台湾の統一地方選挙で蔡英文総統の与党・民進党が大敗した「意味」

11月26日に投開票された台湾の統一地方選挙では、事前の予想通りに蔡英文総統が率いる与党が大敗。選挙戦終盤には、対中警戒を煽ることで劣勢を挽回しようとしましたがまったく実りませんでした。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂さんが、この大敗を受け、「神通力は尽きてきた」と分析。内政に不安と不満を抱える与党が強硬な対中政策を続けた場合の反動を危惧しています。

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蔡英文の台湾統一地方選挙大敗で見えてきた 習近平が台湾統一を急がない理由

予想されていた結果とはいえ、蔡英文政権にとっては、厳しい審判が下されたといえよう。26日に投開票された台湾版統一地方選挙での痛い敗北である。

首長選の投開票は、6の直轄市と15の県と市で行われた。テレビ局TVBSの選挙速報(日本時間26日午後10時15分現在)によると、民進党は高雄市や台南市で勝利し、5市県を獲得したが、基隆市を8年ぶりに失った。改選前に14市県を有した最大野党・国民党は、台北市と桃園市など13市県を得た。台湾民衆党は新竹市で初めて勝利した。(11月26日付 読売新聞オンライン)

最重要の台北や北部の桃園の主要市長選で敗れた。そして、「蔡英文(ツァイインウェン)総統率いる与党・民進党は、焦点だった首長ポストの獲得で改選前の7市県に届かず、大敗した。総統の任期を1年半残す蔡氏は敗北の責任を取るとして、党主席については辞任を表明した」(同、読売新聞オンライン)のである。

そもそも現状維持に近い目標は、やはり大敗北した前回の統一地方選挙(2018年)が基準となっていると考えれば、新聞各紙が「大敗北」という見出しで報じたことにも誇張はない。

早速、中国のカウンターパートは、この敗北を踏まえて「結果は平和と安定を求める民意を反映」と発表した。またメディアは「台湾の人々が理性的な選択をした」と、控えめながら、選挙結果に大いに満足している論調で評価した。

だが、気をつけなければならないのは、今回の統一地方選挙は、選挙の性質上、生活に密着したテーマに焦点が当てられやすく、対大陸(=中国)という台湾の人々にとっての「対外」の視点とは切り離して考える必要があることだ。単純に、蔡英文が進めたある種の独立路線が否定されたとして扱うことにも慎重でなければならない。

事実、台北市長選挙に民進党を背負って出た陳時中氏をはじめ、多くの民進党の候補者がスキャンダルに塗れ、有権者をうんざりさせていたことも民進党敗北の原因である。

ただし、その一方で選挙戦において、蔡総統が、「中国に抵抗して台湾を守ろう」とか「『抗中保台』(中国に抵抗し台湾を守る)」、「中国共産党大会のあとに行われる初めての選挙に全世界が注目している」、「(世界に向け)自由と民主主義の擁護に向けた台湾の粘り強さと決意を示す選挙」といったスローガンを連発したことも間違いない。

日々伝えられる自党の劣勢を、大陸への警戒を煽ることでなんとか跳ね返そうと目論んだためである。しかし、必死の訴えも劣勢を挽回することはかなわなかった。

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ニューヨークのタクシー運転手が日本を羨み称賛する理由ベスト3

外国人による日本称賛が大好きなマスメディア。褒められて嫌な気分にはならないものの、いいところをつまんでいるだけでは?と卑下してしまうのも日本人の特徴かもしれません。日本にやってくる“日本マニア”の外国人ではない人たちの本音はどうなのでしょう。今回のメルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』では、著者でニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんが、20年以上住むニューヨークで多種多様な人たちとの交流の中で感じてきた世界から見た日本や日本人の印象について教えてくれます。

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日本が世界からどう見られているか

「日本が世界からどう見られているか」。日本という国が本当のところ国際社会においてどう思われているか。

もちろん明確なデータがあるわけではありません。世界中のあらゆる機関、民間がそんな類の調査を発表することはよくあります。ニュースでよく目にする有名なところではイギリスの調査会社イプソスデータや放送局協会のBCCワールドサービス、アメリカのメディアカンパニー『USニューズ&ワールド・レポート』などは毎年のように「世界にいい影響を与える国ランキング」や「経済的に影響力のある国ランキング」や「国際社会にネガティブな国ランキング」などを発表しています。でもそれはあくまでジャンル別で、短期間の、バイアスかかりまくりの調査であることは否めません。

