イケメン陶芸家・水野智路に世界が感動!その少年時代と「練り込み」の秘密

みなさんは「練り込み」という陶芸の技法をご存知ですか? 練り込みとは、色の異なる粘土を練り合わせて模様を作る技法のことで、いわゆる「金太郎あめ」の技法と言えば分かりやすいでしょうか。普段何気なく手に取って使っている食器類も、その技法を知れば、少し見え方が変わってくるかもしれません。今回、まぐまぐ編集部では、練り込み技法の魅力に迫るとともに、現代的な練り込み技法の作風が海外でも話題になっている、陶芸家の水野智路さんにお話を聞きました。

模様が現れた時の驚きと感動が人々を惹きつける、練り込みの世界

練り込みの起源は古く7世紀のエジプトや中国だと言われていますが、現在では「Nerikomi」は、日本の陶芸技法のひとつとして、海外でも広く知られつつあります。

練り込みの技法は、色土を重ね合わせている時点ではその完成形は未知なので、仕上がり時の色合いや模様を想像しながら作業を進めていくしかありません。

いかようにも変形する色土を使った練り込みのデザインは、焼き物の上から絵で描くことに比べれば、とても不確かで手間がかかる技法です。

けれど、色土を地層のように練り合わせることによって成形のなかで色土が動いて変化していき断面によって風合いの違いを作り出します。

いわばその不確かさが練り込みの面白さであり、魅力なのです。

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最終的に自分の想像通りの作品が出来上がった時の喜びがやみつきになり、多くの陶芸家たちが練り込みの世界に魅了されるのだと言います。

今、SNS上で話題となっているのが、親子3代にわたって練り込み陶芸を継承する水野智路(みずの ともろ)さんです。

MAG2 NEWS編集部が水野さんに取材したところによると、この「練り込み技法」での作陶は、水野さんのおじいさんの代から始まり、水野さんのお父さん、水野さんへと継承されていったそうです。

おじいさんとお父さんは、2人とも瀬戸市指定無形文化財保持者。

そんな2人の「師匠」の背中を見ながら、物心ついたときから、「練り込み技法」を目の当たりにする機会があった水野さんはこう話します。

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「父には兄がいますが、今は陶芸をしていません。この技法を父の代でなくすのはもったいないと思いました。現在は、父と同じ工房で背中合わせでそれぞれ作陶しています」。

現在、愛知県瀬戸市にある「水野陶房」で、親子で練り込み技法を使った作品をつくっています。

「父の作品は渋い作品が多く、まさに伝統技法。一方、私は女性や若い方、また小さなお子様まで幅広く日常で使ってもらえるような作品を作りたいと思っています。それが、練り込み技法をもっと知ってもらえるきっかけになると思っているからです」。

自身のInstagramのアカウントでは、さまざまな作品をつくる工程の動画や、出来上がった作品の数々が公開されており、見る人々を魅了し続けています。

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シンブルでさりげない可愛らしさ。

海外からも「日本国外でも輸送販売してほしい」との声が。

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子どもにも人気の動物デザイン。

こんなポップなデザインが、どんな工程を経て作られているのかを知ると、その魅力が増しますよね。

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なんと模様が透けて見えます。

背面を見ただけでは、一体中からどんな模様が飛び出すか、微塵も想像できません。

 

これは感動!

SNS上で作品の写真や動画を公開していくと、国内にとどまらず、海外のファンも一気に増えたそうです。

忘れもしない、2016年722日の朝。

起床後にInstagramを開いでびっくりしたという水野さん。

寝る前までは、約460名ほどのフォロワーの数が、倍以上900人を超えていたというのです。

現在ではフォロワーが1万8千人超え。

「自分にとっては日常の風景だった、練り込みで作った模様をしっぴき(粘土を切る道具)で切り、一枚はがして模様が見える様子を撮り、それを投稿したのがきっかけです。小さい頃から見ていたので当たり前の光景だと思っていましたが、当たり前ではないことないんだと、国内外の反応を見てあらためて気がつきました。動画は言葉が通じなくてもわかってもらえるので、海外の人にもたくさん見てもらえるようになり、とても嬉しいです!」と話します。

「今後も写真や動画で練り込みの魅力を発信し、日本はもちろん、海外の人にも興味を持ってもらえるように、練り込み技法で色々と製作していきたい」。

 

私も焼き物好きな母の影響で、幼い頃から陶器市に足を運んだりしていたおかげで、気づけば自身も焼き物 (特に食器) 集めが趣味のひとつとなっていますが、その器の作法などは、仕上がりを手に取るだけはなかなか想像できないものです。

一言に陶芸と言っても多くの技法があり、職人と呼ばれる人たちが何年もかけて培った技を駆使して、一つ一つ丁寧に作り出す作品は、まさに芸術作品と呼べるでしょう。

そんなことを思いながら、今日食卓に並ぶ食器の数々を眺めてみると、すっかり見慣れた食器たちから、新たな魅力が引き出されるかもしれません。

 

水野智路さんが練り込み作品を作る様子はこちらからご覧になれます!

