報酬は日銀総裁の1.5倍5000万超!日銀OBの天下り先「日証金」の闇

長年問題にされていながら抜け道を巧みに利用し改善されない高級官僚たちの天下り。一般人から見てあまりに異次元な報酬を得ている天下りの実態の一例として、日本証券金融株式会社(通称「日証金」)のケースを同社の株主である株式会社ストラテジックキャピタルがウェブサイト上で明らかにしました。この記事に注目したのは、メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で、「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さん。こうした問題が氷山の一角でしかない状況が、日本の経済のイノベーションを不可能にしていると厳しく指摘しています。

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私の目に止まった記事

日本証券金融株式会社〜日本証券金融の改革のために〜 株式会社ストラテジックキャピタル

信用取引の株券の貸付け、資金貸付けを行う証券金融会社である日本証券金融株式会社(通称「日証金」)は、その仕事が認可性であることから、実質的に独占的な立場を持つ特殊な上場企業です。このウェブサイトは、日証金が日銀の天下り法人であり、まともなガバナンスが行われているとは思えない状況を丁寧に説明しています。

内容を箇条書きにすると、

  • 上場した1950年以来、社長を務めた10人は全員が日銀OB
  • 日証金の執行役は平均で5,027万円の高額報酬
  • 天下りした日銀OBは、社長、会長、特別顧問として十数年に渡って報酬を得続ける
  • 社長だけでなく、数多くの日銀OBが、常務・専務として天下りし続けている
  • 子会社である日証金信託銀行が、日証金を退任した日銀OBのさらなる天下り先として機能している

となります。

とんでもない不正が行われている状況ですが、これは氷山の一角で、日本ではこのような天下り法人があらゆる業界で数多く作られ、国民の目の届かないところで、莫大なお金が引退した高級官僚たちに流れているのです。それだけでも大きな問題ですが、それが健全な競争を阻害し、(天下りの対象にならない)ベンチャー企業による経済のイノベーションを実質的に不可能にしているのです。

これこそが、暗殺された石井紘基議員が暴こうとしていた「特別会計の闇」でもありますが、明確な「首謀者」もいないため、全体像を把握することがそもそも不可能だし、政治家たちもこれを「必要悪」として黙認している面もあるため、こんな不健全な状況がいつまで経っても解消されないのが、日本の現状なのです。(『週刊 Life is beautiful』2022年7月26日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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店舗から3Kをなくせ。サイゼリヤの新会社が飲食業界を激変させる

リーズナブルな価格と豊富なメニューで、あらゆる世代から支持され続けているサイゼリヤ。そんな国民的ファミリーレストランが、飲食店の宿命を変えようとしています。今回、サイゼリヤと厨房メーカーによる新会社の画期的なシステムを取り上げているのは、フードサービスジャーナリストの千葉哲幸さん。千葉さんはこの会社設立の背景を紹介するとともに、彼らの「発明」が可能にすることについて詳しく解説しています。

プロフィール千葉哲幸ちばてつゆき
フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

サイゼリヤと厨房メーカーによる新会社が飲食業界を抜本的に変える理由

「サイゼリヤ」はいまや国民的なファミリーレストラン。店舗数は世界に1,553店(2021年8月期、以下同)、うち国内1,089店、海外464店。客単価704円。生活圏の中に店舗が存在し、毎日でも利用できる価格が“国民的”といえる所以だ。このようなチェーンレストランとなった背景には、創業者で現代表取締役会長の正垣泰彦氏が唱える「食堂業の産業化の実現」を旗印とした企業姿勢が存在する。