それらに日本はランキングされることもあるし、されたらここぞとばかり日本の日本人向けニュースに載ります。実はまったくランキングされない時もままあります。されないとニュースにならないので、みんな知らないまま。

なにより明確なデータがないのは、明確なデータで測れないからです。あらゆる視点があるので「いい国」「悪い国」とは一元論で語れない。親日国の中で日本が大嫌い!という人もいるだろうし、逆に、反日国で日本大好きという個人が存在することもある。トルコ人や台湾人でも日本大っ嫌い!という極めて個人的な理由を持つ人も間違いなくいるし、韓国人、中国人で日本LOVEの国民を探すのもそう難しくない(北朝鮮の人から探すのはやっぱりちょっと難しいかもだけど)。

明確なデータが取りようがない中、極めて主観的で極めてバイアスだらけの僕が、ニューヨークという世界中の人間がマージしている街で、20年以上彼らと関わり、ホントのところ、日本、もしくは日本人がどう思われているか、どう見られているか、を今回は率直に書きたいと思います。

まず本題に入る前に、それでは日本の日本人はどう思っているか。日本人は日本が世界からどう思われていると思っているのか。今回約2ヶ月間、クラブハウスで多くの日本在住、日本の方と話しました。といっても数十人なのでこれまたデータが少なすぎますが、それだけでなく、日本の報道を見ても、日本人は世界から日本、もしくは日本人が、すごく評判がいいと思っている傾向にあると思います。例外はあれど、総意としてはほぼ、この印象で間違いないと思います。「世界から愛される国、NIPPON」。基本的には日本人の多くがそう思っているのではないでしょうか。

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本田圭佑のW杯解説「年下選手に“さん”付け」が日本語を救う理由

W杯カタール大会解説での年下の選手に対する「さん付け」が話題となっている本田圭佑氏。その姿勢は、すべての日本人が学ぶべきものであるようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、年齢差のある人や部下などを「さん」付けでリスペクトする重要性を解説。さらに本田氏も理解していると思われる、「日本語の危機」について考察しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年11月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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本田圭佑氏のサッカー解説と日本語の問題

W杯カタール大会が始まりました。日本A代表の1次リーグでの戦いは、全く予想外の展開となっています。ドイツ戦の勝利は、森保監督の起用が全て当たったように見えましたが、コスタリカ戦では非常に重苦しい試合となり、ワンチャンスで相手に決められてしまいました。

このコスタリカ戦ですが、要因としては主審の問題が大きいように見えました。この試合で笛を吹いていたのはマイケル・オリバー主審で、イングランドのプレミアのジャッジですが、ドイツ戦のバートル主審(エクアドル)がユルユルだったのと比較すると、かなり厳しい感じでイエローも両チーム合計で6枚出していました。

日本代表の攻撃が今ひとつ固かったのは、コスタリカの守備を評価する声がある一方で、特に前半でオリバー主審を警戒したことが影響したように見えました。仮にそうであれば、スペイン戦へ向けて応援する側も気持ちを切り替えて臨みたいところです。

ところで、今回大会で解説者として本格デビューしたのが、本田圭佑氏ですが、年下の現役選手に対して敬称の「さん」をつけて呼んでいる姿勢が話題になっています。

私は、アメリカですのでFOXのアメリカ向け中継しか見ていないのですが、日本での中継では本田氏は、ずっと年下の主力選手を、さん付けで呼んでいるそうです。

「堂安さん」「鎌田さん」「三笘さん」

という具合です。一方で、ともにA代表で戦ったなど、個人的な関係のある主力選手、具体的には吉田麻也選手、長友佑都選手、酒井宏樹選手などは

「マヤ」「ユウト」「ヒロキ」

というようにニックネームで呼んでいます。つまり、よく知っていて個人的な交流のある選手は、個人的関係の延長でニックネームが自然。一方で、面識の薄い若手は「さん」付けということです。

このように、年齢差のある人を、または組織の上での部下などを「さん」付けでリスペクトするというのは、非常に重要なことです。現在、ビジネスの世界では、まともな会社では長年の努力を続けた結果、定着しつつあると思います。

