ホストクラブでの一気飲みが原因で死亡。果たして労災になるのか

場を盛り上げるために行われがちな一気飲みですが、そんな無茶な飲み方が原因で亡くなってしまった場合、労災は適用されるのでしょうか。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、一気飲みで命を落としたホストの遺族が起こした裁判の結末を紹介。さらに最近お酒の席でのトラブルが急増していることを指摘した上で、一般企業が取るべき対策を記しています。

 

ホストクラブでの一気飲みは労災になるのか

「一気飲み」というものがいつからはじまったのかはわかりませんが、私が学生だった●十年前にも確かにありました。今でも主に学生の飲み会などで行われているようですが、これだけ流行の移り変わりが早い中で何十年も続くのはある意味、すごいですね。(一気飲みを全否定はしませんが推奨はしておりません。念のため)。

確かに、飲み会の席で一気飲みをすることでそれなりにその場は盛り上がります(というように感じます)。ただ一方で某元ホストの人のお話では「話術に乏しいホストほど一気飲みでその場を盛り上げたがる」そうで、その席にヘルプに入るホストは本当に大変なんだそうです。

では、ホストとして接客中に一気飲みをしたらそれは仕事として認められるのでしょうか

それについて裁判があります。あるホストクラブで、そのお店に勤務するホストが仕事中の一気飲みが原因で急性アルコール中毒で死亡しました。そこで遺族が労基署に労災の申請をしたところ、「一気飲みは仕事にあたらない(なので労災として認めない)」として却下されたため裁判所に訴えたのです。

はたして、一気飲みでの死亡は労災になるのか?労災として認定されるには

  • 業務起因性
  • 業務遂行性

の、両方が認められる必要があります。簡単にお話すると

  • 業務起因性→仕事に関連しているか
  • 業務遂行性→仕事の時間中か

です。今回の裁判例で言うと一気飲みをしたのは接客中ですから後者の「業務遂行性」は満たしているわけです。では、一気飲みは仕事に関連していると言えるのか?

裁判の結果、「労災である一気飲みは仕事である)」と、認められました。その理由は次の通りです。

  • 死亡したホストは新人であり先輩ホストからの一気飲みを拒否できない状況にあった
  • 一気飲みの強要は接客中に行われており業務の一環であった

いかがでしょうか。これは実務的にも注意が必要なところです。最近、非常に増えているのが「お酒がらみのトラブル」です。以前ですと「お酒の席でのことだから」と、割とトラブルとしては表面化しづらかったことが、最近はパワハラやセクハラとして裁判にまでなるケースもあります(実際に、お酒の強要をパワハラと認定された裁判例もあります)。

そして、場合によってはそのセクハラやパワハラをした本人だけでなく会社も責任を問われることもあるのです。例えば、

  • 職場で上下関係にある社員が参加している(これは上司、部下だけでなく取引先も含まれます。例えば、発注元、発注先など)
  • 参加が半ば強制的である(もしくは参加を断りずらい)
  • 飲み会の席で仕事の打ち合わせ等が行われていた

などの状況で飲み会が行われた場合はそうなる可能性があります。せっかくの楽しいお酒の席を必要以上に堅苦しく考える必要はありませんが一定程度の注意喚起は必要でしょう。

お酒や飲み会が悪いのではなく問題なのはセクハラやパワハラなどの行為です。「たとえお酒の席だったとしても●●の行為は禁止」などをはっきりさせて社内で周知しておいたほうが良いでしょう。今一度、社内で見直してみる必要があるかも知れませんね。

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店のBGMはなぜ流れているのかを理解するとサービスは向上する

飲食店や美容室、コンビニ、スーパーなどでは、それぞれの色合い、雰囲気にあったBGMが流されています。しかし、「そのBGMは何のためにあるのかを理解していない店はサービスの向上は図れない」とするのは、人気コンサルタントの中久保浩平さん。中久保さんは無料メルマガ『ビジネス真実践』で、自身が体験した例をもとにその理由を詳しく解説しています。

何のためにBGMがあるのか?