サイゼリヤを展開する株式会社サイゼリヤ(本社/埼玉県吉川市、代表取締役社長/堀埜一成)では5月26日に厨房機器メーカーの株式会社ハイサーブウエノ(本社/新潟県三条市、代表取締役社長/小越元晴)と新会社の株式会社CSsT(本社/東京都台東区、代表取締役社長/小林宏充:サイゼリヤ社長室長)を立ち上げた。資本金3,000万円、出資比率はサイゼリヤ2:ハイサーブウエノ1。社名のCSsTとは「Comfortable Smile slash Technology:技術で食堂従業者の夢をかなえる(笑顔を広げる)」という意味。事業内容は「厨房設備の開発。設計、販売、各種コンサルタント業務」となっている。具体的には、清掃不要のグリストラップ「GreaseShield(グリスシールド)」の販売と、これを導入することによって厨房と客席間の床段差をなくす「フリーフラット厨房」のノウハウを販売していく。

労働環境の改善と生産性の向上

この会社設立の背景には、創業者・正垣氏から後継指名を受けて2009年より社長を務める堀埜氏のミッションが存在する。それは「店舗から3Kをなくす」ということ。店舗の「3K」とは「汚い」「危険」「きつい・臭い」ということだ。これをなくすことで労働環境を向上させ、生産性を高める。

「店舗の3K」改善の取り組みは順次行われて成果をもたらしてきた。具体的にはこうだ。

* 以下は、改善前→改善後→目的の順で示している

  • グラス→トライタン樹脂→割れない
  • 陶器の皿→木製の皿→軽い・熱くない
  • 鉄板→アルミ→軽い

これらは全店で導入を終えているので、サイゼリヤを利用するとこの改善の様子が見て取れる。

さらに、「厨房設備の3K」をなくすこと。それは以下のように描かれる。

  • グリストラップ清掃→機械式グリストラップ→ストレスがない
  • 厨房スロープ→フラット化→疲れない

このように、「グリストラップ清掃」と「厨房スロープ」を改善することによって、従業員にとって「ストレスがない」「疲れない」という効果をもたらす、ということだ。

なぜ、韓国の技術力は中国にことごとく抜かされてしまったのか?

近年、韓国の技術力が中国に追い越される事態となっているようです。今回のメルマガ『キムチパワー』では、韓国在住歴30年を超える日本人著者が、すべて「逆転」されてしまった韓国の焦りと今後について紹介しています。

AIも宇宙航空も防衛産業も… 中国が韓国を追い越す

7月25日、朝鮮日報が尹錫悦(ユン・ソンニョル)政府の「未来の7大産業」の(韓国・中国の)技術競争力を分析した結果、エネルギー・防衛産業・宇宙航空・バイオ・人工知能など5分野の技術競争力が中国に平均1.2年ほど遅れていることが分かった。

技術格差が最も大きい分野は宇宙航空分野で両国格差は3.5年だった。続いて防衛産業は1.7年、人工知能0.5年、エネルギー0.2年、バイオ0.1年だった。韓国がリードしているのは炭素中立対応(環境・気象)、スマート農業の2つだけだった。それぞれ0.9年、2年を中国を上回った。

7大未来産業は4月、安哲秀(アン・チョルス=当時の大統領職引継ぎ委員長)が発表した。これを政府傘下機関である韓国科学技術企画評価院(KISTEP)、情報通信企画評価院(IITP)が昨年と今年、それぞれ発表した国別技術水準評価報告書(2020年基準)に基づいて韓・中技術格差を分析した。

中国は先端技術分野に対する米国の牽制にもかかわらず莫大な人材プールと巨大な内需市場、大々的な政府支援を土台に毎年技術力を急速に成長させている。エネルギーとバイオ分野は2018年までは韓国の技術力が中国をリードしたり似た水準だったが、2年経った今、全て逆転したことが分かった。

青瓦台経済科学特別補佐官を務めたソウル大学工学部の李廷東(イ・ジョンドン)教授は「産業先進国が100年かかることを中国は巨大市場で10年で多くの経験と試行錯誤を繰り返し急成長している」とし「韓国はこれまで先進国の概念設計を受けて生産してきたが、今後は中国から設計図をもらって生産した後、再び中国に納品する状況が起きかねない」と話した。