ですが、いわゆる「体育会系」の組織では、例えば大学や高校などの部活、体育会では「先輩は後輩を呼び捨て」という習慣が続いています。こうした昭和の遺風というのは、百害あって一利なしなのですから、とにかく改善が必要です。

もっと言えば、「さん」で呼ぶこと、そして上位のポジションになる「管理職や経営者の階層名」について、例えば「社長、部長、監督」といった名称は「機能であって敬称ではない」というカルチャーも定着させていかねばなりません。オール「さん付け」という文化を進めて、若い世代、あるいは管理者から見た現場をリスペクトすることで、メンタル面の負荷を減らし、ネガティブ情報を自然に上に上げられるようにする、これは停滞した日本経済を「まとも」にするためには必要なことです。

そのためにも、苦闘しているビジネスの現場だけでなく、スポーツや教育の現場でも「対等性」と「相互リスペクト」というのを、コミュニケーションのデフォルトにして行く改革が必要だと思います。

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ハシゴを外された日本。バイデン「中国の台湾侵攻ない」発言で崩れた台湾有事切迫論

早ければ2023年中の勃発を予想する識者も存在するなど、もはやいつ起きても不思議ではないとの報道がなされている中国の台湾軍事侵攻。しかし習近平国家主席には、少なくとも現時点ではその企図はないようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、米中首脳会談後のバイデン大統領の発言を引きつつ、台湾有事「切迫」論に何の根拠もなかったという衝撃的な事実を紹介。さらに「有事が差し迫っている」という流れを必要とした台湾政権の思惑を解説するとともに、その波に乗せられ防衛費倍増路線に突入しようとしている日本政府の今後を予測しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年11月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

ひとまず鎮静化に向かう「台湾有事」狂想曲/バイデンも立場を修正する中で日本はハシゴを外される?

米軍部に直結するシンクタンク「ランド研究所」の上級防衛分析官であるデレク・グロスマンが11月16日付「Nikkei Asia」に寄稿した中に、ビックリ仰天のパラグラフがある。

「11月14日、バリ島でのG20首脳会議に先立って習近平中国主席と会談したバイデン米大統領は、会談後、『中国側には、台湾に侵攻しようといういかなる差し迫った企図(imminent attempt)もないと、私は思う』と述べた」

何の根拠もなかった「台湾有事切迫」論

えっ?ちょっと待って下さいよ。21年3月に米上院の公聴会で米海軍大将が「中国による台湾回収は6年以内」と証言して以来、米政府高官からは「2027年、いや実際にはもっと早く23年か24年にも習は暴発するかもしれない」といった危機感あふれる発言が繰り返され、日本政府・自民党もそれを情勢認識の基本に据えて、巡航ミサイル装備だ、敵基地攻撃能力取得だ、南西諸島にシェルター建設だなどと、狂ったように騒ぎ立ててきたのではなかったか。

この筆者のグロスマンも呆れていて、バイデンがそのように「台湾有事」切迫論からあっさり撤退したということは、同政権の危機論には、2027年が中国人民解放軍の創建100周年だという以外に何の事実に基づく現実的な根拠もなかったことを示すものだと指摘している。

本誌は、最近で言えばNo.1164(7月18日号)「間違いだらけの『台湾有事論』」、 No.1176(10月10日号)「バイデン米大統領の『台湾有事』論は認知バイアスの表れ」などで、一貫してその虚妄性を主張してきたので、今更驚きはしないが、ランド研究所までがこのように冷静な分析に立ち戻り、大統領が正気を取り戻すのを助けようとしているのは、誠に喜ばしいことで歓迎したい。

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尾辻かな子氏の『咲-Saki-』ノーパン批判は勇み足?「実は履いている」ネット指摘、「政治家はパンツより消費税下げて」議論白熱

立憲民主党所属の元衆議院議員・尾辻かな子氏(47)が、JR大阪駅の御堂筋線口で「女性の性的なイラストが広告として展示されている」と指摘し、ネット上で賛否両論を巻き起こしている。尾辻氏の意見に同調する人もいれば、「じゃあ男性だったらいいのか!」などと男性の半裸の写真やイラストを提示して反論する人も。中には「脅迫メール」を送りつける者までおり、反論もヒートアップしているようだ。