先日、仕事の合間に神戸市の郊外にありますとあるカフェで少しまったりしいた時のこと。

そのお店は白が基調ということもあり、明るく清潔感があって、とても心地よい空間でした。他にいらしたお客さんも読書をしていたり、主婦同士がスイーツをつまみながら談笑を楽しんでいました。

店内に流れるBGMは、そうしたお客様のひとときを邪魔せず、ゆったりとしたクラッシックがほど良いボリュームで流れており、ゆったりとした空間を演出していたのです。

ところが突然、厨房カウンターの奥辺りから大きな笑い声が。スタッフ同士の会話が盛り上がっているのかなんなのか分かりませんが、せっかくのひとときが一気にぶち壊されてしまいました。

その後、笑い声だけでなく、話声のボリュームもどんどん大きくなり、その内容までまる聴こえというありさま。丁度良いボリュームだったBGMのクラッシクは、虚しくもかき消されてしまいました。

BGMは何のためにあるのか?その意義、目的をちゃんと理解しておかないとせっかくのお店の雰囲気もぶち壊しになります。雰囲気をぶち壊すということは、お客さんの貴重な時間を奪うということです。

飲食店、美容室、エステサロン、あるいはスーパーやコンビニなどとにかく店舗にはそれぞれの色合いに合ったBGMが流れています。それは単に店の雰囲気作りという演出をするだけのものにあるということではありません。ただなんとなく流しておけばいいというものでもありません。

お客さんが来店している目的は何なのか?そこを十分理解してBGMを選曲し流す必要があり、サービス(接遇・接客)と一体化させることが重要なのです。演出だけが店作りではなくサービスと一体となって“店作り”であるということ。

先述したカフェのスタッフは、そのことを全く理解していなかったのでしょう。お客さんは、スイーツを食べに来たのでもなく、コーヒーや紅茶を飲みにきたのではなく、それぞれのゆったりとした時間を楽しみに来ているのです。

お客さんを見ていれば十分理解できること。それさえ理解していれば、「BGMをかき消すような私語は厳禁である」ということがよく分かるはずなのです。それどころかサービスの質を向上させることだってできるのです。

BGMは何のためにあるのか?今一度、貴店でもスタッフみんなで再確認しておきましょう。

■今日のまとめ

「BGMの意味を理解する」

  • BGMを流すということはどういうことか?その意味を考えノートに書き出してみる
  • 自店のBGMはお客様の来店目的にマッチしているか?選曲、ボリュームなど検証してみる
  • 同様にBGM以外にも照明や店内の装飾、レイアウトなどの意味を考えノートに書き出し、お客様の来店目的にマッチしているか?検証してみる
  • 上記と連動してサービスの質をより良くするためにできることはないか?考えノートに書き出す

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教育のプロが助言「スクールカースト」をなくすためにできること

クラス内に存在するいくつかのグループに序列が生じてしまう「スクールカースト」。そういう序列を心地よく思わず、なくしたいと思っている子どもは何をし、親はどうサポートすればいいのでしょうか?メルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』の著者で家庭教育のプロの柳川由紀さんは、自分自身が中学で、また中学生の親としていじめと対峙した経験から、「自分の価値基準」と「本気の覚悟」があればできないことはないと、真摯にアドバイスしています。

スクールカーストをなくしたい

Q. いつも参考にさせていただいております。我が家の子どもたちは、娘はいわゆるスクールカーストの2軍層、息子は1軍なのだそうです。しかし、そうしたスクールカーストは無くなって欲しい、と本人たちは言います。無くすために子どもとして何かできるでしょうか?(小5男児、中1女子のお母様より)

柳川さんからの回答

スクールカースト」は2000年代の後半から言われ始め、定着した言葉です。教師にとってはバランスの取れたメンバー構成のクラスでも、子どもサイドの視点では、上位と下位という地位の格差が明確な格差社会とも言えます。 しかし、社会に出ても差別は至る所に存在します。無くすことができれば最善ですが、その解決法は未だ見つかっていないと言ってよいでしょう。気持ちに負担のない学校生活を送るために、子ども自身でできることについて考えましょう。

1.自分の価値基準を持つ

自分を1軍、2軍、3軍のどこにいるかで判断するという価値基準は、大人になれば何てくだらない、と一笑に付すことができるかも知れません。 けれども周囲からの評価を気にする思春期の子どもたちにとっては、学校生活そのものであり、3軍などに位置する子どもは大きな精神的負担になるでしょう。

そこでまずは、自分がどんな友だちを持ちたいのかを考えてみましょう。いじめをしない、お互いを尊重できる、感性が合う、何か尊敬できる、マネしたいと思うことがあるなど何かあるはずです。