Image by:  水野智路さんの公式フェイスブック

文/貞賀 三奈美

天国も地獄もない。石田衣良が語る「身近な人の死」の乗り越え方

作家・石田衣良さんが親切にお悩みに答えてくれるメルマガ『石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」』。今回は家族が亡くなったことがトラウマになっているという方からのお便りです。「身近な人の」死という経験は、誰もが一度は通る道。自身もご両親を亡くしている経験をもつ石田さんは、心の中で故人との対話を重ねながら、自然に死と距離を置くことで悲しみを乗り越える方法を説いています。

大切な人を亡くした悲しみを乗り越えるには…?

Question

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私は家族が亡くなって、すごく深い悲しみを抱えたという出来事があります。衣良さん自身、トラウマについてどう考えていますか。あと、家族とか身近な人の死に接したときに、それを乗り越える信念とか信条があったら参考に聞かせてもらいたいです。

石田衣良さんの回答

トラウマっていうのも確かにアドラーが言うように「物語」ではあるよね。そこにこだわることでなんとか自分を保っているっていうことですから。でも、アドラー心理学の話、ぼく『美丘』でちょっと書いたんですけど、その後『嫌われる勇気』ブームが来たので、もうマスコミの取材がうるさいんです。チラッと書いただけなのにさ。ぼく大学時代に勉強しただけなので、もう覚えてないんですよね、アドラーの話。

自己分析をしていた頃はユングやアドラー、フロイトの本はダーッと読んだのですが、正直言ってどれもストーリーです。何かが真実であるというのではなく、「こういういろんな見方があるストーリーがあるね」っていうことですね。そのストーリーによってうまく救われる人もいればいない人もいるということで。

身近な人が亡くなったときって、猛烈にショックなんですけど、距離を置いてだんだんと忘れていく遠くなっていくっていうのがいいと思いますね。ぼくも25歳のときに突然母親が亡くなって、3、4年前に父も亡くなりましたけど。

そういうのを見て、「順番だな」と思いました。直木賞も3回、4回と候補になると、「そろそろ取るよな。順番だな」と思います。結婚も、子どもが生まれるのも、順番です。その中でただ生きている。それに、死ぬこと自体はべつに不幸ではないんですよ。だってぼくたち夜寝る前に、「わあ、気持ちいい。やっぱりお布団最高」っていって寝るじゃないですか。でも寝ている間は意識がまったくない。

死もそうだと思います。世界のいろんな宗教がいうようなことはウソで、天国も地獄もないまま何もないところにスポッと落ちていく。ぼくのイメージでは明かりのついていない階段をゆっくり降りていくっていうのが死ぬことだと思っているんです。それなら、当人は不幸ではないですから、死を理由にあまり自分を苦しめないほうがいいです。

これはよくあることなんですけれど、「自分の悲しみがこれだけ深いそれほど愛していたのだ」っていうのが、自分に対する言い訳だったりするんですよね。でも、生きている間、その人はそんなに素晴らしいだけの人ではなかったはずですよ。なので、心の中で亡くなった人とけんかをしたり仲直りをしたりしながらだんだんと死を遠くに感じていくっていうのが、一番いいのかなと思います。それを向こうも望んでいると思うんですよね。

source: 石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」

image by: Shutterstock

 

石田衣良石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」
著者:石田衣良
本と創作の話、時代や社会の問題、恋や性の謎、プライベートの親密な相談……。
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破綻している年金制度はやめちまえ!で本当に撤廃したらどうなる?

若い世代を中心に、「いっそのこと、なくしてしまえばいい」との声も聞かれる公的年金。確かに年金制度を撤廃すれば私たちの月々の負担額は減るわけですが、それで生活も楽になるのでしょうか。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、年金制度を撤廃した際の「未来」をシミュレーションしてくださいました。

もう年金制度を無くしちゃえ!…って事で年金制度を無くしたら一体どんな問題が待ち受けているのか

最近、現役世代の賃金が下がれば年金もそれに合わせて下げる年金改革法案が可決しました。

聞いてないよ年金改革。結局、年金は今後どうなるのか?プロが解説

こういう年金法改正の話題があがる度に年金は破綻してる!とか、年金なんてやめたほうがいい!とか、もう積立にしたほうがいい!みたいな話題が出たりする。

まず積立ですが、そもそも年金は歴史的には積立方式から始まったものです。それが役割を果たせなくなったから積立方式ではなくなったんです。積立方式はあらかじめ決められた保険料を支払いながら、運用しつつ、老後になったら積立金と運用収入を年金として貰う。まあ、そのほうが公平っていえば公平だからそれが望ましいから積立方式から始まったんです。

でも、インフレでそれもパーになったから、今の年金給付は現役世代が支払う年金保険料をそのまま年金として支払う賦課方式という方法を取っています。だから今は年金保険料だけでなく時々年金積立金の運用収入も年金給付に充てながらだからほぼ賦課方式といった形。それに今みたいな超長寿国になって、いつまで長生きしてしまうかわかんない時代に積立は対応出来ない

また、仮に今、積立方式に戻したとしたら、二重の保険料負担の問題も生じてくる。自分の老後資金の為の保険料を支払いつつ、年金受給者の年金の為の保険料支払いもしなきゃいけなくなる。全然現実的じゃない。

さて、自分の保険料が年金受給者に渡るなんて嫌だ! とか、年金制度はもう役に立たない!って事で仮に年金制度やめちゃったとします。もう国民年金保険料や厚生年金保険料払わなくてよくなりますよね。余計な負担から解放されました。老後の資金は自分で貯めるから何も問題ない! 果たしてそうでしょうか。