漫画「咲-SAKI-」とオンラインゲーム「雀魂」とのコラボ広告が炎上

「JR大阪駅の御堂筋口。こんな広告が…。2022年の日本、女性の性的なイラストが堂々と駅出口で広告になるのか…」

尾辻氏がTwitterでこう指摘したのは、青年漫画雑誌「ヤングガンガン」で連載されている「咲-SAKI-」と、オンライン麻雀ゲーム「雀魂(じゃんたま)」のコラボ広告。

問題にされたのは、「咲ーSAKIー阿知賀編」に登場するキャラクター新子憧(あたらしあこ)と園城寺怜(おんじょうじとき)がバニー姿になっている2枚と、新子が海辺のパラソルの下でショートパンツがズレてビキニパンツが覗き見えている1枚、そして園城寺がカーブ階段の手すりの上に腰掛けスカートがヒラヒラと舞い上がっている1枚の計4枚だ。

他にもキャラクターが登場するポスターはあったが、尾辻氏の目には止まらなかったようだ。

このツイートが賛否両論の大議論を巻き起こしたため、尾辻氏はこのツイートに関してこうコメントした。

「JR西日本大阪駅の御堂筋口の改札通路は大阪の玄関口のひとつであり、多くの人が通行する公共空間です。その公共空間への広告が、例えば今回は、バニーの服を着、その服が脱げかけている、胸、大もも、股間のきわどい露出など、女性の性の商品化に無自覚であることを示していると思いました。環境型ハラスメントの類型にもあたり得るものです。そして、広告出稿ガイドラインをパスしたことも驚きました。広告出稿、広告掲示企業のジェンダー平等に対する社会的責任が問われています」

バニーガール姿のイラストは決して肌の露出が大きいようには見えないが、バニーガールがキャバレーで働く女性の制服として使用されていたこともあり、公序良俗に反すると感じる人がいてもおかしくないとも言える。

尾辻氏の発言に同調するコメントには、「制服姿の女子高生・原村和(はらむらのどか)のイラストも胸を強調しており、あきらかに性的だ」という声もあった。

さらに尾辻氏は同じコメントで、

「なお、漫画「咲」の登場人物は女子高校生の設定で、パンツを履いていない絵が描かれています」

と指摘。この発言を受けて、「咲」の読者が「1巻から15巻まで読み直したけど、パンツ履いてない場面なんてなかったけど……」などと反論。

尾辻氏は、

「では23巻を読んで確認してください」

と返した。

はたして尾辻氏の言うように「咲ーSAKIー」のキャラクターは本当にパンツを履いていないのか? そこで第23巻を読んで確認してみることにした。

検証結果:「咲」のキャラはパンツを履いていた

「咲ーSAKIー」は、麻雀がより世界に浸透している架空の世界が舞台。女子高生たちが麻雀の腕を競うという、かつての「麻雀放浪記」のようなギャンブル性ややさぐれ感を廃した、純粋な競技としての麻雀を描いている。

テレビアニメもシリーズ化され、浜辺美波や桜田ひより主演で実写ドラマ・映画化もされている。ギャンブルの匂いが強く敬遠されていた麻雀を、親しみやすいゲームとしてアピールし、若者の麻雀離れ抑制にも貢献している作品だ。

パンツを履いていない設定なら、浜辺らが出演するはずもなく、そもそも放送などできない気もする。

漫画のストーリーもほとんどが雀卓を囲んで展開しており、しかも登場人物はほぼ女性ばかりなので、ネット上でも「パンツを履いてないワケがない」という意見が大多数だ。

そこで実際に「咲-SAKI-」第23巻を確認すると、確かに一瞬、パンツを履いていないように見える場面がある。しかし、よく見るとうっすらパンツが描かれているようにも見える。

厳密に言うと、パンツを履いていないというよりも「パンツの部分をあえて描いていない」職人技という感じだ。

見ようによっては、パンツを履かずに臀部がむき出しになっているように見える人がいてもおかしくはない。と言っても「咲」は性的刺激が求められるような作品ではないし、そのように描かれていると解釈されたら、大騒ぎになっているはずだ。

パンツの描写自体にしても、バニーガールに対する先入観にしても、現在47歳である尾辻氏より上の世代から見ると、顔をしかめたくなるものということなのかもしれない。

尾辻氏の発言で懸念される「スラットシェイミング」とは?