バッグの中のゴミを“集めてくれる”ボールがなぜ日本人に刺さるのか

きれい好きだけどちょっとめんどくさがりやな人に刺さりそうな商品が、今話題となっています。MBAホルダーで無料メルマガ『MBAが教える企業分析』の著者である青山烈士さんが紹介するのは、バッグの中を勝手にお掃除してくれるドイツ製のお掃除ボール。今までにない独創的で実用的な発明は、実に今どきのやり方で購入者を増やしているようです。

ドイツ製お掃除ボール「ザウバークーゲル」を分析

今号は、ドイツ製お掃除ボールを分析します。

● 服飾雑貨等の商品企画、輸入代行を行っているビーアイトレーディングが展開するドイツで開発された「Sauber kugel(ザウバークーゲル)

バッグの中を掃除するのが面倒な方をターゲットに「独創的で実用的な発明」に支えられた「バッグの中のゴミを勝手に集めてくれる」等の強みで差別化しています。

非常に実用的であり、サスティナブルな製品であることはもちろん、ありそうで無かった商品ということで注目を集めています。

■分析のポイント

あなたのバッグの中は清潔に保たれていますか?

多くの方の答えはNOではないでしょうか。私は、6年以上使用しているビジネスバッグの中を掃除したことはありません…。

わりとキレイ好きなんですが、バッグの中を掃除するという発想がありませんでした。

私に限らず、日本人には清潔好きな方が多いですが、バッグの中は、おろそかになりがちな箇所だと思います。

いま、自分のバッグの中を確認してみましたが、ホコリだけでなく、砂のようなものが入っていました。一度、気になると放っておけない気分になりますね。

というわけで、バッグの中を掃除しようと思ったのですがバッグの中身を全部出すのが面倒くさいです。

そういった“面倒くささ”を解消してくれるのが今回取り上げたお掃除ボール「Sauber kugel(ザウバークーゲル)」です。

家の中でも同じだと思いますが掃除をするためには、モノをどかしたりする等の前準備が必要ですので私の場合、”気合い”が必要です。

お掃除ボールの良さはそういった“気合い”が不要ということです。

気合いも不要で、バッグの中のゴミを”勝手に”集めてくれるというのは非常に強力な価値と言えるでしょう。 

家の中では、ゴミを”勝手に”集めてくれるお掃除ロボットが活躍しているご家庭も多いと思いますが、お掃除ロボットを動かすためには、電力が必要です。

一方、お掃除ボール「ザウバークーゲル」は電力などのエネルギーは不要ですし、洗って繰り返し使えるサスティナブルな製品となっています。

“面倒くささ”を解消してくれる便利さとサスティナブルは現代に求められている要素(価値)ですので、その二つの価値を兼ね備えた製品の価値は高いと言えるでしょう。

清潔好きな日本人には受け入れられると思いますので、今後、「ザウバークーゲル」がどのように拡がっていくのか注目していきます。

ギフテッド支援を検討する日本に“天才の子供”が少ない当然の理由

“ギフテッド”という子どもたちの存在をご存知でしょうか。特定分野に特異な才能のある児童のことですが、この子どもたちの支援に日本も動き出しています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんがギフテッド支援の詳細と、今の日本における子どもたちの学びの問題点を語っています。(この記事は音声でもお聞きいただけます。

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“天才“の芽を摘む大人たち

特定分野に特異な才能のある、“ギフテッド“と呼ばれる児童生徒の支援に、文部科学省が乗り出すことがわかりました。

米国ではギフテッドの生徒を選別するために、さまざまな手法で能力や可能性を測定。州や大学などが、飛び級や様々な教育プログラムを用意し、サマープログラムやオンラインプログラムを通じて、才能教育を行っています。

日本でも2021年6月に文科省が「才能のある子の指導・支援」有識者会議を設置し、議論を重ねてきました。

その結果、7月25日に行われた会議で、得意な才能のある子に適した学習機会を確保する方針を決定。NPOや大学が開く教育プログラムへの参加や、別教室で高度なオンライン授業を受けられるなどの支援策が想定されています。