周りの目を気にする思春期ですから、難しいとは思いますが、カーストを気にして、自分のキャラを押し殺してまで1軍に従うよりも、周りに流されず、何と言われようがどのグループにも属さない自分の価値基準を持ち、堂々とした姿勢を貫く人間になりましょう。

2.ヒエラルキーではなくジャンル

音楽にクラシック、ポップ、ジャズ、ロック、料理に和食、フレンチ、イタリアン、中華などジャンルがあるように、スクールカーストもジャンルとして捉えてみましょう。

実際に、総じてコミュ力の高い1軍と言われる人は、誰にでも「ものを言える」かも知れません。だからといって2軍、3軍が1軍よりも「下位」に感じたり、卑屈になったり、諦めたりする必要はありません。ただ単に「付き合う人のジャンル」が違うだけなのですから。

3.カーストから降りる

あなたが、本当にスクールカーストを無くしたいと思うのなら、まずはカーストを降りましょう。みんなが本当に降りれば、悩む生徒も減るはずです。 クラスの中で幅をきかせている人がいたら、彼らと関わらないようにすることです。それでいじめが始まり、何かをされたら、されたことを「チクりましょう」。 担任に言ってもダメなら、教務、教頭、校長に。それでもだめなら、教育委員会へ直談判。それでもだめなら、マスコミにでも何でもありとあらゆる手段を利用して公にしましょう。めんどくさい人間、と言われてもいいと覚悟を決めて自分の軸を貫きましょう。

獣医師が教える。緊急時に安心「ペット救急箱」の中身10点セット

ペットのケガは突然やってきます。すぐに動物病院に連れて行ければいいのですが、難しい場合もありますね。そんなときに用意しておくと安心で便利な「ペット救急箱」について、メルマガ『佐藤貴紀のわんにゃんアドバイス』の著者で獣医師の佐藤貴紀先生が教えてくれました。入れておきたい10点とその用途とは?また、入れてはいけないものとは?すでに救急箱の用意がある人も中身のチェックをしてみてください。

いざという時に便利!家庭で作れる「ペット救急箱」

ペットと暮らしていると、様々なアクシデントに見舞われると思います。特に、ペットは「言葉」を話せません。ケガをしても、病気をしても、辛いとか、痛いということを飼い主さんに教えられません。

突然、愛犬や愛猫がケガをした時、どうしますか?ベットから飛んでしまい、骨折したというのは家庭内の事故でよくあることです。病院も空いている時間なら、病院に連れていけますがそうでない時にはどうしたらいいのでしょうか?

そんな時、愛犬、愛猫の痛みが少しでもやわらいであけられるように、ペット用の「救急箱」を家庭に用意されておくと良いと思います。人間と同じで、簡単にご家庭で用意ができます。

そこで、今週は「家庭で簡単にできる犬猫の救急箱」の作り方について配信したいと思います。

「ペット救急箱」に用意して欲しい10点セット

  1. ハサミ:医療用の先の丸いハサミが、ドラッグストアなどで、人間用の医療ハサミとして売られています。それをご用意下さい。
  2. ピンセットや毛抜き:肉球にトゲが刺さったときなどに使えます。
  3. スポイト:目を洗ったり、液体の薬を飲ませることができます。軍手や厚手の手袋
  4. 包帯:収縮自由なもので、裏にのりがついてるものが望ましい。骨が折れてしまった時や出血の時に便利です。
  5. 紙テープ:包帯などを止めます。
  6. ものさし:15~30センチくらいのもの。固定する時に便利です。
  7. ガーゼや脱脂綿:消毒の時に使います。
  8. 精製水、精製食塩水:消毒に使用します。消毒液はペットが舐めてしまうと危険です。
  9. ビニール袋:冷やす時に使います。
  10. バスタオルや毛布:体温が低下しているときの保温に使います。

これらを、手提げのバッグにまとめておくと良いでしょう。災害の時にも、持ち運びが良いので使えます。

「ペット救急箱」に入れてはいけない物

絶対にいれてほしくないのは「医薬品」です。つまり、人間が飲むお薬です。時には動物に子供用のお薬を病院で使用している事があります。それを聞いて、家庭でもやる方がいますが、成分や量などを医学的に動物に使用できるか見極めて我々は使用しています。

家庭では絶対にやってはいけないことです。命に関わる行為の場合もありますので、獣医の判断なしでは絶対にやらないで下さい。

まとめ

「ペット救急箱があるから安心」とは思わないでください。あくまでも、応急処置用の為の救急箱です。ケガや病気を治すものではありません。

ペットは、よほどのことがない限り、弱っている様子は見せません。かなりの痛みも我慢して、平常どおりにいる場合もあります。また、ヤケドや傷の場合、日が経つごとに症状が進行しますので家庭で手当てをしても、必ず、動物病院の診察を受けて下さい。

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れいわ新選組の山本太郎の演説は、なぜ聴衆の心を揺さぶるのか?