結論から言うと年金制度は絶対に守っていかなければいけません。よく言われる、年金制度が破綻したら国も破綻するからとかそんな抽象的な話ではなく。破綻は極端な話、日本人口がすべて高齢者になって、全く保険料支払う人が居なくなり、年金が払われなくなれば破綻と言えます。でもそういう事はあり得ない

で、もし、年金制度を辞めたら負担は軽くなるかというとそんな事はありません。今の年金受給者の人は現役世代の保険料により主に支えられています。でもそれが無くなったら、高齢者は自身の貯蓄と子供等からの仕送りに頼るしかありません。という事は年金制度を無くしたら、現役世代は高齢になった親世代を自ら扶養しなければならなくなります

GDP世界2位でも、未だに石炭に依存せざるを得ない中国の現実

未だエネルギー資源として石炭を大量に消費している中国ですが、炭鉱事故は頻発、石炭に絡む犯罪も後を絶たないと言います。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、どれだけ虚勢を張ろうとも時代遅れの石炭に頼り続ける中国はまだまだ途上国であり、そこから抜け出すためには現在の広すぎる国土を見直し、中国共産党の能力に見合った範囲内で統治していくべきだという厳しい見方を示しています。

【中国】石炭業の奴隷労働が中国を死の国に変える

中国北部でまた炭鉱爆発、32人死亡 週内に2件目

世界でも最も多い石炭の生産量を誇る中国ですが、それだけに炭鉱での事故も並外れて多くあります。上記のニュースは12月4日のもので、内モンゴル自治区で起こった炭鉱事故の記事で、報道によれば死者は32名とあります。

そのほか、ここ数ヶ月で起こった炭鉱事故を以下に列記しましょう。

9月28日
炭鉱のガス爆発で18人死亡、2人不明 中国・寧夏回族自治区

11月1日
中国の炭鉱でまた爆発、15人死亡18人不明

11月11日
違法操業の炭鉱でガス噴出、20人死亡 23人不明 中国雲南省

12月3日
炭鉱爆発で21人死亡、生存者1人の救出活動続く 中国・黒竜江省

報道によれば、中国ではこれでも炭鉱事故は減少の一途を辿っているそうです。そもそもエネルギーとして石炭にこれほど頼っているのは途上国の証です。

電気、ガス、水道といったインフラが整備されていないために石炭に頼るしかない。石炭なら無尽蔵にあり安く手に入ると思っているから、どんどん石炭を消費する。特に冬、寒さが厳しい地域は石炭をどんどん燃やして暖を取るわけです。

この石炭を燃やすことが大気汚染へとつながり、高い建物が乱立する都市部では空気がこもって「まるでガス室」だとさえ表現されています。

これがマーケティングだ。社名より商品名が有名なネスレ日本の戦略

CMでも話題の「ネスカフェアンバサダー」。オフィスで働く人たちに手軽にコーヒーを楽しんでもらえるようにと、ネスレが独自に考案したコーヒーマシンを無料で貸し出すサービスです。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんはこうしたネスレの戦略を、近代マーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラー氏が重要性を提唱する「価値主導のマーケティング」を実践した大成功例であると高く評価しています。

マーケティングの会社と言われる「ネスレ日本」

こんにちは、佐藤昌司です。「ネスレはスイスに本社を置く世界最大級の総合食品飲料企業です。日本にも進出し、「ネスレ日本」として日本法人が存在します。「ネスカフェ」「ネスプレッソ」「キットカット」「ミロ」「モンプチ」といった商品群を展開していることで有名です。

ネスレは企業ブランドよりも商品ブランドの方が一般的には強く認識されています。好ましい商品イメージを消費者に強く印象づけていくことで、消費者の商品に対するロイヤルティを高めていきました

ネスレの商品ブランドは世界中で支持されています。展開する商品カテゴリーの中で、同社商品が「トップシェア」になるようマーケティング戦略を展開していきました。そのマーケティング戦略は卓越しています。同社は「マーケティングの会社」とも言われます。

ネスレは1866年に設立しました。同社は、1930年前後に起こった世界恐慌が尾を引くなか、1937年にスプレードライ法によるインスタントコーヒーを完成させました。1938年に「ネスカフェ」の商品名で市販を開始しています。

日本では1950年代の高度経済成長期初頭にインスタントコーヒーが輸入され始めました。多忙な生活を送る人々の支持を得て広く普及していきました。

インスタントコーヒーを製造するには、スプレードライ法やフリーズドライ法といった専門技術が必要です。こうした技術や製造設備を有する企業は限られていたため、ネスレは高い利益率を確保することができました。

ネスレは長い間レギュラーコーヒー事業には参入しませんでした。なぜかというと、レギュラーコーヒーはロースターでコーヒー豆を焙煎し、ブレンドしてグラインドし、真空パックすれば、簡単に誰でも製造できるため、利益率が低くなってしまうからです。このため、発展途上国ではレギュラーコーヒーよりもインスタントコーヒーの方が、値段が高くなることもありました。

インスタントコーヒーであるネスカフェは、簡単にコーヒーを飲むことができるという手軽さにより、多くの消費者の支持を得ることができました。そして、高い利益率を確保することに成功しました。