一方で、何をもって“得意な才能“とするのか?特別支援の対象にどうやったら選ばれるのか?得意な才能をどうやって伸ばすのか? については、決まっていません。

IQなどの指標で選別することには、否定的な意見が多かったようですが、「とりあえずスタートはするけど、問題は山積している」ということでしょう。

米国でも、連邦政府の定義では、「知性、創造性、芸術性、リーダーシップ、または特定の学問分野で高い達成能力を持つため、その能力をフルに開発させるために通常の学校教育以上のサービスや活動を必要とする子どもたち」としていますが、実施されているギフテッド教育プログラムの選抜では、IQや学力テストを基本にしているようです。

ちなみに、National Association for Gifted Children(全米ギフテッド教育協会)の調べでは、米国の子ども全体の約6%(約300万人)がギフテッドと推計されています。・・・結構、いますね。

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【関連】なぜ、安倍元首相は銃殺されたのか。日本社会に蠢く抑圧された怒り

欧米の30分の1。日本の企業が渋る従業員への投資、金をかけず社畜だけが生み出されていくシステム

人への投資だけでは改善しないこれからの仕事

日経が「『人への投資』ソニーなど100社超連携 相互に兼業も」と報じています。世界と比べ日本企業は従業員への投資が極端に少ないとされる中で日本の大企業が連携してリスキリングを目指すというもので評価できる動きだと思います。

ただ、これをやっても目に見える改善が起きることもないだろうというのが私の予想です。

まず、日本がどれぐらい従業員にお金をかけないか、という点はGDP比率の従業員への投資額(OJTを除く)が厚労省から出ているのですが、日本はこれがざっと0.1%。これに対して欧米は2-3%水準なのでざっくり2-30倍の差があることになります。

なぜ日本企業は従業員に金をかけないのか、といえば私が感じるのは社員へのそもそもの期待度がとても内向きで事なかれ主義的な業務体型になっているのだろうという気がするのです。

社員は会社が定めたルールや規範の枠組みから絶対にはみ出ることはなく、言われたことを言われたとおりにやるというスタンスはずっと昔から変わっていません。社員に個性を出されても困るのです。

社畜という嫌な表現がありますが、フリーラン(自由に駆け回って育てる方法)ではなく、養鶏場で運動もさせず「しっかり産めばそれでいい」という発想です。

派遣社員制度はそもそも解雇が出来ない日本に於ける自由度の高い雇用形態として取り入れられました。批判が多いこの雇用方法を止める方法はあります。それは企業に解雇を認めることでしょう。そうすれば企業は派遣社員より一般採用を増やすはずです。

しかし、それが当面望めないとすれば派遣社員には枠組みの決まったルーチン業務だけを延々とやってもらうことになります。

会社の方針について社員から意見を聞くといったことは一般的ではありません。定常業務の枠組みからはみ出ることはありません。しかし、その仕事、楽しいですか?そんな訳、ないと思います。

会社経営に於いて経営をよりよくするには持てる資産の有効活用が問われますが、数多くいる社員を資産と捉えておらず、その機会も限定的です。

また様々なアイディアを出してもその上司が「そんな突拍子もないことを…」といって握りつぶすかもしれません。

今回、日経が報じているのは日本を代表するような大手企業が100社単位で人を中心とした交流をすることでリスキリングを磨くというものです。

リスキリングとは社員の能力開発のことでこれは世界で急速に広まっていますが、日本ではなぜかDX(デジタルトランスフォーメーション)に偏っているような気がします。

【関連】英国で初のインド系首相誕生か。スナク氏トップで焦るバイデン、対中政策で米国反発の可能性

いままで自分の会社を出たことがない人にとっては刺激的であろうと思いますが、私がそこまで期待をしていない理由は結局掛け声をするトップ層とコマのように動かされる社員の温度差が生まれるとみているからです。つまりやらされ感です。

安倍氏亡き後に「政争」の不謹慎。国民無視の自民党に突きつける5つの提言

誰一人として予想もしなかった安倍元首相の不慮の死が、自民党内に「政争」を引き起こそうとしています。このような動きに対して「非常に不謹慎」と不快感を露わにするのは、米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、この時期に自民党が全力で取り組むべき5つの課題を挙げるとともに、それらは政争によりバランス点を求める内容ではないとの厳しい見方を記しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年7月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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安倍氏亡き後、10月以降の「日本の政局」はどうなってしまうのか?