今回の尾辻氏の発言は、むしろ「スラットシェイミング」にあたるのではないかとの意見も出ている。

スラットシェイミングとは、旧来の型にハマった行動や社会通念で行動を判断し、非難すること。

日本の漫画家は2021年現在で77.2%が女性、イラストレーターも2019年時点で68.4%と約7割が女性という。

「咲」の原作者・小林立氏は女性だとも言われている。一方で連載されているのは青年誌なので、女性のビキニグラビアが表紙を飾ったりもする。

麻雀漫画は絵が単調になりがちなため、合間合間に読者サービスでパンチラシーン(パンツがないのでパンチラにもならないが)が入りやすい面もある。

実は小林氏は2019年5月、自身の個人サイトのコメントで、「咲-saki-の世界は同性婚が可能」「登場人物の半分以上は同性愛者」と公表している。

これは尾辻氏の政治理念と一致しているようにも思えるが、「咲」の表層的な描写に気をとられて、作品の詳しい中身やバックグラウンドまで見る余裕はなかったようだ。

少子化の原因にも。日本にしかない時代遅れの戸籍制度を廃止すべき訳

未ださまざまなシーンで求められる戸籍の提出。しかしこの戸籍制度、採用しているのは日本のみという事実をご存知でしょうか。そんな制度の廃止を求め続けているのは、ジャーナリストの上杉隆さん。上杉さんは自身のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』で今回、そのきっかけとなったフランス政府による少子化対策を紹介しています。

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前編【戸籍制度の限界~差別の温床。ジダンも、アンリも、ロナウドも…。時代は「戸」から「個」へ】

戸籍制度の廃止を訴えてから約20年が経過する。

1868年の明治維新によって現在の戸籍制度は誕生した。比較的に新しいシステムなのだ。仮に、日本古来の伝統的システムを守ると言っている人がいたら勘違いだろうし、国民と家族を守るための制度だと語っていたら、それも違うと教えてあげてほしい。

現在の戸籍制度は、明治新政府が長州藩の行政管理システムを真似たもので、国民側の利益ではなく、あくまで行政側の利便性から導入されたものにすぎない。

東アジアに固有の制度だったが、台湾、朝鮮半島は戦後に廃止され、中国は2014年の改正で事実上、消滅した。ゆえに現在では、日本に固有の制度となっている。

筆者が、戸籍制度の廃止を求めるようになったのは2004年のこと。きっかけはパリでの入院だった。

当時のフランス政府は、移民問題と少子化問題の狭間で頭を悩ませていた。

少子化対策としてマグレブ(北アフリカ系)などから外国人を受け入れるのはよいが、国内での治安悪化で保守派の支持を失いかけていた。一方で、同地区から流入する移民がフランスの社会構造をよりよく変化させ始めていたのも事実だった。サッカーフランス代表のジダンやアンリなどその顔ぶれをみれば、移民は国力増強にも効果的だと確認できたし、税収増にもつながっていたからだ。

政策上、人口減を食い止めるのは「移民」か「出生率増加」のどちらか、またその双方を活用するしかない。

1990年代には、1.66点まで落ち込んでいた合計特殊出生率の低下は、フランス経済を痛めつけ、社会に暗い影を落としていた。移民政策によってかろうじて保たれている少子化対策の抜本的な転換が必要だった。人口増は、出生地主義をとるフランスにとっては、納税者を増やすチャンスであり、国の財政を潤す急務の政策なのであった。

そんな時に登場したのが、選択的移民政策を推進するサルコジ内務大臣だった。2003年11月26日、第二次大戦以来の伝統的な移民法を改正し(03年法)、返す刀で、女性に向けた、手厚い出産育児支援制度(少子化対策というとネガティブな印象があるので何か別のネーミングはないだろうかと当時より考えている)の推進を加速させた。

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経産省主導の半導体会社「ラピダス」成功の鍵を孫正義社長が握るワケ