日本でのコーヒーの年間消費量は約500億杯とされています。ネスカフェの消費量は約120億杯と言われ、およそ4分の1のシェアを占めています。「インスタントコーヒーと言えばネスカフェ」という不動の地位を確立しました。

EUは解体に向かうのか? 右傾化の波と、理想論が招くポピュリズム

ヨーロッパが変わりつつある。イタリアとオーストリアに続き、来年の3月にはオランダの下院選挙、4~5月にかけてフランスの大統領選挙、そして9月にはドイツの連邦議会選挙が行われるが、国民の投票結果が政治形態そのものを根本から揺るがす起動要因となる様相を呈している。英国EU離脱に続き、次はどの国が共同体から「独立」するのか。「EU解体か?」とまで称されるこの動きは、真実なのか。

イタリアとオーストリアの場合

イタリアでは12月4日に国民投票が行われた。目的は憲法改正の是非を問うためのもので、これまでの二院制を事実上の一院制にするか否かを投票で決めるためだ。EU体制を支持している与党は一院制体制を強く推しているが、逆に二院制を支持する野党はEU離脱を目標に掲げており、後者が圧倒的支持を受ければイタリアのEU離脱が青写真に描かれるというわけだ。事前の世論調査によれば、EU離脱案を推す政党への支持率は40%を上回っていたが、フタを開けたらやはりその通りの結果となった。

奇しくも同日、オーストリアでは大統領選が行われている。選挙を争うのはEU残留を望むリベラル系の「緑の党」のベレン氏と、極右・自由党でEU離脱案支持のホーファー氏である。もしホーファー氏が勝利をおさめれば、EU初の極右国家元首になることから、世論の注目を大いに集めた。昨年以降、オーストリア国民の間には難民問題の解決に悩むEUへの不満が高まっており、「反難民」を謳うホーファー氏への支持が高くなっていたが、結果はベレン氏の勝利に終わった。

解決策がない移民・難民問題

EU離脱案を掲げる党首に賛同する国民が増えた理由は明白だ。EU共同体から「独立」すれば、国民最優先の政治体制が整う。そうなれば、EU諸国が共同で解決すべき「難題」の移民問題にたずさわる義務も失せる。難民受け入れのノルマからも解放される。

ただ、移民・難民排斥や、反グローバリゼーションを叫んだトランプ氏の当選とヨーロッパの政情が連動している、と断定できる素材はどこにもない。ヨーロッパはあくまでもヨーロッパである。脱EUを大義名分として掲げつつ、国民最優先と叫び支持を集めるヨーロッパの政治家たちの思想と、トランプ氏の理想には、基本的に似通った部分があるかもしれない。しかし、ヨーロッパも移民・難民排斥主義にのっとって「トランプ化」する勢いとは、決して言い切れないだろう。

グローバリゼーションの難点

事実上国境がないヨーロッパ大陸では、グローバリゼーションが良い意味でも悪い意味でも、いとも簡単に実現できてしまう土壌があることは確かである。たとえば、安い賃金で長時間働くことが可能な労働者が異国から来たとすれば、当然雇用主は彼らを優先して雇いたがるだろう。しかし、自国民からすれば、「異国から来た労働者に、私たちの貴重な職が奪われた!」ということになる。これが半グローバリゼーション化を扇動する原因になり、ひいてはポピュリズムの台頭だ、というのだ。

しかし、実際のところはどうだろう。筆者が住むオランダの例だが、オランダ人たちが絶対にやりたがらない仕事、たとえば夜間の土木作業や清掃、警備などを、東欧諸国やアフリカなどからやってきた労働者たちが代行しているにすぎない。だが、これをグローバリゼーション化のせいにして、「オランダ人以外の人たちに、仕事を取られた!」と恨み、右寄り思想に傾く中間層・弱者層が増えていることは確かだ。

ヨーロッパの将来は?

事実、オランダでは極右政党が保守層やEU離脱賛成派からこれまでにないほどの支持を集めており、議席獲得数は過去に例を見ないほど多くなっている。来年3月に行われる下院選挙では第一党になるのではないか、と大胆な予想もなされているが、結果はどうなるだろうか。また、来年4~5月にかけ、フランスでは大統領選が行われる。EU残留を望む現職オランド大統領は立候補を断念する考えを表明している。さらに9月にはドイツで連邦議会選挙が行われるが、与党が敗北しナショナリズムが国民の間で巻き起こり、それが政治に響くようなことがあれば、EUの確固たる位置づけすら揺らいでくるだろう。

今後のヨーロッパはどうなるのか。どの国がEUを去るのか。EUは、遅かれ早かれ解体してしまうのか? それとも、やはり相互間で安定を求める人たちの声がEUを守るのか。予測はまだ誰にもできそうにない。

(カオル イナバ)

 

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記事提供:ニュースフィア

 

【書評】暴行、ストーカー、売春…老人たちはなぜ半グレ化するのか

そこに描かれているのは、半グレ化する不良老人の恐るべき実態―。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが今回紹介されているのは、そんな老人たちに迫った渾身のノンフィクション。長寿大国日本に生きる者すべてが読むべき、まさに「必読の書」と言っても過言ではありません。