自分の気持ちや欲求や意志といった自分の心を基準に判断、選択、そして行動する「自分中心心理学」を提唱するメルマガ著者・石原加受子さんが、参院選の候補者の演説にみる、人の心に響くスピーチについて分析されています。

相手の心に響く演説の仕方とは

7月21日は参議院議員通常選挙です。(2019年7月14日現在)いま、選挙演説、真っ盛りです。相手の心に響く演説、相手の心に届く演説があります。個人的には、たつみコータローさんの語り口が好きで、絶品だと思います。元・文部科学官僚の前川喜平さんも、非常に好感を持てました。リラックスした雰囲気のときのほうが言葉に詰まることがままあって、他者に言質を取られまいとする意識が働くと、余計ミスなく、そつなく端的に話をされます。心が正直な方だと思います。

山本太郎さんも「素晴らしい」と絶賛されます。とりわけ、政見放送では、いつもの多少エキセントリックな雰囲気とは違って、ほどよく冷静で、内容もより具体的で秀逸でした

 

 
 
 
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山本さんの、決してエキセントリックな言い方が嫌いなわけではありません。逆にあの、悲壮感漂う“心からの叫び”に心が痛んで仕方が無かったのです。四面楚歌のような気分で、実際に、立ち上げのときはまったく一人だったし、一人であっても、もう後ろにも前にも進めないような切羽詰まった状況だったし、その心境だったのでしょうから、無理もありません。

でも、無意識の視点から言うと、その「どうにもならない」という必死な思いが伝わってきすぎて、そう信じて叫べば叫ぶほど、孤立無援の現実を創り出す……。それが予測できるから、いっそう、見ていて、見ているほうも共鳴現象で同じ心境になってしまい、とても辛くなってしまうのでした。実際に、そんな悲壮な思いで訴え続けていれば、心がもちません。素晴らしいことを主張されているのですから、絶対に潰れてほしくない。だから、もっとトーンを落としてよ。選挙前から、そんな気持ちを抱きながら、彼の街頭演説を聞いていました。

でも幸い、彼に仲間ができてからは、“心の重さ”が軽くなってきたようです。寄付金も3億円を超えたようです。彼の心の訴えが、聴衆の心を捉えたのです。彼がこうなってようやく、彼を嘲笑していた人たちも、無視できなくなってきたようです。彼の発する言葉が相手の心に届く相手の魂を揺さぶる

どうして、そんな表現ができるのか。「私には、とてもできない」「心の思いは負けないけれども、それを人に向かってどうやって表現していけばいいか、わからない」そう思う人も少なくないでしょう。けれども、意外とそうではありません。相手の心に届く言い方ができる人たちの共通点。それが、「自分表現」です。

「自分表現」の公式は、自分の気持ち + 意志」 です。

自分の気持ちを言葉で表現するスキルを高める。自分の意志を持つ(言いたいことの目的をしっかりと踏まえる)。そのための「具体性」に焦点を当てる。

例えば、

(自分の思い)消費税を撤廃したい。自分が疑問に思ったのは、消費税が、国民のために使われていない。使途不明。
(意志)そのために消費税の撤廃を訴える。
(具体性)では、その消費税に変わるお金は、どこから捻出するか。

といった具合です。

相手に意識を向けて、相手を誹謗中傷する必要はありません。他者を誹謗中傷しないので、相手から反撃されたり揚げ足を取られたりする可能性も低くなります。仮にそう言われたとしても、「私の試算では、充分に可能です」と返せばいいだけです。「自分中心」は、人のことよりも、自分に関心を抱きます。自分に関心を抱いて、自分の心に気づいていれば、それを、そのまま言葉にするだけでいいのです。

 

 
 
 
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image by: Nesnad [CC BY 4.0], via Wikimedia Commons