11月10日、経済産業省が旗振り役となり、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、デンソー、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が出資する次世代半導体の新会社「Rapidus(ラピダス)」が設立されました。国が主導する半導体会社と言えば過去に失敗を重ねていて、ラピダスに関しても評判は芳しくありません。そこで、今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、ラピダス成功ために、AI投資で大きな損失を出したソフトバンクの孫正義氏に働きかけ、armの最先端の技術を取り込む私案を披露しています。

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日の丸半導体会社「ラピダス」が孫社長を救えばいい──売り先がなく困っているarmと一緒にするのが吉

次世代半導体の新会社「ラピダス」が話題だ。メディアでは「失敗するに決まっている」「経産省主導でうまくいくわけがない」と早くも非難轟々だ。確かに今からTSMCやサムスン電子と戦うにはあまりに遅すぎる感は否めない。

日本政府がラピダスを立ち上げる背景には安全保障の問題も大きい。中国情勢によって、台湾に半導体を依存するのはあまりに不安だ。そこで日本でも半導体を製造できるような環境を整備するというのは理解できる。ただ、現状、半導体ビジネスは中国市場なくしては回らない。

先週、ハワイ・マウイ島で「SnapdragonSummit」が開催されたが、基調講演は午後1時からと中国市場でオンライン視聴しやすい時間帯が設定されていた。

今週、東京・五反田でメディアテックの記者説明会が開催されたが、フラグシップスマートフォン向けチップで、メディアテックのシェアが大幅に伸びている点がアピールされた。メディアテックといえばエントリーやミドルクラス向けというイメージが強いが、着々とフラグシップ向けにもシェアを拡大しているのだ。

中国メーカーには、OPPOやシャオミ、Vitoといった世界的に販売台数を稼ぐメーカーが多い。自社でチップを手がけるアップルやサムスン電子以外に、チップを買ってもらうには中国メーカーへの販売は避けて通れないのだ。

ラピダスはスマートフォンをターゲットとした半導体の大量生産モデルとは一線を画し、専用の半導体を多品種少量生産するビジネスモデルを目指すようだが、やはり中国メーカーとの取引は避けられないのではないだろうか。

ラピダスはIBMからの技術協力を仰ぐようだが、いっそのこと、ラピダスは孫正義氏からarmを買い叩けばいい。armと協力関係になれば、ラピダスは世界最先端の技術を手に入れることができる。一方、AI投資に失敗し、意気消沈の孫社長は、armの企業価値向上に全力を注いでいるようだが、ラピダスがarmを買い取ってくれれば、ソフトバンクグループも一気に状況が改善するはずだ。

あれほどチップに対して情熱を注いでいる孫社長なのだから、armとともにラピダスの舵取りをしてくれればいい。アップルやグーグル、マイクロソフト、フォックスコンなど名だたる企業に顔が効く孫社長が営業していけば、ラピダスの半導体は一気に世界で普及する気がしている。armと孫社長とラピダスの組み合わせが日本の半導体ビジネスの救世主になるのではないか。

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マラソン中の補給「水分だけでOK」は本当?糖尿病医に聞いてみた

以前のようにマラソン大会が各地で開催されるようになり、多くの市民ランナーが走ることを楽しんでいます。マラソンのエネルギー源として糖質は効率的ですが、糖質制限食を実践していてもパフォーマンスに悪影響はないという研究結果があるようです。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では、医師で糖質制限食の提唱者である江部康二先生が、米国の医学雑誌に掲載された論文を紹介。マラソン前や最中に糖質制限を継続するのは問題なく、むしろ糖質を摂らないことで効率的に脂肪が消費されると伝えています。

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マラソンに市販の携行食やゼリーは摂取すると悪影響?

Question

shitumon

46歳男性。毎日5-10kmのランニングをしています。たまに登山をするときは、ほとんど何も食べずにするのですが、フルマラソン大会ではどうしても心配で栄養ゼリー等を補給します。

糖質制限をしている時も糖質の補給は不要という記事も読みました。市販の携行食やゼリーは糖質を多く含んだものばかりです。そういうものは逆に摂取すると悪影響でしょうか?水分補給のみで何も摂る必要はないと考えて良いのでしょうか?