老人達たちの裏社会 万引き、暴行、ストーカー、売春……他人事ではない長寿社会のリアル
新郷由起・著 宝島社

新郷由起『老人達たちの裏社会 万引き、暴行、ストーカー、売春……他人事ではない長寿社会のリアル』を読む。最近こういった高齢者関係の本をよく読むが、長寿はマイナスの面が多いとつくづく思わされる。半グレ化する不良老人が急増している。老齢者による殺人、暴行、性犯罪などもはや珍しくなくなった。従来の老人像にはあてはまらない「ネオ老人」とも呼ぶべき彼らの言動の裏にあるものは何か。そのエネルギーの源泉はなにか。未曾有の高齢化社会で噴出する諸現象を、著者(女性)は体当たりで取材する。シニアストーカーの凄まじい思い込みと執念に翻弄される恐怖の実体験も。

6章にわたる「ネオ老人」たちの実態は、万引き、ストーカー、暴行・DV、売春、ホームレス、孤立死である。ストーカー加害者の約9割は男性。女性にとってはまさに生命の危機で、勘違いさせる曖昧な態度や優しい言動は文字通り命取りになる。彼らが決まって口にするのは「やり残したことがあった。それは恋愛だ」だという。おぞましい実態。老人は「性のない存在」という認識をあらためなければならない。高齢者の暴行検挙は20年間で45倍になったという。売春、長寿時代に「女の業」はさらに深まる。「いつ発見されるかが大問題」なのが孤立死で、時間が経つにつれて凄まじいことになる。これは避けたい。

日本中から批判殺到。経産省「温泉マーク」変更中止のドタバタ劇

今年に入って、経産省が温泉や案内所などの場所を示す案内表示用のマークの国内規格約70種類の改正を検討すると発表したことをご存知でしょうか? 誰もが知る「温泉マーク」が変更されるとあって、ネット上で大きな話題となり、全国の温泉組合も猛抗議。同じく反対の立場をとるメルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で元『旅行読売』編集長の飯塚玲児さんは、反対の声が多かった「温泉マーク」の変更を断念したとのニュースを受け、机上の空論しかできない経産省へ苦言を呈しています。

温泉マーク、存続へ!当然でしょう?

12月7日のヨミウリオンラインの記事に以下のようなことが載っていた。

案内用図記号の改正を検討する日本工業規格(JIS)の委員会が6日、経済産業省で開かれ、見直しの対象となっていた3本の湯気を記号化した「温泉マーク」について、存続を求める声が相次いだ。 当初方針から一転しておなじみのマークは今後も使い続けられる見通しが強まった。

経産省は7月、温泉マークが国際標準化機構(ISO)の記号と異なり外国人観光客に分かりにくいとして、見直す検討を始めた。 温泉マークは料理店と勘違いされる場合があった。

これに対し、別府(大分県)や由布院(同)といった温泉地の観光業界から「現行マークは幅広く定着している」などとして、反対の声が上がっていた。

経産省は今回の議論をふまえて登録マークの改正案を取りまとめ、来年7月にJIS登録を改正する。

 

存続は当然だと思うし、そもそも、この問題は『温泉批評』の最新号でも取り上げている。 この企画を編集会議で出したのは他ならぬ僕で、今年の7月2日に企画案を出して、7月21日の企画会議で決まったものだ。

そのとき編集長は「変わる、という情報もそうだけど、変えるなというスタンスで記事を」といい、最終的に現在発売中の『温泉批評』での記事につながった。 記事を書いてもらったのは旅行作家でカメラマンの藤井勝彦氏。

僕は写真集めなどで経産省に電話をしたり、温泉マーク発祥の地とされる群馬県磯部温泉の観光担当に連絡したりして、諸々情報を集めていた。

記事掲載前から、この磯部温泉も反対の声を上げたし別府や湯布院も反対の意見書などを提出したりしていた。 ニュースで見ると、おんせん県・大分の反対が変更を覆したみたいになっているが、そうではないと思う。

日本人はみんなこのマークを変えて欲しくなかったのだ。

トランプ・ショックで厚みを増した、米国を分断する高く重い壁

今回の米大統領選のトランプ当選は世界中に多くの衝撃を与えましたが、一方でヒラリーに「デプロラブル」(嘆かわしい人たち)と揶揄され怒っていた人々はトランプの当選を喜び、かつての「強いアメリカ」に戻ることを期待しているようです。なぜ「自由の国・アメリカ」のスローガンでまとまっていた国民に、このような距離が生まれてしまったのでしょうか? 無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の執筆者のひとり、米シアトル在住の英日翻訳家・TOMOZOさんから、現地リポートが届いています。

911以来の衝撃

この数週間、わたしは無関心すぎた。トランプがまさか勝つとは思っていなかった。わたしは間違っていた。もっと関心を寄せなかったこと、もっと行動しなかったことが悔やまれる。今は残念としか言えないことが残念だ。でもこれからは、トランプと彼に投票した人びとに標的にされている人びとを守るために、わたしは全力で働く。これからはもう無関心ではいない

選挙の翌日、シアトル在住の知人の白人女性(30代、弁護士)はフェイスブックにそう書き込んだ。 

超がつくほどのリベラル都市であるシアトルでは、選挙当日までほとんどの人がヒラリーの勝利を確信していただけに、トランプの勝利にとてつもないショックを受けた。大学キャンパスでは選挙結果について話し合いながら泣き出す女子学生も多かった。 