元国税が断言。法人税を上げても大企業が日本から去らない理由

先日掲載の「元国税調査官が暴露。『日本の法人税は世界的に高額』という大嘘」で、政府が国内大企業に対して「大優遇」とも言うべき税制を適用していることを白日の下に晒した、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。今回は「法人税の実質アップは大企業の海外流出を呼ぶ」というもっともらしい意見を、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で完全論破しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年7月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

法人税を上げても大企業が海外移転することはない

このメルマガでは、バブル崩壊以降、ずっと大企業や富裕層の税金が減税されてきたことをご紹介してきました。また前号「元国税調査官が暴露。『日本の法人税は世界的に高額』という大嘘」では、日本の大企業の法人税の名目の税率は高いけれども、いろんな抜け穴があるので、実質的な税率は非常に低く先進国ではあり得ないレベルタックスヘイブンとあまり変わらないレベルということもご説明しました。そして、当然のことながら、増税するとすれば消費税ではなく法人税であり、しかも法人税の名目税率をあげなくても、抜け穴を防ぐだけでもかなりの増収が見込めるのです。

が、こうような話をすると、決まってこういう反論をする人がでてくるはずです。

「そんなことをすれば、企業が海外に出て行ってしまう

これを言われれば、ほとんどの人は黙ってしまうようです。しかし、法人税を増税すれば企業が海外に出ていく、というのは、まったく根拠のないデタラメの話です。というのも、これは少しでも会計の知識があれば、誰でもわかる話です。実は法人税(住民税も含む)というのは、企業の支出の中でわずか1%にも満たないのです。

日本の企業全体の会計というのは、次のようになっています。日本企業全体で、年間売上高はだいたい1,500兆円前後です。そして、その90%以上、1,400兆円以上が経費などで支出されています。一方、法人税というのは、年間10数兆円に過ぎません。企業の支出全体から見れば、1%程度なのです。しかも法人税というのは、利益が出ている企業にしかかかりません。つまり、法人税というのは、利益が出ている企業に対して、支出のせいぜい1%を徴収するというものであり、企業経営を圧迫しているようなことはまったくあり得ないのです。もし法人税が今の倍になったとしても、せいぜい支出が1%増えるに過ぎないのです。

その一方で「海外に進出するということ」は、非常に大きなリスクを伴います。新たに莫大な投資をしなければなりませんし、一から人材発掘や教育もしなければなりません。相手国の国情などにも大きな影響を受けます。また相手国と日本との関係が悪くなれば、企業活動自体ができなくなってしまいます。実際に、中国などでは、反日感情が高まったときなどには、多くの日系企業が休業を余儀なくされた時期もあります。1%程度の経費が増えるからといって、そういう危険な海外進出をするようなバカな企業はありません

企業が海外移転する理由は「諸経費の安さ」

今、日本の企業が東南アジアなどに進出しているのは、土地代や材料費(物価)、人件費が安いからです。地代、材料費(物価)、人件費は、企業の経費の中で大きな部分を占めています。税金の何十倍も占めるのです。企業は、そういう地代、材料費、人件費の安さを求めて海外に拠点を移すのです。「税金が安いから東南アジアに工場を移した」などという企業は、聞いたことがないはずです。税負担が高いからといって日本の企業の本社が外国に移ることはまずないのです。

ヘッジファンドなど世界のどこにいてもやっていけるような企業体は、税金の安いタックスヘイブンに移転するというようなこともあります。また日本の大手企業グループが持ち株会社を、オランダなどの準タックスヘイブンに移すことは時々あります。が、持ち株会社を外国に移しても、企業活動の主体は日本にあるわけで日本の法人税はしっかり課せられています

日本の企業のほとんどは日本に基盤があり、日本の文化を持っています。日本の企業文化というのは独特のものがあり、外国に出て行ってそうそうやれるものではありません。また日本の企業のほとんどは、企業の中枢部分の技術やノウハウなどは、日本人スタッフによるものです。日本人がいないと成り立たない企業がほとんどなのです。

今の日本の大企業たちも、海外に移せる部分はすでに移しています。それほど精密でない製品の工場などは、とっくに海外に移転しているのです。しかし、日本経済の中枢を担っている大手企業が、税金が安いという程度の理由で企業活動の主要部分を海外に移転することなどは現実的に出来ないのです。

実際に、今よりはるかに法人税が高かったバブル以前は今よりもはるかに企業の海外進出は少なかったのです。当時は、まだ東南アジアなどが開発されておらず、企業が海外に出ていく環境が整っていなかったからです。

未成年の自殺死亡率が過去最悪。こんな国にした張本人は誰か?