結局のところ、安倍晋三氏の国葬は9月27日となりました。また、参院選を受けての内閣改造・党三役人事は9月上旬まで調整を必要とするようです。ということで、国葬の後の10月の政局が非常に気になるところです。

具体的には、大宏池会が成立して岸田政権が安定するとか、清和会は草刈り場になるとか言われていますが、分かりません。例えばですが、菅義偉氏が2F派を率いて、これを清和会が支えて岸田に対抗などという話も、話としてはあるようです。

非常に不謹慎だと思います。

10月の日本は、とにかく経済衰退をスローダウンさせるための構造改革が待ったなしです。また中国の動揺と、ウクライナ情勢の継続という場合には、とにかく日本は政治的安定を達成しなくてはなりません。政争をやっている場合ではないのです。具体的には、次の5点を提言したいと思います。

1つ目は、挙党体制です。仮に菅+2F+清和会連合ができたとして、そのグループは構造改革を掲げて、岸田に実行を迫り、岸田に呑ませて支えるという筋書きしかないと思います。

2つ目は、対中外交です。仮に習近平の続投もしくは習近平派の中での世代交代となるにしても、あるいは団派への政権交代で経済合理性が復権するにしても、日本や米国との軋轢は避けられません。かと言って、中国との緊張を拡大して、それに耐えられる局面でもありません。中国に対して、関係改善を実現し、その上で是々非々の強い立場を示す、他に選択肢はないと思います。

3つ目は、コロナ後の国内経済です。サービス業を中心に、コロナ明けとなった時点で資金がショートする産業は多くなると思います。そこをどう救済していくのか、果敢な政策が必要です。

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上昌広医師が緊急提言。第7波対策には年齢問わぬワクチン接種を

驚異的なペースで新型コロナウイルスの感染が拡がり、第7波の只中にある日本列島。コロナ流行以来初めての「行動制限のない夏」にピークを迎えるとされるこの大きな波を、私たちは乗り切ることができるのでしょうか。今回、その対応策として年齢を問わないワクチン接種を挙げるのは、医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広先生。上先生は記事中で、さまざまな報告を元にオミクロン株に対するワクチンの効果を紹介するとともに、国内で得られた貴重なデータを紹介しつつ、若年者への3回目接種を強く推奨しています。

プロフィール:上 昌広(かみ まさひろ)
医療ガバナンス研究所理事長。1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

ワクチン4回目接種と第7波対策

新型コロナウイルスの第7波が拡大している。この時期に感染が拡大するのは、昨年、一昨年と同じだ。過去2年とも8月に感染はピークとなり、その後、減少に転じた。もうしばらく感染拡大は続くだろう。

第7波対策で重要なことは、科学的エビデンスに基づき、合理的に対応することだ。年齢を問わず、お奨めしたいのはワクチン接種だ。

まずは、高齢者へのワクチン接種だ。7月6日、カナダのオンタリオ州の公衆衛生局の研究チームが、高齢者施設の入居者に4回目接種を行うことで、3回目接種と比較して、感染を19%、症候性感染を31%、重症化を40%減らすとの研究結果を『英国医師会誌(BMJ)』に発表した。

この研究でのワクチンの効果は、先行するイスラエルの研究よりもやや劣る。4月13日に同国の研究チームが、米『ニューイングランド医学誌』に発表した研究では、60才以上の高齢者に対して、4回目接種を行ったところ、3回接種群と比べ、接種後7~30日間の感染リスクは45%、入院リスクは68%、死亡リスクは74%低下していた。