江部先生からの回答

マラソンのエネルギー源ですが、グリコーゲンは肝臓に約100g、筋肉中に約300gしか蓄えがありません。従って、<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムでは400g×4=1600kcalしか賄えませんので、フルマラソンに必要なエネルギー量(体重60kgの男性で約2600kcal)には到底足りません。

その点、脂肪は、体重60kgで体脂肪率15%なら、9kg、81,000kcalであり必要充分な備蓄量と言えます。つまり、理論的には42.195kmの走行課程のほとんどを、有酸素運動の<脂肪酸-ケトン体>エネルギーシステムで走り、ラストスパートだけ、無酸素運動の<ブドウ糖-グリコーゲン>エネルギーシステムで全力疾走というのが、理想的な配分と言えます。

結論からいうと、マラソン前も最中もスーパー糖質制限食でOKです。水分も水で大丈夫で、塩は必要量を適宜補充です。

米国の医学雑誌・代謝(Metabolism)に、2016年3月、興味深い論文が掲載されました。『糖質制限食は、ウルトラマラソンやトライアスロンにおいて普通の高糖質食と比べて、遜色なし』という内容です。

普段から
(A)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 10:19:70>の糖質制限食を食べている10人
(B)<炭水化物:たんぱく質:脂質 = 59:14:25>の高炭水化物食を食べている10人
いずれの群もエリートランナーです。

研究施設に2泊3日で滞在、最大酸素摂取量、体組成、筋生検など実施、その後トレッドミルで走った後、直後と2時間後に筋生検を実施です。

(A)(B)群を比較したところ、糖質制限群(A)は、(B)群と比較して、運動中のエネルギー源として脂肪酸化の利用が極めて高率でした。一方、筋肉のグリコーゲン利用と充満のパターンは、運動中も3時間のランニング後も、(A)(B)群で同様でした。

つまり、普通に糖質制限食をしているランナーがそのまま、ウルトラマラソンやトライアスロンをしても、筋肉中のグリコーゲンの量及び増減と回復パターンは、糖質摂取群と比べて、全く遜色ないという研究報告です。

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なぜ、本物志向の洋服を着れば着るほど日本人はダサくなるのか?

洋服作りの本場はヨーロッパです。しかし、ヨーロッパに渡り技術を学んだメルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、日本人の体型や日本の気候に合わないことを知りました。今回、坂口さんは本物を志向するのではなく、日本に合った良いものを作り出すビジネスの方法について語っています。

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日本発メンズアパレルの可能性

1.本場のテーラードを学んだけど…

洋服のルーツはヨーロッパにあります。本物の洋服を作るには、ヨーロッパに学ぶしかありません。そこで、日本の紳士服メーカーはヨーロッパのブランドとライセンス契約を締結し、ヨーロッパの紳士服を学びました。

初めに英国式の重厚なテーラードを学び、次にイタリア式の軽やかでセクシーなテーラードを身につけました。

しかし、技術は学べても、それが日本人に似合うかは別問題です。体型が異なるのです。

例えば、私がイタリア製のジャケットを着ると、思いっきり胸を張らないと、服に身体がはまりません。見た目はかっこいいのですが、その姿勢を維持するのは厳しい。結局、その時は日本メーカーのライセンスブランドのジャケットを選びました。

気候の差も重要です。ヨーロッパの気候は夏でも乾燥しています。服の中が蒸れたり、汗でベタベタすることがありません。

そういう気候で発展したのが、外気を遮断するスタイルです。ネクタイで首周りを密閉し、カフスで袖口から外気が侵入するのを防ぎます。革靴も足を外気から遮断します。

極論すれば、テーラードスーツは日本の気候には適していません。日本の高温多湿な気候に適しているのはきもののように開放的な構造の服です。襟元も袖口も裾も全て開放され、常に外気が身体の表面を対流しています。

気候と服の構造が合わないので、日本のテーラーは「背抜き」を発明しました。また、服全体にゆとりを持たせ、換気を良くしました。これが昭和のスーツです。

しかし、快適性を追求すると、本物の洋服を知っている人にはダサく見えます。最近、空調が完備されたので、夏でもヨーロッパのようなさわやかな環境で仕事をする人は増えました。しかし、満員電車では汗でドロドロになります。

本物に近づけば近づくほどに、服は気候風土、宗教的な価値観、美意識等に準じたものであることが分かります。そして、本物を志向する限り、日本製品はヨーロッパ製品の二番煎じにしかなりません。本物が欲しければ、ロンドンやナポリでスーツを仕立てればいいのです。

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