先日閣議決定された「自殺対策白書」によると、全体の自殺死亡率は統計開始以来最も低い数値となったものの、未成年に目を向けると過去最悪を記録、20代までを加えた若者世代の死因のトップも自殺と、異常としか言いようのない状態となっています。いったい何が日本の若者たちを自死へと追い詰めているのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんが、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で考察しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年7月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

日本の若者はなぜ自殺するのか?

2019年版「自殺対策白書」が閣議決定されました。18年の自殺者数は2万840人で、前年から481人減り、37年ぶりに2万1,000人を下回りました

自殺死亡率(人口10万にあたり)は、1978年に統計を取り始めて以来、最も低い16.5で、自殺対策の効果が垣間見れる結果となりました。

ただ、19歳以下の未成年の自殺者数は前年より32人増え599人。自殺死亡率は2.8で統計開始以来最悪でした。

若者の自殺率の高さはこれまでにも問題視されてきました。15~19歳の未成年者に加え20代の死因のトップはすべて自殺」。「若いんだから病気にはならない。自殺が一位って普通でしょ?」という意見もありますが、これは大きな間違いです。

以下に示すとおり、欧米の主要国の同年代の若者はいずれも事故死の方が多く、日本だけが事故死の3倍以上もの若者が自殺しているのです。

【「自殺」と「事故」の比率】

 

日本   17.8:6.9

フランス 8.3:12.7

カナダ  11.3:20.4

米国   13.3:35.1

このような状況を鑑み、今回の白書では過去10年の統計によって原因を分析。その結果、

  • 小中学生の自殺の原因は「親子関係の不和」「家族からのしつけ・叱責」
  • 高校生、大学生は「学業不振」「進路に関する悩み」「うつ病」

などが目立っていたそうです。

…なんとも。言葉がありません。

生きるためにこの世に誕生した“子”が、自ら命を絶たなければならない社会は異常”としかいいようがありません。

自殺は個人の問題ではなく社会の問題です。これまで行ってきた研究でも確かに性格傾向と精神疾患との関連は認められています。しかしながら、それはあくまでもリスク要因でしかありません。多数あるリスク要因のひとつです。

だって、人は「生きるため」に生まれてくるわけで。だからこそ誰が教えずとも必死に立ち上がり、歩こうとする。

赤ちゃんには生まれてから数時間で母親を見つめたり、表情を真似るようになるなど、身近な人と関わりを持とうとするのも本能です。

未熟な肉体で生まれてくる人間は、誰かの世話なくして生きていくことができません。そこで赤ちゃんはにっこり笑うことで、「私は生きています。私が健康で生きられるように手助けしてください」と他者とコミュニケーションをとるのです。“3カ月微笑と呼ばれるこの仕草こそが赤ちゃんが最初に身に付ける社会性」なのです。

中国軍の近代化情報に抱く懸念。いつかどこかで見た国家崩壊の轍

中国軍の近代化と最先端化が進んでいる状況について、さまざまなメディアが伝えていますが、それらを事実と認めつつ別の視点からの見方を示すのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんです。すなわち、先端技術を追い求めることにより置き去りにされる防衛課題であり、かつて米国の挑発に乗り軍拡競争に突入し、連邦崩壊を招いた旧ソ連の轍を踏むことへの懸念です。

どこかで見た?中国の軍事的動向

中国の軍事的動向のニュースがマスコミに出ない日はないと言えるほどですが、それを横目で眺めながら、軍事専門家の末席を汚す身としてはデジャビュ(既視感)、つまり、どこかで見たような光景だと思わざるを得ないでいます。 米国の国防情報局の報告書は、次のように警告しています。

「米国防総省傘下の情報機関、国防情報局(DIA)は15日、中国の軍事力の概況についてまとめた報告書を初めて発表した。報告書は、中国が台湾の統一を視野に東アジア全域での覇権確立に関心を抱いていると警告。さらに、アフリカ北東部のジブチや南シナ海での軍事拠点構築を通じ『地球規模の軍事勢力』の地位を築き上げ、米国の軍事的優位を脅かしつつあると強調した。(後略)」(1月16日付 産経新聞)

報告書には、国産空母、新型戦略爆撃機、米本土を核攻撃するための超音速滑空機(HGV)の建造や開発、サイバー分野の強化など、中国の軍事力の近代化が紹介されています。