この二つの研究は、4回目接種により感染自体を予防する効果は低いが、重症化の予防効果は期待できるという点で一致している。高齢者はコロナに罹患した場合、重症化リスクが高い。4回目接種は、感染自体を減らさなくても、重症化させないのだから、有効と言っていい。4回目接種をお奨めしたい。

次は若年者だ。我が国では12歳以上を対象に3回目接種が実施されているが、若年者の接種率は低い。7月25日現在、70歳代以上の3回目接種率は90%を超えるのに対し、12~19才は33%だ。オミクロン株は、感染しても軽症ですむから、接種の必要がないと考えているのだろう。

ただ、オミクロン株は軽症だからと言って、問題がないわけではない。コロナに罹ると、貴重な機会を逸するからだ。東京大学教養学部は、2022年度の前期試験からコロナ感染者の救済措置を廃止しているし、医師国家試験や教員試験などの国家資格も救済措置はなく、コロナに罹れば、留年、あるいは翌年の再試験を待たねばならない。若年者と雖(いえど)も、コロナには罹らない方がいい。

ホンマでっか池田教授が考察。地震大国・日本のエネルギー戦略とは?

ロシアが起こした戦争により、にわかに注目されるエネルギー安全保障の問題。前回の記事で、EUとイギリスが主導してきた脱炭素の流れの綻びの発生と「SDGs」の“いかがわしさ”の露呈を指摘したCX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみ、生物学者の池田清彦教授。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、日本のエネルギー戦略について考察。大地震が必ず起こる日本においては原発ゼロを前提とした電源構成を考えるべきで、なおかつ狭い国土には太陽光発電も風力発電も向かないと、忌憚のない意見を述べています。

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エネルギー戦略・日本どうする

前回はウクライナ紛争後のEUのエネルギー戦略について話したが、今回は日本のエネルギー戦略について、思う所を述べてみたい。岸田首相は、原発を最大9基、火力発電所を10基稼働させて、この冬の電力供給を確保したいと述べたが、原発はEU諸国などの地盤が安定している場所ならばともかく、日本ではリスクが大きすぎて賛成できない。

ヨーロッパはほぼユーラシアプレートの中に位置し、イタリアとアイスランドを除いて地震はほとんどない。イタリアはユーラシアプレートとアフリカプレートの間に位置し、アイスランドはユーラシアプレートと北アフリカプレートの境にあって、地震大国かつ火山大国である。

そのせいで、イタリアは1987年のチェルノブイリ事故を受けて原発の運転を停止して、その後原発を動かしていない。電源構成比は化石燃料が60%、水力が17%、その他の再生可能エネルギーが23%である(2018年)。再生可能エネルギーの内訳は太陽光8%、風力6%、地熱2%、バイオマス等7%であり、火山大国にしては地熱の割合は多くない。

一方、アイスランドでは電源はすべて再生可能エネルギーで、地熱が20~30%、残りは水力である。地熱は、電力ばかりではなく家庭用の暖房や給湯にも使われており、暖房費は石油を使う場合の4分の1だという。人口が37万人とごく僅かだということもあるが、自然の恵みを上手に使っていることは確かだ。

日本に地震が多い理由は地質学的にはっきりしている。日本列島に沿ってプレートの境目が縦横に走っているからだ。東方の太平洋プレートと西方のユーラシアプレートの間に、北方から北アメリカプレート、南方からフィリピン海プレートが入り込み、いたるところが地震の巣なのだ。

例えば、2011年の東日本大地震は太平洋プレートと北アメリカプレートの境目に当たる、三陸沖の太平洋で起きたし、2030年~2040年に、まず間違いなく起こると考えられている南海トラフ地震は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境目に当たる紀伊半島沖から四国沖で発生すると予想されている。