まるで世界大戦の開戦かなにかが宣言されたかのような、1日にしてそれまで当然だと思っていた世界が変わってしまったような衝撃。
まさに、911の同時多発テロ以来の衝撃だった。 

トランプは就任早々に不法移民を一斉に排除すると公約しており、オバマ大統領が実施した、年少時に不法移民として米国に来た学生に一時的な法的権利を与える大統領令も就任早々撤回すると宣言している。友人や知人の身の上を案じる人も多い。 

選挙戦中にトランプが振りまいた暴言に本気で怒り、しかしこんな馬鹿者がまさか本当に大統領になるはずがないと失笑していた西海岸のリベラルな人びとは、自分たちが何よりも大切にしてきたはずの価値観をまったく尊重しようとしないその暴言王と追随者たちに国政のトップが握られてしまったという事実に、心底打ちのめされている。 

選挙後、シアトルでは大人や大学生だけではなく、中高生のデモも行われた。(反対デモはほかの都市のような破壊活動に発展せず、平和的な行進にとどまっている。) 

誤解している人もいるようだが、これはヒラリー支持者のデモではない。多様性の尊重、マイノリティや女性の権利といった、トランプが鼻で笑ってバカにした価値観を自分たちは絶対に守るという意思表明だ。オバマ政権の8年間の間に成人したミレニアル世代にとって、特にその衝撃は大きかったのだと思う。 

とにかく街に出て集まってまだ世界が変わっていないことを確認しなければいられないほど、リベラルな都市の人々は動揺していたのだ。

合成着色料をなくせ。地方スーパー「いちやまマート」のブレない信念

スーパーの安売り競争が激しさを増す中、「健康的な食生活を提案するスーパー」という独自の路線を確立し、支持を集めているローカルスーパーが、山梨県を中心に展開する「いちやまマート」です。「テレビ東京『カンブリア宮殿』(mine)では、放送内容を読むだけで分かるようにテキスト化して配信。なぜ、いちやまマート三科社長はここまで健康にこだわるのでしょうか? そこには商売という枠を超えた「信念」がありました。

減塩に糖質カット……山梨発の健康スーパー

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南アルプスなどの山々に囲まれた山梨県甲府市。ここに熱烈ファンを持つスーパーいちやまマート徳行店がある。店内をのぞくと、各種のミニパン49円、鳥の胸肉は100グラム39円と、かなり大胆な値付けだ。でもこのスーパーの最大の特徴は安さではないという。

店内で目立つのが膨大な量のノボリやポップ。「減塩」と書かれたノボリの下を見てみると、そこには塩分を40%もカットしたあじの干物に、イカの塩辛も塩分50%オフ。血圧を気にしている人には嬉しい品揃えだ。体重が気になる人にもってこいの「糖質カットコーナー」も。ズラリと並んだお弁当はすべて炭水化物などの糖質を抑えて作っているという。カツ丼も糖質4%カットだ。

どうやってカツ丼の糖質をカットしているのか。まず違うのが豚肉を包む衣。普通は小麦のパン粉だが、いちやまは大豆のフレークを使う。これで大幅に糖質を抑えられる。さらにご飯にも秘密が。普通のお米に、ある物を加えているのだ。プルプルした丸い粒はこんにゃく米。割合はお米4に対しこんにゃく米6。これで糖質を抑えながら、美味しいご飯になる。こうして生まれた「カツ煮丼」だが、それでも値段は430円。

「他の商品より手間ひまはかかりますが、お客様の健康のために作っております」と、デリカ部の最上勇紀は言う。

いちやまマートの特徴をひと言で言うなら「健康的な食生活を提案するスーパー。熱烈ファンを抱え、現在、山梨県を中心に13店舗を展開。売上高は232億円(2015年度)。地元では一目置かれたスーパーなのだ。

そんな健康スーパーを作った三科雅嗣には、時間と情熱をかけて作った特別な商品がある。無添加をコンセプトに作ったいちやまマートのプライベートブランド、「美味安心」だ。

未来を担う子供達のために」と書いてあるのは、国産小麦にこだわった、かりんとうやクッキーなどのお菓子類。「美味安心」ブランドはお菓子だけでも60種類以上ある。

パンはグルテンフリーの「コシヒカリパン」。グルテンフリー食品は食材から小麦などを抜いた健康食。米粉だけで作った食パンだ。この米粉パンは1斤で538円。プライベートブランドといえば、メーカー品と同じような物が安く買えるイメージがあるが、「美味安心は決して安くない

例えば一番人気の「和豚もちぶたジャンボ焼売」は6個入り430円。無添加にこだわり、肉も良質な国産豚を使っているので、どうしてもこれくらいの値段になる。「グルテンフリー カレー・ルー」は1瓶625円。小麦を抜く代わりに果物や野菜をふんだんに使用。肉を入れれば簡単に美味しいグルテンフリーのカレーが味わえる。こうした美味しくて安心な商品が店内のいたるところに。その数400アイテムを揃えている。

