観客の多くがタバコを吸っていたこと、舞台上の音響機器から火花が出たかもしれない、などと様々な要因からスプレーが発火し、会場の人々に燃え移りました。

会場はプールであり、観客はもちろん泳ぎに来た人々です。そのため水着を着用しており、多くの観客が素肌に直接火を受けて火傷をしました。当時の報道では、現場は「まるで地獄のようだった」そうです。

結果的に、この事故で死者15人、負傷者400人以上という大規模な事故となりました。当時、この事故は国際ニュースとして全世界に流れ、日本からも医療チームが台湾に派遣されたりしました。また、火傷の患者を救うため、日本から人口皮膚が寄贈されたりもしました。
「八仙水上楽園」粉塵爆発事故の負傷者治療用にグンゼから人工皮膚が寄贈 – 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan

死者の中には20歳の若い女性もいました。負傷者には日本人を含む数人の外国人もいました。この事故の責任を問われたのはイベント主催者と八仙水上楽園の経営者でした。イベント主催者は、カラースプレーの危険性を認識しておきながら、観客に注意喚起をしていなかったとのことです。

そして、八仙水上楽園の経営者については、イベントの安全性を精査する義務を怠ったとのことで責任を問われました。これにより、八仙海上楽園は営業停止命令が下され、以来、営業は再開されないままです。
新北の水上遊園地爆発事故、20歳女性が死亡 – ワイズコンサルティング@台湾

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