福島第一原発の事故はまだ終息のめどさえ立っていないのに、さらに何基も原発を動かそうというのは、正気の沙汰とは思えない。一度、大事故を起こした時の悲惨さは、他の発電施設の比ではない。確かに、短期的には発電単価は安く、コストパフォーマンスは高いだろう。しかし、それは、自動車を運転するのに自賠責保険をかけない方が安上がりだというのと同じだ。事故が起きれば、トータルの発電単価は天文学的な数字になる。

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ロシアとの関係悪化で窮地の欧米を日本の「ワンセット産業」が救うワケ

ロシアに依存していたエネルギーや基礎資材の供給不足が続き物価が上昇。各国でインフレが進み世界が困窮しています。この状況でも日本には、世界の景気を盛り上げるポテンシャルがあると語るのは、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で津田さんは、日本には産業全分野をカバーする企業が健在で、ウラン再処理工場まで維持していると日本の強みを解説。農業においても、最悪主食の米は国内生産で賄えるので餓死しないと指摘。日本人が気づいていない日本の長所を生かせば、世界に貢献し日本も潤う方法があると伝えています。

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ワンセット産業の強み

世界は、エネルギーや基礎資材などの供給不足の事態になっている。それにより、不景気になっている。世界景気を盛り上げるには、ロシアが生産している資材に代わって、日本企業が補給すればよいことである。

ロシアは、石油、石炭、天然ガス以外にパラジウム、濃縮ウラン、アルミニウム、肥料、農薬など多数の基礎資材の輸出国であり、ロシアからの輸入を止めると、世界的な不足になるのはしょうがない。

この事態でも、日本はワンセットで産業全分野をカバーする企業があり、その企業群が倒産を免れて、今も健在である。米国企業は、ほとんど倒産して、ロシアからの安い物品に置き換えてしまっている。このため、米国は基礎物品の不足という事態になり、インフレが9%にもなってしまったのだ。

それに比べると、日本のインフレは、2%程度であり、欧米に比べて相当に低いのは、基礎物品もハイテク製品も一通り、日本企業で充足できるからで供給不足が起きない。

ただ、工場が海外にあることで、船便の手配ができないと、届かないだけだ。日本企業に生産ノウハウがあるので、増産が容易であり、ロシア生産分の代替も可能である。この増産に政府は補助金を出してもよいはずだ。

そのよい例が、濃縮ウランであり、日本は大量の濃縮ウランの原料を持っている。使用後のウラン燃料であり、これを再処理して、新しい濃縮核燃料にできる。しかし、米国は全量濃縮ウランをロシア企業に依存していた。このため、原発稼働を続けるには代替の濃縮ウランが必要になっている。

日本の濃縮ウラン工場は、稼働もさせないで維持しているが、六ケ所村のウラン再処理工場である。この出番が来た。ロシアは濃縮ウランの40%程度を生産して、世界に供給している。この代替工場が日本にはある。

アルミや希少金属なども、日本は都市鉱山を持っている。その鉱山から掘り出せばよいことで、この企業群も多くある。

食糧生産でも、ウクライナとロシアの小麦がなくなり、世界的な食糧不足というが、日本でも小麦を作っている。日本は気候的に南北に伸びているので、熱帯の植物以外は、日本で生産ができる。つい最近では、小笠原でコーヒーの栽培もできたので、熱帯の植物も育てることになった。このように、食糧もワンセットできるのである。

国土が狭く、それぞれの気候の面積も小さいので、収穫量は多くなく、日本国内の需要分しかないが、輸入を制限できる。そして、全国で収穫できるコメがあり、食糧不足にはならない。貧乏人はコメを食えとなるだけだ。餓死にはならない。

このようなワンセットで工業から農業を持つ国は、世界的にも日本だけである。その強みを日本人は気が付いていないだけである。

世界の足りない物品を、日本企業が作り提供すれば、世界景気も持ち、日本も潤うことになる。日本の弱点だけを見て、評論家は論説しているが、日本の長所を見て、どう世界に貢献するのかを考えた方がよいを思うが、どうであろうか?

さあ、どうなりますか?

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