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山梨から全国に広がるプライベートブランド

いちやまマートの魚の粕漬けの製造を請け負うのは、甲府市内の食品メーカー「中部食品」。「美味安心」の商品は地域のメーカーに委託して作ってもらっている。このメーカーとはいちやまマートが創業した時以来、50年以上の付き合いだという。

この日は、今までにない大幅に減塩した魚の粕漬けを作るための打合せ。もともと塩分控え目にはしていたが、三科はさらに3割塩分カットしたいとリクエストした。しかし、これがなかなか難しい。塩分を減らせば、味がぼやけてしまうのだ。

そこでまず、塩から変えてみることに。わざわざ取り寄せたのは長崎県の五島灘の塩味はそのままに塩分を30%カットできるという。さらにうまみを増すため、魚をつける酒粕にカツオや昆布のエキスを加えた。やり直しを繰り返し、今回が4回目の試作だった。

試食をした三科の反応は、「ずいぶん美味しいですね。塩分が下がっているにもかかわらず、うま味が増している。すごくいい商品になりましたね」。中部食品の有野義人社長は、「食べ物は命に通じるもの本来の食べ物を作るという原点に返れる。作るのは大変ですが、楽しいです」と語る。

今まで世の中になかった発明品を作り手と一つになって作る。「美味安心」はそんなプライベートブランドなのだ。

そんな「美味安心」の最近の自信作が、青森産のリンゴを1本の中に6個も詰め込んだ「りんごジュース」だ。人工甘味料や香料は一切使わず素材の味を活かした贅沢な逸品だ。1本409円と、値段はメーカー品の2倍するが、「美味安心」の売り場で試飲をすると、ほとんどの客がこちらを選んでいく。

この「美味安心」、実は東京のスーパーでも買うことができる。四谷にある「ショッピングセンター丸正総本店」。中をのぞいてみると、人だかりができていた。開かれていたのは「美味安心」の試食会。お客が試食していたのはグルテンフリーのカレー。このスーパーが「美味安心」を扱うようになったのは6年前から。最近は特に手応えがあると言う。

「扱い始めた当初より売上が300%アップしています。やはり食べていただくと、納得していただける」(鳥居圭介店長)

現在、「美味安心」の販売契約をしているスーパーは全国80社。1000店舗以上で売られるようになった。

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なぜ健康スーパーに? 転機は身内に起きた出来事

山梨県中央市にあるいちやまマート・イッツモア玉穂店の中に本社がある。その会議室でプレゼンが始まっていた。月に1度、メーカーの担当者を招いて行われる新商品の説明会だ。

メインとなる新商品はやはり食品。カルビーの「かっぱえびせん」は、塩分50%カットの減塩タイプ。次に手に取ったのは乳酸菌入りタブレット、森永製菓の「食べるマスク」。これを食べれば、マスクをするのと似たような働きがあるというふれこみだ。いちやまマートには、こうした大手メーカーの健康を意識した商品も集まりやすいという。

「通常のスーパーと比べると、私どもの店では健康的な商品を2倍、3倍は平気で売る。そういう商品を期待するお客様が来て下さっているんです」(三科)

三科はなぜここまで健康的な食品に取り組むようになったのか。

三科の父・十三が1964年に設立した、いちやまマート。山梨一の店を目指そうと命名した。1976年、24時までの深夜営業を山梨県で1番に開始。さらに100円均一セール、パンの店内調理、郊外型店舗の出店など、いち早く導入してきた。

そんな父親の背中を見ていた三科は、大学卒業後、東京の商社に勤めたが、3年後に帰郷。父親の会社に入った。当時はどうしたら売上が上がるかばかりを考え、健康への興味はほとんどなかったという。今のように変わったきっかけは身内に起きた出来事だった。

父が55歳兄は46歳で亡くなりました人生最大のショックでした」(三科) 

父親は大腸ガン、その後を継いだ兄は膵臓ガンで若くして命を落とした。以後、三科は、ただ物を売るのではなく、食品を通じて健康的な生活を生み出そうと考えるように。そして関係のありそうな本を片っ端から読みあさり、独学で勉強した。

しかし何から始めていいか分からず、専門家にアドバイスを求めると、「全部の食品添加物を外すのは難しいから、とりあえず合成着色料からなくしたらいかがですか、と言われました。合成着色料というのは、原料が当時はタール系色素といわれ、石油からとったんです。それをまずやめよう、と」(三科)。

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合成着色料を一掃~立ちはだかる厚い壁

三科は合成着色料を使った商品の一掃を決断。しかし、食品スーパーにとってそれは簡単なことではなかった。当時、商品の仕入れ担当だった徳行店の保坂賢司店長は言う。

「合成着色料を使った商品には、人気商品や売上の大きい商品もあったので、正直言うと『大変なことをやるな』『売上減るな』と」

「現実的ではない」と、なかなか本気になって取り組まない社員たち。すると三科は驚きの行動に出た。会議室に社員を集め、「半年後に新聞広告を出すことにしました」と宣言。その内容に社員たちは衝撃を受ける。

半年後の2001年9月、実際に地元紙に掲載された広告がある。全面広告の真ん中でタール系色素完全撤廃と宣言し、さらにその下には「もしタール系色素使用の商品を見つけられた方にはいちやま商品券(壱万円分)を贈呈いたします」という一文が。