確かに、そうした面は事実だと思います。しかし、中国が軍事力の近代化に取り組み、最先端の技術を追い求めるほどに、財政的な問題に直面するのは目に見えています。 それは、単に近代化のための資金が不足するだけではありません。近代化に国防費がつぎ込まれればそれだけ、これまで後回しにされてきた分野が放置され、穴があいたままになるのは目に見えています。

例えば、航空母艦の部隊(打撃群)を米国や日本の潜水艦から守るための対潜水艦戦(ASW)能力は、これまできわめて低い水準に置かれてきました。 ASW能力を高い水準にもっていくためには、静粛性に優れた攻撃型の原子力潜水艦、通常型潜水艦、高度な対潜能力を備えた駆逐艦、そして哨戒機を備え、三次元からASWを行えるようにしなければなりません。

辞めればいいってものじゃない。「責任の取り方」について考える

「今回の件では私が責任をとります」、はたまた「君に責任がとれるのか」。職場でこうしたセリフを耳にすることが少なくありません。しかし、その「責任」という言葉の意味合いは、使う人によって微妙に違っていたりもします。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役教師の松尾英明さんが、「責任を負う」ことの本質的な意味を考察しています。

「責任は私がとります」は本当か

「責任をとる」ということについて。

「責任は私がとります」

かっこいいセリフである。ところで、これはどういうことを指すのか。ネットで「責任」という意味を調べると、辞書的には次のようにある。

人や団体が、なすべき務めとして、自身に引き受けなければならないもの。責め。

正直これだけだと、意味がわかりづらい。なぜこんなことを言い出したかというと、最近「危機管理」ということについて学ぶ機会が多いためである。

例えば事故に対して責任を負うとはどういうことなのか。あるいは学級の子どもが「何があってもぼくが責任をもちます」ということは可能なのか。次のように考えてみる。

  • 責任を負う=何かミスやトラブルがあって損害を出した時には、その回収と復旧を最後まで行う

こう考えると、責任がとれるものととれないものが出てくる。例えば、お金に関わること。これは支払い能力さえあれば、責任がとれる。

「責任をとって辞表」というのもあるかもしれないが、本質的にそれで被害を回収できているかどうかが全てである(それができないで辞めるだけなら、人一倍働いて少しずつでも返した方がいい)。

自分が起業にチャレンジして失敗しても責任がとれるかもしれない。それは、あくまで自分の人生だからである。自分で選んだことで、損害を被るのも自分だけなら、完全に責任がとれる。

一方で、例えば、人命に関わること。これは、「命を蘇らせる」という神業ができるなら可能である。つまり、基本的に不可能である。命を失う危険性のある行為に対しては本人以外に本質的な責任はとれない(だから医師は、万が一の時の責任がとれない以上、手術の際には必ず本人の「同意書」をとる必要が出る訳である)。まして、未成年は保護者がその責任を連帯しているため、子ども自身が何かしらの責任をとるのは不可能である。

さて、卑近な例で、子どもが学級においての活動に責任をとれるかということについて。これは、失敗した時の回収行為を最後までやり切れるかということで判断できる。大抵の場合、これは基本的に無理である。

その許可によって学級の誰かがけがをしてしまったら、けがをさせた子どもではなく、許可を出した大人の責任である。だから、学級での行為については結局担任が全責任を負うことになる。その覚悟で「自由」を与えることになる。

また別の例として、子どもが「責任を自分がとります」といって「席替えを自由」にして、仮にいじめが発生したとする。当然、子どもに責任はとれない。担任が100%失敗回収の義務を負うことになる。

その前提の上で「OK」を出すということである。つまり、学級集団への信頼度がすべてである。そこが危うい状況なら当然OKできない

とどのつまり、自由というのは責任とセットであり自由の連帯保証人として責任をとる人が必要な訳である。危うい相手への連帯保証人は「御免」というのが当然である。

また「担任が責任をとるというのも実は本質的には難しい。責任の追及が、大抵は管理職にまで及ぶからである。更には、その設置者である教育委員会にまで及ぶものもある。つまり、学級担任のところで押しとどめられるレベルのことまでしか、本当に責任をとることはできない。

そう考えると、学級担任は、意外と裁量の範囲が狭いのである。だからこそ、裁量権のある管理職の在り方に大幅に行動を左右されることになる。

責任をとれる。それは、自由であるということと同義である。せめて自分の人生には責任をとれるようにしたい。

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