社長は本気だ」と気づいた社員たちの半年間の奔走が始まった。

売り場からは合成着色料を使った商品がはじかれ、それに代わる商品を探しては入れる作業が延々と続いた。しかし、大きな壁が立ちふさがる。

それが大手メーカー製の、合成着色料入りの魚肉ソーセージ。当時、加工食品の中で、売り上げナンバーワンを誇っていた。まだ「美味安心」は作り始めていない時代。メーカーに対し、合成着色料なしのソーセージを作ってほしいと頼み込んだが、「営業の人は『分かりました』と元気よく言ってくれましたが、実際には部長とか取締役会とか、どこかの段階で却下されていたんです」(三科)。

しかし、事態は急展開する。メーカーのいちやま担当の営業マンが社長に直訴すると、「これからの世の中必ず健康志向に向かうよ。いちやまさんの言う通りに作ってあげようじゃないか」という鶴の一声で、一地方スーパーのために合成着色料を外した魚肉ソーセージが誕生したのだ。

以後、いちやまマートには健康や安心を意識した商品が集まるようになっていく。大手メーカーまでも巻き込んだイメージ戦略はこうして確立した。

生き残りをかけて~地方スーパーの戦略

人口が減る中、地方のスーパーはどうやって生き残っていけばいいのか。その答えを出すべく三科が開いている勉強会がある。「美味安心」情報交換会。全国から「美味安心」の取引先スーパーが集まり、それぞれの成功した取り組みを情報交換する。こうした会を年に3回開き、生き残り策を共有しているのだ。

例えばこの日、ある人は年末商戦で役立つアイデアを発表した。年越しそばで大量に用意しなければいけないかき揚げを、なんとボウルごと揚げてしまう。これで油の中で具が広がらず、効率アップ。実際、このスーパーでは販売個数が3割増しになったと言う。

参加者のひとり、「東武」(北海道)の太田雅之専務は「すぐモデリングするのが大前提。私たちもそういう形で実践させていただいています」と言う。太田さんのスーパーは、北海道・中標津にある。いちやま流をどんな風に実践しているのか。

「東武サウスヒルズ」の売り場には、地元で揚がったサケや有機栽培のジャガイモなどが並ぶ。そして「美味安心」も。このスーパーでは200アイテムを揃えている。

「私どもでも、体に悪いものは基本、販売しないということをひとつのコンセプトにしています」(太田専務)

この店ではタール系色素を含む食品をできる限り販売中止にしている。

さらに「いちやま流」はこんなところにも。事務所のデスクの横には大量のカラーペン。簡単レシピのポップを作っていた。

「お客様は細かい説明文は読まないんです。完結して短く分かりやすくお伝えする。お客様に寄り添った、『料理が苦手な人でも美味しく作れます』とか」(滝本寛子店長)

いい商品でも、その良さが伝わらなければ買ってもらえない。これもいちやまの影響だ。

スーパーの情報交換はいちやまマートのためでもある。三科は、参考になりそうな取り組みを行う店があれば自ら出かけて行く。

視察に訪れた中標津の「東武サウスヒルズ」で三科が注目したのは「七分づき米」のお弁当。「七分づき米」とは、玄米を七分ついて精米したお米。白米より栄養価が高く、しかも食べやすい。しかし水につける時間が長く必要になるなど、作るのに手間がかかる。それでもこの店は「客に健康が提供できる」と、「七分づき米弁当」の導入を決めたのだ。こうした地方の新たな試みは、三科にとって生きた情報源となる。

次に見つけたのは、子供が作った学校新聞。そこには子供が書いた美味安心の記事が載っていた。このスーパーは、地域の小学生を招き、食品の見学会を定期的に開催。安心な食とは何かを、地道に伝え続けている。

「本気になって地域のお客様の健康を考えた活動をされている。ものを売るのではなく考え方心を売るのが一番大事だと思います」(三科)

スタジオで地方スーパーの現状について問われた三科は、次のように答えている。

いいスーパーと悪いスーパーがはっきりしてきた時代です。どっちの方向に行こうか、自分で決められないところが多い。そういう中で『地域のお客様に健康で奉仕したい』『今はいいけど将来は不安がある』というスーパーには、我々はお手伝いできる」

地方のスーパーができることを考えいい取り組みは共有するそれこそが生き残る術だと三科は考えている。

~村上龍の編集後記~

本来「ローカル」には「田舎」というニュアンスは含まれない。

「その地域特有の」というポジティブな意味合いを持つ言葉であり、まさに「いちやまマート」にふさわしい。

三科さんは、誇りと自信を持ってローカルを自称する戦略家だ。

「美味安心ブランド」は全国に浸透しつつあり、無添加の価値を啓蒙するが、目線は庶民に合わせてある

不味いものはオーガニックでも売らない。ナショナルブランドも売っているし、ディスカウントストアの攻勢も受けて立つ。

柔軟でしかもぶれがない。わたしは「風林火山」という軍旗の文字を思い出した。

 

<出演者略歴>

三科雅嗣(みしな・まさし)1952年、山梨県生まれ。1975年、慶應義塾大学商学部卒業後、加商(商社)入社。1978年、いちやまマート入社。1991年、社長就任。2008年、PBの「美味安心」販売開始。

source:テレビ東京「カンブリア宮殿」

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